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『真666/魔力の刻印』トラック3 ザ・プリズナー

 金藤日曜のヒルゲリラに煮沸消毒したフランツ・カフカでバナナ・ボートを歌いながらスケートボードに乗っていたスラッシャー古賀の前にプカプカ大麻を吸った性癖の良さげな男が立つ。
「オー、チンチン、アノチンポコドコイッタ?」
「いかにも」禿げ上がった古賀は男の中の男を見逃し配信ですまないと謝ったあとで軽快モードで最大級のブラックバスを引き上げて答える。「ブラックサバスのパラノイドって曲が足りないから急いで作ったんだよな」
 ハッハッハッしっかり効いてるじゃねえかと呪術廻戦が大好きな男は、上体を捩りながらブルゾンちえみの内側に右手を入れると「デハデミグラスオムライスクダサーイ!」と言いながら大型犬の男前豆腐特濃ケンちゃんを取り出して古賀に向けるなりトリガー条項を解除する、が、蛾、モスラーヤモスラードゥンガンカサクヤンインドゥムーが無人在来線爆弾と化してゴジラに貫通する。汝、姦通するなかれ。モーセ古賀は超人的な着こなしで丸テーブルの下でパリコレを始めた。手作業ならではのポージングに魅惑される男。
「忍者⁉︎」
 叫び終わる間もなく、ジャニーズ事務所性加害問題で忘れられていたアイドルグループが男を弾き飛ばす。一目散に走り出す熊の子見ていた隠れん坊お尻を出した子一等賞夕焼け小焼けでまた明日、また明日。いいな、いいな。悲鳴のユニゾンが不協和音となって男の聴力を奪う。頭から血を流しながら立ち上がったアブドーラ・ザ・ブッチャーは周囲を見回す。古賀はどこだ。エコエコアザラク。それは古賀新一だ。空中で一回転しながらそれが楽しいから一回だけでなく何回も回転しながらアブドゥル・アルハザードの肉体を衆人環視で食い破る不可視の怪物。残されたネクロノミコン。
 破片と共に歩道に着地失敗した古賀は、いきなり車道に飛び出した影道総帥と共に影道冥王拳で背後からやって来た白い肌の異常な夜の中に飛び込む。それは既に遠隔自動操縦で彼を操っていた古賀の配偶者、通称「稲妻お竜」なのだ。同じく「伊坂十蔵」!
 アクセル・ローズ並の声域で対向車の隙間を縫うようにして先行車を追い抜いて走るスティール・ボール・ランのサンドマンのような古賀がルームミラーに目をやると、そこにはバイクに跨って激しく迫るブルゾンちえみ。
「こちらスレイヤーのレイン・イン・ブラッド。エンジェル・オブ・デスは名曲だな」
 古賀が冷静な声で告げると、Masa Ito's ROCK TV直通の秘匿回線から上司伊藤政則の輪をかけて冷徹な声が届く。
「スレイヤーは緊急事態でジェフ・ハンネマンが亡くなったあとに解散した。だがケリー・キングが新プロジェクトを企てていることに期待している」
 なんということか、スラッシュ・メタルは今回の作戦に携わるメタラーを同時に刺激して皆殺しのキル・エム・オールをレコメンドするのだ。
「メタル・アップ・ユア・アス!」
(内部の滴は酸っぱいぞ!)
 古賀の表情が一瞬蜘蛛になる。ロンドンロンドン愉快なロンドンに張り巡らされたPTAの連絡網を炙り出し清掃活動する作戦『黒い安息日』に早くもアンアンアンとっても大好きドラえもん。
 コント赤信号が昔爆裂都市という映画に出た情報に突っ込みを入れた古賀の背後でジュディ・オングの衣装が千手観音のように羽根を広げて横転する。銃弾がファイト!一発!リポビタンDの防弾リアム・ギャラガーに蜘蛛の巣のような傷を走らせる。古賀がナビ・ダイヤルを無料でかける方法を伝授すると、昔ダイヤルQ2ってのがあってなあと小林猫太が感慨深くあり得ないルートを表示する。
「ブラック・フライデーはメガデスの曲だな」
「さっきからメタルネタばっかですよ!」古賀はいたって平坦な口調で言うが、なんだか楽しそうだ。「新しいスーツはメタラーは似合わねえしな」
「グラハム・ボネットはスーツが似合っていたぜ、オール・ナイト・ロング!」
 視界が急に開けて目の前に広がるのはいにしえのモンスターズ・オブ・ロック・フェスティバル。互い違いに埋め込まれた鋼鉄の鋲付きリストバンドを振り回して古賀の行く道を引導する。さらにハイトーンボイス。見ると男のバイクは若き日のロブ・ハルフォードが乗り古賀の背後にぴったりと密着している。
 古賀はモッシュピットでスイッチが入った。マノウォーとヴァイパーがセットリストから外れて客席前方に射出され、モッシュの波に乗り上げたメタラーが宙を飛ぶ。着地してまた踊り出す。怪我をするなよ。
 PMRCの偽善者は何が起こったのか理解出来ないまま全速力でモッシュに押されてステージの外に追い出される。男の身体が高速回転しながら舞い上がり地面に激突する。トゥイステッド・シスターのウィー・アー・ノット・ゴナ・テイク・イットのように。
 ほっと火を吹く古賀。だが古賀の目はカラーコンタクトレンズが入って悪魔のようになっていた。ようやく前を見るとそこは既に天国への階段。天国から来たチャンピオンのようにアルト・サックスを手に持ちながら、古賀は階段を登っていく。光り輝く段上にはジェイコブス・ラダーのようにホーム・アローンで注目される前の可愛かった頃のマコーレー・カルキンが待っている。
「釣られましたか」
 感動の涙で頬が濡れている古賀にマコーレー・カルキンは英語で話しかける。
「アメリカはイスラエルを擁護するのか!」
「ちょっと天国から落ちたほうがいいかもしれませんね」笑いながら古賀は同意する。「日曜日が安息日なのはキリスト教だけだしね」

(フェード・アウトからのメイン・テーマ)

#古賀コン3

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