見出し画像

【金融政策の読み筋】解釈余地ある発信で〝裁量〟確保 今日から日銀決定会合


日本銀行は12月18、19日に開く年内最後の金融政策決定会合で、「0.5%」への再利上げの是非を議論する。3月に異次元金融緩和の幕を下ろして「普通の金融政策」に回帰し、3会合後の7月末には「0.25%」への追加利上げを断行。その後の市場急変を受けても段階的な利上げスタンスを堅持する。半面、幹部発言などで散見される解釈の余地を残す表現には、不透明感の強まる海外動向にも柔軟に応じるべく一定裁量の確保がにじむ。

予期された市場混乱
「どう伝えればよかったのか」――。

金融政策正常化に向けた歩みを進めていた1年前。日銀幹部は、植田和男総裁が抱く「言葉選びの苦悩」を耳にした。

「マイナス金利」や、「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)」といった非伝統的金融政策。世界的にも異例な政策の常態化は、コロナ禍を経て訪れた「出口」局面での対話を格段に難しくした。

マーケットでは、異次元緩和の解除が視界に入り始めた頃から、金融市場に動揺を与えない「丁寧な対話」の重要性を主張する関係者が少なくなかった。FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的緩和縮小)の可能性を示唆して市場の混乱を招いた2013年の「テーパー・タントラム」が念頭にあった。

日銀内でも、10年超に及んだ大規模緩和からの転向を意味するマイナス金利解除時、経済や市場に無用の混乱を招かないよう、先々の利上げに対して慎重な構えを取った。

半面、「2%超」が3年目に入るインフレ動向や、物価を一段と押し上げる円安基調が続き、久しぶりの利上げに対するマーケットや国民の反応をみながら、慎重姿勢を緩ませる必要があった。

4月会合の声明文・総裁会見を起点に段階的な利上げスタンスを強調。それでも、為替動向に市場の目が行きがちだった7月会合では、追加利上げという「行動」とともに、より絞り込んだ表現で日銀の見方や政策の方向性を明確化した。

その後に起きた8月上旬の市場急変動。米景気減速懸念を契機に、株式・為替相場は乱高下した。

「『慎重』に傾けた姿勢を『フラット』に戻そうとした日銀の発信だったが、〝受け手〟の立場や感度によって解釈の仕方が異なり、意図せぬ反動を招いた」(市場関係者)。

ここから先は

907字 / 1画像

¥ 330

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?