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Katy Perry 『Prism』を語る。

10代で出逢った音楽はいつまでも特別。

それは作品の内容だけでなく、それを聴いた時の「年齢」も相まって特別になるのだ。

2013年、Katy Perryが『Prism』というアルバムをリリースした。お気に入りの音楽といえば数え切れないほどあるけれど、私にとってこの作品は、曲単体ではなく「アルバム」としていまだに特別な作品だ。理由はわからないけれど、初めて聴いた時の記憶を今でも鮮明に覚えている。当時私は17歳だった。

そんなわけでこのアルバムを語りたい理由があまりに個人的で曖昧な為、ここから先はKatyが好きな方、興味がある方だけに読んでいただければ幸いだ。

では早速始めていこう。

1. Roar

アルバムの冒頭にふさわしい華々しい一曲。
前作『Teenage Dream』が大成功した裏側で、私生活ではボロボロだったKaty。その苦しみを知っていたからこそ、力強い雄叫びをあげて勇しく帰還してきた彼女に元気をもらったファンも多いはず。もちろん私もその一人だ。
ズッシリと重いビートにのって伸びやかに歌いあげられるChorusは「吠える」表現を見事ポップソングに落とし込んでいると思う。印象的で親しみやすいメロディーはまさにKatyらしい。ちなみに全然関係ないけど、ランニングとかワークアウトの時にこれ聴くとめっちゃアガる。

2. Legendary Lovers

Katy Perryというアーティストのイメージを確立させたポップさ全開の前作と、音楽面・ヴィジュアル共に変化を見せた革新作『Witness』の中間にある今作は、彼女らしい明るくポップな楽曲も残しつつ、新しい音楽にも挑戦しようとしているところが垣間見える。そのいい例がこの曲だ。
2曲目から良い意味で期待を裏切られた。マントラやカルマといったアジア由来の古代言語が歌詞に多用され、民族楽器によってサウンド的にもエスニックな薫りが漂う。またPre-Chorusでの印象的な早口も、後の「Never Really Over」に繋がっている?と今となっては思う。

3. Birthday

このアルバムでKatyらしさが最も爆発している曲ではないだろうか。とにかくポップでキャッチー!聴いていると自然と笑顔になってしまうような曲。これを聴きながらパーティーの飾り付けをしたら楽しいだろうな〜とか空想しながら踊っていたのが懐かしい。
ちなみに一番最後のChorusでKatyがシャウトしているが、Cash CashによるRemix Ver.ではそれが前面に押し出されていてめちゃくちゃカッコいい。

4. Walking On Air

シングルカットはされていないが、アルバム発売直前に先行で音源が配信され、ディスコ調のアゲなサウンドに大興奮したのを今でも覚えている。TVやライヴでパフォーマンスされることも多い楽曲で、ファンとしては非常に嬉しい。
少しコアな事を言うと、Pre-Chorus→Chorusは1番と2番いずれも歌詞とメロディーが同じだが、それぞれ裏で鳴っているサウンドの性質を1番と2番で逆?にしているところが、変化を感じられて秀逸なポイントだと思う。

5. Unconditionally

Katy自身がこのアルバムで最もお気に入りだと明言する、美しく壮大なバラード。人を愛する上で重要なのは「相手をどれだけ受け入れるか」にかかっていると彼女は言う。相手の綺麗な部分だけを見ていても、その愛が続くことはない。人は誰しも弱い部分、汚い部分、人には見せたくないようなところを持っていて、それを互いに受容し認め合うことが大切なのだ。
ところで、この曲には通常版とLyric Videoの2つのMVが存在するが、Lyric Videoについて少し紹介させてほしい。

MVではロングヘアの女性がもう一人の人物に対してこの曲を歌っている。Video公開時「この相手は男性なの?女性なの?」という意見がコメント欄を飛び交っていたが、確かにこの映像では顔しか見えていない為、相手の性別はわからない。「相手はKaty?」という声もあれば、「レオナルド・ディカプリオじゃない?」とか「リバー・フェニックスみたい」という意見もあった。確かに似てはいる。笑
実はこの相手はErika Linderという女性だが、ジェンダーレスモデルとして活躍したり女性同士の恋愛を描いた映画にも出演していて、Erika自身も「(性別やセクシュアリティの)ラベルを貼られたくない」とメディアで語っている。あえて性別の枠に捉われないモデルを起用したことで、この楽曲で歌われる「無条件の愛」が、性別や人種といった壁を取り払った自由の中に存在するものだというメッセージも伝わってくる。

6. Dark Horse Feat. Juicy J

2014年に大ヒットしたシングルだけど、この曲がこれほど売れたことについてはKaty自身予想外だったそう。実は私も先行で試聴した際は「Roar」と比較するとやや微妙かなという印象を受けた気がする。Katyはどちらかといえばメジャーコードの曲の方が合っていると思っていたからだ。
ただ、聴けば聴くほど重厚なベース音の響きやKatyのコケティッシュな歌声に魅了され、気づけば私もこの曲の虜になっていた。第一印象のインパクトというよりは、中毒性で人を惹きつけるタイプの楽曲なのかなと思う。
「E.T.」「Wide Awake」のようなKatyのダークファンタジーな世界観、大好きです。

7. This Is How We Do

「Last Friday Night」の大人Ver.といったら良いだろうか。ゴージャスでパーティー好きなライフスタイルを肯定するようなポップチューン。MVで様々なスタイルのファッションを身に纏うKatyも可愛くて美しい。
ところで「No, no, no, Bring the beat back」の部分、Katyの真似して一緒に口ずさんでしまう人いませんか?私はやってます。笑

8. International Smile

こちらも軽快なポップチューン。この曲に登場する「She」とはKatyの親友でもあるDJ「Mia Moretti」のことで、彼女にインスパイアされて書いたという。

'Cause she's a little bit of Yoko
彼女には少しヨーコ(オノ)っぽいところがあって
And she's a little bit of, "Oh no"
ちょっとだけ、"オー、ノー!"って感じなの
※オノとOh noをかけている

「This Is How We Do」もそうだが、こういう言葉遊びが出てくるところも面白くて好きだ。ちなみに海外旅行に行く時の空港とか飛行機で聴いたらめちゃくちゃアガる曲。

9. Ghost

ここで少しスローダウン。これまで比較的気分が高揚する曲が続いていたけれど、その流れは一旦ここで落ち着く。
元夫との破局について歌われた曲というのもあって、重たい歌詞が胸に刺さる。どこか切なさを感じる曲調のせいか、肌寒い秋になると聴きたくなる。アルバムの曲で唯一パフォーマンス映像が見つからない...

10. Love Me

『Prism』の中でもかなり重要なメッセージが込められたエンパワメントソング。
大切な人との関係を継続するうちに、相手を失うことを恐れ、好かれようと自分自身を取り繕ってしまうことがある。けれどこの曲を聴くと「私が私であったからこそ、相手は私を選んだ」ということに気づかされる。人に愛されたいと思う人は多くいるだろうけど、その為に必要なのは、他人よりもまず、自分で自分を愛することなのではないだろうか。
コンプレックスだらけで「人にどう思われるか」を長いこと意識して生きてきた私に、本当に大切なことを教えてくれたこの曲、個人的に「Firework」に並ぶ名曲だと思っている。

Sometimes I wish my skin was a costume
時々思うの、この肌がコスチュームだったらいいのに
That I could just unzip and strip
ジッパーを下ろして脱げたらいいのにって

ここなんて、あの「ビニール袋みたいな気分」に継ぐ珍フレーズじゃない?笑

11. This Moment

このアルバムの一番の魅力は、ここからエンディングへと続いていくラスト3曲だと私は思っている。壮大なサウンドの楽曲が並び、何となくクライマックスへと向かっているようにも感じる。
最初の「This Moment」は、16分のリズム(「ドゥダダダ」ってやつ)にのせて高らかに歌われるミディアムテンポの楽曲。「私たちにあるのはこの瞬間だけ」というメッセージは映画『Wallflower』を想起させるようで、果てしない希望に包まれた気分になる。これを初めて聴いた瞬間から私の頭の中にはMVのイメージがあって、ブックレットの写真のように、光に包まれた大自然をKatyが駆け回っている映像が浮かぶ。

12. Double Rainbow

こちらも壮大さを感じさせる一曲。ファルセットを聴かせるKatyの歌声は淡い光のようで『Prism』というアルバムのイメージを体現しているようにも思える。大自然を感じるサウンドは、まるでネイチャー番組のBGMとしても使われていそう。
タイトル的にクィアな内容かと思いきや、人と人との運命的な出逢いを、めったに見られない「二重の虹」と重ねて表現している曲である。

13. By The Grace of God

アルバムの最後を飾るのは、ピアノにのせてしっとりと歌われるバラード。
こちらも元夫との破局についてKatyの心情が綴られており、苦しみから立ち上がろうとする彼女の強さが伝わってくる。ドラマ『glee』の中で「名曲は痛みから生まれる」という台詞があるが、まさに彼女の実体験から生まれた歌はリアルで胸に迫るものがある。

こちらは『Prism』リリース・パーティーでのパフォーマンス映像だ。
Bridgeから最後のChorusにかけての部分がかなりエモーショナルで素晴らしいので、興味がある方はぜひ聴いていただきたい。

*****

というわけで、かなりコアなアルバム紹介?になってしまったし、ほとんど自己満足的なところもあるけれど、Katy Catsの方には何か共感できる点が少しでもあったら嬉しい。

他にも思い入れのある音楽、映画、ドラマ等の作品がたくさんあるので、気が向いたらまたこういうの書きたいなと思う。


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