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奥日光のノイバラ、クガイソウ

今年は奥日光の戦場ヶ原に来ても暑い。しかも、標高は約1400mになるから、太陽光が届くまでの大気の量やオゾンが少ない分だけ紫外線も強くなる。
戦場ヶ原はやはり朝早く訪れて、爽やかな風にふかれて野鳥のさえずりを聞いていたい。時には朝霧が立ち込めた淡い景色に驚くこともある。7月上旬はノイバラ(野薔薇、野荊、バラ科のつる性低木)の優しい花の香りを楽しむこともできる。

ホオアカは低めの葉先で、さえずりを繰り返す。チョッ,ピィ,チュルチィ
ノイバラは可愛い花をたくさん咲かせる。
近くで見ると、5枚の花びらの先は少し凹み、中心にある薄黄色の雄しべと葯のオレンジが柔らかな印象だ。花期が進むと葯の色は茶色に変わる。

ノイバラの香りに惹かれるのは私だけではなく、ハチやハナカミキリ類も飛んで来る。それぞれ違う目的で寄ってくるが、なんとなく仲間のようで愛着が湧く。

よく見かけるニンフホソハナカミキリ。
ヒメハナカミキリ(姫花天牛)には似た種が多くて特定できない。
黄色い体に大きな複眼のハバチ(葉蜂)も飛んできた。

戦場ヶ原の木道に入って行くと、ミヤマイボタ(深山水蝋、モクセイ科の落葉低木)が咲き始めていた。この花の香りには、イチモンジチョウとフタスジチョウが緩やかに飛んで吸蜜を繰り返していた。どちらもタテハチョウ科のチョウだ。

イチモンジチョウは、黒地に一文字の帯模様で、翅の裏は明るい茶と黒、白の模様。
フタスジチョウは、モンシロチョウの大きさで、イチモンジチョウよりも小さい。パッ、パッと羽ばたいてちょっと滑空する飛び方が独特なのですぐに分かる。
ホザキシモツケ(穂咲下野、バラ科の落葉低木)も咲き始めた。フタスジチョウの幼虫は、このホザキシモツケの葉を食べて育つ。

空nyan! 虫たちが花に来て花粉を運ぶ役割になったり、チョウの幼虫が植物の葉を食べたり、森で私たちが守られたり、自然は何処かでみんなが繋がっている。

かつてこんなことがあった。
──奥日光小田代ヶ原に咲くクガイソウ(穂のような花序に青紫色の小さな花がたくさん咲く)が絶滅したことがあって、コヒョウモンモドキ(タテハチョウ科、開張4cm前後、黄褐色の翅に豹紋模様のチョウ)もいつの間にか奥日光から姿を消してしまった。
コヒョウモンモドキの幼虫はクガイソウの葉が大好きだから、クガイソウがいない奥日光では、命を繫ぐことができなかったようだ──

今、小田代ヶ原にクガイソウの花は再生した。コヒョウモンモドキは戻っていない。


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