恒例行事〈フリー朗読台本〉
規約
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規約は予告無く変更する事があります。
情報
〈概要〉
男子の一人称。モノローグ。
〈読み手の性別〉
不問
〈本文の文字数〉
696文字
〈時間の目安〉
2分
〈最終修正日〉
2024/10/23
本文
僕は静かにため息を吐きながら、この憂鬱な時間が終わるのを待っていた。
年に二度、盆と年末に行われる決まり事。
祖父の自宅で親戚が、一同に集まる恒例行事。
僕の両親、伯父夫婦と伯母夫婦。
そしてイトコたちがいつものように、祖父を囲む形でけたたましく、ずっと誰かが喋っている。
それが、ただただ煩わしかった。
声が大きいだけの、空っぽの言葉が飛び交う空間。
そこに居るだけで、どうにも窮屈で息苦しい。
かといって、その場を勝手に離れる事も出来ず、ずっと俯いた状態でその雑音を聞き流していた。
それが僕にとっての、ここでの恒例行事。
不意に自分の名前が呼ばれて、ドキッとする。
声の方に顔を向けると、祖父の視線が自分に厳しく向けられていた。
またいつもの順番がきたのだと、息苦しさが一層増す。
ある程度のお決まりのやり取りが行われた後、またお決まりの様に祖父が僕たち孫の近況を聞いてくる。
伯父方のイトコから始まり、伯母方のイトコ、そして最後が僕。
半年前と大して変わり映えのない近況を聞き、大袈裟に反応をしては満足そうに笑顔な祖父。
決まった順にそうやって聞いていき、最後は少し間をわざと開けてから僕に話を向けてくるのだ。
そして僕が話し始めれば祖父の詰まらなそうな、これまた大袈裟なため息と、それに合わせるような含み笑いが、周囲から漂ってくるのもいつもの事。
さっきまで皆と同じように、けたたましかった両親もこの時だけは、いつも静かにその時間が過ぎるのを待っていた。
分かりやすいぐらいに感じているイトコたちと自分との差を、より実感する瞬間。
この憂鬱な恒例行事が早く終わればと、僕はまた誰にも気づかれないように小さくため息を吐いた。
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