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紅葉と尾瀬沼のコハクチョウ、黒いムツアカネ

10月18日、沼山峠から大江湿原に入り尾瀬沼を一周するために、出発地の御池に向かう。標高が高くなるにつれて木々は緑から黄緑や黄色、所々は橙の装いに変わる。紅葉は一瞬の秋、ひたすらな思いを感じる。

御池が近くなると黄葉の道になる。 ©nishiki atsushi

御池からはシャトルバスで沼山峠に向かう。途中、窓越しにブナ平の見事な黄葉を見ることができる。

広大なブナ平が広がる。 ©nishiki atsushi

天候は朝から曇りに傾き細かな霧雨が少し流れたりしたが、雲の隙間からやわらかな光が届く一日だった。今年の秋は暖かく尾瀬の紅葉も遅れた。

大江湿原の広い草紅葉に白樺の黄色が加わる。三本カラマツの緑は少し黄色味を帯びてきた。 ©nishiki atsushi

冷たい風が吹き渡り、波が煌めく尾瀬沼には、冬の水鳥が多数渡来していた。
クリーム色の額が目立つヒドリガモや髷のような冠羽を持つキンクロハジロが波に揺れている。オオバンの鳴き声や水面で羽ばたく音が聞こえる。
遠く燧ヶ岳の山頂は灰色の雲に隠れ見えない。

紅葉の尾瀬沼に冬の水鳥が集まる。 ©nishiki atsushi

嬉しいことに、水鳥と一緒に真っ白なコハクチョウが優雅に泳いでいた。
逆立ちすると黒い脚が見え、水草を食べる動作もゆったりとしている。

白いハクチョウを見ていると、祈るときのような純粋な気持ちになる。 ©nishiki atsushi
黄葉の映り込む尾瀬沼に2羽のコハクチョウが浮かぶ。 ©nishiki atsushi

尾瀬沼の西に位置する小沼や沼尻を行く。
木道からムツアカネ(陸奥茜)が所々で飛び立つ。飛び立つとすぐ先の木道に止まって、あまり木道から離れようとしない。確か9月上旬に見たときも、同じような飛び方をしていた。
アキアカネが標高の高い尾瀬から里山に帰り、今は同じアカネ属のムツアカネが飛んでいる。北海道や本州の寒冷地に生息し、成熟するにつれて黒くなる変わり種で「黒い赤トンボ」と呼ばれたりする。

アキアカネよりもやや小さく、顔まで黒くなる。 ©nishiki atsushi
落ち着くと木道にビタッと張り付く。木道が暖かく心地よさそうだ。また、より反射光を浴びるために木道を好むのかもしれない。 ©nishiki atsushi

ムツアカネの産卵時期は過ぎたのだろうか。気になるところだが、もしも尾瀬沼に水際まで行ける木道があれば、ムツアカネの産卵の様子が見られるはずだ。

ところで、奥日光でムツアカネを見たいなら、標高の高い日光白根山の弥陀ヶ池や五色沼まで行くことになる。弥陀ヶ池の岸辺近くの木道からは、トンボや水中で動く生きものなどを近くで観察できる。

弥陀ヶ池では、連結飛行で産卵するムツアカネを近くで見ることが出来る。産卵は水草や泥などを叩いて行う。 ©nishiki atsushi
トンボは4枚の翅をバラバラに動かせる。真っ直ぐ飛んだり止まっていることも出来る。メスの腹部の先には産卵弁が出ている。 ©nishiki atsushi
オスの飛び方とメスの産卵行動のタイミングが合わないことがある。 ©nishiki atsushi


尾瀬沼の周囲の静かな道を歩く。
例年より遅れた紅葉を眺め、キノコの群生する倒木に秋を感じる。

紅葉の下を通る道もあった。 ©nishiki atsushi
太い倒木のキノコがかわいい。傘の中央に小さなツブ状のササクレや柄にツバがあるからナラタケかもしれない。 ©nishiki atsushi
スギヒラタケは腐敗が進んだ古い針葉樹に生える。白くて小さくきれいなキノコだ。 ©nishiki atsushi

浅湖(アザミ)湿原に着いた。
この草紅葉の湿原にいると、冷たい風が遠くに流れていくような静かな印象を受ける。
枯れ草の色が複雑に織り込まれて美しい。いつしか、アンドリュー・ワイエスの絵の世界に入り込んだ。

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