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継続的賃上げの必要性「浸透」 中計明記も広がる 日銀・地域経済報告


日本銀行は1月9日、支店長会議を開いて地域経済報告(さくらレポート)を公表し、景気の総括判断を全9地域中、東北と北陸の2地域で前回(2024年10月)から引き上げた。各地域の景気認識は「回復・持ち直し」基調を維持。「25年春季労使交渉(春闘)に向けたモメンタム(勢い)を見たい」(植田和男総裁)と、日銀の再利上げ判断を左右する企業の継続的な賃上げ姿勢については、必要性を感じる企業認識が幅広く浸透する姿が報告された。

「中期経営計画のなかで賃金上昇率をしっかりと書き込むなど、より長期的な賃上げ方針を打ち出す企業が結構な数、出てきている」(神山一成理事・大阪支店長)。深刻さを増す人手不足や2年連続の高水準ベアを受け、〝今年に限らない〟賃上げスタンスを表す企業が全国的に広がっている。

さくらレポートや、同会議報告に基づく「景気の現状」によると、25年の賃上げについて、積極姿勢を保つ企業や前年(24年)並みの賃上げを検討する経営者の声が並んだ。

構造的な人手不足下の労働需給引き締まりや最低賃金の大幅引き上げで、「継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業で浸透してきているとの報告が多かった」(日銀)。半面、業績不振などにより、賃上げ幅の縮小やベア見送りを予定する先もみられた。

賃上げ原資を確保するうえで重要な「価格転嫁」の動向では、「実施・検討する動きが引き続き広がっている」との報告が目立った。「サプライチェーン全体で人件費などの価格転嫁に寛容な雰囲気が醸成されている」(生産用機械メーカー)「賃上げを継続する必要があり、25年もサービス内容の改善を伴った値上げを行う方針」(対個人サービス業)といった企業の声が散見された。

ここ2年続いた高水準の賃上げは、個人消費の押し上げにも寄与しつつある。サービス消費では、好調なインバウンドと相まって、観光・宿泊や外食産業で堅調な需要を維持。モノ(財)消費でも、都市部の百貨店における高額品販売や、〝推し活〟など「こだわり消費」の好調さを訴える報告がみられた。「(24年)夏以降、春闘での賃上げが実際に給与額に反映されたり、賞与増額の動きが明確になったりといった所得面での改善も効いている」(佐久田健司・福岡支店長)。

設備投資は幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持され、人手不足対応や生産性向上を狙った省力化・デジタル化、IT関連需要を踏まえた能力増強投資などを意識する経営者の声が際立った。

一方、海外経済ではトランプ米次期政権下の経済政策など先行きの不透明感を懸念する声も少なくない。「(米国の)通商政策次第では、下振れリスクもあり、状況を注視している」(輸送用機械業)といった見方がある一方、米大統領就任式(1月20日)で明らかになる見通しの経済政策方針を踏まえ、「大きな不透明感の一つが晴れると期待している企業の声もある」(神山理事)。

掲載元:https://www.nikkinonline.com/article/242395



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