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金利!金利!金利!ーー波乱の9月マーケット、米政府機関閉鎖懸念など暗雲

米金利に翻弄される市場――ナスダックは9月に5.8%下落


金利、特に米国の金利の動きに翻弄された印象の9月のグローバルマーケットだった。9月月間ではNYダウ工業株平均は3.5%下落。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は5.8%と大きく下落した。ハイテク、グロース株は金利の影響を受けやすいという教科書通りの展開。ナスダックの下落率は昨年12月以来9カ月ぶりの大きさだった。

TOPIXは月間で今年初めての下落

一方、日経平均株価は9月月間で2.3%の下落。米国に比べれば下落率は小さいとはいえ、これで月間ベースでは3カ月連続の下落。3カ月連続の下落は、新型コロナ拡大初期の2020年1-3月以来、3年半ぶり。と、振り返るとちょっとびっくりでもある。重苦しい雰囲気ではあったわけだ。ちなみに日本の株価の下落率が相対的に小さいのは、銀行や自動車といった伝統的なバリュー(割安)株セクターが堅調だったことが背景。こうしたことから、このところは日経平均株価よりもTOPIX(東証株価指数)の堅調さが目立つ展開が続いているが、そのTOPIXも9月は0.4%とわずかながら下落。TOPIXの月間ベースの下落は昨年12月以来9カ月ぶり。つまりTOPIXは年初来月間ベースでの上昇がずっと続いていたわけだが、その月間連騰も9月は一服となったわけだ。

米金利はおよそ16年ぶりの水準まで上昇

さて、金利である。株安の背景は何といっても金利。特に米国の金利上昇。米10年債利回りは9月月間でおよそ0.5ポイント上昇し、4.57%で9月末を迎えた。9月28日には一時4.68%と2007年10月以来、およそ16年ぶりの水準まで上昇する場面があった。

金利上昇加速は9月FOMCから

9月の金利上昇が加速したのは、9月20日に示された米連邦公開市場委員会(FOMC)のタカ派的な金利見通し。参加者の政策金利見通しは24年、0.5%にとどまった。従来の1%から“半減”である。そのくらい、FRBは米景気が想定より強いとみており、インフレが根深く、比較的高い政策金利を長く続けるとみている。インフレ自体は少しずつ落ち着きつつあり、これだけの引き締め政策に関わらず米国経済が強いことはある意味で謎だ。専門家の間でもこのFOMC、パウエルFRB議長の会見については「ある意味FRBの勝利宣言だ」との声も出たほどではあるが、市場参加者にはサプライズ的な「タカ派姿勢」と映った。金利観の修正が株式売りを促しており、厄介ではある。

日本の長期金利もおよぼ10年ぶり水準に上昇

ちなみに日本も金利に関しては他人ごととは言えない。日本国債10年債利回りは月末、一時0.770%とおよそ10年ぶりの水準まで上昇した。日本銀行自体は9月21-22日の金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めており、植田和男総裁は「(YCC修正などの時期を)到底決め打ちはできない」などと会見で述べ、一部で出ていた金融政策の早期修正観測を打ち消している。ある有力エコノミストは「米FRB、欧州ECBとまったく同じように金融政策の引き締めが遅れるという過ちを犯しているように見える」と指摘している。僕自身は、日銀自体は“千載一遇”の金融政策修正のタイミングをうかがっていると感じているが、政治的なハレーションやらなにやらで慎重に動かざるを得ないのだろうと想像している。結果として、1ドル=150円をうかがう円安というこれまた厄介な問題を抱えている。

中央銀行と市場の認識ギャップ、いつまで?


米国も日本でも、あるいは他の主要国でも、相変わらず中央銀行と市場のコミュニケーションがぎくしゃくしているように見えるのは不安だ。この点が徐々に落ち着きを取り戻していくかどうか――。米国では9月後半からは政府機関の閉鎖の可能性も高まっている。この週末にも“ミラクル”的な展開をみせない限り、10月早々の市場は、財政運営の混乱を嫌気した米国債売りにより、一段の波乱の展開となる可能性がある。市場から目が離せない展開が続く。


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