神合わせレポート vol.10『日光、お言葉を頂く』
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2021年の晩夏の頃。
昼食を終えた我々は
目的の社へと向かうことにした。
車を走らせること数十分
到着したのは愛知県長久手市にある
景行天皇社という神社だった。
はじめて聞く神社であるが
どうやらご縁の深い
神社のようである。
8月の後半とはいえ
残暑の日差しが
燦々(さんさん)と降り注ぐ。
鳥居をくぐり階段をあがると
その両端には木々が
生い茂っている。
神社を含んだ全体は
どうやら丘になっているようだ。
階段をあがりきると目の前には
立派な本殿が鎮座する。
本殿の前にて
ご参拝を済ませる。
右手に並ぶ末社にも
それぞれ手を合わせた。
ちょうどその末社の前には
神楽殿(かぐらでん)があった。
神楽殿は「神の宿るところ」
という意味があるそうだ。
ここに神を降ろし
巫女による神がかりで
人々と交流するための
舞が舞われる。
神楽殿はその舞台のことを指す。
その神楽殿の前で
音葉さんは足を止めた。
どうやら今回はこの場所で
神言葉を降ろすようである。
神楽殿の正面に音葉さん
須佐之助さん、私と3人並ぶ。
子供たちはいつものように
自由に走り回っている。
音葉さんは手を合わせ
集中して光降ろしの
準備をはじめた。
神楽殿の前で手を合わせながら
ザッザッと行進のように
足踏みをしていた。
これより光降ろしの時間である。
光降ろしとは天から光を降ろして
人間の身体を通し社や
大事な場に光を灯し
光の柱をたてゆくことを指す。
そして音葉さんの麗しい御歌が
その場に溶けこむように響き渡る。
どこか懐かしい
魂の琴線になびく音色。
何回か光降ろしを
ご一緒させて頂き
気づいたことがある。
その場その場によって出てくる
御歌が変わることに。
私にとってはこの日はじめて
神のお言葉を間近で聞くことになる。
気持ちは幾分か高揚していたが
それでも不思議と緊張はしなかった。
神楽殿のまわりに
しばらく静寂が続く。
遠くに鳥の地鳴きが聞こえる。
蝉が渾身のエネルギーを振り絞り
ミンミンと鳴いている。
生暖かい夏の風が
ふわーっと肌に優しく触れる。
心地よき、心地よき。
しばらくして神が降りたった。
音葉さんの体は器となり
そこに神が入った。
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(以下、社の神言葉一部抜粋)
懐かしき魂(たま)よ
いまこの地に 神降りゆきたし
王なるも 時期に降りるであろうが
それにつく 神が先に物申しゆくぞ
昇なるよ よう来たな
(中略)
古(いにしえ)に共ゆきたる
懐かしき目をしておる
不思議なような
なかなかの解き分け 不可思議
人たるは どこまでも
醜くも美しきを作りゆく
王たちここ治めし時は
まだまだに 人心素直なりて
尚も世もはりゆくも
心優しく いたわり合うた
柔らかなるとき 風吹かしゆきた
ねー あなたはさまざまに
秘めしことを 召し取られて
口つぐみて ただただに
口をぐっと縛りより 物申さず
ニコニコいたしておりたまり
ただならぬ世の時世かまえては
笑顔も無くなりて
口も一文字に結び ムッとして
心内わからざる
そんなお顔をしていました
優しきゆえに 悪を許せず
そしてまた許し 優しきゆえに
憎しみを宿し また許し
あなた様は ただただに
民の平和なるを祈りて
我が身を尽くし
命を燃やされました
苦しきことでしょう
笑うことも泣くことも
できませんでしたから
ただただに ただただに
あなたは人の前に
凛とお立ちになるより
術がなく 術がなく
水を打ちおうたような
その外を 内なるは
引くりかえる程
煮えくり返る程に
熱う 熱うものを
抱えておりましたねぇ
苦しきでありましょう
人民を不安にさせぬようと
抑え込みたし その熱き心は
旅ゆくまで変わらず
あなたは口も 旅ゆくまで
ムッと閉じゆきたまま
決して安らかではない
お顔でありました
憂い憂いて 我ちから及ばずに
我を責め立て 苦しき身を
税も尽くさず 人ために尽くした
あなた様のことを
わらわはみておりましたぞ
人民に通じぬその思いを
わらわはみておりました
何というお人 なんという熱き
優しきお方かと
わらわは知りております
ぎゅーっと固まりました
魂なるもの 巡り巡りてもなお
ぎゅーっと締めゆきたる
終わりにいたしませう
ここにて開き 巡りたるも
我魂を許し 他を許し
巡らすこと ただそれのみ
この世を解き放ちゆきて
その魂の縛りなるを
お止めなされますよう
降りゆきたる世は
柔く 美しき世でございます
柔(やわ)くやこく
どうか魂なるを
お外しくださいねぇ
苦しきものを
手放しゆく時でござります
許されて このもの内に宿りまして
我はこの世にうつした うつし願うた
美しき妙なるを
おつくりくださいませ
ただただに
光り輝く妙なるを 祈りて
我もお供いたしますので
美しき 美しき妙へ
どうぞどうぞ ゆきなされ
美しき 優しき
永遠(とわ)なるに響きゆく
この鈴なるを鳴らせなされ
美しき 柔きあなたの心を
神に仕えませ
悟りてゆかれなせ 昇なるよ
心してゆかれますよう
あなたは大き御魂背負いしも
軽やかにこの世を行き渡れる
力(りき)をお持ちでござりますよ
光なるもの内に込みゆきて
堂を入たせよ 降りゆきたし
降りゆきたし
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神のお言葉を聞いて
自分の中の何かが緩み
溶けていくのを感じる
涙腺からあふれ出た雫は
頬をゆっくりと伝っていく
枯れたと思っていた涙
歯車はまわりだす
静かな音を立てながら
輪は少しずつ
まわり始めたようだ。
(vol.11へつづく)
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