「A子さんの恋人」と近藤聡乃さん:原点どーも|ナインチェ・プラプラウスの「いつかいなくなっちゃうかもだし」#20
いい名前だなと思うことがあります。
生まれたその時に決められただけのものですが、なぜか名前はその人を表してしまう時があります。
だから名前を大切にすることは大事なことなのかもしれません。
どーもどーも、ナインチェ・プラプラウスです。改めて言いますが、ちんちんじゃありません。
前回、堀切菖蒲園が一年に一度帰る場所と描きましたが、阿佐ヶ谷も二人にとってはそんな場所です。
アプリで出会った二人、メッセージでお互いの好きなものなどを話して仲良くなりました。
特に漫画や音楽の話が多かったのですが、特に盛り上がった話の一つに、ご主人がミフィちゃんにオススメした、近藤聡乃さんの「A子さんの恋人」という漫画がありました。
この漫画は、美大卒業後、NYに移住した女性漫画家のA子さんが日本に帰ってくるところから物語は始まります。
A子さんは、A太郎という彼氏とはっきり分かれないまま渡米。
そして、NYでの彼氏、A君とも分かれず帰国。
こうして、国際三角関係が誕生してしまう、というのがざっくりとしたあらすじです。
作者の近藤聡乃さん自身が、A子さん同様、美大を卒業し漫画を描き、NYに移住している境遇であるため、日本もNYがとてもリアルに描かれます。
リアルな会話、リアルな人間関係が描かれる本作では、まるで本当に彼女たちが住んでいるかのような錯覚を覚えていきます。
そんな場所の一つが阿佐ヶ谷。
A子さんは、美大時代の友人が住んでいることから、帰国後、阿佐ヶ谷に住み始めます。
駅前の描写はもちろんですが、リアルな店名まで記載されています。
そうと決まれば、行きたくなるのがファン心。
A子さんに会いに行こうと、二人は3回目のデート先を阿佐ヶ谷としました。
もうお分かりかと思いますが、3回目のデートです、二人は阿佐ヶ谷で付き合ったのでした。
まぁよくあるカップルの馴れ初め話かもしれませんが、意外と大変だった3回目のデート。
待ち合わせに遅れるタイプでないご主人が、滅多にしない昼寝で1時間近い遅刻。
A子さんに出てくるギオンという純喫茶に行って、時間もあるので2軒目へ。
ご主人がどこで切り出そうかとじりじりしていると、結局、帰ることに。
阿佐ヶ谷を離れちゃあかんと駅前で想いを伝えましたが、ミフィちゃんは「3回目デートで言わなきゃいけないルールとかあるの?」と意外な反応。
ま、いっかとかいう、そんな感じで二人は付き合い始めたのでした。
そんな思い出の地なので、年に1度だけ訪れることを決めているのでした。
「A子さんの恋人」に描かれた場所は、阿佐ヶ谷だけではありません。
谷中やお茶の水、スカイツリーなどゆかりの土地に、二人も行きました。
リアルに描かれる街並みに誘われてしまう心があるのです。
さてさて、せっかくなのでこのまま「A子さんの恋人」のおすすめポイントを3点紹介!
【おすすめ3線!】
・線が素晴らしい
・伏線が素晴らしい
・世界線が素晴らしい
・線が素晴らしい
これは、「A子さんの恋人」だけでなく近藤聡乃さんの全ての作品に言えることなのですが、小気味良い線が特徴的です。
例えば、下記の横顔。
この一本の線で髪の毛全てを表現できてしまうなんて!
最初に見た時から感銘を受けました。
どの絵もとても真似できない、最高の線です。
・伏線が素晴らしい
近年、伏線回収という言葉は当たり前になりました。
好みはありますが、手品師のようにドヤ顔で回収されていく伏線も悪くはないのですが、続くとちょっとうるさいな、と思ってしまうところがあります。
「A子さんの恋人」は、そんな嫌味がまったくありません。
派手な演出もなく、回収されていく伏線は、気持ちがよくもありながら、自分たちの日常にもありそうと思えて、日常を楽しめる新たな視点をもたらしてくれます。
・世界線が素晴らしい
A子さんを取り巻く仲間たちは、自分の周りにもいそうと思える素敵な人たちです。
モブキャラという言葉がこの漫画には当てはまらないくらい、少ししか登場しない人たちも生き生きとした姿が感じられます。
キャラクターを単純に記号化せず、ちょい役の意外な一面すら描ききることで、リアルさを生み出していくのです。
まだまだ語りきれないですが、たくさん魅力が詰まった作品です。
未読の方は是非、お読みいただければと思います!
実を言うとと、私ナインチェ・プラプラウス、この投稿を始めようと思ったきっかけの一つが、近藤聡乃さんだったりします。
近藤聡乃さんがニューヨークでの日々を綴ったコミックエッセイ「ニューヨークで考え中」を読んで、日常を綴ることの魅力を感じたのでした。
何を持っても足元にも及びませんが、憧れのお姿を思い出して、これからも綴って行こうと思います。
20回目の投稿ということで、少し原点回帰をしてみたナインチェでした。