【第603回】 こども家庭庁は本当に必要か!?(2024/11/13) #山田太郎のさんちゃんねる 【文字起こし】
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発言者:
(山田さん) 山田太郎 参議院議員
(小寺さん) 小寺直子 山田さんの秘書
今日の内容
(山田さん)
はい、始まりました。山田太郎のさんちゃんねるです。今日は「徹底検証:こども庁は本当に必要か」というテーマで議論をしていきたいと思います。
こども庁の提唱者と言われている私自身、思い起こすと、なぜこども(家庭)庁を設立したのか、そして現在のこども(家庭)庁が抱えている問題や課題について、しっかりお伝えしていきます。
特に予算に関してですが、「これを解体すれば、1人当たり900万円ほど子育てに充てられるのではないか」といった議論もあります。しかし、それが本当に正しいのかどうかも含めて、何が行われているのか、どこに課題があるのか、私自身の視点からもしっかりと皆さんにお伝えしたいと考えています。
今週の山田太郎
(山田さん)
まず、今週の動きについてお話ししたいと思います。今週は執行部会、両院議員総会、本会議が行われ、いよいよ特別国会、衆議院解散後初の国会が開かれました。そのため非常に忙しい日々が続いていました。
一方で、その中でも経済政策について、新しい資本主義実行本部で、日本の経済を成長軌道に乗せるための議論が淡々と行われています。
この後説明しますが、文化立国調査会で林官房長官に申し入れを行いました。官邸内の官房長官室横の面談室で撮影された写真も見ていただければと思います。写真には、私が一生懸命林さんに説明している場面が写っています。
(山田さん)
簡単に言うと、コンテンツ産業はマンガ・アニメ・ゲーム、映画などを含み、5兆から7兆円以上の規模に成長しています。これは半導体や鉄鋼業と並ぶ産業規模です。就業者も多く、基幹産業として位置づけるべきだと思います。
しかし、人気があるからといって放置して良いわけではありません。例えば、韓国では約1000億円の予算を投じて、重要産業として育成しています。
特に海外展開において、日本はVFXや4K撮影技術で遅れを取っており、中国や韓国との差が広がっています。このままでは、いくら強いと言っても衰退の一途をたどる可能性があるため、育成が必要です。
しかし残念ながら、財務省の査定でコンテンツ産業支援の予算が認められないのが現状です。財務省は、コンテンツ産業を子どもの遊びのように考えているのではないかと危惧しています。この点を前進させるため、林官房長官に提言を持って申し入れを行いました。
(小寺さん)
党内でもコンテンツ産業について発言する人がだいぶ増えてきた印象ですね。
(山田さん)
本当に様変わりしました。「クリエイター・アーティスト支援PT」というものがあり、事務局長には赤松さんに就任してもらっています。漫画家が国会議員になる時代になったわけです。
また、もう発表されていると思いますが、赤松さんが文科大臣政務官にもなりましたので、今後は政府内のメンバーとしてしっかりと引っ張っていってもらいたいと思っています。これにより、提案する側から提案される側へと立場が変わったのです。永岡さんもこのPTの座長を務めていて、前文化大臣ということもあり、この応援体制は非常に力強いものです。
本日のアジェンダ
(山田さん)
さて、こういった活動を通じて「文化立国」を推進してきた今週ですが、今日のアジェンダに移りたいと思います。今日はかなりヘビーな内容で量も多いので、さっと進めていきたいです。
(山田さん)
こども(家庭)庁について話をします。個人的に「こども家庭庁」という呼び方にはまだ違和感があり、「こども庁」と呼んでしまうのですが、要不要論が議論されています。最近ではこども家庭庁の予算が5.3兆円という額に対し、「これほどの予算が必要なのか」という議論もあります。そもそも、このお金は本当に不要なのか、それとも必要なのか。今日はこの点をしっかり見ていきたいと思います。
元々、何のためにこども(家庭)庁を作ったのか、その趣旨を振り返りつつ、現状がどう変わってきているのかを見ていきます。少子化問題を前面に押し出していますが、こども(家庭)庁の設立が少子化解決に繋がるのかどうかも重要な検証点です。与党の一員として、また提案者の1人として、今日は厳しい視点で見ていきたいと思います。
こども家庭庁不要論について
(山田さん)
さて、まず最初に「こども家庭庁不要論」について話をしていきたいと思います。小寺さん、ネットなどでさまざまな意見を拾ってもらったと思いますが、どんな声がこども家庭庁の不要性を訴えているのでしょうか?
(小寺さん)
先週からいろいろなところで大きな議論になっています。一番多いのは「お金の無駄ではないか」という意見です。予算を子ども1人当たりに換算すると約900万円になり、「生まれたときに900万円を配ってしまえば、こども家庭庁は必要ないのではないか」という声があります。
また、その予算があれば「保育園から大学まで無償にできるのではないか」という意見や、「そもそもこども家庭庁が何をやっているのか分からない」「結果が出ていないのではないか」といった声も多いです。
さらに、先週報じられた出生率が70万人を下回る可能性についても、「こども家庭庁が設立されたのに少子化が止まっていないのではないか」という意見が多く見られました。また、新しいポストが設立されたことが「利権の温床になっているのではないか」という声も非常に多く上がっています。
(山田さん)
他にも「給食を豪華版にして無料にしてもお釣りが出る」「保育園から大学まで無償化するべきだ」といった声もあります。こういった意見が本当に正しいのかどうか、事実に基づいてしっかり検証していきたいと思います。
こども(家庭)庁創設の意図
(山田さん)
さて、元々こども家庭庁は何のために作ったのか、その趣旨を確認したいと思います。趣旨に合っていなければ、存在意義が薄れてしまいます。まず、なぜ作ったかというと、私は「子どもの命を守らなければならない」という思いがありました。
(山田さん)
毎年多くの子どもの命が失われており、例えば、速報値ですが、子どもの自殺者が397人いるとされています。日本は特に若者や子どもの自殺率が高く、30代から40代以下の世代では自殺が死因の1位です。
また、児童虐待で死亡したケースが72件もあり、これも世界的に見て非常に珍しい状況です。児童相談所への虐待相談件数は21万件を超えており、非常に多い数字です。昔はこれらが表面化していなかった可能性もありますが、今は件数がしっかりと報告されるようになっています。
このことは一概に否定されるべきではありませんが、深刻です。さらに、いじめによる重大事態も1300件、不登校は34万人を超えています。妊産婦の死因1位が自殺であることも問題で、産後の体調不良が原因ではなく、これが現実なのです。
また、シングルマザーの約45%が相対的貧困状態にあり、この問題を放置するのは良くありません。これを何とかしなければならないと強く感じ、こども庁の設立を提唱しました。政治家がこれを放置してよいはずがありません。
現在、こども家庭庁は少子化対策や子育て支援に重点を置いているように見えますが、私は「この国で子どもが死なない社会にしたい」と考えていました。子どもの命に関わる問題を解決するためにこども(家庭)庁を作ることを提唱してきたのです。この数が減少しなければ、本来の目的が達成されていないと言えるでしょう。
(山田さん)
現実的に、子どもの命を守る施策を担う部署はどうなっているかというと、厚労省、内閣府、文科省、法務省、警察庁といった形でバラバラです。このような行政の縦割りを何とかしなければならない。
例えば、厚労省が行う施策を増額したり強化したりするのであれば、既存の省庁内で議論を行えばいい話です。しかし、異なる省庁間の課題を解決しないのであれば、単に新しい省庁が増えただけで意味がありません。複数の分野にまたがる問題を解決するために、こども庁は本来設立されたはずです。
(山田さん)
また、課題が省庁をまたいで発生していることも問題です。例えば、虐待は家庭に関する部分は厚労省が、学校関連は文科省が、さらに警察も対応が必要です。
不登校やいじめなどもそれぞれが関連しており、全体的に子どもたちは困難な状況に置かれています。これを一つの問題として総合的に見ることができなければ、解決は難しいです。行政のたらい回しでは何も解決しないため、こども庁を設立し、縦割りの問題を排除しようとしたのです。
(小寺さん)
補足すると、行政組織は法律で組織や権限が定められているため、所管外のことはできません。厚労省や文科省で対応すれば良いという意見はよくありますが、基本的に省庁は定められた範囲で業務を遂行するものです。新たな課題に権限を超えてアプローチするのは難しい構造です。
さらに、厚労省内には子ども家庭局があり、不登校やいじめ、メンタルヘルスといった課題に対応していましたが、その限界は明らかでした。子どもと家庭に特化した省庁を設立する必要性が、このこども庁設立の大きな目的の一つでした。
(山田さん)
日本は法治国家であり、すべて法律で所管や行政の人数、さらには具体的な業務内容まで定められています。この枠組みを無視して課題に取り組むことは不可能です。そうなれば行政の根幹が変わってしまいます。ですから、子どもに関する全般的な対応を可能にする仕組みを作っておかなければならない、という点を理解していただきたいと思います。
(小寺さん)
課題が多岐にわたっているため、特に「子どもにいくら使われているのか」という予算を明確にするのは非常に難しいです。私たちの事務所で一つずつ精査し、ようやく全体像を把握できるようになりました。しかし、2021年の時点で政府自体も全体で子ども関連にいくら予算を使っているか把握できていなかったのです。
(山田さん)
私が作成した資料の一つに、こども庁が対処すべき課題を整理したものがあります。小さな図ですが、「命を守るための課題」として児童虐待、自殺、死因究明、教育現場での性犯罪、いじめ、体罰、指導死、産後うつなど、すべて命に直結する内容を挙げています。これらをしっかりと解決していこうという趣旨です。
また、環境の改善も必要です。直接命には関わらなくても、生きづらい状況ではいけません。子どもの貧困、1人親家庭の問題、待機児童、不妊治療、ヤングケアラー、ホスピスなども含まれます。子どもを中心に考え、この国で子どもたちが生きにくい状況や命の危険にさらされることがあってはなりません。こうした課題を解決する仕組みをしっかりと作ろうと考えました。
(山田さん)
実際には縦割りと横割りの問題があります。現状を見ると、文科省、内閣府、厚労省、法務省、警察庁などが、いじめの問題だけでもこれだけの省庁がバラバラに関与しています。
縦割りだけでなく横割りの問題も存在し、例えば学校現場は全国1740の市区町村にあり、それぞれが対応しています。児童養護や児童相談所の観点では、市区町村は小さすぎて管理単位として十分ではなく、47都道府県が対応する形です。このため、都道府県と市区町村の間にも壁が生じています。永田町の縦割り問題以上に、市区町村ごとの横割り問題が深刻です。
(山田さん)
具体的な例として、里親委託制度を挙げます。金沢市や宮崎県では里親委託率が1桁台にとどまっている一方で、福岡市や新潟市では半数以上です。つまり、出生地によって子どもへの対応や行政サービスが大きく異なるという問題があります。
さらに、子どもの虐待についても、多くの関係者が関わっています。学校の教師やカウンセラー、地区によっては保護司、警察関係者、子ども食堂のスタッフなどがいますが、それぞれがバラバラに対応しています。
各市区町村には、こども家庭センターのようなこども庁の出先機関が必要であり、行政の仕組みとして子どもたちを支えるために繋がる体制が必要です。市区町村の努力だけでなく、国全体でユニバーサルサービスとして取り組むべきだと考えています。いかがでしょうか?
(小寺さん)
自治体の格差は里親委託だけでなく、特別養子縁組や医療費、オムツなどの問題にも及びます。自治体ごとの差が大きく、少なくとも命に関わる基盤的なサービスに関しては格差があってはならないという点には、ほとんど反対意見はないでしょう。見える化を進めたことで、全体の差が明確に見えてきたと思います。
こども家庭庁予算内訳と業務範囲
(山田さん)
次に、こども(家庭)庁の業務内容や予算について話します。最近、この話題が注目を集めており、「お金はどうなっているのか」という点についても少し見ていきたいと思います。
(山田さん)
こども家庭庁は、こども政策の司令塔として、行政の縦割りを廃止し、自治体をサポートするユニバーサルサービスとして機能するために設立されました。
(山田さん)
さらに、「こども基本法」を制定し、単なる組織設立にとどまらず、民間を含めた子ども中心のサポート体制を明確にしました。この基本法のポイントは、どこをカバーするのかという点です。こども家庭庁は、新たに取り組むものや他省庁から移管される業務を担当し、ライフサイクルに応じて対応していきます。
(山田さん)
具体的には、左から結婚支援、妊娠相談、妊婦支援、子育て支援が含まれます。学校に進学後は、教育関連は文科省が担当しますが、いじめや不登校など子どもたちの問題は、こども家庭庁と文科省が共管で取り組むことになっています。いじめや不登校の問題は、学校や教育委員会内で閉じてしまうことが多いため、これを防ぐためにも共管での対応が重要です。
また、「こどもの居場所」の問題も議論が進んでいます。働き方改革により、学校のサークル活動やクラブ活動が縮小され、地域に根ざした活動の受け皿が必要となっています。このような課題も含めて、子どもにとって一貫した支援が必要です。
これまで、学校に上がる前は厚労省、学校に上がったら文科省と、対応部署が分かれ、自治体に任されていました。これにより、子ども支援は切れ目だらけの状況でした。
こども家庭庁を設立することで、新たに始まる事業もあります。例えば、伴走型の支援や、子どもを定期的に預かる事業、第三者機関による地域のいじめ対応など、これまでにはなかった仕組みが位置づけられています。
こども家庭庁は、厚労省や文科省からの寄せ集めに見えるかもしれませんが、それだけではなく、子ども視点に立った新たな機能として設計されています。これが実際に機能しているかどうか、今後しっかり見ていく必要があります。
(小寺さん)
補足させていただくと、「こども基本法」はこども家庭庁とセットで非常に重要な法案です。箱だけ作って何をやっているのかわからないと感じる方も多いかもしれませんが、こども基本法を知らない方も少なくありません。
この法律は、子どもの権利擁護を明確に示し、これを国として初めて基本理念として打ち出したものであり、大きなポイントです。これまで、厚労省、文科省、法務省などがバラバラに行っていた子ども政策を統合し、国として一貫した方針を示しました。
これまで、少子化対策、子ども・若者育成支援推進大綱、貧困大綱の三つが並行して進められており、自治体もそれぞれ基本計画を作成して対応していました。しかし、今回の「こども大綱」により、これらが一本化され、自治体にとって子ども政策への取り組みが非常にわかりやすくなりました。
(山田さん)
予算についても、さまざまな部署に二重三重で割り振られていたり、市区町村で類似のサービスを実施していたりすることがあります。また、自殺問題に関しても、子どもと大人を分けずに扱っているため、思春期特有の問題への対策が十分ではありませんでした。
(山田さん)
さて、こども家庭庁の組織構成についてお話しします。トップには官房、そして「生育局」と「支援局」という二つの組織があります。支援局は、虐待や障害を持つ子どもたち、困難を抱える子どもたちへのサポートを行うもので、これが新設の業務です。私がこども庁の必要性を訴えてきた理由の一つです。
一方、生育局は主に子育て支援を担当します。特に就学前、周産期前後から就学前までを手厚くサポートします。これまで十分な支援がなかった分野を強化するために設立された組織です。
さて、今日の大きなテーマの一つであるこども家庭庁の予算について、令和6年度と令和7年度の要求を見ていきたいと思います。まず令和6年度のこども家庭庁の当初予算は5.3兆円という非常に大きな額が計上されています。
当初、この規模の予算について、「新たにこども家庭庁を作って何かするのは無駄だ」という意見もありました。しかし、理解していただきたいのは、この予算はもともと他の省庁に分散して存在していた予算を、子ども関連の事業として集約したものであるということです。
この5.3兆円は新規に追加されたものではなく、各省庁にあった予算を子ども関係でまとめた結果です。こども家庭庁の設立によって突然5.3兆円の予算が生まれたわけではありません。
文科省や厚労省などの部署にあった予算を移管してきた結果、子ども関連の総額がこれほどの規模になったのです。メディアが正確に伝えず、あたかもこども(家庭)庁設立で突如5.3兆円の予算が増えたように感じる方もいるかもしれませんが、それは誤解です。
(山田さん)
こども家庭庁の5.3兆円の予算の内訳を見てみましょう。最も大きな割合を占めるのは、保育園や保育のための給付金であり、全体の約3分の1を占めています。背景には、子育てをしながら働く現状があり、特に働く女性をサポートする目的も含まれています。
この給付金は約1.6兆円で、270万人分の対象事業を支えています。こども家庭庁の政策予算の大部分、つまり約3割は保育園、保育所、幼稚園、認定こども園に充てられています。
次に児童手当についてです。子どもには多額の費用がかかるため、児童手当の仕組みについて少し説明しますが、全体の3分の1、約1.5兆円が児童手当として計上されており、これは1650万人の子どもたちを対象としています。
次に、予算の10%は大学等の就学支援に充てられており、主に所得が低い家庭の大学進学を支援しています。さらに、8.9%は障害を持つ子どもたちへの給付で、約5000億円の予算が割かれています。その他、仕事と子育ての両立支援や地域の子育て支援などが数%ずつ占めています。
私はこども家庭庁の回し者ではありませんが、こども家庭庁や子ども政策に関連する予算の内訳を正確に理解していただきたいです。全体の約3割が保育園や幼稚園などの教育関連に、約3割が児童手当に、残りが大学の就学支援や障害を持つ子どもたちへの支援に使われています。
これらは、新たに施策を導入して無駄にお金を使っているのではなく、既存の省庁の予算をこども家庭庁に集約し、全体で子どもにどれだけの費用がかかっているかを明確にしたことにも意味があります。
(小寺さん)
これを見れば、こども家庭庁の予算が今までの予算をまとめたものであることがわかります。ネット上では「900万円を子どもに配り、こども家庭庁を解体すれば予算が合う」という意見もあります。
しかし、生まれたときに900万円をもらっても、その後保育所も児童手当もなく、大学進学の手当や障害児への支援もなくなるといった社会が本当に良いのか、冷静に考える必要があります。分断を煽るのではなく、しっかりと議論するべきです。ただ、一部に疑問の残る予算があることも事実で、後ほど紹介します。
(山田さん)
私もこども家庭庁の予算のすべてが正しいとは思っていません。我々としても疑問に感じる部分が多々ありますので、こうした点は厳しく精査する必要があると思っています。
一方で、令和7年度のこども家庭庁の当初予算についてですが、6.5兆円というニュースが出ています。前年度に比べて大きくなった理由の一つは、育児休業給付金が加わったことです。これが約1兆円弱の規模です。
(小寺さん)
もともと厚生労働省にあった予算を移管したため、令和7年度からこども家庭庁に加わりました。ですので、この1兆円分は単純にプラスアルファされたのではなく、厚労省にあったものを移しただけで、新規で1兆円が増えたわけではありません。
(山田さん)
逆に、厚労省は日本の国費の一般会計の半分以上を占めている巨大な組織であり、その中に紛れて子ども関連の予算が見えづらかったと思います。こども家庭庁への移管により、子ども関連の予算が可視化されたことは非常に重要です。
例えば、厚労省全体で見れば、子ども関連の予算もかけていますが、同時に高齢者への支出も大きいです。年金や健康保険に対しては、保険だけでは賄えない分を国費で補っており、国費の約半分がそれに充てられています。
この国が子どもに対してどれだけの予算をどういう項目でかけているのか、高齢者にどれだけの予算をかけているのかを明確にするべきだと考えます。
私は、子どもへの投資は次世代への投資であり、こども家庭庁に限らず、どれだけの予算が子どもにかけられているのかを明示することが重要だと思います。その上で責任を持って管理する主体を設ける必要があります。
単に数字を見て「これぐらいです」と言うだけではなく、それが適切かどうか、もっと予算をかけるべきかを議論できる枠組みが必要です。そういった意味で、令和7年度の6.5兆円の予算が示されたことを、精査できる仕組みを作ったことは悪いことではないと思います。
6.5兆円や5.3兆円という予算を、子どもの数で割って「900万円や1000万円を配ってしまえばいい」という意見がありますが、皆さんは本当にそのような社会を求めているのでしょうか?この点は分配の議論として非常に難しいところです。
もし全てが自己責任で良いという考えであれば、それも一つの考え方かもしれません。しかし、小寺さんの話にもありましたが、障害を持つ可能性があったり、仕事が困難で貧困に陥ったり、離婚してシングルマザーとなり、苦しい状況に置かれることもあります。現実には、シングルマザーの4割以上が相対的貧困状態にあります。
このような状況に対して福祉の観点からきちんと傾斜配分を行い、分配をしていかなければ、不安な社会になってしまいます。完全に割り算での分配を選ぶならば、それは国民が自己責任を選ぶということです。これは国民の選択にかかっていると言えます。
ただ、分配は非常に難しく、全員が納得することは難しいです。さらに、「子どもを持たない家庭や人にとって無駄ではないか」という意見もありますが、果たしてそれが本当に正しいのか。
日本を支えていく若い世代が将来の労働生産の中心となり、国富を担っていくのは間違いありません。そうした人たちの存在を無関係だと言ってしまって良いのでしょうか。この点についても考えていく必要があります。
単純に「こども(家庭)庁を解体しろ」というのは、困難を抱える子どもたち、自殺や虐待に遭っている子どもたちを放置することを意味します。もし政治がそれを問題としないのであれば、こども庁もこども家庭庁も解体し、子ども関連の予算を付けないという選択肢もあります。しかし、福祉を切り捨て、全て自己責任でやっていく社会は現実的ではないでしょう。
このように、冷静かつフェアに議論していくことが重要です。こども(家庭)庁の予算や子ども政策が正しく使われているかどうか、厳しく監視する必要があります。概算要求も大きな金額が含まれているため、その中身を詳しく見ていかなければなりません。小寺さん、どのような部分に予算が割り当てられているのか、簡単に説明していただけますか?
(小寺さん)
令和6年度から令和7年度にかけて何が増えたのかという点について説明します。右の青い線で囲まれた部分に、今回新たに2394億円の増額が要求されています。
具体的には、働く方が増えていることから保育所の需要が高まり、その受け皿整備が必要となっています。また、障害児が急増しているため、それに伴う給付の増額も計上されています。
さらに、児童手当の所得制限撤廃が4カ月分先行して計上されており、その後は財務省との交渉により決定されます。加えて、妊娠・出産時の10万円給付が制度化され、ネウボラ的な支援の開始として計上されています。新たに、時短勤務者への育児休業給付が100%に設定され、これが1200億円の内訳です。
(山田さん)
今回の概算要求について、どのような項目があるか簡単に説明してください。
(小寺さん)
柱は四つあります。まず一つ目は「こども・若者の視点に立った政策推進とDX」です。こども家庭庁設立前にはなかった政策で、特に重要です。子どもから意見を聞き、それを反映した政策を推進するプロセスを整備しています。また、「こどもDX」として、デジタル技術を活用した取り組みに対する予算も計上されています。
二つ目は「ライフデザインの可能性を伝える」という項目です。若い世代にライフデザインの情報を発信するための予算が含まれています。これは新しい試みで、妊娠期からのネウボラ制度の導入や、産後ケア、乳幼児健診の充実に関する予算も含まれています。
三つ目は「子育て支援」です。児童手当、放課後児童クラブの拡充、仕事と子育ての両立支援、保育所の整備などが計上されています。また、「子どもの安心・安全」についても、居場所作りや性犯罪防止制度(DBS)など新たな施策が始まります。
四つ目は「健やかな成長の支援」で、いじめ、不登校、貧困、虐待防止、障害児や医療的ケア児の支援が含まれ、7.5億円の予算が新たに計上されています。
(山田さん)
私は、こども庁やこども家庭庁を設立しようとした際、一番注力してほしかったのは4番目の柱です。その他の柱は、各省庁がこれまで総合的に行ってきたものをさらに強化するという位置づけです。
しかし、4番目の「生きにくい子どもたちを生きやすい環境に整備する」という取り組みは非常に重要であり、予算の増額や政策の充実が求められると考えています。
また、合理的かつ子どもが安心して安全に育つことができる仕組みを整え、施策の可視化を進めることも大切です。不要な部分は削減し、充実させるべきものには重点を置くといったバランスの取れたアプローチが必要だと考えています。
次に、子どものDX(デジタルトランスフォーメーション)推進についてです。これまでは子ども政策が因果関係を明確に結びつけることなく、場当たり的に問題や意見を議論することが多かったのです。
(山田さん)
しかし、現状の子どもたちの置かれた状況を正確に把握し、行政や困難を抱える家族と繋げていくことが重要です。支援が必要な人たちが手を挙げなければ支援を受けられない「手挙げ方式」では、支援を受ける能力に差が生じることが問題です。これを解決するためには、プッシュ型の支援に移行すべきです。
子ども政策においては情報が鍵となり、DX化を全面的に進める必要があります。例えば、虐待のケースでは、子どもが親から虐待を受けていると自分から言い出すのは難しいものです。
そのため、子どもの心の変化を天気情報に例えて晴れが雨や嵐になるようなシグナルとして捉え、対応する仕組みが考えられます。また、心愛(みあ)ちゃんや結愛(ゆあ)ちゃん事件で見られたように、引っ越し後に自治体間で情報が引き継がれない問題もあります。
地域の「要保護児童対策協議会」(要対協)による支援がうまく機能するには、情報の連携が不可欠です。DX化により、個々の力量に依存せず、複数の組織や人員が連携して子どもの困難に対応できるようにすることが重要です。
(小寺さん)
この取り組みは始まったばかりで、時間がかかる部分もあると思いますが、子育て中のお母さんやお父さんにとっては、今後大きな利益をもたらすでしょう。
保活や電子母子手帳などの新しい取り組みも進められています。これらが進むことで、情報を得やすくなるだけでなく、本当に必要な子どもたちに行政職員の支援が行き届くようになると思います。
(山田さん)
もう一つ大きな前提として、子ども支援の変化に影響を与えたのは共働き世帯の増加だと思います。グラフを見ると、専業主婦世帯(青色)は減少し、共働き世帯(オレンジ色)が増加しています。妻がフルタイムで働く割合(緑色)はあまり変わっていないものの、専業主婦の減少に伴い、パートタイム等で働く傾向が出てきました。
こうなると、誰が子どもの面倒をみるのかという議論が出てきます。そのため、こども(家庭)庁の予算の約3割が保育園等に充てられている点を見てもらいたいです。共働きで子育てをすることの収益面での厳しさを補うため、児童手当のような支援が重要な役割を果たしています。これが予算を大きく左右する要因になっています。
(山田さん)
保育所の利用率は非常に高く、約52%が利用しています。待機児童問題も社会問題となりましたが、近年は急速に解決に向かっています。ただし、注意が必要なのは、保育所の建設が進みすぎると供給過多になってしまうことです。駅前など便利な場所は空きがなく、一方で少し離れた場所には空きがあるという問題にも取り組む必要があります。
さらに、保育士の待遇改善も重要な議論となっています。これまで議論されてきた結果、対人サービス産業の平均よりはやや高くなっていますが、全産業平均と比較すると依然として低い水準にあります。保育士の待遇を改善することも今後の課題です。
(山田さん)
児童手当についても、拡充が必要な点がいくつかあります。まず、所得制限の撤廃です。これにはさまざまな議論がありました。「高所得者には必要ないのではないか」という意見もありますが、現状の所得制限では、中間層でも子どもが2人、3人いると負担が厳しいことがあります。
(山田さん)
一方で、所得によって子どもへの手当を変えるのは不公平だという声もありました。こうした議論を重ね、所得制限の撤廃に向けて進んでいます。
(山田さん)
また、高校が全入時代になった今、中学校までが義務教育とされていても、高校まで児童手当を延長することが重要です。少子化対策として、特に3人目の子どもへの支援は重要で、フランスのように多子世帯を充実させる他国の例を参考にしています。支払い回数の増加も含め、児童手当に多くの改革を加えてきました。
(山田さん)
高等教育の修学支援も拡充され、所得が低い家庭が大学や短期大学、専門学校に通う際のサポートも行われています。また、障害を持つ子どもへの給付も多岐にわたっています。小寺さん、障害児支援について詳しく説明していただけますか?
(小寺さん)
障害児への給付は非常に多様で、各サービスには所得制限が設けられています。これも見直しが必要であり、今後の課題と考えています。全体の8%を占める予算の内訳は、この表に示されている通りです。右側の利用者数を見れば、これだけ多くの子どもが利用していることがわかります。
ただし、計画相談支援については、障害者全体と障害児が一緒に計算されているため、子どもだけの利用数は把握しづらい状況です。こども家庭庁内に「こども児童科」が設立され、障害児支援が専門的に扱われるようになったことで、子ども向けのサービスとその予算が可視化されてきました。
(山田さん)
とはいえ、すべての予算が適切かと言えば、そうではありません。今回の予算の中でも疑問が残る部分がいくつかあります。「若い世代のライフデザインの可能性を最大化する」という名目で、5.2億円の予算が概算要求されています。しかし、これは何を指しているのかという話です。
(小寺さん)
実際のところ、その回答は「これから考えます」というものでした。具体的な中身がはっきりしていないんです。
(山田さん)
政府が「このライフデザインが良い」と押し付ける形で言うのは正しいのでしょうか?どう考えても、広告代理店などに任せて広告費として使われるのではないかと思います。それに対して5.2億円もの予算をかけるのは適切なのか疑問です。
この件については私もこども(家庭)庁に対してクレームを出しており、まずそもそも必要なのか、何を実施しようとしているのか、しっかりと説明が求められます。予算を取ってから考えるというのはあり得ません。
(小寺さん)
特に情報発信に関する予算は、広告代理店に頼んだ結果、その効果がどうだったのかまでしっかりと検証しないと、「広告費です」としてどんどん予算が膨らんでしまいます。それが本当に必要な子どもたちへの支援に繋がっているのか疑問が残ります。
(山田さん)
こうした部分が、中抜きのような形で批判される原因になるのではないかと思います。
(山田さん)
次に、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)事業についてです。子どもの予算を可視化することはこども(家庭)庁で進められ、理解しやすくなりましたが、それだけでは十分ではありません。
ゴールを明確に設定し、その成果が実際に現れているかどうかを検証する必要があります。例えば、不登校をテーマにしたモデル事業では、自治体の数などが取り上げられていますが、それ自体には大きな意味を感じません。不登校問題のゴールが「不登校児の減少」であれば、実際にどれだけ減ったのかが重要です。
ただし、学校に行かなくても良い選択肢があるべきだとも考えています。学校に通わない代わりに、遠隔で学ぶ方法や校長の判断で単位を認める参加の仕方などが検討されるべきです。
まずゴールを整理し、不登校の減少や社会的コミュニティへの参加を促進する試みを進め、進捗を見守るのはEBPMとして良い取り組みですが、行政レビューシートなどのプロセスが不十分なままでは問題は解決しません。8000万円もの予算が使われていますが、その効果に疑問があります。
(小寺さん)
EBPMは必要な取り組みで、こども家庭庁に「EBPM推進室」が新設され、人員を配置して検証を行っています。このEBPMのシート作成やプロセス設計に8000万円がかかっている現状では、初期の段階で間違えると大きな問題になるという危機感があります。ここは厳しくチェックすべきです。
(山田さん)
こうした間接業務に費用がかかる点については見直す必要があります。こども家庭庁や行政だけでは対応できない部分もあるため、NPOの協力や広報活動に外部を使うことは理解できますが、その効果が納得できる形で行われているかが重要です。我々立法府の役割は、EBPMを推進し、こども家庭庁の予算を適切に監視し、効果を確認することです。
こども家庭庁は今後どうしていくべきか
(山田さん)
今後、こども家庭庁がどう進むべきかについて考えます。創設によって前進した政策は何か、ネガティブな話ばかりではなく、今後どのような期待があるのか、私の考えを述べたいと思います。
(山田さん)
まず、いじめ防止対策です。いじめの問題が学校内だけで解決されようとするのは大きな問題です。教育委員会や担任任せで、解決に失敗すれば担任が責任を負うことになり、隠蔽につながることがあります。
校長に相談しても、問題が体育教官など一部の教師に任され、過度な指導に発展することもあります。これでは子どもたちが生きにくい環境に置かれ、問題の本質的な解決が困難になります。
もちろん、多くの教職員が努力し、多くの問題が学校内で解決されているのは事実です。しかし、学校での解決に失敗するケースもあるため、第三者性を確保した対応が必要です。
例えば、市区町村の首長部局が主導し、教育委員会や学校から独立した形で問題を解決する仕組みが求められます。いじめが重大事案になると、学校や教育委員会が責任を取らされ、事実を隠蔽しようとする体質が生まれがちです。教育委員会内の関係性や閉鎖的な環境が原因となっていることもあります。
このため、第三者が横から監視し、問題を見守る仕組みが必要です。こうした仕組みがないと、いじめ問題の根本的な解決は難しいでしょう。私自身、この点をしっかりと進めなければ、こども(家庭)庁を設立した意味がないと考えています。
当初、この問題については多くの議論がありました。2021年12月頃の議論では、こども(家庭)庁がいじめ対応をしないという話が出ましたが、それでは意味がありません。文科省だけに任せるのは限界があるとして、こども庁と文科省の共管にすることを決めたのです。このテーマは非常に重要で、今後も推進していきたいと思います。
(山田さん)
不登校対策についても取り組んでおり、不登校特例校のように、専門的にケアを提供する環境が必要です。
(山田さん)
例えば岐阜県のケースですが、西濃学園は私立で、不登校の子どもたちを支える場を提供しています。また、草潤中学は公立校として不登校特例校の役割を担っており、私立と公立それぞれに特色があります。こうした枠組みを見学し、理解を深めながら、より良い支援体制を作り上げることが大切です。
(山田さん)
子どもの自殺問題も重要です。これまで国としては大人と子どもの自殺を一括で扱っていましたが、原因や対応方法が異なるため、分けて考えるべきです。
子どもの自殺には思春期特有の問題や、グレーゾーンと呼ばれる発達障害などが関与することがあります。大人の場合は金銭や仕事の問題が多く、対策が異なります。子どもの場合、相談先が限られ、親や学校の先生には打ち明けにくいことが多いです。その結果、友達に話すことがありますが、その友達も精神的に追い込まれることがあります。
30歳以下の死因で自殺がガンを抜いて一位である現状は、深刻です。私は「子どもが死なない国」を目指し、全力で取り組んでいます。ライフリンクのような団体は自殺相談窓口として、多くの命を救っていますが、さらなる課題があります。
(山田さん)
亡くなった場合の死因究明も警察の「自殺原票」だけに依存しています。これを「チャイルドデスレビュー」の形で進め、子どもの死因を追及できる体制を整えることが必要です。
特に学校が関与するケースは複雑になりやすいため、全件検査の実施など、包括的な対応が求められます。これらの課題を解決するために、こども庁やこども家庭庁が強力に推進されるべきだと考えています。
こうした背景から、子どものDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要であると考えています。
(山田さん)
また、「こども誰でも通園制度」も重要です。現在、保育園の利用は親が働いているかどうかで制限されていますが、例えば子育てをしながら少し働きたい、あるいは疲れてしまい子どもを預けたいといった状況も現実にはあります。そうしたニーズに応えるため、誰でも利用できる通園制度を整備していく必要があります。
(山田さん)
さらに、「いけんぷらす」という仕組みを作り、子どもたちの意見を集めています。
(山田さん)
子ども自身の意見を反映し、納得できる形で政策に参加することが、彼らの社会参画意識を高めることに繋がると考えています。これにより、子ども中心の議論が進んでいると感じています。
(山田さん)
また、日本版DBS(性犯罪者による子ども関連業務の就業制限制度)も導入しています。
(山田さん)
これは、性犯罪歴のある人が子どもと関わる職に就けないように義務化する取り組みです。
さらに、最近起きたバス送迎中の子どもを置き去りにしてしまう事件なども踏まえ、子どもの安心・安全を確保するための支援を強化しています。こうした取り組みは重要であり、後押ししています。
(山田さん)
もう一つ、今後充実させるべき政策についての検証です。ちょうど1年前、「こども家庭庁予算4.8兆円は必要か不要か」という議論がありました。
(山田さん)
その際に私が話した内容を再検証し、こども(家庭)庁がこの1年で実現できたかどうかを見ていきたいと思います。そこで、第546回の放送で使用した資料を取り出してみました。
(山田さん)
少子化対策加速化プランの中で注目すべきは、働く子育て世代の収入増についてです。
(山田さん)
特に「106万円の壁を超えても手取り収入が逆転しないようにする」という点が議論されていました。現在、「103万円の壁」や「106万円の壁」、「130万円の壁」といった言葉が話題に上ります。これらは少し分かりづらいと思いますので、簡単に整理します。
「103万円の壁」は、税金に関連する話です。控除額として基礎控除と給与控除が103万円まであるため、それ以下の年収であれば税金がかからないという仕組みです。これが長年変わっていなかったため、引き上げの議論が行われています。
一方、「106万円の壁」や「130万円の壁」は社会保険の話です。具体的には、50人以上の事業所で年収が106万円を超えると、国民年金や健康保険に加入する義務が発生します。
50人未満の事業所では130万円以上の年収で加入義務が生じます。これがわかりにくい理由は、税金と保険の問題が混在しているためです。保険の負担は10数万円ほどになり、年収が120万〜130万円程度でないと106万円を超えた際に手取りが減少してしまいます。
このため、年末が近づくと働くのを控える人が出る問題があり、これらの見直しが必要です。この問題は1年前にも議論されていましたが、ようやく本格的に取り上げられるようになりました。
こども庁が取り組むべき課題について、2021年に私たちの事務所でさまざまな施策を提言しました。
(山田さん)
その中にはDBS(性犯罪者就業制限)、CDR(チャイルドデスレビュー)、虐待や自殺の問題、養子縁組における海外あっせんの問題などが含まれます。
特に、出自管理に関する課題については、国がしっかりと対応する必要がありました。当時、東京都のベビーライフ問題が深刻で、韓国まで視察して国の関与を求めて議論を進めてきました。
命に関わる施策は特に重要です。DBSに関しては法整備が進みましたが、犯歴がない人の性犯罪や犯歴の保持期間など、課題はまだ残っています。
CDRも政府が実施を約束し、検証プロジェクトが始まっていますが、刑事訴訟法47条や個人情報保護法の問題により、ガイドラインの策定を法務省やこども家庭庁と緻密に進めてきました。
児童虐待や自殺の問題は始まったばかりです。特に子どもの自殺については、自殺防止法の改定が進んでおり、積極的に議論を深めていく予定です。
中長期的な課題としては、ひとり親家庭や子どもが抱える困難の解消が挙げられます。質の高い保育や公教育の改善が求められていますが、まだ十分な進展は見られていません。保育士の確保も重要で、配置基準の見直しが行われたことは進展ですが、さらなる取り組みが必要です。
妊娠前からの継続的な支援についても、行政との連携を強化し、ネウボラのような包括的支援を目指しています。10万円給付などの施策は実施されましたが、ネウボラモデルとはまだ大きな差があります。妊産婦が孤立しないような支援体制を整えることが急務です。
子育てと仕事の両立については、育休手当の議論が進みましたが、まだ十分ではありません。特に男性の育児休業についても進展が見られましたが、引き続き議論を続けていく必要があります。
医療的ケア児や発達障害を含む障害を持つ子どもたちへの対応は、まだ十分に進んでいません。さらに、児童相談所の改善と共に私が積極的に取り組んでいるのは乳児院の問題です。
現在、3000人以上の赤ちゃん(0歳から2歳)が家庭的な養護を受けられず、施設に預けられています。これらの子どもたちは、親に抱きしめられる機会が少なく、愛着障害を抱えてしまうケースもあります。世界的に見ても、これほど多くの乳児が乳児院にいる国は稀です。里親制度や養子縁組を促進し、適切な制度を構築する必要があります。
現状では十分な進展が見られないため、具体的な施策を絞り込み、優先的に取り組むべき課題を挙げています。困難を抱える子どもや、家庭に放置されている子どもたちを守るために、何を優先すべきかをしっかりと伝えてきました。
また、予算を増やすべき分野として、児童虐待や子どもの自殺、死因究明のためのチャイルドデスレビュー、そしてDBS(性犯罪者の就業制限)があります。DBSについては一定の成果が見られましたが、妊娠期からの継続的な支援や障害児対応にも、しっかりと予算を充てて問題を解決していく必要があると訴えてきました。
こども家庭庁のおかげで進展したこと・今後の課題
(山田さん)
11月13日現在で、こども家庭庁の設立により何が解決されたのかを簡単にまとめました。
(山田さん)
まず、こども基本法が制定され、こどもの権利や政策理念、意見を反映する仕組みが整備されました。「いけんぷらす」などの施策も進展しています。また、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)はまだ初期段階ですが、子ども政策の予算が無駄に使われないように検証を行う取り組みが始まりました。これも一つの前進だと感じています。
また、これまでバラバラだった子ども政策を「こども大綱」として一本化し、全体的な取り組みが見られるようになったことも評価できます。不登校やいじめ問題についても議論が始まりました。
文科省だけでは解決できないことが多いため、こども家庭庁も本腰を入れ始めています。理想としてはイギリスの「オフステッド」のような教育機関の第三者監査機関が必要だと思います。現在、いくつかの市町村でモデルケースが進行中で、首長部局がサポートする体制が議論されています。
障害施策についても、これまで大人と子どもを分けずに対応していた点が改善されました。障害者手帳の発行や施策が都道府県によって異なり、一貫性がなかった問題に取り組んでいます。具体的な施策として、補装具の所得制限の撤廃も議論が進んでおり、前進が見られました。
妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援、ヤングケアラーの支援、DBS(性犯罪者就業制限)も大きく進展しました。また、国会でも取り上げたカルト宗教二世の虐待問題は、虐待の一類型として重視されるようになり、対応が進んでいます。
(小寺さん)
補足しますと、宗教は文科省、虐待は厚生労働省が所管しており、カルト宗教二世の虐待が発生した際に対応する省庁が不明確でした。この点でこども家庭庁の設立は非常に有意義でした。
(山田さん)
当時の議論は壺などの問題に集中していましたが、実際に重要だったのは傷ついた子どもたちをどう守るかということでした。この課題に対しては、かなりの力を注いで取り組んできたつもりです。
各地域に「こども家庭センター」を設置する必要があると考えています。また、「誰でも通園制度」も新たに始まりました。こども(家庭)庁が設立されたことで、縦割り行政の枠を超え、自治体を巻き込んだ広範囲な施策が具体的に始まったことは多くあります。
こうした進展をこども庁やこども家庭庁は広報し、国民の税金を預かって政策を行っていることを理解してもらう必要があります。適切な広報費用の使用は正当ですが、不適切な使い方は避けるべきです。
(山田さん)
一方で、まだ進展が足りない点もあります。例えば、里親制度や養子縁組、乳児院の問題、出自を知る権利の保障といった課題は未解決です。こども家庭センターも「努力義務」とされていますが、私は「必置義務」にするべきだと考えています。ただし、小規模な市区町村でも設置できるよう工夫が必要です。
また、障害を持つ子どもへの対応、特に自閉症やADHD、グレーゾーンと言われる子どもたちへのケアと早期発見も遅れています。これに対応しないと、「うちの子は落ち着きがない」「学習に障害がある」と親が感じ、結果的に虐待に繋がるケースも報告されています。こういった課題に子ども中心の視点で取り組む必要があります。
さらに、いじめや不適切な指導の問題も学校内で解決できない場合、外部の相談窓口が必要です。この点についても議論を強化しています。子どもの自殺については「チャイルドデスレビュー」を通じて原因究明を進めなければ対応が難しいです。
子どもの貧困対策も遅れており、妊産婦支援や産後うつへの対応も法律の枠組みはできていますが、具体的にはまだ厳しい状況です。
地域によっては産科施設が廃止され、市レベルで産院がない「無医村」状態になるケースも増えています。これにより、妊産婦支援が十分に行えない地域が存在し、ユニバーサルサービスの提供が必要です。
不登校の問題や高校における課題も大きな問題として残っています。これらの課題に集中して議論し、解決に向けた行動が求められます。
少子化問題におけるこども家庭庁との関係
(山田さん)
こども家庭庁の担務の一つとして少子化対策があります。ただ、少子化問題は非常に大きなテーマであり、時間が限られているため、今回は別の機会に詳しく話したいと思います。
ただ、一点だけ強調したいのは、子ども政策を進めることが少子化対策に間接的に繋がる面はあるものの、こども庁やこども家庭庁だけでこの問題を解決することは難しいということです。
特に重要なのは産業政策であり、企業の協力が欠かせません。企業が子育てとの両立を支援しなければ、持続的な少子化対策は実現しません。その意味で、こども家庭庁が「少子化対策の省庁」として捉えられることに私は懸念を抱いています。政府や総理が少子化問題をこども家庭庁に押し付けているように見える現状は良くありません。
(山田さん)
少子化対策にはこども家庭庁だけでなく、国家全体のリデザインが必要です。例えば、労働力不足を補うロボット化や、地方の過疎化問題など、産業政策や社会政策が一体となって取り組むべきです。こども家庭庁が少子化対策を全面的に担うのは無理があると感じています。
もちろん、少子化対策を推進することは必要ですが、非常に難しい課題であり、引き続き議論を続けていく必要があります。少子化問題は別途、深く議論していきたいと思っています。
今日のまとめ
(山田さん)
こども庁やこども家庭庁を全面的に応援するつもりはありませんが、結論として私はこれが必要だと思っています。何度も述べてきましたが、この国で子どもを大切にすることは極めて重要です。
子どもたちの姿は、この国の未来を表しているのです。私たちは皆、いずれ歳を取りますから、次世代を担う人たちを大切にしない国には未来がありません。
特に、この国で子どもが自殺によって命を落とすことが多く、一番の死因が自殺である現状を放置するのは政治的に大きな問題です。これまでの政治が無策だったと感じており、だからこそ私は力を入れて取り組んできました。そのためにこども(家庭)庁を設立したのです。
現在、他の省庁からさまざまな施策がこども家庭庁に集約され、子ども政策の可視化が進んだ点は評価できます。しかし、本来の課題が解決されなければ、この庁は不要と見なされても仕方ありません。
こども家庭庁が必要かどうかを決めるのは、私たちがこの庁を問題解決に向かわせる努力をどれだけ行うか、また、国民がこの国に存在する課題を知り、理解することにかかっています。
子ども政策が、ただ単に費用を分配して福祉の側面を無視するのではなく、誰もが障害を持つ子どもを授かる可能性があり、生活が思いがけず困難になることがあることを踏まえたものであるべきです。離婚や仕事の問題で困難に直面する人たちもいます。
そのような状況下で優しい社会を築くためには、こども(家庭)庁は必要です。ただし、納税者や有権者の皆さんが理解しなければ、この庁の意味は失われます。これからもしっかりと説明し、取り組んでいきたいと思います。
最後に、今回の調査や資料作成を担当した小寺さん、今回の内容についてどう感じていますか?
(小寺さん)
やはり、多くの誤解があると感じていて、歯がゆい思いがあります。一番伝えたいメッセージは、山田さんも私も「今いる子どもたちや若者を大事にする」ということです。こども家庭庁はそのための省庁であり、その目的を掲げているはずです。
プライオリティは子どもや若者、そして当事者をしっかり大切にすることです。彼らが「こんな社会だったら子どもを産みたい」と思えることが、少子化解決につながると思います。こども家庭庁が目指すもの=少子化対策という認識は誤解です。
また、山田さんが述べたように、いかに子どもたちの命を守り、課題を解決していけるかが重要です。これからも、こども家庭庁が目指す方向を育てていく必要があります。引き続きしっかりと取り組んでいきたいです。
(山田さん)
少子化問題は非常に重要なテーマですので、少子化対策と産業政策についても、いずれ改めてお伝えしたいと思っています。今回はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。