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実家はいつも日曜日のにおい

 誰も私の実家のにおいを嗅いだことがある人はいないと思う。でも伝えたい。私の実家は、日曜日のにおいがする。それ以外の例えようがないと言えるほど、”日曜日”という表現がしっくりくる。

 昨日実家に行った。外界との時間の進み方が違うのだろうか?、世間から取り残されたのだろうか?、やっぱり日曜日のにおいがした。

 日曜日とは、どんなにおいか。それは多分、色々な匂いが混ざったにおいと言えると思う。夕食に向けてコトコトと煮込まれる何やら美味しそうな香りに、その家に居る人間のにおい、飼っているペットのにおい、家に染みついたにおい。全部混ざり合って作り出される日曜日のにおいは、不思議と安心する。

 これを書きながら思い出したが、振り返れば自分が鍵っ子だったから日曜日と思うのかもしれない。小学生の時を振り返ると、確かに自分は日曜日じゃない実家のにおいを知っていた。

 自分の親は、いわゆる共働きだった。だから小学校から下校する時は、ランドセルから取り出した鍵で玄関のドアを開ける。そして、薄暗い玄関に迎えられる毎日だった。母が帰ってくるのは、18時半頃。いま自分が社会人になってみると、18時半に家に着くには、相当頑張らないときついと思う。むしろかなり急いで間に合う時間だと思うが、当時の自分にとって母の帰宅を待つまでの時間は、とてつもなく長く感じた。

 友達と遊ぶ日や習い事がある日は、母が先に帰っていることもあったが、習い事もなく遊ぶ予定もない日は、家族がいないことでいつもより広く感じる部屋で1人、母の帰りを待っていた。宿題をやって、テレビを見る。それでも時間が余ると、外の風の音や時計の音が大きく聞こえたものだ。

 立て付けが悪いのか、リビングと廊下を繋ぐドアが勝手に開くことも、しょっちゅうあった。誰もいない家でドアがひとりでに開くのは、結構怖い。今でこそ笑えるが、「ドアが勝手に開いた!」と母の職場に電話したこともあった。正体不明のドアを開けた輩に、「チクってるからビビれ!もうやるな!」という気持ちで母に電話していた気がする。当時は真剣だった。母に申し訳ないなと今なら思う笑(ちなみに当時、留守番中に便秘と格闘していた時は、「うんちが出ない〜。お腹苦しいよーーーー!!!」と母の携帯に何回も留守電を入れたこともある笑)

 一人で家にいることが不満だったわけでもないけれど、ビビりな性格だったから、人が家にいる日は自然と安心した。だから、人が居る時の家のにおいを勝手に、日曜日のにおいと命名していたのかもしれない。

 今一人暮らしをしている私が実家に帰る時は、必ず誰かしら家に居るときだ。玄関を開けると、何かしらテレビか人の話し声は聞こえるし、玄関にもリビングの明かりが漏れている。そして、帰る度に思う。人がいる家は、やっぱり日曜日の家のにおいがする。

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