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“売りのピーク”越えた株式相場――自動車・銀行…“嫌われ業種”に注目も

週明け13日(月)の日経平均株価の終値は455円10銭(2.3%)安の1万9043円40銭。先週1週間で1678円(9.4%)も上昇した反動もあるでしょう。じりじりと下げ幅を拡大してほぼ安値圏で取引を終えました。一つの特徴は商いが少なかったことです。東証一部では1兆6513億円と1月20日以来の低水準。緊急事態宣言の効果などを見極めたいとの雰囲気に加え、13日のロンドンやフランクフルトなどの市場が休場なことも影響したと思います。それからリモートワークの広がり。多分、いろいろな意味で慣れるまでは商いを減少させる方向の圧力がかかりそうです。

それはそれとして、すでに4月に入ったころから商いがガクッと減ってきていることに注目したいと思います。13日、日経CNBC朝エクスプレスの「マーケット・レーダー」に出演した東京東京調査センターの仙石誠さんは「さすがに売りが止まってきた」とみています。3月は市場波乱によるグローバル投資家の売りに加え、日本国内では3月期決算期末前の売りという時期的な需給要因がありました。冒頭の図表は東証一部の売買代金と日経平均株価を重ね合わせたものです。商いが減少するのとは裏腹に、株式相場が堅調さを取り戻している様子が鮮明です。

20.4.13 買い残比率

2番目の上の図表は、信用買い残高の東証1部時価総額に占める比率をみたもので直近で0.31%。これもリーマン・ショック時に匹敵するくらいの低さになっていて、投資家がある程度売り切った(売らされた)ことを示す一つの傍証です。仙石さんの見立ては「ファンダメンタルズが厳しいのはもちろんだけれど、売る主体がないのであれば、大して下げようがない」というものです。さてそうした環境下でどのような投資戦略が考えられるでしょうか?

20.4.13 DIと比率

次の分布図は縦軸に信用買い残の比率、横軸にQUICKコンセンサス(=アナリスト予想)の方向性(=下方修正が多いか、少ないか)をみたもの。左下にあるのは輸送用機器。いわゆる自動車セクターで、下方修正が多い(=業績を巡る環境が厳しい)けれど、信用買い残高比率は低い(=売る人はすでに相当売ってしまった)ということです。実は目かもしれません。左上に鉄鋼があることに若干違和感を感じました。強烈に下げてきた中で買いを入れる向きがある程度いたということでしょう。需給の整理はまだついていない可能性があります。右下には医薬品、卸売業、食料品や銀行などのセクターが見受けられます。「需給はそれほど悪くないけれど、業績面ではこれから悪いニュースに反応してしまうこともあり得る」グループです。

20.4.13 アンダーウエート業種

もう一つ別の観点からの仙石さんの分析。アクティブファンド(=ファンドマネジャーなどの分析に基づき有望な先に投資するタイプの投資信託)による2月末時点でのアンダーウエート業種上位です。ここでも輸送用機器、自動車セクターが目立ちます。そして銀行業がアンダーウエートトップ。まあ、言葉を選ばずにいえばこれらは「投資家から嫌われている」業種ということです。

自動車などの先行きの業況が芳しくはなさそうなことは今さら言うまでもないわけですが、株価の動きがその通りに動くとは限らないのが株式市場の面白いところ、そして難しいところです。嫌われまくっている業種でも「もうこれ以上悪いニュースも出ない」という状態になったら株価はむしろ上昇しやすいことがあります。あるいは相対的に下げ余地が小さいのかもしれません。

個人的に興味深いと感じるのは銀行です。正直言って中長期的には色々な課題を抱えているのは間違いないわけですが、今回の新型コロナショックでは相対的に業績に落ち込みは小さい可能性があります。あくまで相対的にですが……。中小企業のみならず金融による支援は非常に大切な時期を迎えています。端的にいって百貨店も工場も動くに動けない中で、銀行は店を閉めるわけにはいかない状況です。こんな時に頑張って経済を支える役割(これが本来の金融の役割だと思いますけれど)を果たしてくれるなら、ちょっと見直されてもよいとは思いませんか?

さて、こうしたアイディアの大前提は、今回の経済危機が金融危機にはつながらないこと。米FRBを始めとして各国の中央銀行が強烈に、金融のみならず企業を支えようとしていることは見逃せません。

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