
Vol.22|脱走の常習犯だったハッピーちゃん。そんな愛犬が作ってくれた人とのつながり。
天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。
飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。
ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。
大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。
vol.14は、シェルティのハッピーちゃんのお話をお届けします。
犬種:シェルティ/男の子
享年:15歳
語り手:K.Nさん
「犬を飼いたい!」という念願が叶って迎え入れたハッピーちゃん

ハッピーちゃんと出会った時のことについて教えてください
犬を飼いたいという私のために、父親が知り合いから譲り受けてきたのがハッピーちゃんでした。もともと犬をたくさん飼っているお家で、娘さんが新しく連れて帰ってきたけれど多すぎるので、うちで引き取ることになったような流れです。
ハッピーちゃんを迎える前から、近所に住んでいるわんちゃんをよく撫でていたんです。外では会えるけど、自分の家にいないことがすごく寂しくて、「欲しい」と思うようになったんですよね。ペットショップにも探しに行きましたが、いい子に出会えていなかったところにハッピーちゃんを引き取ることになりました。
初めて会った時、「本当に可愛い子だな」と思いました。シェルティは家が長い印象がありましたが、最初であった頃はまだ短かった。そんなところも可愛いなと思ってみていました。
どんなことが好きでしたか?
散歩はいつも川の堤防に行っていました。田舎なので、そこで離してあげていたのですが、その時が一番楽しそうにしてたかな。車に乗せて、美術館の敷地内に流れる川に水遊びに連れて行くこともありました。わんちゃんOKの場所だったので連れて行っていましたね。
他のわんちゃんとも仲良くしていました。犬が多い地域だったのもあり、お友達だらけだったんです。あまりに人懐っこくて友達が多いものだから、私は覚えきれませんでした(笑)
鎖を抜いて脱走。目的は友達と会うこと。
困ったことや、大変だったこともあったんでしょうか?
外につないでおくと、鎖を抜いて旅に出てしまうことがありました。「探しに行かないといけないな」と思って探しに行っても、見つからない。でも気がついたら自分で帰ってくるんです。
近所の人に話を聞いてみると、お友達のわんちゃんのお家まで自分で散歩に行っているとわかりました(笑)実際に訪ねてみると、「遊びに来ていたよ」と教えてもらうこともあって。必ず帰ってくることもみなさん知っていたので、どこかで保護されるわけでもなく、自分で帰ってきていました。
困ったことがあっても、やっぱり可愛いのが我が子ですよね。
家に帰ってくると、絶対に「くぅん」と鳴きながら寄ってきてくれていたことは、やっぱり可愛いなと思っていました。飛びついてくることもありましたし、撫でてあげるとお腹を出して「撫でて!撫でて!」と伝えてくることも。そんな姿が特に可愛かったです。
突然の別れに、気持ちの整理がつかなかった。
最後まで元気なハッピーちゃんだったと聞きました。
私が高校から帰ってくると、お母さんがハッピーちゃんにタオルをかけてあげているところでした。「亡くなったかと思った」と母が言うので見てみると、まだ息をしていました。そこから、防水シートを敷いた玄関に移動しました。
声をかけると反応もするし、頭をあげようともしていて。父親が帰ってくると、喜んで体をあげようとはしていたんですが、立ち上がることはありませんでした。
私も夜中の12時までは寄り添っていましたが、その後、父親が見ている時に亡くなりました。亡くなる日の朝までご飯も普通に食べていたし、老衰だったんだろうと思います。
ただ、たった1日の間で亡くなってしまったので、逆にペットロスが長引いてしまいました。
お別れの時のことを教えていただけますか?
次の日、私は学校だったので火葬場には父親だけが行きました。自宅のそばで火葬を頼める場所の選択肢は一つしかなかったんです。お骨は家に連れて帰って、自宅のそばに埋めました。
しばらくは「今までありがとう」という気持ちを込めながら家にお骨を置いていたのですが、四十九日が終わったタイミングで「やっぱり埋めてあげないといけないかな」と考えるようになって。その後は、写真を飾っています。
突然のお別れと、どんな風に向き合ってこられましたか?
しばらくは、胸を締め付けられるような悲しみや苦しみが続きました。やっぱり半年くらいは、思い出してしまう毎日でした。
「ペットを飼うって、こういうことなんだな」と命の大切さを学ぶような感じでしたね。兄弟のように思っていたことも、悲しみが大きかった理由だと思います。
ただ、やっぱり時が心の傷を癒してくれたんじゃないかな。「天から見守ってくれているんだよな」という気持ちになっていったというか、そういう風に気持ちを持っていったというか……。どちらが先かはわかりませんが、そう思えるようになっていきました。
大切なのは、人と同じように経験を積ませてあげること。
ハッピーちゃんとの毎日を振り返っていかがですか?
良かったのは、学校から帰るといつも一緒に散歩に行っていたことですね。犬友のお家まで歩いて行って、そこのお家のおばちゃんと自分たちの犬のかわいさについて話して共有しあったり(笑)
ハッピーちゃんが居たからできたお友達がたくさんいて、ハッピーちゃんがつないでくれたんだなと思いますね。
今、愛犬と一緒に過ごしている人にメッセージをお願いします。
外の景色を見せてあげたり、いろんな経験をさせてあげるといいんじゃないかなと思います。
人と同じ生き物なので、家の中にずっといるとストレスが溜まってしまう。人間もそうだと考えると、外に連れ出していろんな経験を積むことは犬にとっても大事なことだと思うし、何かのきっかけになるかもしれません。
家の中で飼われているわんちゃんも多いと思いますが、散歩や外の景色を見せてあげる。あとは、おやつをいっぱいあげることかな(笑)
娘や息子と同じだと言う気持ちで一緒に過ごして欲しいです。
おわりに
「本当はおうちの中で飼えたら良かったのかもしれない」とお話しされていましたが、いつでも好きな時に脱走できて(笑)、犬のお友達に会いに行ける環境がハッピーちゃんにとっては幸せだったのかもしれないなと感じていました。また、ハッピーちゃんがいたからこそつながった方々がいて、それはハッピーちゃんのおかげだと話されていたことも印象的でした。一緒に過ごした時間が作ってくれたたくさんのものは、残り続けるんだろうなと思います。
(聞き手:西澤七海/ライター)
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