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小説          俺が「君を愛す方法」第3話

全話約23000字で完結
第3話約2000字

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第1話〜2話までのあらすじ

高校教師の俺、冬賀隼也ふゆがしゅんやは放送部の顧問。
放送部の部長である女子生徒、有栖サナありすさなと俺は、恋仲になった。しかし、俺は彼女を本当に愛してなどいない。憎む相手の娘である彼女を利用し、復讐を計画するために近づいた。
一方、彼女の方は、俺を信じて疑わず思惑通り、俺に好意を寄せる。

第3話の今回は、俺の「過去」が徐々に明らかになっていく。
放送部の大会での遠征、部員と共に宿泊施設に泊まる。俺と有栖は急接近。

どうして復讐をするのか。何故…。

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第3話

二階建てでヨンコイチの小さなアパート。
部屋に入っても誰もいない。

暗い部屋に

『ただいま。』

と言って靴を脱ぐ。
電気をつけ、カバンと鍵をテーブルに置くと写真に微笑んだ。

『また、一日が終わったよ。会いたいよ‥‥。』

カーテンを開けて窓を開けた。湿った風が入ってきた。

《生きているのは死ぬためだ》

俺はボソッとつぶやいた。

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冷蔵庫を開けて、スポドリを飲んだ。味がしないな。

2日前、スーパーで目についた真っ赤なトマトが冷蔵庫に転がっている。

掴んでかじった。
ウマイのかマズイのか、人間らしい味覚なんてもんもどっかにいっちまった。

視線を逸らした先で薄暗い中、僅かに光るスマホに目がいった。そして吸い寄せられるように手にとった。

〈〈有栖ありす?もう、家か?今日、舞野香まいのかおりがおまえを見てた。なんかあまり感じの良くない顔をしていたよ。まさか、俺たちのこと、感づいたとか?俺、心配になってきた。もうすぐ、大会で東京に宿泊だろ?やばいな。どうする?〉〉

送信すると、すぐに返信が返ってきた。

有栖〈〈学校の帰りに、かおりが話しかけてきたの。
(冬賀ふゆが先生の事、好きなの?)って聞いてきた。とりあえず、(私は好きだけど冬賀先生は
相手にしてないよ。)って言ってある。
大丈夫、心配しないで。香のことは、任せて。先生、大好きだよ。だから大丈夫。〉〉
〈〈俺も有栖のこと、大好きだよ。卒業まで、あと一年八ヶ月だな。君のこと、たいせつにする。
待ち遠しいね。〉〉

有栖のことだ。アイツに任せておけば俺の悪いようにはならないだろうさ‥‥。

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俺が初めて有栖に触れたのはこの東京遠征の宿泊所だった。世の中の楽しんでる奴らがよく言う『恋人繋ぎ』ってやつ。

指と指を絡ませた。
細くて柔らかくも生ぬるい、有栖の指をキュッ、キュッと2回強く握った。

有栖も2回、握り返す。

互いに2秒見つめ合い、すぐに下を向くのは有栖の方だった。

そして、照れてたように下唇を噛んだ。

それ以上は、何もしていない。しかし恋とやらに初心者の彼女にとっては、すごい刺激になってるはずだ。

「先生?このまま時が止まればいいのにね。」

「しっ!止めよう。5秒だけ。」

心の中で静かに数を数えた。

心臓は反比例だ。早い鼓動を打つ。

そのあと、2人で声をひそめて笑い合った。



宿泊施設の暗く寂しい階段の踊り場。高い場所にある小さな窓から月の明かりがもれていた。

そういえば舞野香まいのかおりはもう、俺と有栖ありすのどうのこうのを疑う様子はなくなっている。

どうやって俺達への疑惑を取り払ったかというと、有栖は舞野に『恋』という物を与え、俺と自分に目がいかぬよう細工をしたという。

舞野が前から気になっているクラスメートの男子を利用し、言葉巧みに操り、見事に2人をつきあわせることに成功したと。

舞野が誰かと電話で話す声が聞こえてきた。

{うん、今、部屋に戻って寝るとこだよ。}
{うん、やだぁー。私もだよ。}
{そう。帰ったらね。あっ、お土産、買ってくね。楽しみにしててね。じゃぁ。}

舞野が耳からスマホをはずした。

例の有栖が意図的にくっつけたという、成立ホヤホヤの彼氏と電話か。有栖の作戦とは知らず、いい気になって話していたんだな…。

商品に白い布がかけられた売店の前で舞野がスマホを胸に、にやけていた。

青春ってやつだな。俺にもあった。

大学時代に本気で惚れた女性。
責任感が人一倍あって、自分より人のことを考える。
ホントは弱いくせに強いそぶりをする。そのくせやたら泣き虫で、泣いてるところを人に見られるのを嫌がり、表情を変えずに目から涙だけ出てるんだ。

俺は、その女性が大好きでたまらなかった。俺にだけは、弱いとこも、辛いとこもなんでもそのまま見せてくれと、告白した。

俺が大学二年の夏だった。

そう。それが…麻美あさみ。俺もおまえに似てきたよ、
涙が出て止まらない。会いたいよ…。

そして麻美にうりふたつの愛らしい女の子、柚良ゆら……。

俺の愛しい妻と娘だ。

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「せーんせ!枕投げでもやりまひょうやぁ!」

「あれ?泣いてる?先生?」

「アホ、泣いてないよ。夜空を見上げ、しみじみぃーってなってただけだ!ほら、おまえ達、枕投げとか、小学生じゃあるまいし、早く寝ろ。明日、早いぞ。優勝狙うんだろ?
あくびばっかじゃ、審査員に心証を悪くするぞ。ほれ、ほれ、部屋へ帰る!ほれ、早く!」

やたらとテンションの高い部員達を追い立てて、俺も副顧問の先生との2人部屋に戻った。

布団に転がり天井を見上げたら、また涙がでてきそうになった。

副顧問に見られたら、また面倒くさい。
気持ちを切り替えようと寝返りを打つと副顧問はもうぐっすり寝ていた。
布団に入って秒単位で眠れるって、こりゃ、もう特技だな。

数分後には、いびきをかきはじめた。

副顧問の奥さん、大変だな。毎日こんなすごい、いびきを聞かされてんのか‥‥。

いや、俺にとっちゃ、それも羨ましい事だ。


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to be continued

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