ネットリテラシーという幻想(改稿)


現代のネットリテラシーというものが
人間の理性と精神力に頼り過ぎたものになっていないか、と思う。

ネット上のトラブルで傷ついた人の話題になると、
実際にネットいじめに被害に遭った事も無い人達が寄ってたかって、
「煽り耐性」といった言葉を用いて、
いかにその人物の立ち回りが悪いか、を評論し始める風景は、
よく見られる。

学校等で教えているネット利用上の注意点も、
いかに個人情報を明かすべきでないか、
ネット上の喧嘩に応戦してはいけないか、
という部分に重点を置かれている事が多い。

嫌な事を言われても、大人な対応をしろ、であるとか、
傷付いた時には、落ち着いて、少しネットを離れよう、というのは、
一見すごく理性的で、素晴らしい指針のようにも見えるが、
人間に「常に」それが可能か、という検証を圧倒的に欠いている。

結果として、全てが被害者側の責任のような風潮が生み出され、
嫌な事を言った側よりも、
言われて傷付いた側が腹を立てた事そだけが切り取られて、
悪者扱いされるという事が常態化している。


人間の心



人間の心、というものが無限の自由度、絶対の自由意思を持っているように考えている人は多い。

当たり前だが、そんな事は無く、
人間の思考は、脳をはじめとした肉体の様々な器官に依存する能力であり、
定められた本能によっても、体の調子によっても、大きくは左右される。

その上で、
周りの人が自分の事をどう考えているか気になってしまう、という心理を、完全にコントロールする事は現実的なのだろうか。

人間の心の耐性は、常に一定ではない。

悪い事が続けば不安になっている時はもちろんの事、
良い事が続いて、自信過剰になった時も、
他者からの攻撃に反応しやすくなってしまう。

人間は、そのネガティブな状態、ポジティブな状態を、
行き来しながら生活を送っている。

知名度がある人が、長期間ネットで活動していれば、
極端にネガティブな時、ポジティブな時と
他者の悪意ある行動が重なるタイミングは必ず来る。

そのようにして、何かトラブルが起きてしまった場合、
これは果たして、炎上した人の努力や能力が足りなかった、というだけで、
事態を説明し、今後の対策が出来るだろうか。


無視が最適解とはかぎらない



人間が自分の悪口を完全に無視する事が現実的でない事は、
既に述べた通りである。

では、逆に完全に悪口を無視する事が出来れば、
これらの悪意のある人々から身を守る事は出来るのだろうか。

残念な事だが、社会には、他人に強い影響力を持つ事ににあこがれ、
他人の生活を破壊する事に、とんでもない時間と労力を使ってしまう人がいる。

そういう人達は、本人に無視されれば、
その周囲の人々に迷惑を掛けて、
相手の注意を引こうとする。

無視、無反応は、
プライドが高く逆上しやすい相手には、時に逆効果になる。


ネット上のトラブルに対処する際の心構え



精神論になってしまうが、
「一旦自分が傷付いている事を認める」というのが
すごく重要な点ではないか、と思う。

あるいは、
「一旦負けを認める」という言い方も出来る。

芸能人、著名人の多くが炎上した時に、
それがいかに自分に影響が無いか、をアピールしてしまう人が多い。

「自分が傷ついている」と認めても、
反撃して、相手を悪者扱いしてしまうケースも見られる。

そうではなく、
「私は傷ついているし、怖いと感じているし、
相手は匿名だから対処が出来ない。相手の勝ちだ」
と一旦認めてしまうのだ。

決して、相手が正しいと認める必要は無い。

ただ、勝てない状況だ、という事だけ認めれば良い。


現実に個人が出来る対応


以上のような、精神論を踏まえ、
具体的にどうすればいいか。

私は現状であれば、
批判が目立ち始め、自分が不安や不快感を覚えた時点で、
素直に謝ってしまう事をお勧めしている。

言ってみれば、積極的に負けてしまうのだ。

いかに、相手が嘘をついていても、悪意のある切り取りを行っていても、
とにかく謝ってしまうのだ。

当然、嘘については、出来るだけわかりやすく、
最低限の証拠を並べ、簡易な弁解をするが、
その時ですら、自分がいかに無責任さと配慮の無い行動で、
誤解を生んでしまったかを述べ、
その嘘をついている相手に、とにかく謝る。

第二に、相手に気付かれずに、無視機能を使用する事をお勧めする。

ありきたりな対策だが、
大事なのは出来るだけ相手に、自分が無視機能やブロック機能を使用している事が気付かれないようにする事。

勝利宣言として、ブロックするのは、
相手を怒らせる上に、
ダメージを与えられる事に気付いた悪意ある人が、
さらに集まる可能性がある。

無視機能であれば、
相手は自分が無視されている事に気付きづらいし、
気付いて、新しいアカウントから攻撃を仕掛けても、
手間がかかる上に、「またこれも無視されているかも」
という不安を常に抱えながら戦う事になる。


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