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【第595回】 ⦅視察報告・米国編⦆GAFAMの内部潜入!〜デジタル・表現の自由・こども政策〜(2024/09/11) #山田太郎のさんちゃんねる【文字起こし】

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発言者:
(山田さん) 山田太郎 参議院議員
(小山さん) 小山紘一 山田さんの秘書 その1
(小寺さん) 小寺直子 山田さんの秘書 その2


今日の内容

(山田さん)
はい、山田太郎のさんチャンネル始まりました。
先週はお休みをいただきましたが、今週からまた毎週お送りしていきたいと思います。さて、今回は「海外視察報告 米国編」ということで、まさにGAFAMに内部潜入ということで、その辺りの説明をしっかりしていきたいと思います。

デジタル政策、それから表現の自由、そして子供政策に関して、いろいろと視察をしてきましたので、しっかり皆さんに報告したいと思っています。
まず、概要をお話ししていきたいと思います。

(山田さん)
今回の概要ですが、7月30日から8月10日までの11日間、視察で米国に行ってまいりました。内容は、まず1つ目は表現の自由が犯されている諸問題です。皆さんには速報版で新サイバー犯罪条約と、もう1つはクレジットカード問題、VISAカードですね、サンフランシスコ本社に行ってきた話をしましたが、今日は改めて説明をしたいと思います。

それ以外にも、GAFAM、具体的にはGoogle、Amazon、Microsoft等が、検索エンジン等を使って自主規制をしてしまうとどうなるか、という話もしてきました。その辺りもしっかり内部の人に聞いてきましたので、詳しく説明していきたいと思います。

それから、GAFAMといえばデジタル政策が重要です。デジタル政策はどうなっているのか、そういったことについても様々な議論をしてきましたので、それもお伝えできればと思っています。

3都市を10日間で回りましたが、結構いろいろ行きましたね。サンフランシスコではまずNVIDIA、これはGPU、つまり半導体のグラフィック処理を行うチップを作っている企業で、AIにおいて非常に重要だと言われています。

次にApple、iPhoneで有名なAppleです。そして、Google、検索エンジンのGoogle。さらに、スタンフォード大学にも行ってきました。スタンフォード大学の先生方とも議論を交わしました。また、BGVという組織についても、後で詳しく説明しますが、3Comなどを創設したエリックさんがオーナーを務めている組織です。

そして、ジャパンイノベーションキャンパスにも訪問しました。これは経済産業省が中心になって展開している、日本のスタートアップのための拠点となる施設です。それから、電子フロンティア財団ということで、アメリカの表現の自由をしっかりと扱っている団体です。また、VISAカードの本社に行ってきました。

さらに、ニューヨークに関してですが、新サイバー犯罪条約の関係で国連代表部に行きました。それから、ナディーン教授という方が全米自由言論協会の代表をされているとのことで、表現の自由に関して非常に重要な人物ですが、このナディーン先生の実はご自宅まで伺い、お話を伺ってきました。

次に、マンハッタンCAC(Child Advocacy Center)やベルビュー病院に行きました。これらは子供政策に関する視察です。マンハッタンCACは子供のいろいろな意見を聞きながら対応していく団体です。
ベルビュー病院は、子供の精神疾患を扱う公立病院であり、私が訪問したことで、日本の保健制度の優秀さを感じました。この件についても後で詳しくお伝えしていきます。

それから、シアトルにも訪れ、Amazon本社やMicrosoftにも行って、合計14箇所の視察を行いました。非常に忙しい11日間でしたが、最初のテーマは表現の自由に関する内容、今回はカテゴリー別に話していきたいと思います。

表現の自由部門

(山田さん)
まずは、表現の自由に関してですが、これは小山さんの専門分野でもありますが、小山さんは今回の視察に参加していません。突っ込みながら「どうだったの?」と聞いていただく形で進めても良いかもしれません。新サイバー犯罪条約や通信の秘密に関して、いろいろと聞いてきましたので、ぜひ皆さんと一緒に見ていきたいと思います。

さて、最初に国連本部に行きました。内容に入る前に、写真を見ながらイメージを掴みつつ、本題に入りたいと思います。ちょうど新サイバー犯罪条約の最後のアドホック委員会が開かれており、最終の詰めが行われていました。ギリギリのところで、最後の詰めを行ったというところです。

(山田さん)
右上に写っているのが、割澤副議長です。彼はアドホック委員会の副議長を務めており、外務省の条約関係の責任者でもあります。今回、ニューヨークに派遣されていました。割澤さんとは、かなり突っ込んだ議論を行いました。

右下の写真に写っているのは、国連本部のアドホック委員会と新サイバー犯罪条約をまとめている責任者です。彼とも議論を重ねました。真ん中に写っている会議室が、国連本部内でアドホック委員会が行われている場所です。真ん中下の写真に私が立っている場所は、日本の代表が座るところです。

今回の視察は、視察というよりも交渉に行ったというのが正しい表現だと思います。割澤さんとジョン・ブラッドリーノ氏(UNODC条約局長)が先ほどの写真に写っていた方々ですが、ギリギリの段階で議論を行ってきました。

(山田さん)
内容については、これを話すと1時間番組になってしまいますので、前回詳細に説明した部分に任せたいと思います。結果として、日本の漫画やアニメ、ゲームの記述に関して、基本的には規制されると条約上には記されていますが、留保規定をしっかりと設けることになりました。その留保規定を削除するしないで議論が非常に白熱しました。

この新サイバー犯罪条約は、もともとブダペスト条約という別の条約が存在していましたが、ロシアと中国がこれに反対し、国連の場で新たに提案して作られたものです。最後に留保規定について、特に日本の漫画を狙い打ちにするかのような中国が削除を強く主張しました。実際に「漫画」や「アニメ」という言葉も使われ、中国がこれを狙い打ちしていたのです。

この辺りの詳細や具体的な削除等については何度も議論していますので、今日はこれ以上触れません。ただ、ギリギリのところで妥結に至ったという状況です。

結果としては、表現規制のような条文は残ってしまったのですが、しっかりと留保規定があり、それを選ばないという選択が可能です。今後は、日本国内でこの条約を批准した後、国内法整備の段階が本番だという話です。これについては、前回から詳しく説明している内容です。

もう1つ怖い点は、この条約では文章や音声も犯罪化される可能性が示唆されていることです。映像はもちろん、文字で書かれたものもダメとなると、ほとんどの小説やエログロ・暴力的なシーンが対象となる可能性が高いわけです。実際に、この条約を批准し、その選択をした国々はどうなってしまうのだろう、という懸念があります。

最後に、アラブ諸国、特にイスラム教圏の国々が留保規定について強く削除要請していたということもあり、そのような国々では、この新サイバー犯罪条約によって表現規制が進むのではないかと思っています。小山さん、改めて短いコメントをお願いできますか?

(小山さん)
本来はサイバーセキュリティーなどの問題についてもっと話し合われるべき条約だと思っていましたが、各国がコンテンツ規制に強い関心を持っていたようです。これからは国内法の整備が必要になるかどうかも含め、慎重に判断する必要があると思います。

(小寺さん)
私も一緒に同席させていただきましたが、まず山田さんと小山さんが長年積み上げてきた関係が、ジョン・ブラッドリーノ局長との会話でも良くわかりました。局長は日本の懸念を十分理解しているという言葉を冒頭で述べてくれました。局長自身は全体をまとめる役割を担っているものの、日本の役割が非常に重要であると強調しており、日本のプレゼンスが高いことを示してくれていました。これまでの積み重ねがあったからこそだと、私も実感しました。

(山田さん)
これは自分で言うのも何ですが、もし我々がこの問題に取り組んでいなければどうなっていたかと思うと、非常に心配です。この条約をまとめているのは、犯罪をなくすことを目的とした部署であり、取り締まりたい側なので、取り締まらないような条項をわざわざ入れておくインセンティブはあまりないはずです。しかし、我々が2021年頃から約3年間、しっかりと声を上げ続けてきたことが功を奏したと思っています。

(小山さん)
後で紹介するナディーン先生の話からもわかると思いますが、我々ほどこの条約に執着して声を上げている事務所は他にないでしょう。アメリカでも、この条約に国民の関心がほとんどないことが非常に残念です。ナディーン先生のところでもその点に触れたいと思います。

(山田さん)
表現の規制を推進したい人たちは、よくこうした国連の条約を引き合いに出して、「日本もこの条約を批准しているのだから表現の規制をするのは当然だ」と主張します。今回、そうした規制をしっかり抑えることができたのは非常に大きな成果だと思っています。

次に、電子フロンティア財団(EFF)にも訪問しました。EFFはサンフランシスコ市内にある表現の自由や通信の秘密を守ることを目的としたシンクタンク兼ロビー団体で、非常に強力な影響力を持っています。寄付金のみで運営されており、その規模は年間36億円ほどにもなります。アメリカがこの分野に対して非常にセンシティブであることを感じました。

(小寺さん)
EFFは表現の自由を守る弁護士を中心に、100名の職員を擁し、会員数は3万4500人。ニュースレターの読者は157カ国に及ぶ、非常にグローバルで大きな団体です。

(山田さん)
1990年に設立され、表現の自由や通信の秘密、プライバシーの保護を中心に議論を展開しています。また、新サイバー犯罪条約についても、非常に懸念を示してきたアメリカの中心的な団体です。

アメリカでは子供たちのオンラインでの安全を確保しようとする政策が非常に多くなっています。これは正しい方向だと思いますが、最近ではモラルを守るためといった政策が増えており、個人の生命や財産を守るというよりも、社会秩序を重視するような政策が多くなっています。これにより、規制の対象が広がっているという主張もあります。

子供たちのオンラインでの安全を確保しようという政策は、大人の言論の自由やプライバシーにも影響を与えており、十分な議論がなされないまま、どんどん政策が進んでいる現状があります。また、子供たちの知る権利、つまり自分で何が良いか、何が悪いかを判断する権利も問題になっています。この点についてはアメリカでしっかりと聞いてきました。

アメリカでは性表現に関する多くの法律が、実在・非実在の区別をしていないため、アニメや漫画が規制を受ける可能性が高い状況です。実際に有罪となった漫画の例も見せてもらいましたが、日本では問題とされないようなものが、アメリカでは有罪になったケースがありました。このように、アメリカでは実在・非実在を区別せず、表現の規制が進んでいる状況です。

ただ、アメリカでは違法や有害なコンテンツに対してブロッキングを行うのではなく、通知と削除という形で進められています。日本ではブロッキングが議論されることが多いですが、アメリカではそのような形では進んでいません。

投稿者やプロバイダーが通知を受けた場合、削除しないと裁判で決定して、事前検閲のようなことは行われていません。アメリカでは、検閲をすることに対して非常に敏感で、自由の国としてセンシティブな問題とされています。

電子フロンティア財団(EFF)も言っていましたが、新サイバー犯罪条約は定義が非常に曖昧で、何もかもが犯罪となる可能性があります。特に、エログロや暴力的なシーンを含む芸術作品は、配布や制作が犯罪になる恐れがあり、文章や音声も対象とされています。EFFは、この範囲を限定するべきだと主張しており、我々もほぼ同じ主張をしてきました。

(山田さん)
EFFは新サイバー犯罪条約に対する修正案を提出しており、これは英語で詳細に書かれていますが、アメリカ政府に対してほとんど無視されている状況でした。

そこで、日本の山田議員に日本政府にも働きかけ、国連で我々の主張を展開してほしいという要請を受けました。EFFの修正案を預かり、割澤副議長やジョン・ブラッドリーノ氏にも説明し、日米間の議員外交として進めたことは非常に珍しいケースだったと思います。小寺さん、この件についてどうでしたか?

(小寺さん)
まず、グローバル政策部長で国際条約担当の方と、今回この条約に関して話をさせていただきました。まず驚いたのは、民間団体に国際条約を専門で担当する部門があるという点です。彼女は、アメリカ政府に対して、民間側の主張を伝える代表者を務めており、常にグローバルな情報連携を行っていました。我々も、諸外国の表現規制を守る団体がどのように考えているのか、積極的に連携していくことの重要性を痛感しました。

(山田さん)
この団体は年間36億円の予算を持ち、職員が約100名います。日本の漫画やアニメを愛する職員もおり、日本語が堪能な方もいたので、通訳の必要はありませんでした。非常に良い連携が取れたと思っています。

さて、もう1つの問題は、サンフランシスコに本社があるVISAです。例のクレジットカード規制の問題に取り組んできました。これについては前回詳しく説明していますので、今回は簡単に概要をお話しします。

(山田さん)
日本では合法なコンテンツにもかかわらず、規制がクレカによって行われていることが問題視されています。国際ブランドからの指示ではないかとの指摘もありましたが、本当にVISAがそのような表現規制を指示したのか、問い合わせを行い、その後の対策についても話し合いました。

VISAとしては「インテグリティ」を重視しており、自分たちが大事にしている価値やポリシーについて詳しく説明を受けました。人の安全や幸福に対する侵害、経済的優位性を利用した危害については断固として対応するが、合法なコンテンツに対して価値判断を行うことはないとのことです。

漫画やアニメに関しても、特定の表現が問題視されることについて説明しましたが、VISAとしては銃について賛否両論があるアメリカでも、売買に対して評価を行わないように、表現についても同様に規制は行わないと説明されました。

また、アダルトコンテンツに関しても、児童ポルノか否かという点を含め、合意のもとで提供されているものであれば、VISAとしてはコンテンツの規制は行わないという方針です。もし規制が行われている場合、それは現場での判断であり、VISAの国際ブランドとしてはそのような指示は出していないということが確認されました。この確認は非常に大きな成果だと思っています。

これは前回の番組でも説明しましたが、今後は具体的に誰が規制をしてカードを使えなくしているのかについて、アクワイアラーなどに問い合わせを行っていく予定です。この件について、我々にもいくつかの会社、いわゆるカード取引をしているところからの動きがあり、説明を受けることになっています。ここは引き続き取り組んでいきたいと思っています。

この辺りについてはどうですか?

(小寺さん)
はい、山田さんのツイートを引用させていただいたところ、少し話題になりました。山田さんが非常にしつこく聞いてくれたおかげで、私は少し気まずい思いをしました(笑)。3回も「もう一度聞かせていただきます」と繰り返していたので、通訳さんも苦笑いしていましたが、それでも本社の方は非常に丁寧に対応してくれました。時間も大幅に延長して対応してくれました。3回の念押しにも毎回丁寧に答えてくれたので、間違いないと確信しています。

(山田さん)
日本の国会議員が正式に聞いたことは非常に重要だったと思います。この問題を解決に導くために、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思っています。ここまでは前回詳しく放送した内容です。

ここからはアメリカ編ということで、詳しくお話ししていきたいと思います。次に、ナディーン・ストロッセン教授との面談についてお伝えしたいと思います。これは非常に重要な面談となりました。

(山田さん)
ナディーン教授は、ニューヨーク大学のロースクールで教鞭をとっており、アメリカにおいて表現の自由に関して最も有名な人物の一人です。あらゆる表現規制や表現の自由に関わる裁判に彼女が関わっていると言っても過言ではありません。

2021年に、アメリカ連邦議会襲撃事件が起こり、これをきっかけにアメリカ国内では表現の自由に関する規制の議論が進みました。この影響で、2024年4月にTikTok禁止法が成立したり、その他の表現規制やポリティカル・コレクトネスに関する表現の萎縮が進んだ状況があります。この点について、ナディーン先生も非常に懸念を表明していました。また、新サイバー犯罪条約に関しても同様に懸念を示しており、その点についても意見交換を行いました。

ナディーン・ストロッセン教授はニューヨーク大学ロースクールの教授であり、法学者、弁護士、市民運動家としても活躍しています。彼女は、アメリカ自由人権協会(ACLU)の初の女性代表を務め、20年近くその役割を果たしました。この団体は、アメリカ合衆国権利章典で保障されている自由を守ることを目的とするNGOであり、184万人の会員を持ち、予算も4億ドル近く、職員数は1700人に及ぶ、アメリカ最大の表現の自由を守る団体です。

ナディーン先生は、今のアメリカにおいて表現の自由を主張することは非常に勇気がいる状況であると述べています。表現の自由自体がマイノリティの立場に追いやられ、多くの国民からは危険なもの、若者に悪い影響を及ぼすものと見なされている現状があります。

さらに、政治家たちは票を集めるため、民衆の支持を得ようとして表現の自由を規制しようとする動きが広がっています。国レベルでのTikTok禁止法や子供オンライン安全法などが次々と作られているほか、州レベルでも様々な規制が進んでいるとのことでした。

この議論の中で、子供を守るためという名目で規制が行われている一方で、大人の表現の自由も一緒に規制されてしまう点について、十分な検討がされていないのではないかとの指摘がありました。

新サイバー犯罪条約に関しても議論が行われましたが、アメリカの国民の多くはこの問題について知らず、議論の場も設けられていない現状があるそうです。

ナディーン先生は、表現の自由を守る政治家が必要だと強調していましたが、アメリカにはそのような政治家がほとんどいないと言います。日本では私と赤松先生がこの問題に取り組んでいるということで、素晴らしいというお言葉をいただきました。

アメリカでは、今ポリティカル・コレクトネスが非常に深刻な影響を及ぼしており、大学ですら自由な議論ができないという状況です。特に若者や高校生たちが反発を始めている動きもありますが、すでに何人もの大学教授が辞職に追い込まれる事態が起こっています。自由の国アメリカが一体どこに行ってしまったのか、非常に厳しい状況だということを説明していただきました。

私たちは約2時間ほどナディーン先生のご自宅にお邪魔し、お茶をいただきながら話を伺いました。ご自宅は非常に立派で、美術館のような雰囲気でした。場所はニューヨークのセントラルパーク近く、コロンビア大学のそばにある高級住宅街にあります。小寺さん、どうでしたか?

(小寺さん)
ナディーン先生は御年74歳(ウィキペディアより)で、表現の自由の最前線でアメリカの歴史を見てきた方です。印象に残った先生の言葉は、確かに今は非常に厳しい状況だが、過去にも同様の厳しい時期があり、若者たちが運動を起こし、やがてリバウンドが起きたということです。表現の自由は常に上下の波があると考えており、今回も若者たちの反発が大きくなれば、また必ずリバウンドが起こるだろうと予測しているというお言葉が印象的でした。

小山さんも参加されましたが、どうでしたか?

(小山さん)
私はオンラインで参加していましたが、小寺さんがおっしゃった通り、ナディーン先生は「私は悲観していない」と非常に楽観的でした。状況は確かに厳しいけれども、弁護士でもある彼女は最終的には合衆国憲法に基づいて裁判で戦うという強い気概を持っていました。もし政治家の動きがおかしければ、私たちは裁判で戦うのだと語っており、20年近くACLUの代表を務めてきた本当にレジェンドのような方でした。

(山田さん)
元々、表現の自由というのはアメリカのリベラルが掲げる旗でしたが、逆に今ではリベラルが行き過ぎているとも言われています。例えば「この表現は差別につながる」「あの表現は人を傷つける」ということで、実はリベラル自身が表現の自由を奪っているのではないかという指摘があります。

アメリカ議会襲撃事件についても、アメリカ国内で様々な議論がされていますが、この事件はコンサバ対リベラルの分断をさらに深めたと言われています。特に行き過ぎたリベラルの影響については、我々がサンフランシスコとニューヨークを訪れた際に感じたことです。これらの地域は民主党の勢力が強く、リベラルな地域であり、アメリカの中では非常に共産主義的だとも言われています。

例えば、スタンフォード大学についても、後ほど話しますが、リベラルな議論が行き過ぎており、企業活動がしにくいということで撤退する企業も出ているとのことでした。さらに、現在のアメリカ大統領選挙においても、トランプか、ハリスかという問題を含め、意見が極端に分かれています。特にリベラルの弊害については、相当な指摘がある状況です。

何がリベラルで、何がリベラルではないのか、分からなくなってきたという感もあります。このあたりの問題は、アメリカ大統領選挙が進む中で、どこかで取り上げられるのではないかと思っています。

デジタル政策部門

(山田さん)
ここからは「アメリカ訪問 デジタル編」ということで、AIや製造業、スタートアップについて取り上げたいと思います。まず最初に訪れたのはNVIDIA本社です。NVIDIAについて知っていましたか?

(小寺さん)
はい、NVIDIAはもちろんチップを作っている会社として知っていました。説明の場も非常に素晴らしく、歴史が一覧で分かるデモルームがあり、最先端の技術をどのように分析しているのかをフロア全体でパッケージとして説明していただきました。

(山田さん)
私自身も、もともとビジネス用にゲーミングパソコンを使っていて、そこにNVIDIAのGPUが搭載されていましたが、まさかこのチップがAIでここまで使われるようになるとは思ってもいませんでした。当時はグラフィック向けのチップだと思っていましたが、今やNVIDIAは世界で最も価値のある企業の1つになり、Microsoftを抜いて一時的に時価総額で最高額を達成しました。

(山田さん)
NVIDIA本社の写真ですが、NVIDIAはシリコンバレーのど真ん中に位置しており、今回は物作り太郎さんと、さくらインターネットの田中社長と共に訪問しました。この田中さんと共に行ったのは非常に象徴的です。というのも、日本でNVIDIAのGPUを最も購入しているのがさくらインターネットだからです。

さくらインターネットは、データセンターの容量が2エクサプロップという、日本で最も大きな規模を誇っています。その最大の買い手と共にNVIDIAを訪れたため、非常に歓迎されました。

左下の写真に注目していただきたいと思います。左下に2枚あるチップが、まさにNVIDIAの主力製品であるH100というGPUです。これ1個の価格は500万から、最近では800万から1000万程度にまで上がっていると言われています。1個のチップに800億個のトランジスターが搭載されており、これが現在、奪い合いになっている主力製品です。

どうしてこのチップが重要なのかというと、AIの大規模モデル(LLM)の処理には大量のGPUが必要だからです。しかし、このチップは非常に高価で、各社がコスト競争の中で苦労している状況です。データセンターの構築がこのチップを手に入れられるかどうかで決まってしまうため、激しい競争が繰り広げられています。

次に、右側の大きな写真に目を移してください。8個の大きなボックスのように並んでいるのが、まさにこのH100を搭載したCPU本体です。8個を重ねると、1個1000万するこのユニットだけで8000万、つまり億近くの価値があります。これを大量に使用してデータセンターが作られているわけです。

もう1つ注目していただきたいのが、その下にある青と色がついていないチップセットです。これが、グレースホッパー(GH200)と呼ばれるもので、現在非常に話題になっているチップセットです。グレースホッパーは、CPUとGPUを一体化したチップで、NVIDIAがGPUだけでなくCPUの分野にも進出していることを示しています。

さて、なぜこの「グレースホッパー」という名前が注目されているかというと、もしかしたら聞いたことがないかもしれませんが、「コンピューターおばあちゃん」としてこの世界では最も有名なおばあちゃんです。どれほど有名かというと、「COBOLの母」と呼ばれているほどです。COBOLは、私も学生時代に学んだ非常に重要なプログラミング言語で、その母として知られています。

さらに彼女は、数学の博士号を取得した初の女性であり、軍でも79歳まで現役士官として務め、最後は准将まで昇進しました。現役士官としては最高齢の軍人だった彼女は、1992年に85歳で亡くなりました。このグレース・ホッパーさんの名前を取った「グレース」は、ARMをベースとしたCPU、そして「ホッパー」はNVIDIAのGPUを指しています。この組み合わせが次に世界を席巻すると言われており、多くの人が喉から手が出るほど欲しがっている製品です。

写真では少し見えにくいかもしれませんが、8個のユニットの右側に小さく映っている「ジェットソン」というエッジコンピューターがあります。これは、大量の画像を処理する際、ネットワークの負荷を軽減するために、端末側で処理を行う強力なGPUとCPUを組み合わせたものです。この組み込み系のコンピューターチップも展示されており、まさにNVIDIAの製品群の一部です。普通の人が見ても「何のこと?」という感じかもしれませんが、私は非常に興奮しました。

NVIDIAは単にチップを開発するだけでなく、これらの応用についても多く取り組んでいます。AIや生成モデルにおいても効果はあると思いますが、これから特に重要になるのは、人型ロボットの導入に関する計算処理です。この点で、NVIDIAの技術は非常に重要な役割を果たすだろうと考えています。

(山田さん)
これはどういうことかというと、NVIDIAは製造業に対するサポートを行っています。例えば、テスラが「テスラ・オプティマス」を作る際に、ロボットが部品を組み立てています。これまでのロボットはルールベースで動作し、1つずつ経験を積んで、物を持ってみて落としたりすることで、学習していくという方法を取っていました。

これまでは何万回も実験を繰り返し、ロボットにニューロンを作らせて学習させていたのですが、それでは時間がかかりすぎます。そこで、ロボットのシミュレーションを行い、仮想空間上でロボットを訓練するという方法が導入されました。

例えば、右下や真ん中下の画像を見ていただくと、穴を開けたり階段を作ったり、砂場を作ったりするシミュレーションが行われています。このように仮想空間で何百万回、何億回も学習させることで、ロボットの訓練が飛躍的に進むわけです。人間が一生かけても経験できないようなことを、数日間で仮想空間上で学習させることができるようになりました。

これにより、膨大な処理能力が必要となりますが、実現すれば現場は大きく変わる、人手不足の問題も解決に近づくでしょう。特に、テスラが取り組んでいる「テスラ・オプティマス」や、ヨーロッパでも次世代工場のコンセプトなど、NVIDIAの技術はすでに多くの分野で応用されています。

(山田さん)
また、NVIDIAはカリフォルニアの火災の被害分析や、今後どのくらいの被害が広がるかの予測にも取り組んでいます。さらに、震災や気象に関するデータ処理にも活用されています。これらの多くの分野で、NVIDIAのGPUとCPUの組み合わせが応用されているということです。

小寺さん、感想はいかがですか?

(小寺さん)
やっぱり世界が変わる瞬間を目の当たりにした気がします。NVIDIAのもとでこれらの技術が進んでいることに非常に感動しました。

(山田さん)
小山さんこの辺りについてのご意見は?

(小山さん)
NVIDIAは、私も当初は「一部のゲームをする人向けに特殊なGPUを供給する会社」という認識でしたが、ここ2、3年で誰もが知る超一流企業になりました。他の企業もそうですが、自社の歴史をしっかりとアーカイブしている点も印象的でした。ヨーロッパを訪れた際にも感じましたが、日本企業ももう少し自社の歴史を大事にして、窓際族の仕事のように感じるのではなく、重要な役割として意識を持って取り組むことが、日本企業の今後の浮上につながるのではないかと思います。

(山田さん)
さて、次はスタンフォード大学をはじめとした学術機関についてお話ししたいと思いますが、その前に、それらをつないでくれたBGVという投資家集団について説明します。

(山田さん)
BGVは、エリック・ベナモウ氏が設立した投資集団です。エリック・ベナモウ氏は、ネットワーク全盛時代の3Comの創業者であり、写真の右側にあるPalmのCEOも務めていました。BGVはエンタープライズ分野に特化した老舗のベンチャーキャピタルです。

今日伝えたいのは、表面的にシリコンバレーに出かけても、誰とでも会えるわけではないということです。GAFAMに行くことは誰でもできますが、人脈が非常に重要です。今回は、小寺さんの知り合いのご紹介もあり、BGVのエリック・ベナモウ氏とつながることができました。シリコンバレーやスタンフォードのインナーグループに入ることが、成功へのきっかけになるのではないかと思います。

現在、BGVはAIの進化に伴う新しいビジネスモデルやサービスに特に注目しており、マーケティング、財務、顧客サービス、保険、ロジスティクスといった領域が非常に重要だと考えています。日本にも非常にチャンスがあると捉えていますが、「良い投資先はないか」という問い合わせもあり、私自身もいろんな人たちをつなぐ役割をしています。

しかし、日本企業には課題もあります。私も上場している経験から感じることですが、日本の場合、将来価値に対して企業の評価が高すぎることがあります。安易に時価を設定してしまい、投資しにくい状況を作り出しているのです。また、成長資金を提供する日本のベンチャーキャピタルが少ないという点も問題視されています。

BGVは、グロースさせることが得意な企業です。何といっても創業者は3ComやPalmを作り上げた人物です。また、グローバル展開がなければ成長は見込めないということで、「10対8の法則」があります。これは、「10人までに達した企業が18ヶ月以内に何らかのグローバリゼーションを実現しなければ、基本的にその企業はグローバル化しない」というものです。

私も上場時に感じましたが、上場して1年以内に海外展開やM&Aを行わない企業は、その後も海外展開もM&Aもしないと考えています。私自身、両方とも実施しましたが、彼らが言っていることは非常に的を射ていると思いながら話を聞いていました。

次に訪れたのはスタンフォード大学です。シリコンバレーはスタンフォード大学から始まったとも言われていますが、スタンフォード大学の関係者とも直接話をしました。

(山田さん)
1人はEberhart Robert先生で、日本にもいらっしゃった際に面談したことがあり、今回は改めて面談しました。彼は、スタートアップや新しいビジネスモデルに対する見解が非常に深い方です。

一緒にいたDanielLin先生が、私が台湾を訪れた際に行った新竹パークの出身だということで、非常に感激していました。彼は半導体に非常に詳しい方です。また、RichardDashe先生は、スタンフォード大学のUS-アジアテクノロジーマネジメントセンターの所長で、スタートアップやテクノロジー領域に詳しい方です。

スタンフォード大学は非常に大きく、東大の110倍の広さだと言われています(正確な数字は忘れてしまいましたが、非常に巨大な大学です)。もともとスタンフォード大学は、スタンフォード氏が息子さんを亡くしたことをきっかけに設立した大学です。彼は西部に鉄道を敷いた大陸横断鉄道のオーナーであり、私財を投入して私立の大学を設立しました。正式には、息子さんの名前を冠した「リーランド・スタンフォード・ジュニア大学」という名前が正式名です。

左下の写真に写っているのは、スタンフォード大学のチャーチ近くにあるタイムカプセルで、卒業生たちがメッセージを埋めたものです。真ん中のチャーチは、スティーブ・ジョブズのお葬式が行われた「メモリアルチャーチ」であり、私たちもその中を見学しました。

スタンフォード大学ではさまざまな議論を行いましたが、特に興味深かったのは「なぜシリコンバレーができたのか」という歴史的な説明でした。この点については後で詳しく説明します。

(山田さん)
シリコンバレーは世界で最も不平等な社会だと言われています。格差が拡大し、契約労働者が急増しており、教育機会の不平等や街の空洞化も進んでいます。特にサンフランシスコでは生活費が高騰しており、医者や弁護士でも生活ができないため、ホームレス化しているケースもあるほどです。

年収が日本円で1400万〜1500万円あっても貧困層に分類され、初任給は日本円で2000万円を超えることも珍しくありません。この状況は、円安の影響もありますが、アメリカでもかなり厳しい状況です。特にサンフランシスコやシリコンバレーは、金持ちだけが住む地域になってしまいました。

日本の起業精神は決して低くはないけれども、スタートアップの環境は十分ではないと指摘されました。日本の起業率が非常に低いこともよく言われています。日本の研究をしている方々からの指摘で、いろいろ見直すべき点があるのではないかという意見をいただきました。

さて、もう1つの議論の中で、「なぜシリコンバレーができたのか」という話が出てきました。私もこの話を知らなかったのですが、とても興味深い内容だったので、少し触れていきたいと思います。

(山田さん)
シリコンバレーは、1890年から1940年頃に成長しました。もともとはゴールドラッシュから始まっています。西海岸で金が発見され、ゴールドラッシュが起こりました。東海岸にいた人々が西に移動する際に、重要なことが2つありました。1つは、移動が大変だったため通信が必要で、モールス信号が使われるようになりました。もう1つは、食糧を確保するために森林を畑に変えるための農耕機具が必要だったことです。

(山田さん)
その結果、シリコンバレーではラジオ用の真空管と、食品を作るための農耕機械が中心に開発されました。これがシリコンバレーの始まりです。そして、次第に土地の計測機器や防衛のための技術が広がり、シリコンバレーはさらに成長しました。

(山田さん)
もう1つ、シリコンバレーが急速に発展したのは1960年から1980年にかけてです。この時期は、米ソの冷戦が背景にありました。アメリカ政府は、シリコンバレーで進んだコンピューター技術に巨額の投資を行い、特にケネディ大統領が「月に行く」と宣言したアポロ計画が象徴的です。

(山田さん)
これをきっかけに、コンピューター技術の強化が進み、シリコンバレーが発展しました。しかしシリコンバレーが政府の資金を得たのは初期の段階だけで、その後はずっと民間の投資で成長してきたということです。それ以降、政府からの投資は受けていないとのことでした。

その後、ベンチャーキャピタルが育ち、シリコンバレーの発展を支えてきたのです。一方で、日本は相変わらずベンチャーを育てるために政府が資金を出し続け、科学技術を支えていますが、アメリカは早い段階でその状況を卒業しているということです。

(山田さん)
シリコンバレーの発展を簡単にまとめると、1960年から1970年にかけて、真空管から半導体へと移行しました。1980年から1990年にかけては、AppleやSun Micro、Silicon Graphicsが登場し、ネットワークや大型汎用コンピュータが発展しました。

1990年から2000年には、ネットコンピューティングの時代が到来し、Web技術が発展。3ComやCisco、そして懐かしいNetscapeとGoogleの戦いもありました。そして、2000年代にはSNSの時代が訪れ、FacebookやTwitterが登場しました。Facebookのマーク・ザッカーバーグもスタンフォード出身です。現在はAIの時代に突入し、シリコンバレーは引き続きネットワークとコンピューティング、SNSとAIという形で発展しています。

さて、日本もこれに追いつかなければならないということで、経産省が中心となり、「ジャパンイノベーションキャンパス」というスタートアップ支援のインキュベーションセンターを設立しました。2階建ての小さなオフィスビルを改装したもので、場所を貸し出す形でスタートアップ企業を支援しています。いくつか注目すべき企業もあり、興味深い取り組みを見せています。

(山田さん)
ただ、成功するためには、シリコンバレーのようなインナーサークルに入ることが重要です。表面的にセンターを作ったからといって、本当に成功するのかは疑問が残ります。

(山田さん)
運営は森ビルに任されているということですが、年間予算が2.5億円ということで、残念ながら大規模なことは難しいのかなと思います。ただ、やはり若い力はすごいなと感じました。先端技術を持った日本の企業が多く参加しており、優秀な企業も多く、いろいろなプレゼンテーションを受けました。その中でも特に注目したのが、Orange Inc.という日本人が立ち上げた会社です。

(山田さん)
この会社のすごいところは、日本の漫画などをAIで翻訳し、正規版として提供するということです。多くの翻訳を行っていますが、単なる翻訳ではなく、例えば漫画の場合、日本語のセリフが絵に重なっている部分をAIが自動で消し、その上に英語を載せるという作業を瞬時に行います。すでに多くの出版社と契約を結んでおり、非常に頑張っている企業です。正規版を広めるために、こうした企業が増えることは良いことだと思っています。

もう1つは、私が教えていた教え子が立ち上げた「コータック」という会社です。癌の放射線治療を行っている会社で、私が早稲田大学で教えていた時の教え子が関わっているため、非常に感慨深いものがありました。

ここまでで、一緒に行った小寺さんはどう感じましたか?

(小寺さん)
Orangeという会社の存在を知らなかったので、非常に感動しました。ただ、日本国内で活動していても、彼らの将来性は限られているように感じます。やはり、海外、特にアメリカの出版社と直接契約できる環境が重要であり、海外に拠点を置くことが成功の鍵だと思います。そういった意味で、このイノベーションキャンパスはそのサポートの一環にはなっていると思います。

ただ、山田さんが言うように、現地の人たちとネットワークを作り、入り込んでいけるかが重要です。設立してまだ1年ということで、まだそこまでは達成できていないという話も伺いました。今後の成長には、しっかりとしたバックアップが必要だと感じました。

(山田さん)
次はGoogleとAppleを訪問しました。Googleは有名な検索エンジンの会社ですが、今回主に議論したのは、AIによる著作権侵害や表現の自由が守られるかどうかについてです。私はこの点について懸念を持っていたので、率直にぶつけました。

実は、GoogleとAppleに関しては、面談は行いましたが、具体的な内容や結論は対外秘にしてほしいという要請がありました。そのため、この番組内では具体的な部分をお話しできないところもあります。ただ、政策上の責任者として、話し合った内容をしっかりと反映させるつもりです。広く発表はしませんが、表現の自由が侵害されないように取り組んでいきます。

ただし、私たちがどのような問題をぶつけたのかについては、公開しても差し支えないと思いますので、その点については少しお話しします。

(山田さん)
1つ目は、AIに関する著作権侵害について、Googleがどのような立場を取っているかという点です。もう1つ、Googleが特にセンシティブだと思われるのは、日本の「ソフトウェア競争促進法」に関する問題です。この法律は、AppleやGoogleに大きな影響を与える可能性があり、彼らはこの話題には触れたくないようです。競争促進やイノベーションの活性化についても議論しましたが、GoogleやAppleがプラットフォームを囲い込んでいるのではないかという懸念に対して、日本を含む各国が規律を求めている状況があります。

一方で、Googleが表現の自由や通信の秘密を守るためにどのような取り組みを行っているか、また、エログロや暴力的なコンテンツに関する表現規制についても話し合いました。クレジットカード問題も大きな問題ですが、検索エンジンを運営するプラットフォーマーがこれらの規制を行えば、ネット上で情報が検索できなくなる可能性があります。

さらに、EUとの連携も関連する「ハイリスクAI」に関する議論では、人権やプライバシーの問題が重要視されています。GoogleやAppleがこれにどう対処するのかも非常に大きな課題です。この点については、今後も継続的に議論していきます。

この内容について、皆さんに開示できるようになれば、詳細はしっかりお伝えしたいと思います。訪問先との約束として、議論の詳細は開示しないということになっていますが、訪問した事実とアジェンダについてはお伝えします。

Appleも同様で、生成AIやエッジコンピューティングに関する日本の戦略やAI規制、著作権問題、表現の自由について議論しました。特にAppleのサービスで、アプリが「この内容は扱ってはいけない」とされると、表現規制に直結します。また、「Apple税」と呼ばれる、プラットフォームが独占的に取っている手数料の問題や、個人情報の取り扱い、AppleストアでのBANに関する問題、ポリティカル・コレクトネスの問題、フィルタリングやブロッキング、通信の秘密についても突っ込んだ議論を行いました。

これらの内容は、今後改めて交渉し、皆さんに公開できるよう努めます。
写真を見ながら少しコメントしておきますが、Apple社は通常、政治家を社内に入れることはあまりないそうです。今回、私たちが入れたのは、インナーのつてを使ったり、交渉を重ねた結果です。誰でも訪問すれば議論できるわけではなく、非常にラッキーだったと思います。また、私が日本で表現の自由に関して強く活動していることが、AppleやGoogle側でも報告されていたため、無視できない存在と判断されたのではないかと思います。しっかりと議論してきました。

(山田さん)
ちなみに、このリンゴの写真は、Apple本社でもらったリンゴです。Apple本社のサークル内にリンゴの木が植えてあり、そのリンゴを持ち帰りました。Wikipediaにも掲載されているApple本社ですが、私たちも写真を撮りましたが、撮影許可が下りた場所は限られており、入り口の門前だけ撮影が許可されました。小寺さん、この辺りどうですか?

(小寺さん)
Appleのオフィスは内容には関係ないですが、素晴らしすぎて感動しました。本当に綺麗で美しいデザインでしたね。中庭も非常に開けていて、従業員のために超有名な歌手を呼んでコンサートを行ったりしているそうです。

(山田さん)
GoogleやApple、それからAmazonやMicrosoftでは対応が全く違うということで、お伝えできる内容も限られてしまいましたが、またどこかで詳しくお話ししたいと思います。

(山田さん)
さて、その他のシリコンバレーについても紹介したいと思います。左上の写真は、まさにヒューレット・パッカードのガレージです。この奥の倉庫のような場所でヒューレット・パッカードが始まりました。看板はすぐ右下にありますが、ここが「シリコンバレー発祥の地」です。確か1930年代にシリコンバレーがスタートしました。

シリコンバレーの象徴と言えば、Intel(インテル)ですね。「インテル入ってる」のインテルですが、現在は半導体会社との競争に追われ、危機的状況にあると言われています。それでもIntel博物館は非常に人気がありました。

さらに、右から下にかけて写っているのは、シリコンバレーにあるコンピューターミュージアムの写真です。懐かしいものがたくさんあって感動しましたので、皆さんにお伝えしたいと思いました。

下の左側2枚は、私が大学時代に計算の授業で使っていたものです。私はフォートランを学んでいたのですが、紙のパンチカードでコンピューターを操作していました。タイプライターでプログラムを打ち込み、穴を開けたパンチカードを汎用コンピューターに読ませるという作業でした。今では信じられないことですが、紙を一度落とすと順序が入れ替わって全てが台無しになることもありました。本当に大変な時代でしたね。

右下の写真はApple IIです。Apple IIと言っても、あまり感動しないかもしれませんが、1977年に登場したモデルです。8インチのディスクドライブも搭載しており、真ん中には懐かしいメモ帳になってる3.5インチのフロッピーディスクがあります。ちなみに、3.5インチのフロッピーディスクの容量は1.4MBです。ギガではなく、1.4メガバイトです。さらに、8.5インチのAppleの容量は100KB、つまり0.1メガバイトです。今考えると驚きですね。

私は中学2、3年生の頃、NECのPC-8001を親に無理して買ってもらい、いじっていたので、非常に懐かしい気持ちになりました。1970年代後半からコンピューターを触っていたことを思い出しました。

(山田さん)
それから「栄枯盛衰だな」と思ったのがここです。左側の有名な看板はMeta社、つまりFacebookの本社の看板ですが、驚くことに、その裏側には「Sun Microsystems」と書いてあります。すごいですよね。これはわざと残してあるそうです。どういうことかというと、もともとSun Microsystemsの本社をMeta、つまりFacebook社が買収したということです。そして、看板をひっくり返して残しておくという、なんとも意味深な感じですね。

私が働き始めた頃、Sun Microsystemsのワークステーションは1台1000万ぐらいしていて、HPかSunかという選択があった時代でした。アルファチップを使って、ネットワークでトークンリングを組んでいたんです。Sunという会社は、当時の私にとって憧れの企業でした。

東京にもSun Microsystemsのビルがありましたし、私もSun Microsystemsの山田専務と仲良くさせていただき、仕事をしていました。そのSun Microsystemsの本社が今はMetaになっているということで、看板が残っているのを見て、非常に象徴的なものを感じました。

さて、次はシアトルにあるMicrosoft本社に移ります。Microsoftは非常に解放的でオープンな会社です。Microsoftで展開している次世代のソリューションが展示されている部屋があり、1つ1つ丁寧に説明していただきました。また、生成系AIや著作権問題、表現の自由についても詳しく説明を受けました。

(山田さん)
Microsoftとしては、表現の自由に対する制約、特に性表現や暴力表現に関する制約は、最低限に抑えるべきだと考えています。もちろん、完全に制約をしないわけではありませんが、最終的には個人のユーザーが選択できるようにすることが重要だと言っていました。たとえば、ある家庭では制約をオンにし、別の家庭ではオフにできるというように、選択肢を提供することが大切だと考えているそうです。

(山田さん)
著作権についても重視しており、侵害の通知があれば必ず対応し、どんな著作物が使われているのかをカタログ化する作業も行っているとのことでした。

EUのAI actに関してですが、これは今後EU編でも詳しく説明しようと思います。まだはっきり決まっていない部分がたくさんあります。議論が足りていない点も多いということで、検索結果の表示とAIによる生成物は分けて考えるべきだという意見がありました。

私は、「検索と生成AIで出てくるものは分けるべきではないか」という懸念を示しましたが、Microsoftをはじめ、検索エンジンを持っている企業は両者を近づけようとしている状況です。この懸念についても議論を行いました。

Microsoftは非常に誠実であり、細かい点についても逐一しっかりと回答をいただきました。また、こうした議論をオープンに公開してもいいということで、今日はMicrosoftでどのような議論があったかを詳しく報告させていただきました。

(山田さん)
次にAmazonについてですが、シアトルのど真ん中にある「スフィア」と呼ばれる球体建物が印象的でした。Amazonといえば「ジャングル」のようなイメージがあり、シアトルのこの球体の中には本当にジャングルが広がっています。右上の写真にあるバナナを無料で配っている光景も印象的でした。社員以外の人も自由にバナナを持ち帰ることができ、一束ごと持って行く人もいて、気前の良さを感じました。

(小寺さん)
このスフィアの中には数万種類の植物があり、日本の京都や沖縄からも植物を持ってきているとのことです。滝が流れ、魚もいるこの植物園のような空間で、右下のピンクのTシャツを着た方々が植物の専門家として常に配置されており、質問にいつでも答えてくれます。彼らは、社員の生産性を向上させるために配置されているとのことです。

(山田さん)
この中で社員たちは議論をしたり、パソコンで作業をしたりしていました。
Amazonでもさまざまな議論をしてきました。ここでは、生成系AIによる著作権侵害の問題やフェイクニュースに関する話、それからAWSのレギュレーションにおいて表現の自由が制約される可能性についても議論しました。

(山田さん)
まず、AWSではAIガバナンスに関して各フェーズで基準を設けており、生成AIに関してはコントローラビリティや真実性、安全性に配慮し、ユーザーが安心して使えるような対策を講じているとのことです。また、各国の法律をしっかりと確認し、自分たちの基準とどのように整合性を取るか常に議論しているそうです。

さらに「AIサービスカード」を作成し、顧客がどんなAIにリスクがあるかを理解できるよう努力しています。著作権侵害や誤情報・有害情報の生成があった場合には、それぞれのケースごとにガイドラインやフィルタリング機能を実装して対応しているという説明を受けました。

また、生成系アプリケーションを作成できる「Amazon Bedrock」というサービスについても議論しました。ここでのコントロールが厳しすぎると表現の自由が削られてしまうため、AWSとしてはコントロールを最小限にとどめ、ユーザーが自由にコントロールできるようにしていると強調していました。プロンプトや出力のフィルター設定も、それぞれが個別に行うことができるとのことです。

さらに「AWSは高いのでは?」という声もありますが、できるだけ低価格を目指しているとのことでした。また、プライバシーやセキュリティ面でも、AWSはオンプレミス環境よりも高い付加価値があると強調していました。

小山さん、この辺りどうですか?

(小山さん)
GAFAMの生産性向上のための取り組み、特にこのスフィアの中に植物園を作り、専門のスタッフを配置することで生産性が向上するという考え方は、正直なところ理解に苦しむ部分もあります。別の世界だなという印象を受けました。いろんな産業や階層があるとは思いますが、Amazonがこうしたことに価値を置いていることには感銘を受けました。ただ、完全に理解できるかというと、まだ謎が残る部分も多いのが正直なところです。

(小寺さん)
展示も非常に面白く、Microsoftの技術を使ってどの企業がどのようなソリューションを実現したかを紹介していました。たとえば、ベンツや電力会社、フェデックスなど、20社ほどの展示がありました。

しかし、驚いたことに、その中に日本の企業が1社もなかったのです。その理由を聞くと、日本の企業も応募したが、社内で検討した結果、断られることが多いとのことでした。そもそも、AIを導入している企業が他国に比べて少ないため、展示には含まれないという話でした。世界中からエグゼクティブが集まる場で、日本のプレゼンスが一切ないことは、少しショックでした。

(山田さん)
GAFAMとのやりとりの中で、表現に関わる話や規制について議論しましたが、国会議員が聞くには限界があり、「やっていません」や「それは違います」という答えを引き出すのは難しい部分もあります。相手もこちらの立場を把握していますし、微妙なラインを狙って話すので、あまり深い部分まで踏み込めずに終わることが多かったです。

GAFAMに潜入して全容を把握したというわけではなく、あくまで入り口のようなものでした。しかし、こうしたコミュニケーションを取ることは日本の政治家にとって非常に重要ですし、アメリカのプラットフォーマーに対して、日本の政治のプレゼンスを示すためにも、今回の訪問は第一歩だったのではないかと思っています。

(小山さん)
デジタル系の視察には私は同行しませんでしたが、国内でサポートをしたり、山田さんや小寺さんと一緒に質問案を考えたりしました。すべて、表現の自由に関連する事項を質問や要望事項に含めました。いわば逆ロビイングのような形で、日本の国会議員が「これが重要だ」と伝え、「こうした対応をしない場合、日本では法規制が行われるかもしれない」といった姿勢を明確にしました。これが、GAFAM側に緊張感を持って接してもらう要因になっていると感じました。

(山田さん)
さて、デジタル分野の最後に、自動運転タクシーについてお話しします。今回の視察で最も驚いたものの1つであり、体験してきたので動画も見ながら解説したいと思います。サンフランシスコでは、すでに自動運転タクシーが300台も走っており、24時間365日体制で稼働しています。頻繁にタクシーが走っている様子を見ることができました。これは「百聞は一見に如かず」ということで、ぜひ動画を見ながら一緒に体験していただきたいと思います。

(山田さん)
大使館の方がアプリを持っていて、無人のタクシーを呼んでもらいました。センサーやカメラがたくさん搭載された車で、恐る恐る乗りました。VISA本社から金門橋(ゴールデン・ゲート・ブリッジ)まで乗ってみようということで、3人で体験しました。

私は助手席に乗りましたが運転席には誰もいません。まるで透明人間が運転しているようで、本当に走るのかと心配でした。車内の画面にある青いボタンを押すとスタートし、料金が発生する仕組みです。

結構な距離を走ったのですが、「これ大丈夫かな?」と思いながら少し心配して見守っていました。この日は天気が非常に良かったので、雨の日に乗ったらどうなるんだろう?とも考えましたが、この日は快晴でした。

いや、本当に驚きました。運転席には誰もいない状態で、車は制限速度いっぱいまでスピードを上げて、順調に車線を変えながら進んでいきます。赤信号ではきちんと止まり、最初は本当にドキドキしました。

(小寺さん)
山田さんはとても嬉しそうに「大丈夫? 大丈夫?」と言いながら笑っていました。

(山田さん)
車内にある画面を見てください。青い人のマークわかりますか? これはリアルタイムで横断歩道を渡っている人を表示していて、車の周りにどれだけの車がいるのか、横に車がいるのか、すべてセンサーでサーチしています。人がいれば予知して減速したり、障害物を避けたりすることもできるのです。

ポールや障害物があっても、センサーがきちんと察知して器用に避けています。そして、信号がない通りで一時停止して左折する場面があったのですが、これも驚きました。いろんな車が来るのをセンサーで確認しながら、しっかり左折して進んでいきました。

これ、すごいと思いませんか? もうここまで技術が進んでいるんです。サンフランシスコの街には300台ぐらいの自動運転タクシーが走っていて、私も何台か見かけましたが、まさか自分が乗ることになるとは思いませんでした。日本でも自動運転が話題になっていますが、もう実現しています。小山さん、どう思いますか?

(小山さん)
なんか、パトレイバーに出てきた車両みたいなデザインでしたけども、ここまで実現しているのなら、もう実用化が近いのかなと思いました。しかし、事故が起こると、その後が問題になります。

(山田さん)
実際に事故が2回起こったらしいです。

(小寺さん)
どうやら、機械がパニックを起こしてしまい、普通ではありえないような事故が発生してしまったとのことですが、この2年で非常に多くの学習が行われ、最初の頃にあった小さなトラブル、例えば、変な場所で止まってしまったり、ドアがロックされたりすることはなく、最近ではだいぶ安定して問題なく走行しているという話を聞きました。

(山田さん)
小寺さん、この体験についてどうでしたか?

(小寺さん)
私は後ろに座っていたので、ドライバーがいるかどうかも見えない位置でした。目をつぶっていたら、むしろ非常に丁寧なドライバーが運転してくれているように感じました。揺れることもなく、急に加速することもなく、非常にスムーズだと感じました。

(山田さん)
私は普段、自分で運転するので、隣にドライバーがいないことに非常に驚きました。変なところに行ってしまったらどうしようとか、ずっと心配しながら乗っていました。最終的にはゴールデン・ゲート・ブリッジの近くまで順調に連れて行ってくれて、予定通りに降ろしてもらい、バイバイすると無人で走り去って行きました。

(小山さん)
もし途中でトイレに行きたくなったらどうなるんですか?

(小寺さん)
一応、コールマークがあって、24時間コールセンターに繋がるらしいです。緊急時にはコールセンターに連絡して、降ろしてもらえるようです。緊急ドロップオフのマークがあって、急に降りたい時は対応してくれるみたいでした。

(小山さん)
なるほど、いろいろと考えられていますね。

(山田さん)
もう近未来ではなく、すでにサンフランシスコではこうした形で実用化されているということを、皆さんにしっかりお伝えできたかなと思います。

こども政策部門

次に、子供に関する視察についてですが、マンハッタンのCAC(チャイルド・アドボカシー・センター)とベルビュー病院に行きましたので、そちらの説明をしていきたいと思います。

(小寺さん)
まず、CACとは何か、皆さんには聞きなじみがないかもしれません。CACは、チャイルド・アドボカシー・センターの略で、警察や児童相談所から連絡が来た後、さまざまな調査を行う機関です。アメリカでは制度として非常に確立されていますが、日本にはまだ全く存在しない制度です。私たちは、新たにこの政策を日本に導入するならどうするべきかという観点で視察を行いました。

(山田さん)
簡単に言うと、子供が保護された場合、その子供たちに対して直接「何があったの?」と聞いたり、検査を行ったりする機関です。例えば、虐待が疑われる場合、専門家が子供に尋ねないと、子供が自分の意見を言えなかったり、親に遠慮して真実を隠してしまうこともあります。そのため、アドボカシーの形で子供の意見を聞くことが非常に重要だとされています。

アメリカではこのような司法面接や、全身の診察、たとえばレイプ被害に遭った子供や虐待の疑いがある子供に対して、身体のどこに傷があるのかを確認したり、心理的なセラピーを行ったりするワンストップの仕組みが整っています。これがCACという機関です。

(小寺さん)
日本でも、神奈川県でNPOが運営している2箇所の施設がありますが、制度化されておらず、寄付金で運営されているのが現状です。アメリカではすでに制度として確立されており、日本との比較で大変進んでいることに驚かされました。

(小寺さん)
まず、子供が来ると待合室で待機し、その後、関係者全員が集まってミーティングを行います。ここでは、警察や弁護士、医者、保健所、行政の関係者が集まり、まず事件の事実関係を確認します。その後、別室で心理の専門家が子供に直接ヒアリングを行い、その様子をカメラで他の専門家がリモートで確認します。

この後、もう一度アフターブリーフィングを行い、子供たちの話を踏まえて、今後の支援計画や検察への措置が必要かどうか、また継続して行政の介入が必要かどうかを再度関係者が集まって協議し、家族に報告します。

(山田さん)
これは、日本と比較しないと分かりにくいかもしれませんが、日本では検察庁の取り調べ室のような場所で、「お母さんやお父さんに何かされませんでしたか?」と聞いてしまうことがあります。そうすると、子供は恐怖を感じてしまいますし、司法面接官も大人の容疑者を担当してきた人が子供に質問するため、子供が正直に答えられないことが多いです。

日本では、このように子供に対して適切な面接や面談ができる施設もなければ、専門家も不足している状況です。小山さん、実態はどうですか?

(小山さん)
日本では正直なところ、裁判官や検察官が足りていません。忙しい検察官が、子供の福祉を扱う研修を受ける余裕がないことも多いです。また、犯罪捜査と子供の福祉を同時に担うのは難しく、検察官にこれをすべて任せるのは無理があると思います。

(小寺さん)
さらに、性虐待の被害を受けた場合や、子供にあざがある場合、弁護士や検察官がそれを確認するのは非常に難しいです。しかし、このセンターでは全身診察が行える医療施設が併設されており、子供たちの身体的・心理的状態を一貫して確認できるワンストップの仕組みが整っています。

(山田さん)
写真を見ていただきたいのですが、これはバックオフィスの様子です。面談室だけでなく、事務所を支える仕組みも整備されています。

(小寺さん)
CACは全米で961箇所設立されており、そのうち7割は民間が運営しています。小さなセンターでも年間で日本円にして約21億円の予算があり、連邦政府や州政府の支援のほか、寄付も多く集められています。こうした充実したスタッフ体制で制度が運営されていることが分かりました。

(山田さん)
プロセスがしっかりとできており、全米で961箇所展開されていることから、このアドボカシーの仕組みが進んでいると言えます。日本もこの仕組みを取り入れるべきだということで視察してきました。

(小寺さん)
韓国や台湾、アジア地域にはCACがほとんどないため、視察が立て続けに来ているという話もありました。

(山田さん)
次に、ベルビュー病院に行きました。ベルビュー病院とはどういう病院かというと、ニューヨーク州立の公立病院です。その中でも、私は児童精神科を視察してきました。

(山田さん)
まず、整理しておきたいのは、アメリカは皆保険制度ではなく、基本的には自由診療という形になっていることです。保険に入っている人も、何がカバーされるかが細かく分かれています。例えば、目に効く保険や、がんにかかる保険など、全体をカバーする保険がなかなかなく、それに当てはまらない場合は治療費が自己負担になります。

(小寺さん)
すべてはお金とプランに応じて治療できる範囲が決まるという状況です。

(山田さん)
そのため、お金がないと治療が受けられない人も多く、悲しい話を聞きました。アメリカでは、子供が移植を受けやすいと言われていますが、その理由はお金がなく治療を受けられない子供が多く、死を待つしかない状況の中で、臓器提供を考える家族がいるからです。これは命の値段が違うという現実を反映しており、逆に言うと、日本の皆保険制度は非常に優れていると感じました。

しかし、ベルビュー病院は、数少ない公立病院の1つで、お金がない人でもニューヨーク州政府の支援で医療を受けることができます。アメリカでは「オバマケア」という形で皆保険制度を導入する議論も進んでいますが、日本の皆保険制度は非常に優れた仕組みだと感じました。ただし、もちろん日本の福祉や医療費の問題で財政に負担がかかっていることや、無駄遣いが行われていることも議論の余地があります。

さて、本題に戻り、ベルビュー病院の児童精神科についてお話しします。子供のメンタルケアは、日本でも非常に重要な課題です。日本では子供の自殺が大きな問題となっており、30代以下の死因の1位は自殺です。こうした子供のメンタルケアが充実していないという課題に対して、ベルビュー病院では「子供の精神救急プログラム」が導入されています。このプログラムは、全世界でも3箇所しか導入されていない先端的な取り組みです。

ベルビュー病院では、緊急の入院も可能で、院内には常設のクリニックもあります。また、敷地内に学校があり、外に出ずに通学できる子供たちもいるということです。

(小寺さん)
この点が特に重要だと感じました。なぜなら、1〜2か月メンタルケアを受けた後、急に社会や問題のあった家庭に戻っても、社会への再適応がうまくいかず、再びメンタルの問題を発症してしまうケースが多いからです。

このため、治療が終わった後も、病院と学校をつなぐプログラムがあり、カウンセリングを受けながら敷地内の学校に通うことができるシステムが整備されています。これは非常に先進的な取り組みだと思いました。また、障害を抱える子供たちのための特別プログラムも用意され、個々の状況に合わせた教育が提供されているという話も伺いました。

(山田さん)
自殺する子供たちは、メンタルケアを受けられないことが多く、適切なケアにつながれば救える命があると先生方も自負しています。ベルビュー病院の児童科だけでなく、院長先生も含めて、私たちは大歓迎を受けました。少し病院の中身について簡単に説明します。

(小寺さん)
まず、病院のエントランスは左上の写真です。非常に広い総合病院で、ベッドの数も多く、大規模な病院です。右側の写真は院長先生が自ら歓迎してくださり、病院の概要を説明していただきました。ベルビュー病院は1736年に設立され、アメリカ最古の公立病院ということで、非常に歴史があります。

(山田さん)
真ん中の写真には、馬車の救急車が展示されており、昔はこれで患者を運んでいたそうです。

(小寺さん)
緊急入院の施設や敷地内の学校も見学しました。子供たちが入院しているお部屋の写真は掲載できませんが、真ん中下の部分が実際に子供たちが入院している部屋です。

(小寺さん)
そこは学校と併設されており、カウンセリングを受けられる特別な部屋や、重い家具で固定されたベッドが設置されています。これは、子供たちが攻撃したり、自殺を防止するための特別なデザインになっています。先生方は、もし次回施設を作るなら、個室にしたいとおっしゃっていました。

さらに、子供たちが自己評価を行える壁のグラフや、自己評価で得たポイントを使ってグッズと交換できる仕掛けもありました。

(山田さん)
こうした楽しめる要素も含め、回復のモチベーションを高める工夫がなされていました。日本では強制的に薬を処方するケースが多いかもしれませんが、ここでは薬だけではなく、どうやって子供たちが自力で回復するか、そのモチベーションをどう作るかに重点を置いています。精神科の臨床だけでなく、研究も一体となって、子供を中心に支援するシステムが整っています。

(小寺さん)
自殺未遂をしてしまう子供の40%がトラウマを抱えているという非常に深刻なお話も伺いました。家族を含めたケアの重要性も強調されていましたが、24時間体制の看護師の確保や、専門家の確保の難しさについては、日本と同じような課題があるとのことでした。

(山田さん)
最後に、この施設内にある学校についても、かなり踏み込んだ意見交換を行いました。日本でも、こういった形で子供に対する専門のケアを提供できる仕組みが必要だと感じました。ただし、1人当たり年間300万円程度のコストがかかるため、それなりの財源が必要です。ニューヨーク州はリッチな州であり、こうした取り組みが可能なのですが、全米が同じ状況ではありません。アメリカには公立病院が存在しない地域も多く、この点でアメリカの医療制度の矛盾と進んだ部分が混在している現状を目の当たりにしました。

今日のまとめ

(山田さん)
今回の視察は、デジタルの現場だけでなく、表現規制にどう対応するか、また新サイバー犯罪条約やカードによる表現規制の問題も含めた交渉を行うためのものでした。

単なる視察にとどまらず、交渉を目的として行った部分もありましたので、これからしっかりと表現の自由を守るための議論を進めていかなければなりません。ナディーン先生とのやり取りを通じて、アメリカでもポリティカル・コレクトネスや表現規制に関する問題が非常に切迫していると感じました。

次回は、GAFAMのプラットフォームがヨーロッパでどのように応用されているかについてお伝えしたいと思っています。ドイツ、チェコ、ハンガリー、フランスを視察しましたので、その内容も次々回にお話しできればと思います。

そして次回はいよいよ自民党総裁選が公示され、候補者が揃いますので、私の番組でも「自民党総裁選特集」を一旦挟んで、その後に「ヨーロッパ視察編」をお送りしたいと思います。

今回の視察は、夏に台湾、アメリカ、そして緊急報告としてウクライナ支援でルーマニア・モルドバと中欧を訪れましたが、今回はドイツ、チェコ、ハンガリー、フランスというルートでヨーロッパを回ってきました。非常に大変な視察でしたが、多くの収穫がありました。政策だけでなく、日本をより良くするためにどう実現していくかという点も含めてお伝えしたいと思います。

最後にお二人から感想をお聞きして、それで締めたいと思います。小山さん、いかがでしょうか?

(小山さん)
アメリカ視察には私は国内からの支援で参加しましたが、改めてアメリカという国のすごさを実感できた視察報告でした。

(山田さん)
アメリカは本当に極端な国だよね。特にシリコンバレーで感じたのは、貧富の差の極端さです。「貧富の差」という言葉では収まらないぐらい、0と100のような極端な違いがあります。弁護士や医者ですら貧乏で、IT業界に関わっていないと生活が厳しいという現実がありました。

弁護士や医者といえば高級職業のはずなのに、いや、決して高級じゃないと。病院の状況もそうで、皆保険制度がないために、お金がなくて治療を受けられず、臓器を提供する子供がいるという悲劇的な現実がありました。これは日本の皆保険制度の前提では考えられない社会だと改めて感じました。

(小山さん)
そうは言っても、やはりアメリカンドリームは今でも存在するんだなと感じました。一攫千金を狙える社会で、富める者はますます富み、大逆転を狙う機会もまだまだあります。GAFAMやマグニフィセント7と呼ばれるほど市場を独占していますが、10年後にはどうなっているか分からないというダイナミズムも感じられました。

(山田さん)
あと、サンフランシスコも何年かぶりに訪れましたが、ショックだったのは、ケーブルカーの回転台の下のエリアが「ゾンビタウン」と化していたことです。

(小寺さん)
あれは本当に衝撃的でした。

(山田さん)
昔、観光旅行で僕が行った時には、あの辺りはすごく華やかで、サンフランシスコの銀座通りのような場所でした。しかし、今ではシャッター通りになってしまっていて、麻薬を使用している人やホームレスの人がたくさんいて、倒れている人も見かけました。10万円以下の万引きは捕まらないといった法律があるくらい、社会が病んでいる部分もありますね。

(小寺さん)
私も小山さんや山田さんと同じように、この視察を通じて強く感じました。今日もハリスとトランプの討論会をずっと見ていましたが、そこで経済政策や犯罪率の上昇、移民問題、中絶問題が主要な課題として討論されていました。

今回、世界を牽引するトップ企業5社、10社に直接視察に行き、やり取りをさせていただいたことは本当に感動的でした。これが世界を牽引する企業なのかと感心する一方で、凄まじい格差社会を肌で感じました。素晴らしいオフィスの横にはホームレスタウンが広がっていて、寝る場所も食べるものもないような人々がたくさんいました。

アメリカの良いところ、経済を牽引している部分も確かにありますが、必ずしも目指すべき社会とは言えないと改めて感じました。日本型の、あるべき社会の方向性を改めて考えさせられる大きな示唆があったと思います。

(山田さん)
今回のアメリカ視察は、11日間という比較的短い期間でしたが、非常に充実した内容で、多くのことを見て感じました。これから、ホームページなどでリポートを公開する予定です。ただ見るだけでは意味がないので、今回交渉してきたことや学んだことを日本の政策にしっかりと反映させていきたいと思っています。

今回はGAFAMを中心としたアメリカ編としてお伝えしましたが、次回はいよいよ自民党総裁選特集になります。自民党が与党である限り、次の総理を決める重要な選挙です。明日が告示日ということで、全候補者が揃います。来週の番組では、それぞれの候補者を私の視点から比較・評価しながら、皆さんと共に、誰に日本を託すべきかを考えていきたいと思っています。

27日はまさに総裁選挙があります。私はネットで皆さんに支持いただいていますので、皆さんのネットでの意見もしっかり聞きながら、自分の態度を決めたいと思っています。今のところ、どの陣営にもついていませんし、誰に投票するかもまだ表明していません。これは皆さんの意見をしっかり聞いた上で、自分の政策に一番近い候補を選ぶべきだと思っています。

実は、私のところにもすでに各候補から電話をいただいています。視察中も海外まで電話をかけてきて、逆の時間帯なのでたいてい寝ているときに起こされることが多かったです。また、事務所の方も昨日今日と立て続けにいろんな方が直接来られたりしています。どんな選挙戦が展開されているのか、私たちが持っている情報は限られていますが、できるだけ皆さんにお伝えできればと思っています。

今日はここまでにしたいと思います。少し長くなってしまいましたが、視察で得た情報量が多かったため、話も長くなりました。今日はここまでにします。どうもありがとうございました。