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田中一村展@東京都美術館

上野駅の公園口の改札を出ようとしたら、知らない光景が広がっていた。
車が通っていない。
間違えた?と思って改札上の表示を見るも、公園口に間違いない。
恐る恐る改札を出てあたりを見渡すと広場になっていて、車道がなくなっていた。
5年ぶりの上野。月日が経ったことを実感する。

東京文化会館までくると見慣れた風景になり、落ち着く。右手には国立西洋美術館。モネ展をやっている。雨が降る平日の9時半だというのに、人がずらっと並んでいて驚く。
もしかして出遅れた?足早に都美術館まで急ぐ。

到着すると館内は落ち着いていて、入場までスムーズだった。
入場して最初の部屋が少し混雑していたけれど、そこを抜けたらゆっくり鑑賞できた。

田中一村というと、晩年の奄美大島の画をまず思い浮かべるが、今回それ以外の作品をたくさん見ることができ、それもとても素晴らしかった。

無名の画家と言われているようだが、支援者がいて、方々から注文も多くあったようだ。特に草花木の屏風絵が素敵で、表から見て裏から見て、何度も往復してしまった。
また一村が撮った写真も多数展示されていて、戦後すぐカメラを持てたのだから、単純に貧しかったとも言えないのではないだろうかと感じた。

でもきっと一村が目指していたのはもっともっと上だったのだろう。個展を開くことを目指して奄美大島で製作に励んでいたが、かなったのは一村の死後であった。

生前まったく光があたらなかったとよく聞くから、見に行っても切なくなってしまうだろうなと思っていた。
もちろん今のような評価ではなかっただろうし、本人が満足するような評価でもなかったのだろうけれど、当時から素晴らしいと魅了された人は確実にいた。
展覧会を通してそんな印象を強くもった。
外へ出ると相変わらず雨が降っていたけれど、ひとすじの光を感じたような気分だった。


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