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子どもにアートアニメを!

最近「アートアニメーション」と呼ばれる種類の作品を頻繁に視聴している。アートアニメとはディズニーやピクサー、日本のマンガ原作のアニメなどの商業的エンターテインメント作品とは違い、もっと作家性や芸術性の高い作品のことだ。

僕はエンターテインメント作品も大好きだけど、アートアニメにはそれとは違った独特の魅力があり、芸術的な価値や深いメッセージ性のある作品も多いので勉強を兼ねて積極的に見るようにしている。

アートアニメの殿堂として有名なのがNFB(カナダ国立映画制作庁)で、1939年の設立以来多くのドキュメンタリーや短編アニメーションを制作してアカデミー賞を何度も獲得している。その中に世界的に有名なアニメ作家の1人で「コ・ホードマン」がいる。

彼の作品はコマ撮り作品で子供も大人も楽しめるかわいいキャラクターのものが多い。素晴らしいことにNFBはホードマンなど多くの有名作家の作品をネット公開していて、昔は一般的に視聴するのが難しかったアートアニメ作品を誰でも簡単に見れるようになっている。しかもアートアニメは特定の言語を使用していないノンバーバルな作品が多いので幼児から大人まで国籍問わず楽しめる。

このサイトでホードマンの名作の数々が紹介されているが、その1つに「シュッシュ」(1972年)がある。これは積み木をコマ撮りした作品で、キャラクターと背景の建物のデザインがとてもカラフルでかわいらしい。

商業アニメではセル画やCGで造り上げたイリュージョンの世界に見ている人を引き込むが、アートアニメでは身近な素材を使用し、その特質をそのまま生かして撮影したような作品が多いため、映像に対して親しみや温もりが感じられるのが特徴だ。

「シュッシュ」は50年前の作品にも関わらず、「積み木」ならではのビジュアル面とその特性を生かしたユニークな動きの魅力は古さを感じさせない。

ストーリーは平和な積み木の世界で遊んでいた少年と少女のもとに恐ろしいドラゴンが現れてなんとか退治しようとするというシンプルなものだが、僕が特に好きなのは最後のオチだ。

暴れん坊で強いドラゴンをどうにかしたいと少年と少女が知恵を働かせて、ドラゴンが寝ている間に積み木でできた体の一部に車輪などのパーツを混ぜ、ドラゴンが目を覚ますと汽車となって動き出し、みんなで乗っかって楽しく走り出して終わる。

自分の平和を脅かす敵を力で倒したり排除するのではなく、知恵を使って自分の仲間にしてしまうのはベストな解決策で、孫氏の有名な名言「戦わずして勝つ」を思い出させる。

力で敵を倒した場合は自分もダメージを負ってマイナスになる。うまく退けたり排除したらプラスマイナス0。でも仲間にできたらプラスになる。危険を回避したうえに得もする。これこそ理想的な勝利じゃないだろうか。

僕も自分のアニメ作品の中で、主人公が敵と戦うのではなくて友達になってしまうというながれを使うことがある。最近は実生活でもそうできるように努めている。

例えば身近な誰かを嫌いになりそう、つまり自分の敵だと感じてしまうような場合に、避けて距離を置くのもひとつの方法だけど、相手のいいところや過去に自分にしてくれた感謝できることを思い出すと負の感情が抑えられて、再びいい関係を続けられるようになる。そのほうが幸せだと思う。

少年と少女が怖いドラゴンを汽車に変えて一緒に遊んでしまうというオチは、積み木ならではのユニークでかわいいアイデアでありながら、大事なメッセージが込められているように感じた。

NFBのアニメ群は子どもでも大人でも無料で見れて楽しめる、貴重な世界の財産だ。商業的なエンターテインメント作品も大事だけど、一方で希少で価値あるアートアニメ作品の多くをもっと子どもたちに見せられる機会を作ってあげるべきだと改めて思う。


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