【夢ログ】ショッピングモール
ショッピングモール内、蛍光灯がフロアを白く照らしている。気がつくと、どこからかやってきた小柄で浅黒い肌をした男が、丈夫そうな布で包んだ何かを抱えてフロアの真ん中へ立ち止まった。
布を乱雑に解放すると、中からは何本もの鉄パイプが転がり落ちる。
激しい金属音に驚いた買い物客が立ち止まり、また別の男がやってきて追加の鉄パイプを転がす。
「いまから工事をするので封鎖します」
聞き慣れないイントネーションで大衆に告げる。野次馬が集まったところで男は煙幕を焚いた。
警戒しながら様子を見ていた私は「これはやばいやつだ」と口を押さえながら、その場をそっと離れて非常ベルを探した。なくてはならない場所に非常ベルは見当たらず、静かに広がるパニックを避けながら出口へ向かう。まだ状況を知らない人々が中へ進んでいく。
声を掛けようとするが、私は変なやつだと思われるのがイヤで無事を祈るだけに留めた。
外に出ると安心して溜め息を吐いた。ひんやりとしたそよ風を肌に感じながら建物を見上げた。LEDでカラフルに装飾されたその姿を眺め、まるで何か嫌な夢を見た様な、現実には起きていない事にも思えた。
「きっと、もう警察や消防に連絡は入っているだろう」
だから、私には何も出来ることはない。
あの煙は、遅効性なんだろうか。それとも無害な煙幕だったのか、吸わずに済んだのか。
不安に思いながら繁華街のアーケードへ向かう。人混みに紛れたい。怖い。歩いている道はアジアンテイストの店が多く、何かの記念日なのか小さな催し物が行われていた。
やはりさきほどの騒動は大したことではない、大丈夫だ。しかし、罪悪感を感じる。店内に入っていく人達を止められなかった。
1人くらいは現場から遠ざけることができたかもしれないのに。
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