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【実像】 疲弊する「中間管理職」 組織動かす力、どう引き出す
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地域銀行で「中間管理職」の疲弊感が高まっている。プレイングマネジャーとしての業務に加え、営業店の人手不足によるしわ寄せや、高まるハラスメント意識への対応など担う役割が広がっているためだ。若手や女性行員が昇進を敬遠する動きもある。管理職として本来の力を発揮してもらうために、どう対処すべきか。本紙が実施したヒアリング結果や先行事例などからヒントを探った。
離職続き詰問受ける
「営業店に配属された新人が辞めれば全責任が育成担当に押し付けられる」――。東海地区地域銀の営業店課長で新人育成担当の30代行員はそう不満を漏らす。
社内でハラスメント意識が強まるなか、指導には暗黙のプレッシャーが漂う。関東地区地方銀行の支店長は「若手行員がミスしても叱ることが出来ないままで結局、役席(中間管理職)が業務を巻き取る状況が続く」と危惧する。3年連続で新人担当だった東海地区地域銀の40代元行員は、新人2人が退職したことで本部から指導方法について執拗な聞き取り調査を受けた。全幅の信頼を置く支店長からも「どんな指導をしたんだ」と疑いの目を向けられたことが追い打ちをかけ鬱で退職した。
役割多岐で苦悩多く
業務過多に苦悩する中間管理職の実態は、本紙が地域銀に行ったヒアリング(本部・営業店の次長・課長級25人)でも浮き彫りになった。
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自身が重要と感じる役割は「メンバーの育成・能力開発・キャリア支援」(23人)が最多。次いで「部店業績の進捗管理、業績・目標の達成」(14人)、「働き方改革の推進」(4人)と管理重視の姿勢が目立った。
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ただ、その役割発揮の阻害要因として半数超の13人が「業務の役割が多岐にわたり、優先順位が付けづらい」と回答。「マネジメントのスキル・能力に不足感」(5人)、「ハラスメント意識が高まっている」(3人)と続く。
特に部下指導では、社会の変化や顧客ニーズの多様化で「過去の経験が当てはまらないことがある」(関東地区地域銀の営業店30代)ため、対話を通じ部下と課題を考える「サーバント・リーダーシップ」への転換が求められるが、それに十分なリソースを割けられないのが切実な悩みだ。
千葉興業銀行では2019年にOJT業務を再定義した。若手に一から業務を指導するのではなく、動画ラーニングや研修を織り交ぜることで、上司は実践後の振り返り支援、結果・行動の承認を中心とするよう徹底。部下の〝自走〟を促す。
22年度からは月1回の新任課長向けのマネジメント開発研修をスタート。3人1組のグループを組み、チーム学習や読書会を通じ、気軽に相談し合える関係も構築している。50項目のマネジメントチェックシートを活用し、定期的に自身の強みと今後の課題を把握し改善する力を身に付けてもらいたい考え。
管理する部下2人に
一人の上司が適切に直接管理できる部下は6、7人と言われているが、支店統廃合などの影響でポストが減り管理人数は増加傾向にある。さらに、プレーヤーだった行員が不慣れなマネジメント業務を担うのは抵抗感があり、リテールで活躍してきた女性行員が管理職昇進を望まないケースも出ている。
こうした問題に対処するため、中国銀行は中間管理職の活動主軸を「管理」ではなく「営業」に切り替え始めた。23年10月にリテール営業の行員を対象とした少人数ユニット体制編成に着手。24年6月時点で個人顧客との取引が多い、全店の約半数の約50店舗でユニット制を確立し、中間管理職の女性をリーダーに据えている。
これまでは5、6人の部下を持つ行員もいたが、ユニット制移行後は、一人当たり平均2.3人に減少。併せて業務内容を整理し、営業時間を捻出した。計数・目標管理や各種事務などの管理業務を、他の役席者との間で平準化を図り、業務全体に占める営業活動比率を4割から7割に引き上げたい考え。コンサルティング営業部は「営業ノウハウを部下との同行訪問で広めるなど、部下の成功体験を後押しすることで(若手女性から)役席がロールモデルとなる存在となってほしい」と語る。
社員情報を見える化
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