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ニケと歩けば quatre-vinq-six
少し歩けば汗ばむような朝です。
坂、坂、そして坂をもくもくと歩きます。ニケに話しかけることもありません。彼女も今年は早めの冬毛で早くももこもこして暑そうです。
時々草の匂いをクンクン、向こう側のポメラニアンがお尻尾を振ってこちらにアピールしても知らんぷりです。
回教寺院の前の道は静かで早くも三日月を抱く小塔を見上げるには手をかざす必要があります。
またもう少し東に行くと神戸パプテスト教会があります。こちらはヨーロッパの街を思わせる素敵な建物。
小さな町の中にいろんな世界があります。それぞれが主張することなくしっくりなじんでいるのも北野です。
歩いているうちにタイムスリップして異人が歩くその当時にいるような錯覚に陥りそうです。
大河ドラマの「晴天を衝け」の時代。この地も大きく揺れていたと聞きます。
初代知事の伊藤博文の台座は大倉山公園にあります。そこからずーと南に降りると元町。
文明開化を象徴する町としてハイカラな舶来品を扱う元町商店街がにぎわったそうです。
「銀ブラ」に対して「元ブラ」
栄町は銀行や証券外資が並ぶ「東洋のウォール街」と呼ばれていました。
街がおとなしくなったトドメはやはり阪神淡路大震災です。
この辺りは一枚板の岩盤で地震は来ないと言われていたのを信じた私たちにあらがえない自然の脅威をまざまざと見せつけました。
あの時のことは深く心に沈んでいますが、表面上は何もなかったかのような町並みです。
地震を体験しなくても大変な思いをして神戸にやってきた曽祖父はあの賑やかな元町商店街をきっと歩いていたのでしょう。
一枚の写真でしか会えませんが確かにこの神戸に生きていたことはその背景の山が語っています。
曽祖父のことはジェトコースター人生その49に書いています。読んでいただけたら嬉しいです。