せつなとの出会い
せつなとの時間
せつなの声
せつなの仕草
せつなの笑顔
せつなの……涙
せつな、私あなたと戦うよ
だって、友達だから!
(フレッシュプリキュア!22話での次回予告から引用)
・忍者と極道、それはまるで……
『忍者と極道』。2020年1月20日と偶然にもある少女の誕生日からwebアプリ「コミックDAYS」にて連載開始した漫画がある。
日本の裏社会を暴力的に牛耳り弱者を命ごと踏み躙り虐げる「極道」、そんな魔の手を闇に紛れて鏖殺し無辜の市民を裏から守る「忍者」。彼らは江戸時代から互いに何方が生存るか死滅るかという仁義なき殺し合いを繰り広げていた……
そして現代日本にてふたりは邂逅する。
表向きは一流玩具メーカー企業のエリート会社員だが『破壊の八極道』の頂点に立つ極道界の悪のカリスマ、輝村極道
表向きは地味な高校生だが実は『帝都八忍』が一人にて闇の仕置人として極道を滅する忍者、多仲忍者
極道が落とし地面に激突しそうになった私用スマホを間一髪で救う忍者。なぜならそれには『フラッシュ☆プリンセス!』の敵幹部、ヒース様のスマホケースがついていたからだった……お互い根っからのプリオタであり共通する趣味から意気投合するふたり。しかし先程言ったように彼らは極道と忍者、決して相容れない殺し合う関係……そうとも知らず(双方共にあからさまな名前なのに!?)彼らは何度も邂逅しその度に己の悩みを打ち明け絆を深め合う。いつか必ず来るであろう「終わり」が待っていることも知らずに……
そんなこんなで現在連載中の『忍者と極道』、自分は連載当初Twitterで上記の物語導入シーンにてイケメン達が丸の内のハイソなオフィス街でプリ○○○の話題で盛り上がるという奇妙なシーンが流れてきたのを目にした程度の見解だった。そして最近になってこの漫画を再び見かけるようになった。愛多間七総理大臣とレジー・ナッシュ大統領というあからさまにドキドキなアレを意識したようなキャラクターが出てきたのが話題になったのだ(ちなみに総理大臣のアクティブさに振り回される官房長官が聖川という二段攻撃ぶり)
他にも忍者側の頭領である神賽惨蔵の変身能力がなんでもできる なんでもなれるな輝く未来を抱きしめそうだったり、暴走族神である殺島飛露鬼の亡き娘の形見の品であるおもちゃのブレスレットがどう見てもシリーズ恒例のアクセサリーメーカーで作ったやつだったりとさらなるネタがポンポン出てくる。もしやと調べたらなるほど納得。なんの脈絡もなく会話やモブキャラに突如プリキュアが入ってくることで有名な『烈!!!伊達先パイ』やヒロインがどう見ても水○月○れんな『ジュウドウズ』の作者である近藤信輔氏だったからである。
かくいう自分もこの一件で興味が湧き無料公開している1話を読んだ瞬間に“理解”してしまった。昔負ったトラウマで笑うことができない少年、昔負った傷で感情を失った紳士、彼らが巡り合ってしまったのだ……お互いの大切な友として、殺さねばならない相手として。その始まりのシーンであったと。
露骨なまでのプリキュアネタだけではない。独特なルビ、極道の大軍を一瞬にて単騎で惨殺する忍者のスタイリッシュぶり、ヒグマとネズミに例える程の実力差ある忍者に対して立ち向かう極道のジャイアントキリングぶり、景気良くポンポン吹っ飛ぶ生首(別に首を狙ってない爆発攻撃とかでもなぜか生首が飛ぶ)(首だけになってもなぜかある程度しゃべれたりする)となかなかにパネェ漫画であると同時に人の心を繊細緻密に描き、だからこそ人の生き様が美しく輝き、そしてそんな心動かすぐらいかっこいい奴らが笑いながら死ぬという読者の感情をガンガン揺さぶってくる。こいつぁとんでもない漫画だ。プリキュア界隈で興味を持ったみんなにも(多少のグロテスク描写に耐性があれば)勧めたいくらいだ。
話はこれくらいにして本題へと移ろう。このようにプリキュアネタをコンスタントに入れてくる『忍者と極道』。しかし読者の感想を見ると「元ネタのプリキュアが分からないから完全に楽しめなくて悔しい」という声がチラホラ見かけた。言われてみれば読者全員がプリキュア見てるわけないもんな……
それならプリキュア見ればいいじゃんと思う“プリオタ”はいるかもしれないが、そもそもプリキュアシリーズは17年も続く長期コンテンツというのを忘れてはならない。愛多総理がたまげたように2020年現在64人いるプリキュア総数は下手な政党より多いし、青と紫だけで内閣が発足してしまう数だし、17年というのは盤石にも程がある長期政権ばりの年数である(さらに続いてるスーパー戦隊シリーズとかもはや国王が統治する専制政治レベルやん)
こんな長大なシリーズをおいそれと勧めるなんて重苦だろうし(いわばプリハラである)し、なら1作品からなら…と考えるが「そもそも4クールあるアニメ見るのが大変」という声も。プリキュア含めたニチアサ(テレビ朝日系列で日曜朝から放送してる児童向け作品の並びのこと)作品が一年ものが基本なので常時見てる人は慣れてるものかもしれないが、12話程度の1クールものを基本的に見てる人には50話くらいある作品というのはハードルが高かったりするのだ……そこは知っておかねばならないのだ……
ならば自分がプリキュア見てない人にもどんな作品なのか説明しようと思い今回執筆した。まず最初に描くのは……作中でも何度も語られる「フラッシュ☆プリンセス!」(以降Fプリ)の元ネタになっている「フレッシュプリキュア!」から(流石にフレッシュくらいみんな見てるやろと思う人もいるだろうがフレプリはもう11年前の作品だ。当時見てた子はそれこそ忍者くんみたいに高校生くらいの年頃なんだぞ現実を見ろ)。これが『忍者と極道』に散りばめられてるプリキュアネタへの理解が深まってくれれば幸いだし、あわよくばこれを機に興味を持ってプリキュア自体を見てくれればという期待もあったりする……それでは、みんなで幸せゲットだよ!
・フレッシュプリキュア!とは
『フレッシュプリキュア!』は2009年から全50話かけて放送したプリキュアシリーズ6作目の作品である。それまでは『ふたりはプリキュア〜MAX HEART』や『Yes!プリキュア5〜gogo』のように場合によっては2年ものとして放送していたパターンもあったのだが、この作品以降はずっと1年完結もので続けているのだ(上記に挟まれてる『ふたりはプリキュアSplash☆Star』も一年完結したとはいえいい作品だよ)
フレッシュと銘打ってるだけあって過去作品とは大々的に違うポイントが多く、まずなんといっても全体的にキャラクターの頭身が高めに設定されていたり変身後は胸のラインが強調されていたりキュアパイン以外はハイヒールを履いてたりと「年上のお姉さんっぽさ」がよく出ている。これはプリキュアのメイン視聴ターゲット層の未就学女児が卒園・入学と同時に見なくなってしまう現象に対抗するため対象年齢を拡大したという理由があったりする。今になって考えるとその方針は結果的に成功しプリキュアシリーズの描写の幅広さを開拓したとも言えよう。
プリキュアを構成するメンバーは1話から変身したキュアピーチこと桃園ラブ、さっき言ったようにラブちゃんの幼馴染の一人であるキュアベリーこと蒼乃美希、そしてもう一人の幼馴染のキュアパインこと山吹祈里(やまぶき いのり)。前半はこの幼馴染トリオがプリキュアとして活躍するのだ。見ての通り「キュア+果物」な名前になっており、これをモチーフにしたFプリでもプリストロベリー・プリグレープ・プリバナナとしっかりオマージュとして取り入れてる。
そして彼女たちが対峙する敵組織は管理国家ラビリンス。パラレルワールドという別次元の世界が多数存在する設定である今作において自分達の世界だけで飽き足らず他の世界も管理・統制せんと目論むディストピア系SFを意識した敵である。首魁である総統メビウスが管理するこの国家は皆が“幸せ”に暮らす。国民はすべての人生がメビウス様の元で管理されており、就職、結婚、そして寿命までも彼の意のままである……
彼らラビリンスが地球へと侵略し召喚した敵怪人「ナケワメーケ」で人々を苦しめることによって“不幸”が溜まり、それが一定値を迎えると無限のメモリー・インフィニティが起動される。それを獲得して無限の力を用いて全パラレルワールドを支配せんとするのが彼らの目的だ
そんなラビリンスがFUKOを収集するために地球へと派遣した幹部がガタイのいいイケメンなウエスター、細身でロンゲなイケメンのサウラー、そして紅一点の銀髪の美少女であるイースである。これまでの過去のプリキュアの敵はなにかと人外ばかりの設定だったが、今回は別次元とはいえ同じ人間と戦うという所もシリーズにおける新しい切り口なのだ
またプリキュアシリーズみたいな女児向けアニメといえばかわいいマスコットキャラ。フレッシュプリキュアにはシフォンとタルトがいる。
・もし困ったことがあったらクローバータウンストリートへいらっしゃい
だいたいのメインキャラの紹介が終わったのでお次は見所を。まずはそれぞれプリキュア3人の魅力を詳しく紹介したい。ということでキュアピーチ/桃園ラブから。彼女といえばなんといっても変身するとめちゃくちゃかっこいい。
そしてそのかっこよさに相応しい内面も備えているがそこは後述する。お次はキュアベリー/蒼乃美希。
そして3人目はブッキー、キュアパイン/山吹祈里だ。
そんな彼女達が暮らし本作のメイン舞台となるのがクローバータウンストリート。「フレッシュプリキュア!」は3人それぞれ別の学校に通ってる設定も相まって他のプリキュア作品以上に家族絡みや町内周りから始まる話が多く、そこにいる住民たちとのストーリーも多く存在する
他にもパン屋の兄ちゃん、駄菓子屋のおばあちゃん、蕎麦屋の配達の兄ちゃんなどなど語りたい住民はいるが長くなりすぎるので……
そして何といってもメンバーの家族描写がとても多く描かれてるのが最大の特徴である。時には父を通じて過去のトラウマを克服したり、時には母を通じて愛の強さを知り、時には父の仕事に対する熱意を知り、そして時には亡き祖父の託した想いを受け止め……その中でも特に語られるのがラブの母親である桃園あゆみさんであろう
……さて、前述を置いてたラブちゃんの真髄とも言える話をする為には彼女のことを話さねばならない。イース様のことを、東せつなのことを。4人目のプリキュアであるキュアパッションのことを。
・せつなとラブ 出逢いは奇跡 想い結んで
『フレッシュプリキュア!』というのは今までのプリキュアでは無かった斬新な展開を取り入れた。いわば物語中盤に加入する追加戦士プリキュア、そして敵から味方へ寝返ってプリキュアになることである(満と薫はプリキュアだろうが〜!と言いたくなる人もいるだろうが今回は抑えてくれ)
このようにあからさまな告知をしたようにキュアパッションに変身するのは東せつなである。勿論それまでの間にはふたりの物語が存在した…イースとキュアピーチ、せつなとラブの友情と救済の物語が。
この後にイースはダンス会場を襲撃、ナケワメーケで人々を苦しめ不幸を採取する中でラブちゃんはミユキさんを助けようとマイクスタンドで怪人に立ち向かっていく!それを見てイースは昼間の彼女と気付く。その勇気を認められたのかピックルンが一人「ピルン」に選ばれキュアピーチに変身する。無事にナケワメーケを撃破しふたりは相まみえる、片方は正体を知らず、もう片方は知った状態で。イースは彼女に「貴様とは長い付き合いになりそうだ」と因縁のライバルめいて宣告する。まさか本当に長い付き合いになるとはね、いろんな意味で
その後はキュアベリー、キュアパインと幼馴染揃って覚醒し順調に力をつけるプリキュア達。そのせいで不幸の溜まりが遅いと総統メビウスに指摘されイースはある作戦を実行する。友達を装ったスパイとしてラブに近付いて変身アイテムを盗むという大胆な作戦を。それが7話「せつなとラブ 友情のクローバー!」だ
せつなとラブ、彼女たちの物語は第二章へと入る。それは15話「せつなとラブ 相手を思いやる心!」で。いつも以上にウキウキしてるラブちゃん。どうしたと聞くとなんとせつなとデートするんだとか(デートって表現がもうなんかすごい)
イースもイースで東せつなに変装したらサウラーに「そのペンダント、ずいぶんとお気に入りじゃないか」とからかわれたりしちゃったりしつつもラブと合流……したらなんと美希たんもブッキーもいるじゃないか!これじゃあ変身アイテムのリンクルンが盗めない!さらには「ミユキさんと縁を切れ」と進言したことを二人に指摘され……(自分の)友達の友達は(自分の)友達とは限らないとはよく言うがまさにこれ。さらにサウラーのナケワメーケによる本音を引き出す攻撃で「占いでラブを悲しませるなんて許せない」と二人からキツい一撃をかまされ……
そしてついに運命の日を迎える。それこそが22話「せつなとラブ あなたがイースなの!?」
「やめろ……やめろ!」
「メビウス様の御命令だから………メビウス様のためなら他のものがどうなろうと構わないっ!!!」
「私…すっごく怒ってるんだからね!みんなを怖がらせて、コンサートを台無しにして……でも、あなたが泣いてるから…!」
「泣く?わたしはどんな痛みにでも耐えられる!泣いたりなどしない!」
「泣いてるじゃない……あれ(ナキサケーベ)はあなた自身でしょ?あなたの心が泣き叫んでるんじゃないの?本当は命が尽きてもいいなんて思ってないんだよね!?」
だいぶ長々しいダイジェストになってしまってすまない、そしてそんな盛り上げたのに最後の最後でぼかし気味になったのもすまない。こればかりは実際に見てほしいから……“伝説”を目の当たりにしてほしいから……
そんな彼女たちの活躍を見るならdアニメストアがオススメ!月額440円でフレッシュ以外のも見放題!レンタルより安く済むぞ!
・おわりに 〜向う先は破滅か、それとも…〜
以上がだいたいの『フレッシュプリキュア!』の紹介である。まさかまたもこんな一風変わった機会を得れるとは人生とはよく分かんないものである。
書いてる内に何度か忘れそうになったが、これは「忍者と極道」でプリキュアネタが分からなくて困ってる方へ向けた記事だ。そして書きながら改めてフレッシュプリキュアを振り返ると本当にすごい物語だなと再認識するし、同時に『忍者と極道』にて元ネタになっている「フラッシュ☆プリンセス!」にて綴られた話のように物語が進むが、明らかに決定的に違うルートがあると分かる。プリキュアではイース様はキュアパッションになってラブちゃん達の仲間になるが、ヒース様はあちらの主人公である撫子アブちゃん達とは終盤まで敵対、そして“己の道を最期まで貫く”という……
この先の彼らにどんな“終わり”が待っているのだろうか、既に極道や一般市民のおびただしい数の死者を出した血に染まった道筋……それもまるでFプリの脚本を執筆した幡随院 孤屠の描く話の如く展開される不気味さ……我々はこれからも目を離せないだろう……(画像は『忍者と極道』56話「三ツ星カルテット」より。)
というわけで今回はここまで。ひょっとしたら次回があるかもしれないから(具体的には私を誰だと思ってるの!を書きたい)その時はその時でお楽しみに!
(追記)書きました
(さらに追記)
なんと!「このマンガがすごい!2021」にて『忍者と極道』がオトコ編にて8位を受賞したのだ!自分は上記の通り割と最近になって読み始めた者だが、この功績には本当にうれしい。これからも応援しています。おめでとうございます!!