お勉強388:膀胱温存治療は膀胱全摘と比べて実際どうなのか?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37517601/
膀胱温存のデータ
根治的膀胱摘除術(RC)が
膀胱温存療法(BPT)より優れているという
しっかりしたレベル1のエビデンスはないようだ。
(イングランドでIII相は行われようとしたが、
集積が悪く、話にならんかったらしい
手術vs.放射線治療のランダム化臨床試験は難しい)
非転移性筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)患者には
RC+ネオアジュバントケモ+両側骨盤リンパ節廓清が
EAUでもAUAでも推奨されている。
その一方でRCとBPTは(短期の)
成績は変わらないという報告も散見される
BPTで治療されたMIBC患者とRCで治療された
MIBC患者の生存期間を比較しようという論文
非転移性MIBCと診断された全患者を、
人口ベースオランダがんデータベースで検索。
BPTまたはRC治療を受けた患者のみを対象とした。
プライマリーエンドポイントは2年無病生存期間(DFS)、
※イベントは局所領域再発、遠隔転移、死亡
セカンダリーエンドポイントは全生存期間(OS)であった。
治療群間のベースラインの差を調整するために、
IPTW:inverse propensity treatment weighting
を用いたプロペンシティーマッチング施行。
因子は年齢, 性別, Charlson comorbidity index,
PS, 社会経済的状態,
T因子, 腫瘍サイズ, CIS, 水腎症, TURでの切除状態,
NACの有無, 病院タイプ
結果
合計1432人の患者が組み入れられ、
そのうち1101人がRC、331人がBPTをうけた。
追跡期間中央値は39ヵ月
ほとんどがclinical T2 20%がCIS合併
RCの切除検体では24%がリンパ節転移あり
IPTW前ではRCで腫瘍大き目、水腎症多い
BPTで年齢高め
IPTWによる調整後2年DFSは、
BPTで61.5%(95%CI 53.5-69.6%)
RCで55.3%(95%CI 51.6-59.1%)、
調整後HRは0.84(95%CI 0.69-1.05)
BPT群とRC群の2年OSは、
それぞれ
74.0%(95%CI 67.0-80.9%)
66.0%(95%CI 62.7-68.8%)であり、
調整後HRは0.80(95%CI 0.64-0.98)であった。
非筋層浸潤再発はBPT群6.4%
RC群のほうが局所領域制御は良いが、遠隔転移の割合高い
サルベージの膀胱全摘はBPT群の6.6%で施行
内3/22はケモなしの小線源で温存された群
BPTとRCで治療された患者の2年DFSに統計学的有意差はなし。
非転移性MIBCの適格な患者には、
RCとBPTの両方を根治的治療の選択肢として提供すべきというのが筆者らの結論。
たしかに生存曲線的には4年ぐらいまでほぼ同等だが、
この後どうなるかは気になるところ
(だらだらBPT群が下がってくるというデータもあり)
ただ、日本の現状よりBPTが増えてもいいと個人的には思っている。