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南会津の大雪とオシドリ

数年に一度の最強最長寒波が到来し、テレビの解説で「JPCZ」(日本海寒帯気団収束帯)という気象用語を知った。
豪雨の「線状降水帯」ならぬ「‘’雪‘’の線状降水帯」、あるいは「線状降雪帯」とも呼ばれる雪雲が、東北南部や北陸、山陰地方に大雪をもたらすようだ。
シベリア大陸からの寒気の流れが朝鮮半島の長白山脈で二分され、日本海で再び合流して収束帯が形成されると雪雲が発達しやすくなるという。

2月7日の夜、福島県は会津の13市町村に大雪のため62年ぶりに「災害救助法」を適用した。8日の朝の発表では、只見町の積雪は286cmとのことだった。会津若松市では道路の除雪作業が思うように進まないような情報も流れてきた。今回の最強寒波で福島県会津中部・南部に降った豪雪は「JPCZ」の影響があったようだ。

2月11日、屋根の雪は柔らかい生きもののように積もっていた。 ©nishiki atsushi

道路では強い風が何度も通り過ぎていく。

地吹雪が舞い道路の境目が分からなくなることもあった。 ©nishiki atsushi

南会津町の前沢曲家を歩く。深い雪に包まれて屋根も道も白い。

少しの時間だったが雪を整える人がいて、寒いなかにも温かみを覚えた。 ©nishiki atsushi
雪を積んで軽トラックが動く。 ©nishiki atsushi
雪の付いた杉林の奥では「大桃の舞台(農村歌舞伎舞台)」の茅葺き屋根の雪下ろしをしていた。江戸時代中期より農民の娯楽として歌舞伎や人形浄瑠璃が演じられた舞台は日本各地に残っていて、福島県には、檜枝岐村の「檜枝岐の舞台」、南会津町の「大桃の舞台」など、国の重要有形民俗文化財に指定された舞台がある。 ©nishiki atsushi


2月12日、伊南川や舘岩川の流れを見に行く。川辺には珍しく氷が張っていてオシドリ(鴛鴦)が休んでいた。舘岩川ではカワアイサ、カルガモ、カワガラスなどを観察することができるが、オシドリやカワアイサは特に警戒心が強く、こちら側がほんの少し動くだけで驚いたように羽ばたいて移動してしまう。逃げないで、と思いつつ、危険を察する能力に感心してしまう。

雪の白さに美しいオシドリが浮かび上がる。水鳥はダウンジャケットを着ているわけだが、さすがに寒そう。オシドリのオスはメスよりも羽の色や模様がきれいだからすぐにわかる。 ©nishiki atsushi
カルガモ(軽鴨)が泳いでいた。カルガモのようにオスとメスの見分けがつきにくい水鳥は少ない。 ©nishiki atsushi

2月12日、寒い一日が暮れてきた。東の山から満月が浮かび上がり、反対側の西の空には一番星の金星「宵の明星」がとても明るく輝いている。
日本では旧暦8月15日の満月を「中秋の名月」と呼び、月を眺めて和歌を詠む平安時代の「観月の宴」のように愛でているが、極寒の藍色の空の満月もまた神秘的で麗しい。

真珠のような満月は西の空に沈むまで一晩中見ることができる。 ©nishiki atsushi


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1月の満月を「Wolf Moon」、2月の満月を「Snow Moon」、3月の満月を「Worm Moon」などと呼ぶことがあり、アメリカ先住民が名付けたものとされています。
雪の南会津で観た冬銀河と満月の「Snow Moon」は、冴え冴えとした趣きがありました──
You're always welcome to my new house!


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