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新型コロナと株主総会

新型コロナでいろいろなことが異例に進む今年の株式市場。その中でも株主総会のありようは注目です。以前、3月25日のこのnoteでは「権利落ちについて注意喚起――影響は限定的、オンライン型総会の呼び水に?」と書きました。当時の情勢・情報をもとに敢えて「影響は限定的」を見出しに取ったのですが、正直言ってその後の緊急事態宣言などによる情勢の変化で、当時考えていたよりは影響が広範に広がっています。個人投資家が注意すべき点、この際、株主総会のあり方などで考えておいた方がよい点などについて改めてまとめました。主に5月27日(水)の朝エクスプレス、マーケット・レーダーに電話出演していただいた野村資本市場研究所の西山賢吾さんの話、論考を参考にしています。

まず改めて整理しましょう。今年の株主総会、特に3月期決算企業の総会が例年集中する6月下旬からそれ以降についてどうなるのか。ざっくりまとめると以下の3通りになります。現実に大多数となるのは①「決算発表が多少遅れても総会は6月末までに実施」というパターンです。いろいろな意味で最も混乱が少ないとは思われますが、決算の集計作業が遅れがちな中ですので監査なども含めた情報の精度といった観点からは問題がないとは言えません。

20.5.27 総会3つのケースフルサイズIMG_0041

さて例年と大きく異なるパターンとしては②「総会自体を7月以降に延期」、③「“継続会”開催(2段階開催)」――が考えられます。順番に見ていきましょう。やむを得ず総会を7月以降に延期する場合、さらに細かくみると、配当取りの権利は3月末のまま議決権の基準日を5月以降に延期するパターンと配当の基準日も含めて延期するパターンに分かれます。

20.5.27 西山さんとフローチャートIMG_0042

後者ではすでにオリンパスやサンリツ、ナンシンなどが表明していますが、3月末で配当の権利を確定できていないため、その後売ってしまった投資家は「確保したと思っていた配当取りの権利が後になって確保できていなかった」ということになってしまいます。一方、上場企業の約3割は配当を株主総会ではなくて取締役会で決めることができるため、議決権の権利確定時期が後ずれしても配当の権利確定時期自体は変わっていないと考えられます。ご自身の関心のある会社がどのような仕組みを持っているのか、すでに基準日の変更などを発表していないか、気になる方は今一度確認することをお勧めします。

“継続会”という言葉は、僕も今回の騒ぎで初めて知ったのですが、上記のような配当権利に関わる混乱を避ける狙いもあって、3月末で確定した権利をもって剰余金処分などを確定しつつ、その他の総会議案について7月以降にずらすというものです。丁寧な開催ではありますが、決算が厳密な意味では未確定な段階で議決権行使をすることが問題とみる機関投資家、議決権行使会社などもあるようです。

西山さんは個人投資家に対して「たとえ株主総会にリアルに出席できないとして郵送やオンラインなどで株主としての意思表示はできる」と強調します。そして「こうした時期だからこそ中長期的な経営ビジョン、情報開示姿勢に注目してほしい」と言います。確かにこうした時期だからこそ、企業の姿勢の違いが表れる面はありそうです。

そもそも、日本では会社法の定めで株主総会は場所が明記されていることが前提になっているため、オンラインなどでの開催が柔軟にはできなくなっている面があります。新型コロナを契機としてリアルとオンラインを柔軟に組み合わせたハイブリッド型開催なども推奨されています。株主と企業が対話する場としての株主総会が、一層意味あるものとして活性化してほしいものです。

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