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春遠からじ  ニケと歩けば

この寒さは後どれくらい。まだ雪が降ることもあるでしょう。
六甲からの風が吹いて枯れ葉は公園の、石畳の隅っこに追いやられています。青空の白い残月は今にも消え入りそうです。
溝の山水はカラコロ、ザーザーと勢いを増して我さき?に海に向かって流れています。
大きなクスノキは寒さから守ってくれる鳥たちの大切なねぐら。今は登ってくる猫もいなくて静かです。

我が家ではまだまだエアコンが低くうなっています。
外は温かそうな光で山や建物は照らされて枯れたアジサイの茶色の幹にはちゃんと蕾が付き始めました。

ぼんやりと庭を見ていると、すぐ目の前にメジロが遊びに来ていました。
籐の籠の中、入ったり軽々と淵に飛び乗ったりと私が見ているなんてこれっぽっちも気が付いていないようです。その鮮やかな鶯色は羽毛の鞠のように膨らんで小さな顔のほとんどが真ん丸な目!なんて愛らしい春告げ鳥なんでしょう。

息をひそめてみている私を見てニケは不思議そうに首をかしげていますが窓を隔ててのメジロには気が付かないようです。

色合いのない風景、でも嫌いではありません。いろんなところで春の準備を見ることが出来るからです。

公園の桜はすでに蕾を少し大きくしています。もう頭の中では同じ場所で満開の桜を見ることが出来ます。硬く口をつぐんだような野辺の花。野生の都わすれも春を忘れてはいないよとばかりにまた一回り根を張ったようです。

町猫は草むらにいるのか鳩が安心して飛び降りてきます。顔見知りの犬たちと会うこともありません。何しろ静かです。

ラジオ体操に行く80代の女性もこの寒さ、お会いすることが無くなりました。
バギーに乗って散歩していた男の子は久しぶりに会ったらもう2年生。サッカーのクラブチームに入ったとか。嬉しそうに話す父親に当時の主人が浮かびました。

最近知り合ったマルチーズのさっちゃんは飛び跳ねて楽しくて仕方がない様子です。「ニケもこんな時があったよね?」と顔を見ると何を感じたのか本当にひさしぶりに鳩の群れに向かって走っていきました。

楽しいことを見つけること。心躍ることだけすること。嫌なことはしない。
我慢は禁物。自分の気持ちに正直でいること。
今までは難しいと思っていたこれらのことも今はなんとなくできそうな気になっています。

今日もいい日にしましょう!





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