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【毎週ショートショートnote(スライダーの偉大な滑り方)】 「テーブルの上を駆け抜けろ!」

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相変わらずの、文字制限無視の人でなしです😓


画像:パコたん/illustAC


テーブルの上を駆け抜けろ!

 ここは、小さなハンバーガーのようなサンドイッチ「スライダー」を出す店。
 この辺りでは有名で、お昼時には近所のひとですぐに満席になる。

 店の特長は、注文されたスライダーを、カウンター式のテーブルの端から滑らせて客に渡すスタイルだ。
 小さなハンバーガーがテーブルを滑る姿が斬新で、それを目当てに来る客が多い。
 しかも、ちゃんと注文した人の前に止まるのだから、話題になって当然だ。

 いつもは和やかな雰囲気の店だが、今日は違っていた。
 店長がオープン3周年記念として作った高さ30センチのスライダーに注文が入ったからだ。

 スライダーは小さいだけに高く重ねるとすぐにくずれてしまう。それなのに3周年ということで店長は張り切って限界まで重ねてしまった。

 普通に置いても崩れそうだが、テーブルを滑らせなければならない。
 しかも、注文したのは、テーブルの一番遠くの席の客だ。

 店長は特別メニューをスタート位置に静かに置いた。
 そびえ立つスライダーの姿を見て、多くの客が唸り声を上げる。

 店長が、一番上のバンズに旗を静かに差した。
 その旗には「3周年」の文字が誇らしげに書いてある。

 これが果たして、客のもとまで滑っていくのか!
 客は固唾を飲んで、注目した。

 店長は、注文した客に目を向けた。
 客は、軽くうなずく。
 店長は息を吐き、左手で特別メニューに手をかけ、
 そして滑らした。

”シューっ、、、ビチャ、ビチャビチャ”

 途端に、そびえ立っていた特別メニューは、無惨にも雪崩を打つよう倒れてしまった。
 そりゃそうだ、と誰もが思った、

 が、客の目はテーブルの上に釘付けになった。

 なんと特別メニューの一番上に乗っていたバンズだけが、テーブルを滑っていったのだ。

 スーーーーーーゥ、と滑っていくバンズ。
 3周年と書かれた旗がテーブルを駆け抜けていく。

 そして、ピタッと注文した客の前で止まった。

 注文した客はそれをつまみ高々と掲げた。
 3周年の旗の誇らしげな姿に、その場にいた客は大歓声を上げた。

 この出来事は、常連客によって「スライダーの偉大な滑り方」として語り継がれるのであった。

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にっこりみかん
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