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あなたは輸出者です。ミッションを遂行せよ!
えー、突然ですが。
あなたは輸出者ですか?
ほとんどの方は、自分には輸出に携わっていないと思い込みがちです。
ところが、以下のいずれかに当てはまる方は輸出者として重大なミッションを遂行しなければなりません。
①海外にいる人とメールでカタログや図面データをやりとりしている
②海外に郵便物・宅急便を送ったことがある(社内便 含む)
③スーツケースを持って海外に行くことがある
④製品や部品を輸出している
⑤海外で技術指導をすることがある
※日本国内企業の海外支店、子会社も海外です。
どうでしょう?
輸出者だったあなたへ、もれなく国より大切なミッションが与えられます。
ミッションとはずばり……「わが国又は国際社会の平和及び安全を維持すること」です。
ミッションでかっっ( ゚Д゚)
特殊能力も権力も持たない凡人が、どのように平和を守るか。
それは武器などに転用可能な貨物や技術が、大量破壊兵器等の開発を行っているような国やテロ組織に渡らないように輸出等*1を管理することです。
*1 輸出等・・・貨物および技術の提供
輸出というと、貨物のイメージがあるかもしれませんが技術の提供も輸出にあたります。
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このような取り組みを「安全保障貿易管理」と言い、日本は外国為替及び外国貿易法に基づいて実施しています。
輸出者自ら輸出しようとしている貨物や技術が安全を脅かすものか否かを規制に基づいて判断しなければなりません。
また、貨物についてはサンプル品であろうが、例外なく判断しなければなりません。
判断するのがミッション遂行の第一歩です。
ファイト('ω')ノ
どのようなものが規制されているか。身近なあれも!?
さて、以下に規制されているものの一例を紹介します。
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ど素人では想像のつかないような貨物や技術が、軍事用途になりうるのです。
上記のように、軍事用途のおそれが高いものは、法令でリスト化され規制されています。
これを「リスト規制」と呼びます。
リスト規制に該当しなくても用途や需要者により許可が必要となることを定めた「キャッチオール規制」というものもあります。
リスト規制で規制されるもののなかで、身近な例をあげるとドローンも規制されます。(※スペックによります)
このような規制に該当しているかどうかをチェックする作業を「該非判定」と呼びます。
該非判定の結果を示す書類として「非該当証明書(該非判定書)」を取り寄せたり、逆にユーザーから提出を求められる事もあるので、覚えておいてください。
ちなみに国によって、規制の対象となるものが変わることもあります。
例えば、北朝鮮には娯楽用品の輸出が禁止されており卓球台を輸出して
摘発されたケースもあります。
では、該非判定の結果、規制されているものがあったらどうするか?
規制されているものを輸出する場合は?違反したらどうなる?
規制されているものを輸出するには。
結論、申請して経済産業大臣の許可をもらう必要があります。
また、違反したらどうなるか?
意図的でなくても、法律に基づき、罰せられる場合があります。
例えば……
刑事罰として
最大で10年以下の懲役・法人の場合最大で10億円以下の罰金。(併科も)
さらに行政制裁として
3年以内の貨物の輸出・技術の提供の禁止。
などなど、罰則は盛りだくさん。
ちなみに法人の場合、社長が逮捕されるケースが多いです。
また、社名も公開されて大々的にバッシングを受けることになります。
個人であっても程度が違えど厳しい罰則が科せられますので注意しましょう。
転売ヤーが外為法違反で逮捕される日も近そう……(※個人の見解です)
まとめ)こんなときどうする?
ここまで読み進めて、なんとなく安全保障貿易を理解したみなさんへクイズミッションです。
こんなときどうする?
CASE1:海外向けに輸出した製品に不具合があったので、修理して送る
CASE2:タイ現地法人にノベルティを送る
CASE3:来日した外国のお客様と技術に関する意見交換を行った
CASE4:該非判定書が付いている部品を購入し、海外に送る
A:すべて該非判定を自分で行い、規制対象物があったら申請をする
正解できましたか?
なかなかとっつきにくいかもしれませんが、海外にものや技術を持って行ったり送ったりするときは事前に「該非判定」をする。
これだけは覚えておいてください。
迷ったときは、経済産業省に聞けばいいです。
余談ですが、↓の記事を見た警察からは、「日工の最新技術」が海外に流出しないか、心配してご連絡がありました。
日本には、先端技術を保有する企業が多数存在しています。
これらの技術は諸外国から狙われており、盗んだ技術を商売に使われたり軍事転用されるおそれがあります。
警察は、このような先端技術が他国に流出しないように日々取り締まりや啓発活動を行っているのです(ご苦労様です!)
このような取り組みを経済安全保障といいます。
「安全保障」、幅が広いですね🌟
▼世界一わかりやすい警察庁のサイト!産業スパイに注意!
さまざまな国にプラントを輸出している日工では輸出管理の専属組織が社員を対象に年1回「安全保障貿易社内講習会」を実施して平和を守っています。昨年度までに240名の社員が受講済みです。
きな臭い世の中、規制がどんどん厳しくなっています。
日工としては社内講習会を継続し、より多くの受講者を輩出できるよう取り組んでまいります。
読者のみなさんもフリマアプリ等で規制対象物を無許可で輸出しないように気をつけてくださいね。
(終)
ライター:SO
協力:輸出管理室