Vol.48 WEB調査の回答率はなぜ低いのか?
2022年2月
たまには調査会社らしく、「調査」について語らせていただきたいと思います。
調査の手法は様々ありますが、最近はDXの時代ということもあり、インターネットを使った調査についてご相談をいただくことが多くなっています。
お客様に向けたアンケート調査でのお悩み事No.1は、断トツで「WEB調査の回答率が低い」こと。
特に、従来郵送調査で実施をしていた調査をWEB調査に切り替えると、その回収率低下に驚かされます。調査票にわざわざ手記入で回答してポストに投函しなければならないという面倒な郵送調査より、気軽に自宅でも回答できるWEB調査の回答率が低いのはどうしてでしょうか。
考察してみたいと思います。
一番簡単に思いつくのは、高齢層の存在です。総務省の情報通信白書によれば、65歳以上のインターネットの平均利用率は54%程度でしかありません。
しかもこれは、過去1年間で使った割合で、日常的利用者であればもっと低いことになります。
このため、調査対象者に高齢者が含まれる場合は特に大きく回答率が低下することになります。
余談ですが、2019年にNHKで開催された「文研フォーラム」内でのワークショップ「WEB式世論調査の可能性」(https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2019/report.html) インターネットを使った調査について報告があり、郵送調査との比較について発表されました。この時の研究では、60歳以上については調査対象にせず、分析もしていませんでした。
なぜ60歳以上についての検証がないか尋ねたところ、"過去の経験から、ネット調査については60歳以上はあまりにも偏った意見しか取れないので、
検討するにも値しない"ということでした。
WEB調査では、高齢者の回答率が落ちるだけでなく、数少ない回答者の意見も偏っているので注意が必要です。
では、年代が若い層に対しての調査であれば大丈夫なのかというと、実際には高齢層以外でも、WEB調査の回答率は低く、他にも低回収率の原因がありそうです。
なぜそのようになるのか、このヒントの1つが、先に述べたNHK文研フォーラムの資料の中にあります。彼らが実施したWEB調査では、郵送調査と同等以上の回収率を実現しています。
これは、やり方によってはWEB調査が郵送調査に引けをとらない回収率を実現できることを示しており、ひいては「WEB調査であること」が、回収率が低い原因ではないということを表しています。
答えを言うと、WEB調査の回答率が低いのは、WEB調査の仕組みそのものではなく、調査協力依頼がしっかりとできていないことに問題があります。
電子メールでの依頼では、読み飛ばされてしまいます。
調査サイトへの案内だけを郵送で送っても、その調査がどのような分量や内容のものなのか、サイトにアクセスするまで分からず、回答するかどうかの判断ができません。
郵送調査では、封筒を開封して調査票を目にした段階で調査がどのようなものか理解いただけるので、その時点で調査依頼が完了するのですが、WEB調査の場合は手間をかけてサイトにアクセスいただいて、調査がどのようなものかを見るところまでいって初めて調査の依頼が完了したことになります。
郵送調査と比べて依頼が届きにくく、調査に答えてよいかどうかの判断をしてもらうのが難しいのです。
そうすると、WEB調査で回答率を高めるために必要なのは、「まずはサイトにアクセスしてもらう工夫をすること、そしていかに回答してもよいという気持ちになってもらうか」ということになります。
このあたりの知見・経験は実はまだ世の中にあまりありませんし、検討の余地があるところです。
この文章を書きながら思いついた施策として、「サイトにアクセスしただけでポイント付与」など面白いかもしれません。
WEB調査の回答率に関するお悩み事がありましたら、ぜひ一緒に解決に向けて伴走させていただきたいと考えています。
ぜひご相談ください。
ひとつだけ重要なことを付け加えます。
依頼のやりかたにも増して回答率を高めるために最も重要なことは、「調査票への回答負担が少ないこと」で、そのために大事なのは「調査票の分量が少ないこと」です。
弊社で請け負っている調査の実績をみると、調査の分量に回答率が反比例しているのは明らかです。
特にWEB調査の場合、スマホですきま時間での回答を希望される人が多く、
調査の分量が多いのは致命的です。調査の目的にあわせて設問を効果的に絞り込むことができれば、それはお客様の負担軽減につながり、回答率向上にもつながります。
ぜひ、調査の分量には気を付けていただきたいと思います。
※NHKの取り組みについては、上記のリンク内に資料があります。アプリを活用するなど、面白い取り組みをしています。
ご要望がありましたら、また今後のコラムメールなどで解説をさせていただきたいと思います。
■今週の執筆者■
佐藤 寧(アカウント1部 部長)
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日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
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