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コロナ危機 ファンドで立ち向かう

新型コロナ危機による企業経営への影響はこれから本格化します。まずは資金繰り、流動性の問題ですが、多くの企業で時間の経過とともに資本の危機へ進むことは多分避けられないでしょう。20日(水)の日経CNBC朝エクスプレス、マーケット・レーダーでは企業再生を中心とする投資ファンドを運用するキーストーン・パートナースの代表取締役、堤智章さんにご出演いただきました。堤さんのお話しをもとに、企業危機にどう立ち向かっていったらよいのか、考えてみました。

これまでのところ、新型コロナを原因とするいわゆる“コロナ倒産”は約150件と言われています。緩やかな増加でしかないのです、今のところは。先週15日には5月15日(金)にアパレル大手のレナウン(3606)が民事再生手続きを開始したのが、上場企業では初めての“コロナ倒産”。金融の現場にいる堤さんには「5月末、6月末と非常に厳しい時期を迎える」とみています。日本で緊急事態宣言が発せられたのが4月7日(火)です。実際に支払いなどの期限を迎えるのは5月末からで、すでに堤さんのところにはGW前後から「飲食、小売りなどを中心に給料の支払いなどさまざまな相談が毎日のように来ている」と言います。5月15日に日本記者クラブで会見した帝国データバンクの赤間裕弥・東京支社情報部長は、今年の倒産件数が2013年以来「7年ぶりに1万件を超える」との見通しを明らかにしましたが、今後の展開次第ではそんなレベルでは済まされない恐れがあると思います。

キーストーンは2019年5月から第4号ファンドを設立、現在も資金募集中です。5月、6月に向けての危機に対応するため、予定の500億円のうち100億円をコロナ対応の投融資に充てることを決めました。

20.5.20 4号ファンドまでの道のりIMG_0226

既に具体的な案件が次々と舞い込んでいるようです。東海地方に強い地盤を持つ手芸用品大手、東証一部上場の藤久(9966)に約15億円出資することを決めたのもその一例です。6月末の株主総会で堤さん自身が社長となる予定で、経営改革に乗り出します。「女性を中心とする120万人もの顧客基盤に、手芸用品以外のいろいろな分野も含めてアプローチする」ということで再建に向けて大きな可能性と現実的な手筈を考えているようです。

民間の投資ファンドですから、投融資するにあたっては何がしかの勝算(確率として回収できる)がなければならない。堤さんは、特にこのような危機時には「バランスシートの価値を注意深く見る」と言います。藤久に見る顧客基盤のような、価値を生み出せるものをどのくらい持っているのか、そしてそれをどうしたら現実に生かせるのか。おカネも目利きも、そしてそれを実行に移す経営手腕も必要です。

5月20日(水)の日本経済新聞は「政府が新型コロナの影響で厳しくなった中小企業に資本注入する官民ファンドを立ち上げる」などと報じています。2020年度第2時補正予算案で500億円規模を経常し、数百社への出資を見込むということです。政策投資銀行や地域経済活性化支援機構が大企業から中堅企業への支援を担い、中小企業にはこの官民ファンドが対応するというのが全体像のようです。

堤さんはこの中小企業向けの官民ファンドについて「規模が全く足りない。例えば5000億円とかなら分かるけれど」と話しました。さらに大事なのが金融本来の規律ではないでしょうか。危機と闘う企業、そして何より労働者に支援が必要なのはもちろんですが、その資金が有効に生かされなければ、ある意味では「砂漠に水を撒いている」ようなことになりかねません。堤さんは「返ってこなくてもよい助成金からきちんと返済を求められる銀行やファンドからの投融資まで分けて考えることが必要」と言います。

20.5.20 助成金とかIMG_0227

ベースとなり金額が大きくなるべきなのはやはり民間の緊張感のおるおカネです。堤さんの表現を借りれば「やってはいけないことをやっている企業を救ってはいけない。やらなければいけないことをやっていない企業は救える」。金融が本来果たすべき目利き力と実際に経営を変える実行力が問われています。

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