【軍貫】マギスト寿司 閉店編
最近、「哲会リモート」の大会”開発”担当ということで遊戯王OCGの非公認大会に触れる機会が増え、遊戯王に対するモチベーションが7年ぶりにかなり高まっています。
そんな中、久々に新規テーマデッキをゼロから自分で考えて組む機会があり、もともとカジュアルデッキを自分で組むことが多かった旧・長崎市非公認大会の奇人としては、非常に楽しい時間を過ごすことができました。
まずはじめに断っておくと、このデッキはランキングデュエルのような大会を意識して作り始めたデッキではなく、身内で遊ぶ際のカジュアルなデッキとしてスタートしたものです。
そのため、デッキの「強度」という面では語るべくもなく微妙……というところがあることは、否定しません。
ただ、このデッキを大会に持ち込み、炙り寿司をサーブした相手から“面白い” “興味深い” というお声をいただいたこともあり、その思考経路を記しておくのは悪くないと思いまして、思い切って書き下してみることにしました。……ら、はや6666字。なんで?
■【軍貫】からの目醒め
【軍貫】は、「DAWN OF MAJESTY」で登場した、「軍艦巻き」をモチーフとしたカードで構成されるテーマデッキです。
通常モンスターである《しゃりの軍貫》を握り、様々なネタ――《しゃりの軍貫》を何らかの形で扱う効果モンスター群を重ねる、「どのモンスターを使ってX召喚を行ったか」に注目する新感覚かつ新鮮なネタを扱ったデッキです。寿司だけに。
特に、《しゃりの軍貫》をX素材にした場合は「1枚ドロー」の効果によってカード消費の負担を軽減することができるため、なるべく《しゃり》と対応するネタの効果モンスターで“握って”いきたいと言えるでしょう。
ただし、「軍貫」効果モンスターは、展開に寄与する部分でデッキ内の《しゃりの軍貫》を手札に加えるか特殊召喚するかという動作が多く、《灰流うらら》のいい的であることには注意する必要があります。
軍貫のカードテキストなどはカードデータベースを参照。
雑感。
《いくらの軍貫》《弩級軍貫-いくら型一番艦》
「デッキトップから3枚見て、《しゃりの軍貫》をサーチか特殊召喚」の効果。意識しないと確実性に問題があるのが難点。
弩級軍貫のほうは攻撃力にやや物足りなさがあるものの、《いくらの軍貫》を素材に握った時の破壊力は随一。打点を上げるひと工夫で輝く一品。
《しらうおの軍貫》《空母軍貫-しらうお型特務艦》
「手札からの特殊召喚を行い、その後デッキ・墓地からの積み込み」の効果であり、唯一《灰流うらら》の餌食にならない。
空母軍貫のほうは効果破壊耐性が活かせる状況ならとても頼りになる。
《うにの軍貫》
「手札からの特殊召喚」は別として、「レベルを合わせ、その後《しゃりの軍貫》をサーチ」という効果の方が《灰流うらら》で止まってしまうことに注意。
なお、必ず《しゃりの軍貫》でX召喚を行うべきか、と言われると、ここは一考の余地があります。
《弩級軍貫-いくら型一番艦》《超弩級軍貫-うに型二番艦》は、(1)の効果の中でもドロー以外の効果を適用しないと、他の同ランクの汎用エクシーズモンスターに見劣りしかねません。
さらに、《しゃりの軍貫》を素材にしたX召喚で(1)の効果を発動すると、「ドロー効果」が効果処理に含まれるため、《灰流うらら》をチェーン発動される場合があります。こうなると、正規のネタを素材にした時の効果も巻き込まれて無効にされてしまいます。
《しゃりの軍貫》を素材に使わなければ、相手は(1)の効果に《灰流うらら》をチェーンすることはできません。《しゃりの軍貫》を素材にしない、という選択肢は頭の片隅に入れておくと、役に立つ日が来るかもしれません。(R3/9/25事務局確認済み)
《空母軍貫-しらうお型特務艦》は両方の効果が「デッキからカードを手札に加える」効果です。潔くあきらめましょう。
■寿司職人集団との邂逅
メインデッキに入る「軍貫」カードは「BURST OF DESTINY」時点で6種類しかないため、すべてのカードを3枚ずつ投入したとしても、最低でもあと22枚のカードを投入する必要があります。
これは、現時点では【軍貫】をサポートするカードをデッキに半数以上入れるか、あるいは【軍貫】の邪魔にならないテーマと混合してデッキを組むことが要求されることを表します。
通常モンスターと関連する直近のテーマということで、まず《人形の幸福》は試してみましたが、手札ににじり寄る「ドール・モンスター」に味がしなかったので棄却。さすがに10枚近い通常モンスター投入は少々辛い。
回した結果、私は【軍貫】に、「相手のライフを刈り取り切る手段」が足りていないように感じられました。《うに型二番艦》の直接攻撃効果を、【ビートバーン】風に捉えたのです。
(妨害構えに関しては、効果破壊耐性を盾に突っ込んだ《しらうお型特務艦》や、直接攻撃を盾に突っ込んだ《うに型二番艦》を《天霆號アーゼウス》に変換することである程度はフォローが効く。ただし、先行1ターン目に関してはまた別のフォローが必要)
この【ビートバーン】の観点から使えそうなカードを探してみたところ、一つのカードに辿り着きました。
《憑依覚醒-大稲荷火》。
否、これはもはや《大いなりの軍貫》と言うべきでしょう。
このカードを特殊召喚するには、魔法使い族モンスターと組み合わせる必要があります。
《魔界発現世行きデスガイド》1枚からでも特殊召喚は可能ですが、《デスガイド》はレベル3を軸にするカードであり直接のシナジーは薄め。
欲しいのは、魔法使い族モンスター、かつレベル4。そして炎属性を展開できるカード。
真っ先に思い付いたのは、定番の《召喚僧サモンプリースト》、否、サーモンプリースト。
《しらうお》《いくら》《しゃり》を選んでリクルートでき、自身が寿司ネタになることもできる優秀な握り手と言えるでしょう。《軍貫処-「海せん」》や《予想GUY》など、複数枚積むが2枚目以降が不要になりがちな魔法カードを有効活用できそうなのも高得点。
もう一つの握り手は、比較的近い時期に世に出ていました。
それこそが、《絶火の大賢者ゾロア》。
ゾロアが属するカテゴリー【マギストス】は、手札からレベル4の魔法使い族モンスターを特殊召喚することで展開をサポートする《三賢者の書》を擁します。このカードがあれば、召喚権を使うことなくパーツとなるモンスターを手札から展開できる――《しゃりの軍貫》や《しらうおの軍貫》に召喚権を優先して回すことができます。これは言わば業務マニュアルによる作業の効率化……!
さらに、【マギストス】は先攻で妨害のためのモンスターを立てやすいテーマでもあり、【軍貫】単独では不足していた制圧力と、いざという時には妨害のために構えていた《法典の守護者アイワス》を「軍貫」Xモンスターに装備させ打点を底上げすることも叶えてくれる、よい提携相手のように思えました。
■軍貫の導く先
また、【軍貫】では《しゃりの軍貫》をデッキから特殊召喚できる《予想GUY》をサポートとして利用できます。逆に捉えれば、《予想GUY》で【マギストス】側の展開にある程度寄与できれば、「サポートを共有できる」というシナジーが形成されると言えるでしょう。
《予想GUY》でレベル4の魔法使い族通常モンスターをリクルートして、《聖魔の乙女アルテミス》に変換すると、手札の「マギストス」モンスターから展開を継続できます。手札に「マギストス」がない場合は、《結晶の魔女サンドリヨン》のX召喚という選択肢もあります。これで、《予想GUY》は【軍貫】と【マギストス】をつなぐカードになれそうです。
炎属性はレベル4の通常モンスターが存在せず、今後の調整次第でカードが入れ替わる可能性も考えると、メインデッキの「マギストス」モンスターと属性が同じ光・水・地は避けたい。また、メインデッキには闇属性の魔法使い族として《召喚僧サモンプリースト》も投入されているため、闇属性も避けられるに越したことはない――つまり、必要なのは風属性・レベル4・魔法使い族の通常モンスター。
1万枚を超える遊戯王OCGのカードの中で、この条件を満たせるカードはただ1枚。
《霞の谷の見張り番》です。
※最終的にはクロウリーやエンディミオンを採用しなかったため、水属性・地属性でも問題はなくなりました。《ヂェミナイ・エルフ》か《ドリアード》、《アクア・マドール》でもよいでしょう。
比較的新しいペンデュラム・通常モンスターの2枚は、墓地に送られないためにゾロアとのかみ合わせが悪く、採用を見送っています。
■【マギスト寿司】 気鋭開店
そんなこんなで組まれた初期版がこちらです。
※サイドデッキが画像に映っていますが、このカジュアルデッキでマッチ戦のリモート大会に出場することとなったため、急遽ありあわせのカードを引っ張ってきて作ったものです。《灰流うらら》《増殖するG》はまだしも、そのほかのカードの投入理由は「ちょうど霊使いストラクがあったから」ぐらいのものですので、以下の解説で触れられることはありません。
「BURST OF DESTINY」の新規カードの情報が出たあたりから調整を始めたものだったと思います。
【マギストス】側の動きで相手を消耗させつつ、《うに》《しゃり》が揃ったら押し込んで相手LPを焼き切る、というのが想定プラン。
そのため、(墓地にカードが揃っているとして)手元に欲しいカードは《うに》《しゃり》《ゾロア》+炎属性をもう1枚。
《ゾロア》で釣ってきた魔法使い族と炎属性モンスターで《憑依覚醒-大稲荷火》を出し、《ゾロア》と《大稲荷火》で《ユニオン・キャリアー》をリンク召喚。《大稲荷火》の効果で《火霊術-紅》をサーチ、《ユニオン・キャリアー》でデッキから余った炎属性を《うに型二番艦》につけて直接攻撃……で、3900+2900=6800ダメージ。《大稲荷火》の特殊召喚時のバーンダメージもあるので、相手の妨害がなければ瞬時に相手を焼き切ることが可能です。(手札4枚なきゃ殺せないのかよ、というツッコミは密に、密に)
(採用カード雑記)
EXデッキの「軍貫」
この当時は《いくら》のポテンシャルをあまり信じておらず、また《しゃり》も必要なタイミングで場にあればいいという考えをしていたため、《いくら》系の枚数を減らしています。
《きまぐれ軍貫握り》
《しらうお型特務艦》の効果でサーチでき、発動効果も墓地効果も悠長に使っている暇はないので1枚投入としました。
《ヴリトラ・マギストス》
手札にどうしても《結晶の大賢者サンドリヨン》しかなかった場合のプランとして、《サンドリヨン》通常召喚→《ヴリトラ》サーチ→《アルテミス》に変換→《ヴリトラ》で《サンドリヨン》蘇生、の流れで強引に《アルテミス》のサーチ効果を起動するのが目的で1枚投入されています。
また、《絶火の魔神ゾロア》を採用したため、相手の行動を妨害するためにも墓地に1枚あると安心です。
《迷い風》
カード枚数カウントを水増しできる妨害手段として、また打点に不安を抱える「軍貫」Xモンスターたちの補助として使えそうなカードとしてチョイス。
■軍貫処に響く残叫
まあ大会に出ても結果は散々だった(【鉄獣戦線】分、【リゾネーター】負、【クリストロン】分)んですが、相手側がそれなりの印象を受けてくれたのでまあヨシ!
……とは言え、少々改良の余地はあると感じたので、仲間内でディスカッションを開始。
●《灰流うらら》に弱すぎ問題
展開パーツのみならず、正規のネタを素材にした際の「軍貫」Xモンスターの(1)効果も《しゃりの軍貫》素材の1ドローに巻き込まれて消されるのが大問題。特に《いくら》は正規のネタが乗っていないと本当に味がしない。
最低限の対策として、《墓穴の指名者》をメインデッキで採用することにしました。また、本気でケアする必要がある場合は《しゃりの軍貫》抜きでのX召喚を行うことを意識します。
●サーチ手段の不足、要求カードの多さ
このデッキの想定フィニッシュムーブは《憑依覚醒-大稲荷火》のバーン+《超弩級軍貫-うに型二番艦》の直接攻撃+《火霊術-紅》で《うに》を放り投げての爆破。……なんですが、そのために必要なカードが少々多い。もともと後攻1ターンキルを狙うようなデッキでもないため、そこまで気にしていなかったのですが、使用枚数が多いのがちょっと高いハードルになっていました。
カードを集める手段がこのデッキには欠けており、また軍貫サポートの《軍貫処-「海せん」》はサーチ手段としては悠長すぎます。さらに言えば、手札を一気に吐き出して相手ライフを取りに行くこのデッキでは、《海せん》の支払い要求→おかわりの動きがロールプレイの域を出ません。
《海せん》に代わるサーチ手段として、【マギストス】にも【軍貫】にもアクセスできる《黒き森のウィッチ》を採用することとしました。《しゃりの軍貫》をサーチして《うにの軍貫》とともに突撃するのはかなり脱法的なムーブ。また、盤面で消費されるカード枚数の問題については、墓地に送られた際に特殊召喚ができる往年の名カード、《Emトリック・クラウン》なら需要を満たせそうです。
特に重かった上記2点を踏まえて、デッキを組み替えました。
※例によってサイドデッキは無視してください
軍貫処、閉港のお知らせ。
新規に採用したEXデッキのカードは2枚。
《No.60 刻不知のデュガレス》
主に「モンスター1体の攻撃力を倍にする」効果目当てでの採用です。これで実質的に《火霊術-紅》を兼ねることができ、もし《いくら型一番艦》と並んだ場合、「攻撃力4600の2回攻撃+相手に戦闘ダメージを通すとカード1枚破壊」のオバケ軍貫になります。
また、《うに型二番艦》と組み合わせる場合は《憑依覚醒-大稲荷火》を墓地に送らずとも似たような効果を発揮できるため、《大稲荷火》をX素材にして、しゃり抜きのX召喚を行うことができるようになります。ネタだけの軍艦巻きとはいったい……うごごごご!
また、「ときしらず」と言えば「時鮭」、夏に水揚げされる鮭のことを指し、実際に寿司のネタとして握られることもあります。メインデッキから減らされた《召喚僧サーモンプリースト》に代わり、EXデッキの寿司ネタ感を高める意味でも大きな働きをしています。今後の期待も込めて星4とさせていただきます!
●《照耀の光霊使いライナ》
リンク霊使いシリーズから、光属性担当を採用。《Emトリック・クラウン》のサーチ、《Emトリック・クラウン》を混ぜたカードの処理のどちらもこなせ、「《予想GUY》+《黒き森のウィッチ》」のような手札の時に《黒き森のウィッチ》を強引ながら墓地に送る手段としても使えるライナをホールスタッフとして雇用しました。
汎用のリンク2モンスターには攻撃力を大きく上げられるカードが《ユニオン・キャリアー》程度で、これは最終局面で使う可能性があるために温存したいことから、受け身ではあるものの《Emトリック・クラウン》のサーチに繋がる可能性があるライナを選択した、という経緯があります。
この枠は最後まで《灼熱の火霊使いヒータ》と悩んだし、これからの新規カード次第でまた悩むことになるのだと思います。
このバージョンにしてからはあまり遊べていないので、今後のカードも見ながらアップデートを続けていきたいところです。
《切り裂かれし闇》で強化された《いくら型一番艦》とか、見てみたいですよね……。
■最後に
「BURST OF DESTINY」時点で、《きまぐれ軍貫握り》にお品書きとして書かれたネタのうち、入港していないのは「なっとう」「貝柱」の2種類となりました。
親愛なるKONAMI様へ。
これらのカードのいち早い入港、スタッフ一同、首を長くしてお待ちしております。