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宇宙人のスイートルーム:見えない檻の中の幸福論

他人の気持ちは理解することができないということを心得ていなければ無用に苦しむ、という孔子の言葉がある。

人間の気持ちを理解できないのだから、もちろん他の動物の気持ちも理解することはできないだろう。

例えば、どんなに可愛がっているハムスターでも、ケージからの脱走を図るものだ。ハムスターを飼っている人間はそれを見てショックを受けるかもしれないが、はたしてハムスターは人間に飼われることを嫌って脱走しようとしているのか、それともただ習性に従っているだけなのか。いずれにせよ、脱走しようとするハムスターをケージに閉じ込めているという点ではどちらも変わらない。

「でもハムスターは私に懐いているのだから脱走するのはおかしい」と言うのであれば、それは単なる人間のエゴだ。人間はハムスターを飼う自由があるが、ハムスターに飼われない自由はない。ハムスターは人間に飼われないと処分される。

人間が宇宙人に飼われたとして…

全く言語の通じない宇宙人に人間が飼われているとしたらどうだろう。その宇宙人は人間の約30倍のサイズで、人間よりも遥かに高度に発達した文明を持っている。

宇宙人は、ペットの人間が極力ストレスなく住めるように、ケージの中を高級ホテルのスイートルームのようなデザインにした。宇宙人は人間に向かってしきりに話しかけるが、人間はそれを理解することはできない。宇宙人はたまに人間をケージから出して遊ぶことがあるが、何か粗相をして宇宙人の機嫌を損ねると、ケージに放り込まれ昼ごはんを抜きにされることもある。宇宙人は人間を手のひらの上に乗せて遊ぶこともあるが、それは非常に屈辱的だ。しかし人間は嫌がる素振りなどみせることはできない。もしそれがバレると晩御飯も抜きにされるからだ。

人間はケージから逃げ出すことを決意する。しかし圧倒的な力を前に太刀打ちできない。また、仮に逃げ切ったとしても外に自分が安全に住める場所があるのかどうかも分からない。その結果、人間は従順なペットを死ぬまで演じ続けるしかなかった。

ケージの中で生まれた人間…

宇宙人に飼われている人間から生まれた赤ちゃんがいた。赤ちゃんは物心つく前に親から引き離され、別の宇宙人のもとで飼われることになった。赤ちゃんはケージの外の世界を一度も見たことがないので、外の世界に憧れを持つことがない。そうして成長した人間は何の疑問もなく宇宙人に飼われる。はたしてこの結末は幸せと言えるのだろうか。​​​​​​​​​​​​​​​​

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