[ どんな色かしら… ]:シロクマ文芸部(夕焼けは)
↑コチラの企画に参加しました〜
助詞で終わる課題は、少し苦手です😅
ショートショートでフィクションです〜
[ どんな色かしら… ]
「夕焼けは、明日が来ると思っているから、のんびりと眺めることができるんだよね」
そう彼は言っていた。
「これから来る闇が永遠だと解っていたら、悠長に見れるはずもないのに」
確かに、って思う。
「でも、逆に、だからこそ、この時、この瞬間の美しさを、僕たちは目に焼き付けるといいのかもしれない。
この広い宇宙の中で、太陽と地球が描く、この幻想的な色を……」
ハァ〜、(ため息)。
思い出しながら呆れるわ。
彼が言ってたことを、こんなにもはっきりと覚えていたなんて。
まぁ、毎日のように聞かされていたのだからムリもないのだけれど……。
詩ができるたびに、私に聞かせてくれたのよね。
ふふふ、今となったらいい思い出ね。
こうやって夕焼けを見てると、ひとりでに頭に浮かんじゃう。
彼の詩。
でも、驚いた。
まさか彼の詩を、テレビの全国ニュースで見るだなんて。
全く知らない詩だったけど、彼の名前が書かれた詩が国際的なスゴイ賞を取ったらしい。
いつの間にそんなにレベルアップしたのかしら、なーんてぼんやり考えていて、思い出した。
会わなくなる前に、彼は何か言っていた気がする。
なんだっけ?
と、思い出せないでいると、スマホの着信音が鳴った。
聞き慣れない音がすると思ったら、いまどき珍しく普通の音声通話だった。
彼からの電話だとスマホの画面は知らせてくれる。
どうやって着信出るんだっけ?
と、少しもたつきながらもなんとか出ると、彼はいつも通りの落ち着いた口調で話し始めた。
「あの夕焼けがキレイな場所で、会えるかな」
会わなくなって6年も経ったのに、彼は待ち合わせ場所を告げ、日時を確認して、すぐに電話は切れた。
詩は綴るのに、会話は続かない。
あの頃のままだ。
全然変わっていない。
ずっとそうだった。
何年経ってもそう。
「僕の作る詩が認められたら、その時は……」
ふと、彼が言った言葉を思い出した。
でも、彼の詩が認められたとしても、よりを戻す気はさらさらない。
だって……、
私は、素敵な詩よりも、会話を楽しみたい人だから。
お互いの気持ちは、ちゃんとお互いの言葉で紡ぎたい。
そう──、
あの頃から、私も変わらない。
お祝いの言葉だけは言ってやろう。
そう思った。
だから、会うことにした。
彼と6年ぶりに見る夕焼けは、どんな色だろう。
変わってると……いいな。
おしまい。
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