見出し画像

日本株独歩高どこまで?――ソフトバンクGの2兆円自社株買い寄与

週明け23日(月)も日本株独歩高の展開。日経平均株価は334円高の1万6887円で取引を終えました。アジア各国株式相場も大幅安。何よりも横目でにらんでいるNYダウ先物が終始800ドルから900ドル程度の大幅安を演じている中での日本株高は、控えめに言ってもちょっと異様な雰囲気です。

新型コロナウイルスを巡る不透明感は続き、米議会ではトランプ政権の打ち出そうとする経済対策が議会で簡単にはまとまりそうもないと伝わっています。朝方は、東京五輪延期の可能性について、安倍晋三総理が国会答弁で初めて言及する場面もありました。こうした緊迫する情勢の中でシカゴCMEの日経平均先物は、23日の取引開始前、早朝の時間帯には1万5060円まで急落する場面がありました。結果的に現物株の日経平均株価は1万6000円台半ばでスタートし、午後には一時1万7000円台を上回る場面もありました。朝方、番組開始前の短いスタッフミーティングでは「今日は東京市場のサーキットブレーカー作動もあり得る」ことを共有したくらいですから、実感としては日経平均の値幅は2000円くらいな印象があります。公的年金を初めとするリバランス買い、日銀のETF買いが思惑として根強いほか、一部個人の間では打診的な買いが引き続きみられるようです。

そうした中で、一段高の主役となったのがソフトバンクG(9984)でした。13時50分、「自己株式取得と負債削減のための4.5兆円のプログラムを決定」とのタイトルのプレスリリースを発表しました。これにより最大2兆円の自社株買いや負債の償還、社債の買入れなどに充当するといいます。23日は朝方から反発モードでしたが、これを受けて一気に急騰。13時55分にはストップ高水準の500円高(18.6%)の3187円を付けました。終値も3187円。日経平均株価上昇分(334円)の約3分の1(108円)がソフトバンクGの急騰によるものです。

ソフトバンクGの自社株買いについては、3月13日に5000億円分を発表したものの、その後3月17日には格付け会社S&Pがこれを受けて長期発行体格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に見直しています。ソフトバンクGの自社株買いを、少なくても信用格付けの面からは好感しなかったわけです。23日の4.5兆円の資産売却発表は、このあたりを意識したものと言えそうです。保有株や資産のうちの何を、どのように売却するかは現時点で明らかになっていませんが、市場関係者の間では「ある種の戦線縮小として株式市場が好感するのは理解できる」(あるファンドマネジャー)との声が聞かれました。

ソフトバンクGのように借金を膨らませながら投資を拡大する“レバレッジ経営”は、日本企業の間では極めて特異な存在です。日本企業は一般に現金をため込みすぎて、株主、とりわけ外国人投資家などからは資産の効率化を求められてきました。全世界的に“キャッシュ・イズ・キング”的な相場に陥る中で、日本企業の非効率さが、逆に脚光を浴びているようにも見えるのは皮肉な展開です。借金をしまくって、自社株買いを繰り返すことで株高を演出してきた米国市場にも何がしかの行き過ぎがあって、今はそこに逆回転がかかっています。かといって、資金の使い方や株主に対する明確な意識、意思を伝えることなく、ひたすらに現金をため込んできたように見える日本企業にも違和感を覚えます。答えは一つではないと思いますが、アメリカと日本の間くらい、某経営者の言葉を借りるなら“ハワイあたり”にほどよい水準があるように思えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?