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ゲームストップ株問題など公聴会――根深い背景、市場かく乱は続く

新興証券会社ロビンフッドなどを対象として米国下院の公聴会が18日に開かれた。SNS(交流サイト)やスマートフォンなどを舞台として株式市場を大きく混乱させた“事件”だが、格差社会の拡大や公正な市場の仕組み作りといった本質的な問題を抱えており、市場をかく乱する動きはまだまだ収まりそうにない。19日(金)の日経CNBC、朝エクスプレス「マーケット・レーダー」では野村総合研究所、エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんをゲストに迎え、『「ゲームストップ」公聴会の論点』というテーマで解説いただいた。以下、木内さんのお話を軸に、この問題のポイント、今後の課題などをまとめた。

21.2.21 冒頭ツーショットIMG_0266

オンラインで招致された関係者はブラッド・テネフ氏(ロビンフッド・マーケッツCEO、スマホ証券)、ケン・グリフィン氏(シタデル創業者、HFTやヘッジファンド運営)、キース・ギル氏(ゲームストップ株急騰の仕掛け人とされる個人)、ゲイブ・プロトキン氏(メルビン・キャピタルCEO、ヘッジファンド)、スティーブ・ハフマン氏(レディットCEO、オンライン掲示板運営)など。

この問題が興味深いのは、いくつかの対立軸のようなものが複層的、重層的に絡み合い、それぞれが米国経済社会の問題を映しているように見えることだ。まず最初に、キル・ギース氏を中心とする個人投資家がゲームストップ株を買い上げることで大手空売りファンドに勝負を挑むという軸。ゲームストップ株の急騰でヘッジファンドが大きな損失を出すに至った。次にロビンフッドが一時、ゲームストップ株の取り引きを停止したことなどから、ロビンフッドが本当に個人投資家の味方なのかどうか、というポイントが浮上した。

21.2.21 ロビンフッド手数料の仕組みIMG_0267

背景には、ロビンフッドなどの証券会社が取引データなどをヘッジファンドに提供、多額のリベートを受け取るPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)というビジネスがある。これ自体は古くからある仕組みだが、手数料無料を武器に急拡大してきたロビンフッドはとりわけリベートへの収益依存度が高かった。また、関連する情報開示も不十分とされる。また、SNS掲示板レディットを舞台にしたゲームストップ株急騰劇については、こうした動きが相場操縦にあたらないのか――という議論がある。

冒頭紹介した公聴会出席者の発言は、一言でいえば「法律を犯すような罪はしていない」という自己弁護だったように思う。その一方で、木内さんは「本質的な問題になかなかたどり着かない」と感じたという。例えばこれほどまでに市場を揺るがしてしまうSNSや新興証券と市場はどう向き合っていくのか――。来月の下院ではSNSの観点を中心に取り上げる見込みだが、規制の是非や公正な市場インフラをどう構築、維持していくかという議論にはしばらく時間を要する見通しだ。

もう一つ、この問題が大きく提示しているのが拡大する格差社会だ。木内さんは「単純に、もうけを追求する投資行為であるならば、あれほどまでにゲームストップ株が急騰することはなかったはずだ」という。投資、あるいは投機行為であれば、ある程度値段が上昇すれば「もうそろそろ売った方がよいだろう」という対立する意見の投資家が出てきて、おのずと株価の動きに変化が出るものだ。しかし今回は単純にもうけることを超えて「大手ヘッジファンドをやっつけろ!」「証券市場の民主化を進めよう」といったある種の “旗頭”が立ってしまったことで、値動きが極端になってしまった面がある。

21.2.21 ビットコイン先物IMG_0273

ゲームストップ株騒動自体は落ち着きつつあるが、その後も潤沢なマネーを背景に銀やビットコイン、あるいは大麻株などにも個人投資家の資金は向かっている模様で、市場をかく乱する動きはまだまだ続くとみた方がよさそうだ。とりわけビットコイン、仮想通過(暗号資産)については、それぞれの国の中央銀行が発行する貨幣とは別の貨幣という側面があり、既存の秩序に対する挑戦や中央集権的な権威を退けようとする価値観の部分で、「ゲームストップ株騒動と親和性がある」(木内さん)ように見える。問題の背景は根深い。

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