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大学生が13000円のメシ食いに行った話 【後編】
前編はこちら
あらすじ
大学生でありながら高くて旨いごはんを食べたかった私は、アルバイトで稼いだ万札を握りしめて高級日本料理屋「寿司ふじ」へ向かう。
鯨、ハモ、うなぎ…振る舞われた料理のすべてに心打たれ、「うめぇ」を連呼するマシーンと化した。
しかし、そんな私にも容赦なく、「寿司ふじ」はさらなる旨い料理を送り出すのだった…。
4. 酒と肴と部屋とYシャツと私
食べ進めるうちにグラスが空いたので、新しいお酒を頼むことにします。
友人は先ほどと同じ「七水」を(かなり気に入った様子)、私は新しく「花邑」という日本酒を注文しました。
すると、私たちが頼んだ日本酒の他にもう一つ酒瓶が出てきました。
これは一体…?
「こちらの『御垣内』は現在『寿司ふじ』の周年イベントでお客様にサービスさせていただいているお酒です。とても貴重で、30本しか流通していないんですよ。」
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??????
「30本しかないお酒をお客様にサービス」だって???
それは矛盾してやいませんか?大丈夫なの?
今年で「寿司ふじ」さんは46周年。
少しキリの悪い数字にも思えますが、45周年だった去年は、大大将がご病気を患ってしまったそうで、コロナ禍だったこともありバタバタして十分にお祝いできなかったそうです。
大大将が何とかご病気を乗り越えられ、世間もだんだん落ち着いて来ました。そこで今年を「45+1周年」として、去年の分まで盛大にお祝いしよう!となったそうです。
その一つが「御垣内」のサービスということで…流石に太っ腹すぎやしませんか?
まずは「花邑」からいただきましょう!
一口ゴクリ…。
んー!フルーティだ!
甘くて澄んだ味わいがします。
初めに呑んだ「七水」と比べると、こちらの方がより味が強いかな…?という印象。
それでは次に「御垣内」を…。
こちらはお猪口になみなみと注いでいただきました。
えーーー!なんだこれ!
ほぼ水じゃん!!!!
お冷と誤解するぐらいにクリアで、後味でほんのり香るアルコールにやっとこれがお酒だと認識できました。
「物足りない」という意味ではなく「いくらでも飲めちゃう」ということです。キケンキケン!私の中の赤信号が点滅しています。
この日は日本酒についてたくさん知ることができました。
感じたことは、「料理が喉元を通り過ぎる時に、日本酒の真価が発揮されるのではないか」という仮説です。
例えばビールが一口目を楽しむものであれば、日本酒は料理を飲み込んだ時に再び香る風味を楽しむものではないでしょうか。
3種類の日本酒と美味しい料理をいただいて、そんなことを考えました。
お酒って美味しいんだなぁ…!
次の料理はこちらの「のどぐろの潰し寿司」
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おおっ!
これが電話で伺った、脂の乗ったのどぐろの料理ですね。
酢飯の上に蒸したのどぐろと芽ねぎを乗せた一品。
のどぐろを潰しながら混ぜるとリゾットのようになるとか…。
いやいや、混ぜご飯にはなるかもしれないけど、リゾットにはならないでしょ…。
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これ写真で伝わりますか?
のどぐろに脂が乗りすぎて、混ぜただけで本っ当にリゾットみたいになっちゃうんです。
準備が整ったところで、パクリ。
しみじみ、良いお味だ…。
のどぐろの旨味と酢飯の甘みがマッチして、すごく優しい味です。
初めてのどぐろを食べましたが、淡白な白身と濃厚な脂の組み合わせが他の魚には無いですね。
この料理と一緒に呑む日本酒が旨いのなんの!
友人はこの日の料理の中でこの「のどぐろの潰し寿司」が一番旨かった!と言っていました。
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続いての料理は「京賀茂ナスの肉味噌&木の芽味噌田楽」
ここで初めてお野菜がメインの料理です!
そしてこれが私の一番印象に残った料理でもあります!
「ほくほく」という擬音はお芋料理の味を表現する時に使われることが多いですが、このナス田楽を表すのにも適した擬音かもしれません。
ナス田楽といえば「とろとろ」でしょう。
しかし、この一品は加茂ナスに実がぎっしり詰まっていて、「とろとろ」でありながら「ほくほく」、つまりは「とろほく」でした!
お箸を入れると簡単に割けるほど柔らかいナスを、お味噌と一緒にいただきます。
熱っ…んまー!!
火の入れ具合がまた絶妙で、口の中でもまだナスがみずみずしい。
皮の食感もしっかり残ってるんですよ!
私が家で焼きナスを作ると、皮がクタクタで存在感ゼロになるので、きっとこれは素晴らしい技術なんだと思います。
お味噌も肉味噌と木の芽味噌の2種類で味変できます。2つ混ぜちゃってもいいんですよ!!
我が家の焼きナスとは似ても似つかない、素晴らしいナス田楽でした。
当たり前か笑
5. ラストスパート
長いコースも遂に残り2品となりました。
ここまでの料理の数々には驚かされぱなしです。出てくる料理や食材の全てに“Wow!”がありました。
おかげでもう「ちょっとやそっとの事じゃ驚かないぞ!」という謎の自信すら湧いてきます。
満を持して、次の料理にいこうじゃありませんか。
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?
何ですかこれ?
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「うなぎのしゃぶしゃぶ」でした!!!
何じゃそれ!!!
前編で取り上げた『うなぎの白焼き&蒲焼き』に続く2品目のうなぎ料理は、「うなぎのしゃぶしゃぶ」でした。
いちいち想像を超えてくれるよなぁ…。
今までの料理は皆さんも写真から大体の味や食感が想像できたと思うんです。でもこの料理はどうでしょう?
流石にピンと来ないんじゃないかな〜。
ということで一層、食レポを頑張らねばなりません。
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添えてある白髪ネギと一緒にポン酢につけて…パクっと。
おお〜〜これは初めてだ。
あっさりした味わいです。しゃぶしゃぶ具合や切り方にもよるでしょうが、身は比較的しっかりしている印象でした。強いていうなら鯛のしゃぶしゃぶに似ているかもしれません。
ただ、うなぎ特有のニュルッとした脂。アレがこのしゃぶしゃぶでも健在ですね!
鯛しゃぶやブリしゃぶなど、他の魚のしゃぶしゃぶとの違いと言えるでしょう。さっぱりしたポン酢と良いハーモニーを生み出していました。
薬味の白髪ネギもシャキシャキと良いアクセントでした。
元々私はネギが好きで、「もし農家になるならばネギ農家がいい」と公言しているほどです。薬味と言えど一本も残しまへんで!
写真に撮るのを忘れたのですが、「これ、サービスね!」と大大将がハモのしゃぶしゃぶを1枚くれました。そんなことしてええんすか…。
当たり前にウマかった…!小骨も全く気にならず、もしゃもしゃと食べました。
うなぎにハモに、夏を満喫できました。
最後の〆はお寿司です。
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なんかねー、正直言ってお腹いっぱいなんですよもう。
でも不思議なことに最後入っちゃうんですよね、このお寿司が。いうてもお米なんでボリュームあるはずなのに、どうしてなんでしょう。
最後のこのお寿司のことは覚えてないんです。
だって気がついたら無くなってたから。
「トロがまさにとろけるなー」とか「ほたてかと思ったら平貝なんだ、美味しいー」とか「わーい大好物のウニだ」とか、色々感じたはずなんですけどね。あっという間に無くなってました。
あと、ここにもこっそりうなぎがいますね。この日だけでどれほどのうなぎを食べたんでしょう私は。うなぎ警察がいたら間違いなく捕まっていました。
このお寿司でコースは終わりです。
食べ終わった後は友人と二人で「はぁ…」とため息を吐きました笑
6. 振り返って
まず、お金の話から。
タイトルにもある通り、この日はコースとお酒で合わせて13000円ほどでした。
率直な感想は…
安い!
いやいや安いわけはないんですよ。
私の毎月の食費って、外食含めた平均が大体25000円ぐらいなんですね。
だから13000円って、私にとっては食費半月分ぐらいの値段になるんです。
でもね、「安いな」って思っちゃったんですよ。
あんなに旨いもの食べて、もっと払わなくていいのかな、という気持ちになりました。
そりゃもちろん、今の私には毎月通ったりはできません。そういう意味の「安い」ではないんです。
ただ、このお値段で、こんなに満足感のある食事ができるなら「安い」
そういうことです。
友人とは「季節が巡って半年先ぐらいにまた来ようね」と約束しました。
どちらが言い出すでもなく、二人とも自然と約束していました。
そして、楽しい時間を彩ってくれたのは、料理だけでなくお店の方のお話や柔らかいお人柄です。
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「旨いもの」をお客さんに届けるエネルギーに溢れておられ、こんな風に料理を紹介した20ページ弱のブックレットも作ってしまうほど!
公式ホームページも見やすい!
お料理の説明も、一つ一つが発想の背景からとても丁寧に書かれています。
私の勝手なイメージですが、高級なお店ってメディアリテラシーが低かったり、SNSなどはあまり運用していなかったりする印象があるんです。
ですが、「寿司ふじ」さんは細かく情報を更新されていて、事前に調べやすかったです。こういったお店に行くのは初めてで、やはり不安もあったので…。
「脊髄反射で旨い料理」というコンセプトも素敵ですよね。
良い意味で敷居が低く思えて、「自分みたいな世間知らずも行って良いのかな」と「寿司ふじ」さんに伺う決め手になったように思います。
みんな…
高いメシはいいぞ!!
ごはんを心から楽しめる若いうちに高いメシを食べよう!!
高いメシって量が多いからさ…胃袋のデカい今のうちに食おうな!!
血糖値を気にしない今のうちに食おうな!!!
そしてもしよかったら、どのお店に行こうか迷った時は「寿司ふじ」さんのことも思い出してくださいね。
心から、おすすめいたします。
最後になりますが、寿司ふじさんのホームページにて、「大学生が13000円のメシ食いに行った話【前編】」をご厚意により紹介していただきました!!
まさかそんなことをしていただけるなんて、書いている時は到底想像していませんでした。うんうん悩みながら書いた文章が多くの人の目に留まることになって、大変嬉しいです。
この場を借りてお礼申し上げます。
前編はこちら