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【フリー台本/AI短編小説】虹色の選択〜前編〜(約1500文字)

フリー台本/短編小説

戦闘や諍いシーンの無い穏やかな物語です




その少女は、特別だった。


彼女が降り立った惑星は、青と緑が交じり合う豊かな自然に包まれていた。
少女は無表情だったが、瞳にはほんのわずかに不安の影が浮かんでいた。白に近い髪が風に揺れ、見る角度によっては微かに煌めき、虹色に変化することもあった。
その変化は短く、かすかなものだったが、それは言葉にできないほどの美しさだった。

惑星の光景は、空は淡い紫色に染まり、夕方になるとオーロラのような光が大空を覆った。
草原には青い花が無数に咲き、その中を光を放つ小さな生き物たちが群れを成して飛んでいた。
彼らはまるで星屑が生き物になったかのようで、夜になると幻想的な光景が広がった。
木々は巨木で、空へ向かって枝を広げ、そこに住む生き物たちは愛らしく、どれも人懐っこい。
耳の長い鳥、二本の尻尾を持つ小さな獣たち、どれも惑星独自の姿をしていたが、不思議と安心感を与える存在だった。

惑星の住人たちは、その少女を暖かく迎え入れた。
彼女の見知らぬ文化や習慣を理解し、彼女が不便を感じないように日々の暮らしを手助けしていた。
少女は最初、彼らと距離を保っていたが、次第にその優しさと自然の美しさに心を開いていった。
ある日、彼女が小高い丘の上で歌っている姿を住人たちが見かけた。
穏やかな歌声が風に乗り、星空の下で響き渡るその光景は、まるで夢の中の一場面のようだった。


時間が流れ、少女は成長していった。
彼女の背丈は惑星の住人たちよりもずっと高くなり、髪の煌めきは一層強く輝き始めた。その姿は誰もが目を奪われるほど美しく、圧倒的な存在感を放つようになっていた。
しかし、彼女がどこの星から来たのかはほとんど語られることはなかった。
住人たちは時折そのことについて質問したが、彼女はただ微笑むだけで、その背後にある秘密については口を閉ざしていた。

ある日、空に大きな宇宙船が現れた。
それは彼女がこの惑星に来た時に乗っていた乗り物に似ていた。船から降りてきた者たちは、彼女と同じような姿をしていた。
白い髪に、瞳の奥に宿る静かな光。それは、彼女の故郷の者たちだった。

彼らは少女を迎えに来たと言った。彼女はその知らせに驚いたようだったが、すぐに険しい顔を見せた。「戻りたくない」と、彼女ははっきりと主張した。
惑星の住人たちも、彼女の側に立ち、宇宙船の者たちに反対した。

話を聞くと、彼女は故郷の惑星の「女神」であったという。彼女が消えたことで、彼らの生活は一変し、苦難の日々が続いているのだという。
彼女が戻らない限り、彼らの惑星は崩壊の危機に瀕しているらしかった。

彼女はしばらく言葉を失っていた。
彼女の瞳には困惑と苦悩が混ざり合い、その白い髪はわずかに光を帯びていた。
戻りたくない。それが彼女の本心だった。
彼女はこの惑星での平和な日々に満足していたし、ここでの生活に馴染んでいた。
しかし、故郷の人々の苦しみを聞いたことで、心は揺れ動いていた。

戻りたがらない理由は、彼女がかつて故郷で過ごした日々が、孤独に満ちていたからだった。
女神として崇められ、人々に囲まれていたものの、彼女は常に高い場所から孤独に彼らを見守っていただけだった。
誰とも心を通わせることなく、ただ象徴として存在していただけの生活は、彼女にとっては耐え難いものだったのだ。

しかし、今ここで過ごした日々は違った。
ここではただの一人の少女として、誰にも崇められることもなく、心から笑うことができたのだ。
それが、彼女が戻りたがらない一番の理由だった。

宇宙船の者たちは、彼女の苦しみを理解しようとし、惑星の人々は彼女を守ろうとする。
少女はその狭間で、最終的な決断を下す日が来るのを、静かに待っていた。

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