【映画】Cloud クラウド
「これがずっと観たかった…泣」
黒沢清監督の最新作にして、今年公開された3本の中では個人的大本命だったこの作品ですが、自分の中の黒沢映画のベスト3に入る面白さで最高でした。やっほーぅい!
転売ヤーの吉井(菅田将暉)が、本業の職場の上司(荒川良々)や仕事で付き合いのある先輩(窪田正孝)に無自覚的にヘイトを誘うムーブをかまし、さらには転売の仕事を通じて色々な人から憎しみを買ってしまい、最終的にはそのラーテルヘイト軍団に命を狙われてしまい…というストーリー。恋人の女性(古川琴音)やラーテルが転売を本業にした際雇ったバイト君(奥平大兼)など、吉井に好意的であるようには見えるけど、行動の節々から実際には何を考えているのか分からないキャラクターで、コイツは(吉井にとって)いいヤツなのか悪いヤツなのかと、最後までワクワクさせてくれます。
前半はサスペンス、後半はアクションという展開も良くて、キヨシ初心者でも見やすいエンタメになってます。リメイク版「蛇の道」では、サスペンス要素がやや足りなく、最後のアクションシーンもやや物足りなさを感じていたので、ストーリーは全然違いますがその2つをよりパワーアップさせたような作品にクラウドがなっていたので大満足です。役者陣も素晴らしく、菅田君や窪田君、奥平君なども黒沢映画的には新鮮で良かったです。
最後の奥平君を人質に取った窪田君と菅田君の対決シーンなんか展開がもう最高過ぎて、個人的には拍手喝采でした笑 ネタバレになりますが、奥平君に銃を突きつけながら、やや中2病アニメっぽい感じに窪田君がかっこつけて台詞を言い、菅田君が手に持つ銃を撃つのかそれとも投げ捨てるのかと固唾を飲んで見てたら、まさかの奥平君が窪田君の銃を偶発的に取り上げちゃうという斬新な流れで、銃を取り上げられた窪田君はあっさり菅田君にぶっ殺されてしまいました笑
歴代作品の中でも「復讐 運命の訪問者」がめちゃくちゃ好きなんですがいかんせん拳銃の音がしょぼく、この感じでもっとお金をかけたバージョンで見たいとずーっと思ってたので、後半のガンアクションシーンはもうとにもかくにも最高でした!何より、復讐でのしょぼかった銃声音もぶっとい迫力あるものになっており、それだけで言うことなしでした(北野武がBROTHERを撮った時、リアルな銃声音を使えた的な話を後々知り、その銃声音と差し替えてほしいと死ぬほど思った記憶がある笑)。
本格的な銃撃戦が始まる前の荒川良々の「こういうのやりたかったんだよ」的な台詞が、黒沢監督の心の声のように勝手に聞こえてました笑
後は個人的にちょっと感動したのがパンフの蓮實重彦さんの文。菅田君が亡き青山真治監督の「共喰い」で主演し、役者として転機を得たというのは有名な話で、その青山監督を通じて黒沢監督と10年ぐらい前に出会ったというのもクラウドの上映決定後にXとかに3人の写真が出回っていたので知っていました。そんな2人の監督に共通しているのが、蓮實さんの教え子であるということ。蓮實さんの多くの教え子の中でもこの2人がツートップで(3人で本を出してるぐらい)、蓮實さんとより感覚的に近いのが青山監督だったという印象です。まぁ、そんな感じに3人の関係性については知っていたのですが、青山監督のお別れ会で蓮實さんと菅田君が出会って言葉を交わしていたというのはパンフで初めて知りました。蓮實さんと青山監督は師弟関係だけでなく、友人のような同志のような親子のような色んな側面を持った関係性みたいなのを個人的に感じていて(対談本やそれぞれの本、寄稿文から)、亡くなったときの悲しさは言葉にできないものがあったと思います。蛇足ですが、蓮實さんが「ジョン・フォード論」や「ショットとは何か」シリーズを急ピッチで仕上げているのも、青山監督に読ませられなかっという悔恨から来ているようにも感じます(百パー個人の意見です)。
話がずれまくりましたが、何が言いたかったかというと、そんな蓮實さん、黒沢監督、青山監督、菅田君の関係性を知った上でこの映画が上映され、パンフの中で「青山真治よ、心穏やかに、眠れ」と蓮實さんに書かせるぐらいの作品を黒沢監督と菅田君が作ったというのが、何か映画的でいいなと思ったというハナシです。
おまけ
映画観ていい気分になってしまい、昼から飲んでしまいました笑
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