見出し画像

Vol.10|家族にとって初めてのお別れだったから、最期にふさわしい場所を探した

天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。

飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。

ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。

大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。

vol.10は、家族の中で女王様のように振舞っていた、ミニチュアダックスフントのハナちゃんのお話をお届けします。

犬種:ミニチュアダックスフント/女の子
享年:16歳
語り手:Y.Iさん


「ワン」と吠えられない赤ちゃん犬から、女王様みたいな犬に成長

最初に出会った時の印象を教えてください

最初は、2ヶ月に満たないくらいで家に来ました。あんなに小さなワンちゃんに会ったのは初めてで、「こんなにちっちゃいんだな」「すごく可愛い」というのが第一印象でした。その中でも特に、ワンって吠えられないことに驚きました。初めはクンクンなどの声だけだったのが、少し大きくなると、キャンと吠えることができるようになりました。犬も赤ちゃんの時に吠えられないのは、人間と同じだと思いました。
ハナを迎え入れた当時、私は中学生でした。1番下の弟が小学生になり、家族で「そろそろ動物を飼いたいね」という話をしていたんです。
実際に連れて帰ってきたのは母だったので、決め手の細かいことはわかりません。ブリーダーさんの所に子犬が2匹いて、家族の中では「女の子がいいね」って話をしていたので、ハナに決まったんだと思います。

どのような性格でしたか?

年を取ってからは性格が少し変わったんですけど、基本的にすごく愛嬌のある子でした。お散歩に行っても、人間の中で育ってるから「自分は人間だ」と思ってるみたいでした。人が好きで、「誰か私のこと可愛がってくれるかな?」という感じで自分から近寄って行ってましたよ。
逆に、他の犬のことはすごく嫌だったみたいで、散歩の途中で向こうから犬の姿が見えると、くるっとターンしたりしてました(笑)
甘え上手で、家族が横になっていると、その脇にぴったりくっついて一緒にゴロゴロするのが好きでした。ロープを結んだおもちゃが好きで、自分から私たちの所に持ってきて、よく遊びました。すごく臭いし汚いんですけど、丈夫だったので長年使っていましたね。
気分屋で、甘やかしすぎた末っ子みたいな感じで育ちました。自分の意思をすごくはっきりと伝えてきて、「嫌なものは嫌!」と言っていました。女王様みたいで、あまり犬っぽくなかったように思います。


甘え上手で、家族と遊ぶのが大好き!


いたずらや困ったことはありましたか?

お留守番させると腹いせなのか、人のカバンを漁ったり、トイレシートを噛みちぎったりしていました。食べ物をうっかり置いておくと、全部、開封していたこともあったので、気をつけていました。一緒に行きたくて、寂しそうにしていた感じはありましたね。

一緒に出かけた中で、特別な思い出を教えてください

1度、夏の暑い時期に川へ連れていきました。水が好きで、喜んでいました。犬って水につけた瞬間、泳げるみたいで「ちゃんと犬かきができるんだ」と知りました。本能なんだな、と。
後から、本当にごめんねって思ったことなんですけど、石が灼けていて、肉球を火傷しちゃっていたんです。でも、本人は楽しいからなのか、全然、痛いそぶりを見せませんでした。犬はけっこう我慢強いって聞くから、そういうところだったのかもしれないですね。

「ここが特別かわいいんです!」というエピソードは?

私たちがうつ伏せに寝て、両肘を床に着けて腕で半円を作ると、ハナが必ずその中に入ってくるんです。「ハナちゃん」って呼ぶと、ぐるんっと回りながら入ってきて、それができたらハナの胸元をなでてあげていました。この遊びをするのは、家族みんなが好きでした。


晩年はたくさんの病気をしたが、良い医師に巡り会えた


亡くなる直前のことについて教えてください

ちょっと具合が悪くなったのが、亡くなる前年の5月頃でした。熱中症になって病院に連れていきました。その後、首のヘルニアを患ったり、年が年だったので内臓の働きが悪く、腸に食べ物が詰まったりもしました。
それが終わったと思ったら、次は子宮蓄膿障になっていて、子宮に膿が溜まっていたんです。手術をしなければ、生きるか死ぬかという状況だったので、晩年でしたが手術しました。

そういうことを繰り返していたので、負担がかかっていたんでしょうね。最期は入院して、強心剤の注射で心臓を動かしてもらいながら、という状態でした。
年末に、重度の腰のヘルニアになりました。後ろ脚を引きずりながら歩いているな、と思ったら、みるみる歩けなくなってしまい、アザラシみたいに後ろ脚がぶらんと脱力していたので「これはまずい」と病院に行くことにしたんです。でも、年末だったので、かかりつけの病院は休みに入っていました。そこで市内の病院に片っ端から電話をして、たまたま繋がった病院に駆け込みました。そこは動物のことをすごく考えてくれる所で、結局、ハナは最後までお世話になったんです。
その病院の先生が治療できないほど重度のヘルニアだったため、急遽、知り合いの先生を呼んでくれて手術になりました。その後は、後遺症もなく過ごしました。1ヶ月くらいは入院していたと思います。お見舞いが可能だったので、家族で代わる代わる病院に行っていました。

ハナちゃんの最期は、お医者さんの飼い猫が知らせてくれたそうですね

そうなんです。最期は、病院で入院中でした。ちょうど私と母がお見舞いに行っていて、「今やっている処置が終わったら会いましょうね」って言われたところでした。
その時、ハナがいた部屋に先生の猫を放していたんですけど、普段は暴れないその猫がなぜかすごく騒がしかったんです。診察が終わったタイミングで先生が猫の様子を見に行ったら、すぐに私たちが呼ばれて「ハナちゃん、ダメかもしれない!」って。部屋に駆けつけたら、もう亡くなっていました。先生の猫は、「ハナがやばいかも!」って、わざと暴れて教えてくれたんだと思います。


「最後だから、ちゃんと見送ってあげよう」と思う半面……


亡くなってからは、どういう行動を取りましたか?

病院での処置を終えて、とりあえず家に連れて帰りました。亡くなったのが夜だったので、とりあえず一晩置きました。それまでペットの葬儀屋さんにお世話になったことがなかったので、翌日、市内でペットの葬儀をしてくれる所のホームページを見ながら、電話をしました。場所と料金も考えましたが、雰囲気や、葬儀でやってくれることを問い合わせながら探しました。
「最後だから、ちゃんと見送ってあげよう」と思う半面、「とても辛い。でも、やらなきゃね」と思って動いていました。

晩年、さまざまな病気を抱えていましたが、ご家族は気持ちの準備をしていたのでしょうか?

だんだん体力が落ちてきてるのはわかっていましたが、その日の、そのタイミングとは思わなかったので、「まさか」という気持ちでした。いつものようにお見舞いに行って、普通に帰ってくるつもりだったから。多少の気持ちの準備はしていましたけど、実際に看取ってあげられたのは、母と私だけだったこともあり、他の家族はみんながっかりして泣いてました。


ロスの期間は悲しい気持ちを紛らわせることもなく、淡々と日々を過ごした

ご自宅や葬儀場では、どのように過ごしましたか?

自宅ではいつも寝ていたベッドに寝かせて、お花を少しあげました。結局、火葬まで3日間くらいは家にいたと思います。
葬儀場はペットのお寺みたいな感じで、お経をあげてもらいました。最後は箱に入れて、人間のお葬式みたいな感じで、おもちゃやご飯、お花を入れて火葬しました。ハナがよく着ていた服も入れてあげられたので、良かったと思います。

亡くなったのが7年前ですが、寂しい気持ちとどのように向き合ってきましたか?

悲しみに明け暮れて、けっこう泣きました。今思えば、本当に時間が経つのを待つしかなかったかな。10月に亡くなって1か月くらいはペット・ロスで、年明けくらいに少し落ち着いたと思います。家の中なら泣いても大丈夫だけど、外ではなるべく考えないようにしていました。私の主人も1度、実家で飼っている犬を亡くした経験があったので、特に声はかけてこないけど、そばに居て話を聞いてくれました。
実家に帰ると家族からハナの話が出ることもあって、そういう時はどうしても涙が出ていましたね。悲しい気持ちを紛らわせるために、特別に何かをしたわけではなく、日常をひたすら過ごしていたという感じです。時間が経って、気持ちが落ち着けばいいなと思っていました。


ハナがいたおかげで、今の家族がある

今、ハナちゃんに伝えたいことはありますか?

やっぱり、ありがとうっていう気持ちですね。ハナを飼い始めた当時、自分が多感な時期で、気持ちが荒ぶりがちだったんです。でも、ハナがいたから、落ち着いて過ごせていたのかな。心の支えになってくれていました。私はハナの匂いを嗅ぐのが好きだったので、それでちょっと気持ちを落ち着かせていたこともありました。
ハナのおかげで、家族内があまり気まずい雰囲気にならなかったのかな、と思っています。

今、ペットと一緒に過ごしてる人にかけたい言葉はありますか?

辛いけど、最期は必ず来るので。それまでに悔いなく、お互い過ごせるといいなと思います。


〈おわりに〉

晩年は、さまざまな疾患を抱えていたハナちゃん。お別れする前、ご家族は多少、心の準備をしていたそうですが、特別な兆候がなかったために突然のお別れとなってしまったとのことでした。Y.Iさんは、7年前のことを涙ながらに語ってくださいました。私はこの記事を書いている間、ハナちゃんが尻尾を振って喜んでいる姿が何度も浮かんできましたよ。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

(聞き手・イチノセイモコ/ライター)

\インタビューにご協力いただける方を探しています/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?