瑠璃色の甲虫、ルリヒラタムシとルリボシカミキリ
奥日光ではヤマザクラやオオヤマザクラが咲き終わると、シウリザクラ(バラ科サクラ属)が咲き始める。
今年は梅雨入りが遅れて昆虫を見る機会が多くなった。カミキリムシを探していると、迫力のあるルリヒラタムシ(体長20〜27mm)が現れたりする。深い青藍色の上翅は美しく、見事なまでに扁平な体形に見入ってしまう。
カミキリムシの仲間では、ルリの名が付くルリボシカミキリ(瑠璃星天牛、体長18〜30mm)という日本固有種の〈人気虫〉がいる。この甲虫の美しさは、ルリクワガタのような光り輝く色ではなく、マット状の鮮やかな空色と黒い斑紋の組み合わせだ。森の中では特に目立つ色彩だから、私は「沖縄の海から飛んで来たセルリアンブルー!」などと呼んで、見つけたときに喜んでいた。
しかし、どうしても気になるのは、このブルーは見る角度や自然光によって渋い灰色へと移ろう、ということだった。
そして後に、ある事実を知ることになる。
──ルリボシカミキリの美しいブルーは、標本にしてしまうと儚く消える。
あの灰色には美が隠し持つ深い意味があったようだ。
私は、あのときの哀しい灰色が好きになっている。