小説 俺が「君を愛す方法」第1話
全話約23000字で完結
(1話約900字)
希望のある歌詞と、どこか切なく揺れるメロディ。若者に流行りで人気のミュージシャンが作った卒業ソング。
それが体育館に響きはじめると、俺はその場に立っていられなくなって外へ出た。
「冬賀先生?大丈夫ですか?」
心配してくれた同僚の声も聞こえてないフリをして足早に部室へと戻った。
俺はそこで大きく息を吸ってゆっくり吐き、
「よく頑張った、自分。」
と自身を褒めた。
そして、これからは俺の計画、第二章が始まる。
俺が愛す、いや愛すフリをしている生徒は今、この校舎を巣立つ卒業の時を迎えている。そして今までの『禁断』が解かれるのだ。
薄紅色の花を胸に付けた彼女は今、何を考えているだろう。いや、そんなことはどうでもいい。
制服はもう要らない。第二幕の衣装は色とりどりに変わる。
幕開けにふさわしい、ぬるくて生臭い風が部室のカーテンを揺らしたー。
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二年前、俺は、数学の教師としてこの私立高校に赴任した。そこで彼女に出会った。学業、スポーツ共に名門校であるこの高校。そこに勤務することになったのは、単なる偶然ではない何かが引き寄せたからだ。
俺はその頃から教師という職業にも、生活にも何に対しても無欲だった。
そして『放送部』などという影の薄い部の顧問になった。
彼女はその放送部の部員だった。
誰からも愛され、信頼される彼女が、俺にとっては憎むべき相手であることを知ったのは
それからすぐだった。
運動部に比べ極端に少ない部員数で全学年合わせても20人くらいしかいない。
部員の生徒個票を見ていて彼女のところで手が止まった。
彼女の父親の欄に『アリス永生総合病院』の院長と記されていたからだ。
その時、決着のつかないままでくすんでいたいた俺の中の感情がメラメラと高い炎を上げた。やがてそれは、俺がこれから計画を成し遂げるまでの意欲になっていったのだ。
彼女の名前は有栖サナ
あぁ、君は、真っ直ぐにエリート街道を歩んできたんだね。
《よろしく‥‥。》
俺の顔が不気味な笑顔に変わるのを俺自身がはっきりと分かった。
to be continued