TRAIN TV感想(2024年4月)

 4月に入り、ほんのちょっぴり世界の見え方が変わる。服飾業界の都合により、良し悪しのわからぬままに売りつけられたリクルートスーツとか言うペラペラの布をまとう若者たちが新生活に期待と不安混じりのキラキラとした表情を浮かべている。その周囲をもはや希望などなく、ただただ右肩下がりの人生を送り、いずれ使い潰される運命にあるわれわれは洞窟の奥よりも暗い表情でうつむいているのだ。

 ふと顔を上げると電車内の液晶ディスプレイには「1分後に世界が変わる」と謳うTRAIN TVなる放送がはじまっていた。

「1分後に…世界が…変わる…?」

「なに、馬鹿なことを言っているんだ」

 わたしはそう思った。1分、それどころか何十年かかっても自分の人生ひとつ変えることができなかった人間たちの掃き溜めなのだ。この通勤電車という場所は。


2024-04-01 08:25:59 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 4月に入り電車の液晶広告が一新されたがつまらなさが度を超している、やれヒカキンチャレンジだ、沈黙大喜利だ、ビリビリペンでスローモーションだと中身のないお笑いばかりになってしまった。

 先月までNewspicsがこの資本主義社会に適合した人間になろうと盛んに宣伝していたのに、今はもう即物的な笑いを提供しているのみだ。もしかしたらいよいよ資本主義の終わりが近づいているのかもしれない。

 ひとつの社会体制が終わりを迎えるとき、人びとは大きな代償を支払わされる。そのときわれわれは乾いた笑いを浮かべることしかできない。電車の液晶広告はそんなことを伝えたいのかもしれませんね。

2024-04-03 21:46:34 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 電車の液晶広告でヒカキンが山手線の駅を全部言えるか挑戦する企画をやっているのだけど、全部言い切ったあとに「TRAIN TVは無音です」と言われて唖然とするオチが意味わかんないんだよな。「無音だから「言ってません」」ってことだろうか?ならば、その字幕はなんなんだ?って話だしとにかく構成力の低さを感じざるを得ない。先が思いやられる。

2024-04-04 08:04:21 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 電車内の液晶広告をみていたらヒカキンが信号の青赤黄の配置を答えるクイズに挑戦していた。正解は左から青、黄色、赤の順番だ。ご存じの通り、日本の信号は右側に赤が配置されている。つまりこれは階級闘争の末、右もやがては共産主義に染まることを暗示しています。

2024-04-08 08:04:58 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 4月に入り電車の液晶広告の中身のなさを嘆くばかりだったのだけど「現役学生に聞いた~」とかをやっているところを見るにひょっとして広告のターゲットとする年齢層を下げたのかしら?若いうちからこの世は虚無だと教育しようと?

2024-04-08 08:09:22 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 ラブドールってエロさよりも不気味の谷現象で気持ち悪さが先に来てしまうのだけど、最近電車の液晶広告でランキングやってる今どき初代プレステみたいな女の子のCGにも不気味の谷を感じてしまう。

2024-04-09 21:43:37 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 電車の液晶広告に「変顔→真顔の世界記録に挑戦」を見せられているときわたしはスナギツネのような顔をしている。スナギツネが砂を噛むような表情を。

2024-04-11 08:04:40 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 電車内の液晶広告を見てたら、「新社会人に聞いた初任給の使い方ランキング」がはじまり、10位に「投資」がランクインしていた。そのランキングが終わるとスマホひとつで買える宝くじ広告、都内の起業家向けオープンオフィスの広告が流れた。

「俺たちも富豪なれる」

 広告はそんな夢だけは見せてくれるが、人から見れば夢は儚い。

2024-04-15 08:34:19 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 今日は電車が遅れている上、今は駅と駅との間で電車が止まっている。すし詰めの満員電車の中、液晶広告ではヒカキンが「ラジオ体操をするゴリラ」の物まねをしたり、芸人が顔芸を披露していて、こちらの心的疲労も増すばかりである。

 4月からの電車広告の虚無さをみるに巨大資本によるわれわれ労働者の心を折るための企みであることは明らかだ。金さえあれば中身のない広告を延々と流し続けられる。しかし、われわれに対しては常に自分たちの労働を意味を問い、人生のすべてを賭けることを求めるのだ。

2024-04-15 08:53:18 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 電車の液晶広告をみていたら9歳の女の子が片手でも巻きやすい絆創膏を考案したとやっていた。これは「30代後半のお前は何を成し遂げたのだ?」と天がわたしに問いかけているのだろう。こうやって、日々「お前は何にもなれなかった人間なのだ」とありとあらゆるものがわたしにその事実を突きつけくる。

 インターネットで30、40代がトラブルを起こすのもたいていの場合、「何にもなれなかった自分」を受け入れることができなかったからだろう。インターネットではみな自分を賢くみせよう、代替不可能な人間であるとみせようと必死になり、やがておかしくなってしまう。

 30代過ぎたら自分の何者でもなさを受け入れるしかない。もしかしたら、それでも遅すぎるのかもしれませんが。

2024-04-16 08:21:12 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 4月からはじまった電車の液晶広告を義務として観ているのだけど、今日はヘアケア用品のランキングに「美髪課金」なる造語を当てていることに気づいた。4月からの広告は全体的に虚無というのがわたしの感想なのだけど、それに加えて作り手の品のなさがときどき垣間見えてしまうところに嫌さが詰まっている。義務を果たすのも楽な生き方ではない。

2024-04-18 20:31:42 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 TRAIN TVのキャッチコピーは「電車の中のテレビ、はじまる。」なのだけど、やってることはヒカキンがジェスチャークイズしたり、芸人が変額したりとまるで中身がない。

 おそらく「テレビってこんなもんっしょ?」という作り手の舐めがあると思う。まあ、テレビってそんなものなのは間違いないと思うが、ならばいまどき「テレビ局」に何か付加価値があると思っているところに大きな間違いがあると思う。もちろん、一番間違ってるのは電車に乗る度に広告にやいやい言ってるわたしだと思う。

2024-04-18 20:37:59 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 すし詰めの車内でスマホも本も取り出せず、無味乾燥な液晶広告を見せ続けられる。とんだルドヴィコ療法だ。

2024-04-19 08:31:11 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 TRAIN TVが「こんな授業参観はいやだ」みたいな大喜利をやっているけれど「こんな電車広告はいやだ」というお題の答えだからな。お前が。

2024-04-19 21:13:09 日記といふもの nikitofu@toot.blue

 目の前にTRAIN TVを録画している若人がいるのだけど、虚無を写した動画には、虚無以外の何か映るのだろうか?

 4月からはじまったTRAIN TVは虚無の放送であり観れども観れどもなんの感想もわかない。広告とは常に炎上リスクを孕むコンテンツであるが、世間からの批判を回避するための方策として広告自体虚無であるという解決策を見つけたのだろうか。

 人間が何もないものに言及することたやすいことではない。それは人類が0という概念を発見するまでには途方もない時間がかかったことからもあきらかである。

2024-04-25 20:43:54 日記といふもの nikitofu@toot.blue

*投稿内容は一部、加筆修正しております。

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