同じ床の上(8)老婆の妖精
・障子の張り替え、
・ベランダの掃除、
・網戸張り替え業者の手配、
・床のワックスがけ、
・庭の物置の整理、
「にみりにやってもらう事」
と題され、冒頭に並んだ項目を書いたメモが、私が座る席の食卓に置かれてありました。
母の字です。
「お願いします」とか「よろしく」なんて柔らかな言葉はどこにもなーーい!
淡々と並ぶ項目。
こんなにも事務的かつ、無機質なメモ書きに、ため息をつきながらも一生懸命取り組もうとするわたし自身をめいいっぱい褒めてあげたいですわ…
+++++++
わたしは実母の住む四国の実家と夫が単身で住む関西を数ヶ月ごとの間隔で二重生活しております。
母はかなりの自己中で「やってもらって当たり前」と書いた旗を頭に掲げて家の中を歩いているかのような人であります。何をしてもあまり喜ぶことをしません。
障子の張り替えのために障子の桟を壁に立てかけてたら「壁に傷がついたやないか!」と壁を撫でながら怒られました。
(実家の壁は豆腐で出来ていたことをすっかり忘れていました←?)
↑↑ペロんペロんとめくれました!
けっこうおもしろかったです。
↑↑豆腐で出来た壁に立てかけてしまった障子の桟
ベランダの掃除は数時間かけました。わたし自身、自分では完璧の出来上がりです。ひとりでガッツポーズをするほどの達成感。しかし母は、ご不満のご様子でした。「後は追々やればええ」と、衝撃な言葉に脳天から湯気が出た思いです。
(これ以上どないせいゆうねんな!)
家中の網戸の張り替え総計15枚を
格安超安業者を調べまくって見つけました。んが、「安くすみそうでよかったやん。」というわたしの言葉に、「それでもうん万かかるわ!」と。
(タダでやってくれるような奇特な人なんてフツーいねぇーし!!←心の咆哮)
つい、「ありがとう」と言ってしまうと身でも削られるんかと思うくらい、
「ありがとう」も、おまけに「ごめんね」も出し惜しみをするのです。
トンカチでたたいても砕けないほどの硬くてくだらない、そしてヘンテコなプライドをポケットに常備しているのか、いや、まさかほんまに身を削られてしまうのかもしれません。(それは痛いですね)
単身で仕事をしながら身の回りのことを自分でこなす、にみり夫への気遣いも、今まで一度も聞いたことがありません。老いの不安からわたしを自分の元に呼び寄せておきながら、まったくもって思いやりの「お」の字もないっ!!
どころか、なんもない。
さて、この間のお話ですが…
わたしはスーパーで買い物して、買い物カゴからエコバッグに詰め込む作業をしてた時のこと。
お肉やお魚は半透明のビニール
(半ビ)に入れる。もうそろそろ、無料の氷をスコップですくい、
半ビに入れて持ち帰らないと生物(ナマモノ)が傷んじゃう季節だなぁーって考えてました。
春だもんなぁー。
あったか季節だよなぁ〜。
と、ボケボケと。🌸
わたしはこの詰め込み作業、けっこう嫌いです。めんどくさそうにボンボン詰めるかんじですわ。笑。
………。
「あっ!」
横で商品の詰め込み作業をする見知らぬお婆ちゃんが突然わたしに「あっ!」と言いました。
「えっ???」
わたしは商品を持ったまま手が止まりました。「えっ?」と声にならない声に一瞬、時も止まった…かんじ。
[あーた、パンが潰れてるやないの!上の方に入れなきゃダメよ。]
とか
[玉子は牛乳パックを横にしてその上に…]
とか
いやいや、見知らぬ人へのお節介なんて昭和初期じゃあるまいし、
そんな、いまどき注意とかありえへん。
じゃぁ…
[その商品、どこら辺に置いてあった?探していたのよねー。]
なんて聞かれるのかな…
と一瞬の間にこんなことを考えました。いやはや、こんな一瞬に色々考えることができる人間の能力ってすごいわ。←これ、どうでもいいですが。
で、「あっ!」の後に何を言われたかというとですねぇ…
「そのシール、集めてる?」
と聞かれました。
なんとも予想外の問いかけに自分の手元を見てみると、「パン」を持ってました。
『ヤマザキ春のパンまつり』。シールを集めて必ずもらえるってやつです。
わたしは何をもらえるかも知らないくらいだったから、
「あ、いえ、全然…」
と答えたら、
「よかったら、くれない?」って
かわいい顔をして言うお婆ちゃん。
幾分、アニメ目のようにキラキラしている感じにも見えました。
「いいですよ!」とその場でパンについてるシールを2袋分渡したら、お婆ちゃんのかわいい顔がさらに嬉しそうに笑顔になって、
「ありがとう!
ほんまに嬉しいわぁ!」✨✨
「ほんまに嬉しいわぁ!
「ありがとう!」✨✨
と2回、連呼してくれました。
そう言って、しわしわの手の甲にシールを貼り付けていました。
グレーの質素な服装にツバのある帽子をおかぶりになられた老婆の妖精といったかんじでしょうか。
(ここでやっと今回の題目。笑)
その仕草にわたしまで嬉しくて、こんな些細な事にあんなにまで嬉しそうな顔をしてくれるなんてと、その日、1日ほわほわしてました。🫧
↑↑白くてシンプルイズベスト。
使い勝手の良さそうなお皿です。
考えると、うちの母と同じ歳頃のお婆ちゃん。
母は、「ありがとう」や「ごめんね」がなかなか言えない人。だから自分はそれを反面教師にして、ちゃんと感謝や謝罪を言うことを心がけるようになりました。そういう意味では、感謝ですね。笑。
何をしてもあまり喜んでくれない母に、ちょいと苛ついてたときだから、シールお婆ちゃんに余計嬉しい気持ちになれたんだと思います。
誰かに何かをしてあげるって、
自分のためでもあるんだよな。
神様は別として、人間だったら
みんなそうなのかな。
感謝されればこっちも嬉しい。
相手の笑顔は自分の癒し。
こんな大事な言葉、「ありがとう」
と「ごめんね」が言えないなんて魔法を使えない魔法使いじゃないですかぁ。
ってことでそんな方に少しでもお手伝いが出来たらいいな、(もちろんしっかり思いを伝えることのできる方にも)と思い、お婆ちゃんキャラのラインスタンプをつくりました
…と言えばかっこいいですが、ほんとはただの趣味で作ったラインスタンプがコレ↓↓↓↓
↑↑↑リンク先
↑↑↑こんな感じのよく使う言葉40個
作りました!
目を通していただけるだけで幸いです。
そしてその夜、娘から電話がありました。大学の寮で暮らしています。最近、普通自動車運転免許をとりました。免許獲得後まだ一度も道を走ったことがありません。
「初心者マーク🔰ヒャッキンで買っといたよ。こっち来たら一緒に車乗ってあげるわー」
と言えば、
「おぉ、たすかるわ!
ありがと!さっすがママー!」✨✨
と感謝いっぱい表現してくれます。
娘は、わたしをどうやって操ればいいのかを知ってる人です。
笑。
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