見出し画像

【第512回】どうなる!?今後のゲーム規制《香川県ゲーム依存症対策条例裁判》(2022/11/09)【#山田太郎のさんちゃんねる】文字起こし風要約

出演者:

  • 山田 太郎 参議院議員・全国比例 公式サイト Twitter

  • 小山 紘一 山田太郎さんの政策担当秘書・弁護士 Twitter

  • 坂井崇俊 AFEEエンターテイメント表現の自由の会代表 Twitter

  • 萌生めぐみ めぐみ アシスタント・イラストレーター Twitter

今回のさんちゃんねるについて

めぐめぐ:
 みなさんこんばんは山田太郎のさんちゃんねるの時間です。この番組は、表現の自由をめぐる問題をはじめとして、さまざまな政治的な話題について、一緒に考えていこうという目的でお送りしております。

 本日の特集は、どうなる!?今後のゲーム規制《香川県ゲーム依存症対策条例裁判》です。ぜひともチャンネル登録、いいね、コメント、感想ツイート等をよろしくお願いします。

山田さん:
 香川のゲーム条例に関しての裁判がありまして、その結果も出ているということと、今後ゲーム規制はどうなるのかというあたりを掘り下げていきたいと思います。そして今日はゲストにAFEE代表の坂井さんにお越しいただいています。

 今一番気になっているのは、各都道府県でゲーム規制条例ができるかもしれないという危機的な状態がありまして、その辺についても解説します。

ニュース 米国中間選挙 共和党が下院で勝利宣言

山田さん:
 何で中間選挙って言うか知っていますか。

 まず大統領選挙は4年に1回ある、4年の2年と2年の間で下院議員全員と上院議員の3分の1の改選をやっている、大統領選と大統領選の間なので中間選挙と呼ぶんです。

 アメリカは2年に1回選挙をやっていて、下院は2年ごとに全部改選、大統領選挙の年と中間選挙の年に交代して、上院は6年なんだけど、3分の1ずつ2年ごとに改選する。

 今回の中間選挙で下院はどうも共和党が勝てそうだというような下馬評があるんだけど、上院で共和党が勝つとすると、バイデン大統領は民主党なんだけれども、共和党が議会を握ってしまうのではないか。よりアメリカの保守的な政治政策というのが進んでいくのではないかということなんです。

 保守的な共和党が政権を取ると、基本的に日本としてはやりにくいというか、アメリカファーストという考え方があるので、台湾有事等で軍事的に助けてくれるのかどうかというような議論から始まり、結構日本とアメリカとの間の関税だったり、世界協調という意味では崩れるんじゃないかというような声もあります。

 そして2年後の大統領選挙も誰がなるのかというようなことがありまして、目が離せない、こういう状態なんですね。

 ウクライナに関しても、どちらかというと民主党の方が介入、共和党は自国を守ると言って、何でウクライナのために戦費の協力をしなきゃいけないのかという意見もある。

 ただアメリカ議会の場合には党議拘束がある訳ではなくて、かなり民主党共和党の間でも、議員の独自の考え方というのがあるから、必ずしも全部右とか左ってなるわけじゃないというのは、日本の仕組みとは違うということになります。

ニュース 政府、スマホゲーム課金に対する徴税強化策を検討?

山田さん:
 ということで、いわゆる税金逃れをITプラットフォーマーはしてるんじゃないかという話の中で、国際的な枠組みできちっと徴税を強化しましょうということで、日本もいよいよそこに対して動き始めたということなんですけども、この辺小山さんどうですか?

小山さん:
 私が扱っているマンガアプリ、幾つかあるんですけども「ピッコマ」と「めちゃコミ」をよく使ってるんですが、ピッコマはくくりで1,000円みたいな感じで買えるんですけれども、めちゃコミは消費税分が取られているような課金のされかたです。

 その辺確かにデジタル課税ってどうなっているのか、企業によってスタンスが違うのかもしれませんし、ちょっと国として考えておかないと、お金を払っているのは日本国民で、日本国内でスマホで操作してるのに、一切消費税が取られず、アメリカの企業だけが潤って、アメリカに法人税などだけ納められているのはおかしい気がしていますので、もうちょっと論点整理をして、先行事例を見習っていろいろ検討していく必要があるんだろうなという気はしております。

トピックス Twitter、有料化を検討?

山田さん:
 ツイッターが有料化することで相当影響を受けるのではないかと思うんですけれども、どうですか。

坂井さん:
 めちゃくちゃ影響を受けるんじゃないかな、でもさすがに全ユーザーいきなり有料化はないのでは。

山田さん:
 完全有料化ということになったら、たぶん匿名性を維持できない可能性もあるので、結構大きな影響があるのかなと思っているんですけれども、小山さん的にはどうですか。

小山さん:
 一部有料化というのはあり得るとは思うんですけれども、ただ誹謗中傷の話があって、誹謗中傷をなくすために有料化というのはわからないでもないんですけども、別に有料化したところで、言う人は言うだろうなというのが正直なところではありますし、匿名が悪いという考えよりも、やっぱりリテラシーを高めるという地道なところを強化していくのが、私は王道だと思っております。

トピックス 11/9はデジタルDAY

山田さん:
 デジタルDAYとは何かというと、今日一日、党だったり参議院だったりの、僕にとってはデジタルばかりの日でしたので、今日一日の活動を少しおさらいしてみたいと思います。

山田さん:
 朝7時45分から自民党本部の政策調査会でデジタル本部がありまして、デジタルセキュリティーに関するPTというのがありました。8時からデジタルコンテンツ戦略小委員会、これは著作権とかを司る、アーカイブですとか、表現関係で一番重要な知財調査会の小委員会。

 10時20分からは参議院の地方創生とデジタル社会形成に関する特別委員会、デジ特と言われているんですけれども、ここでは河野大臣がデジタル庁の所管大臣でありますけれども、その政策に対して質疑を行うということでやってました。

 16時からはスタートアップ政策、これは新しい資本主義云々とか、本部の中のスタートアップ政策なんですけれども、その後掛け持ちでデジタル社会推進本部の防災DXPT、大規模災害が起こったらどうするのか。

 ということで今日1日、何かデジタル漬けだったなという感じ。デジタル政務官を辞めて党に戻ってきましたけれども、相変わらずとういうような状態です。

特集 どうなる!?今後のゲーム規制《香川県ゲーム依存症対策条例裁判》

山田さん:
 今日は香川県のネット・ゲーム依存対策条例と裁判判決というのを中心に考えながら、ゲーム規制問題は今後どうなっていくのか。それからWHOのICD-11の話であったり、政府の見解というものもまとめていきます。

山田さん:
 香川県のゲーム条例ってどんな条例で何が問題だったっけというところですが、ポイントになるのは6条と18条ということで、6条は主に2つ、1つは『保護者は、子どもをネット・ゲーム依存症から守る第一義的責任がある』という話。

 2つ目『乳幼児期から、子どもと向き合う時間を大切にし、子どもの安心感を守り、安定した愛着を育むとともに、学校等と連携して、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努める』ということで、要は子どもと向き合う時間がない、そして子どもの安心と安定した愛着がないからゲーム依存症になっちゃうんだと書いてあるんです。

 18条が最も問題でありまして、『子どもにスマートフォン等を利用させるには、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合ってルールを作りなさい。』

 そして『1日当たりの利用時間が60分まで(学校が休みの日は90分まで)』それから『スマートフォン等の使用ては義務教育終了前の子どもについては午後9時まで、それ以外の子どもについては午後10時まで』と。

 これに関して憲法にいろいろ抵触しているのではないかということで、裁判が行われましたが、最初に言っておきますと、私自身はこの番組でも何度もずっと言ってきているんですけれども、この裁判に対してはネガティブでありました。

 裁判でこれから説明する結論が出てしまうと、それが国としての公式な見解ということになって、(他自治体でも同様の)条例がつくられてしまうという話にもなりかねないので、非常にリスクが高い裁判、結果としてはゲーム規制に対して反対の判決にはならなかった。

山田さん:
 これが高松地裁の判決要旨ということで、主文、『原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。』ということなんですが、小山さん的にはどうですか。

小山さん:
 いわゆる完全敗訴。原告が求めたものは一切認められず、訴訟の費用も原告の負担ということなので、裁判所としては原告何言ってるのぐらいの結構冷たい感じの主文です。

山田さん:
 争点は幾つかあったんですが、簡単に言うと、いろいろな憲法の条項に違反しているじゃないかという争いが行われた。明白性の原則に反するかについて、これは何ですか?

小山さん:
 何かを規制するルールというのは明確であって、規制されるものとそれ以外がはっきりとしないと萎縮効果が生まれてしまいます。特に表現の自由は大事なので、表現の自由を制約するようなものは、特に明白性の原則が求められると言われております。94条は条例制定権の限界。

山田さん:
 それが法律の範囲なのか(法律の範囲外の条例は作ってはいけない)という話。次が本件条例の正当性及び目的と手段の間の実質的関連、よくわからないんですけど簡単に言うと何?

小山さん:
 憲法訴訟の判断方法というのはお決まりのものがあって、その憲法に規定された人権とかを制約しようとする目的がそもそも正しいんですかと、もう1つは必要最小限の手段になってますかというのが、目的と手段の実績関連性。14条は法の下の平等。

山田さん:
 香川県だけが規制されるのはおかしいんじゃないかと。21条は表現の自由ですが、知る権利等の制限に当たるのではないかと。22条は?

小山さん:
 これは職業選択の自由。

山田さん:
 eスポーツとかをやる人たちにとって、それの自由を制限されちゃんじゃないかと。26条は?

小山さん:
 教育受ける権利ということ。

山田さん:
 スマホを利用する場合の教育ができなくなると、スマホはゲームばかりではない。29条は?

小山さん:
 財産権の制限。

山田さん:
 私の持ち物であるにも関わらず、勝手に利用制限とか決めていいのか。13条は?

小山さん:
 幸福追求権です。

山田さん:
 ゲームとかを楽しむのは幸福の追求であるにも関わらず、勝手にそれをやめろと言うのはおかしいだろうと。
 というような内容が争われたんですけど、いずれも棄却ということ。

山田さん:
 結論としては、それぞれの憲法の条項に対して原告の主張は認められない。その理由はということで次。

小山さん:
 先程言った目的と手段というところで、裁判所は明確に分けてまして、一応何かゲーム依存症なるものがあるのは間違いないし、何となく医療的な問題にもなっているんだから、これを予防すべき社会的要請については、一定の根拠に基づき認めることができると。

山田さん:
 これはお墨付きを与えちゃった、極めて強烈な。

小山さん:
 この程度の目的でも合憲だと言ってしまってる。

山田さん:
 そうすると、他の都道府県が規制をしてもいいのではないかと取られかねないということなんです。

小山さん:
 目的に対して手段、これも保護者に対して一定の目安を示した上で、子どもがゲーム依存状態に陥ることのないよう配慮を求め、保護者が子どもと話し合いの機会を持つよう努力を促すという制限的でない定めを置いてにすぎないので。

山田さん:
 努力目標だと。

小山さん:
 目的もOK、手段もOKと言っている判決です。

小山さん:
 結論として、本件条例はそもそも原告らに何ら具体的な権利の制約を課すものではなく、いずれも基本的人権として保証される内容のものではないと、バッサリと切ってます。

 仮に何らかの権利の制限があると解する余地があるとしても、本件条例は努力目標であり、罰則もないことなどからすると、必要最小限度の制約であって、これが許されないということは言えませんよということで、香川県の言い分がそのまま全部通ったような感じになってしまっている判決です。

山田さん:
 これを一番恐れていたんですが、最悪の結果になったということで、この条例が作られるきっかけになった経緯も見ていきたいと思います。

山田さん:
 やはり2018年6月18日、WHOがICD-11を公表、Gaming Disorderが収載されたことが大きかったのと、これを巡っていろいろな人たちがゲームを規制するべきだと、ゲームは病気なんだと、こういうようなことを言い出した。

 それを受けて2019年3月にゲーム対策議連が香川県議会で超党派の形でつくられ、その議連を受けて、ゲーム規制条例が議員提案として、2020年1月に提出されると。

 いろいろとパブコメもおかしいんじゃないのと、この番組でも散々やりましたけれども、いろいろな問題をはらんでいたパブコメを実施しまして、その後もかなり早い、2020年3月18日に香川県議会でゲーム規制条例が成立をするということになりました。

 これに対して先ほどの裁判を起したということでありますけれども、結論としては2年ぐらいかかって、いわゆる棄却ということでありまして、最後は原告の人も出てこなかったというような状況で、連絡もつかないということで確定したというのが今回の顛末です。

山田さん:
 さて、実はこれ以外にも日本におけるゲーム規制のいろいろな流れというのがありまして、これも少しおさらいしていきたいと思います。

 2016年にIR推進法が通っている一方で、繰り返しになりますが、2018年6月にWHOがICD-11のGaming Disorder、この和訳をめぐってまだ議論になっています。後でこの話は詳しくやりたいと思いますが、2018年7月に国の方では、ギャンブル等依存症対策基本法というのが成立します。

 もちろんこのギャンブル等依存症対策基本法の中にゲームが入っているわけではないが、都道府県にギャンブル等依存症対策推進計画の努力義務ができた。これがくせ者でありまして、これを受けてゲームを規制するべきなのだというわけのわからない話が、各都道府県の中に出てきたということなんです。

 香川県ばかりではありません。秋田県大舘市でゲーム規制条例の動きがありましたが、一時中断の報道もありました。2021年2月に都議会で小池都知事が、科学的根拠に基づかない上での条例による一律のゲーム規制等はおかしいというような否定的な発言もあったりしていて、各自治体は揺れているということであります。

坂井さん:
 2020年5月28日の一時中断の報道なんですけれども、香川県の裁判があったので中断されたんです。

山田さん:
 そうすると、今回の結果を受けて再開する可能性は高いということですよね。

山田さん:
 もう既に各県では、ギャンブル等依存症対策推進計画という、2018年7月につくられた基本法に対応して対策推進計画というのをつくって、中にゲームの規制の文言がなぜか入ってきていた。

 国の基本計画の中ではゲームは入っていなかったんだけれども、なぜかこれを各自治体における計画の中に、ゲームを規制するような内容が出てきて、全国的に広がっている。

坂井さん:
 これはたぶんパブコメが出ていた県がこれくらいで、ギャンブルと依存症対策推進計画は47都道府県たぶん全部もうできていると思う。

山田さん:
 その他の計画による規制ということで、ギャンブル等対策依存症対策基本法に基づかないんですが、ゲーム規制が明記されているということでありまして、いろいろな自治体でゲーム規制を議論し始めたということです。

坂井さん:
 ギャンブル等依存症対策推進計画にはゲームは入ってないんですけれど、厚労省に確認したら、ゲームを入れることは別に、厚労省としては止めないというスタンスなんですよね。

坂井さん:
 これがAFEEで提出済み(ゲーム関係の)パブコメの一覧なんですけれども、こんな感じで結構な頻度で出ているんです。
 これ47都道府県と、20の政令市と23区のパブコメを月に2回全部チェックして、これあやしいぞってやつを全部読み込んで…。

山田さん:
 でも(自治体は)1741市区町村あるじゃない。

坂井さん:
 それは(笑)(そこまでは手が回らないので)政令市と23区ではやっているんですけど、それ以外もってなるとちょっと…。

坂井さん:
 例えばこれは新潟県ギャンブル等依存症対策推進計画、左がパブコメの資料で右が変更後の資料なんですけれども、コンプガチャというのは、もう相当昔に無くなっているので、言葉としてそのまま入っているのはおかしい。

 あと依存症になる危険性があることっていうのは、これは山田さんの国会質疑での答弁で科学的根拠はありませんよねということで、変更になっているんです。

(AFEEが新潟県に送った意見全体はこちら↓)

坂井さん:
 パブリックコメントを送ることによって一定の効果はありますが、これは変わる県もあれば、変わらない県もあるので、半分変わればいいかなというぐらいで拒否される事もありますが、こういう感じで常々やっていかないと、どんどん行政がゲーム規制をするお墨付きを与えていってしまう。

 なかなか1741の自治体全部、本当はやらなきゃいけないんですけど、さすがに工数がないので。

 あとは「表現の自由を守るための約束」で賛同してもらっている議員のいるところもチェックしてます。これは問題だよねって見つけたときに、議員とつながりがあれば、別ルートで議員に対して働きかけできるんですけれども、つながりがないところはパブコメしかできない。

(表現の自由を守るための約束↓)

山田さん:
 ということで、この話はもともとの出発点はICD-11、WHOはICD-11の中でGaming Disorder、これをゲーム依存症と訳している人たちがいて、ここから国連の機関でも病気としたじゃないかということで動き始めたんです。

 ではこのICD-11って何よというところを、ちゃんと我々の方は最低限しっかり定義をしたり、政府の見解、WHOの見解を求めたということです。

山田さん:
 まずICD-11なんですけれども、これは正確に言うと『国際疾病分類』と言われるものでありまして、もうちょっと正確に言うと「疾病及び関連保険問題の国際統計分類」と言っています。

 要は疾病とか障害とか死因とかの、とにかく統計をとるのに同じ名称になっていないと取りにくいよねということで、統計をとるための分類としてコードみたいなものを決めているのがICD、そのうちの11版目ということなんです。

 なのでICDに書かれたからといって、直接的に病気であるとか、日本の中でこれを病気と認めなければいけないということではない。

 病気であるということは、治さなければいけないもの。病気であれば、保健福祉の観点から、政府が国民の健康のために、保険制度を適用するとかを含めて整えなければ、疾病とか病気とは認められないんです。

 ICD-11に載ったからといって、国際的に病気と認めたものじゃないんですが、これをとにかく病気なんだと、依存症というのはあるんだというふうにしたい人たちがいて、ここがスタートだったということです。

山田さん:
 ICD-11の解釈がWHOから出ていまして、これは我々のゲーム障害勉強会の中でもはっきりさせてきたんですが、まずゲーム障害という場合、『Gaming Disorder』をどう訳すのかという議論があるんですけれども、精神症候と、社会的機能が低下しているというのが2つそろって初めてゲーム障害であるという解釈なんです。

 どういうことかというと、この後アンケートの話が出てくるんですけれども、学校(のアンケート)で何時間ぐらいやっていたらゲーム依存と出ているんですが、そもそも学校に来れている時点で社会的機能が低下していないので、それはゲーム障害になりません。

小山さん:
 こちらについて最新の国内対応、山田太郎事務所で厚労省に確認しましたが、まだ「Gaming Disorder」の正式な(日本語)訳は決まってません。そして危険なゲーム行動(Hazardous Gaming)も訳語は決まってないということで、日本の国内対応は5年間の猶予期間があるので、厚労省もそんなに急いで何かしてるわけではないという状況です。

山田さん:
 それからもう一つ有病率調査という問題もあって、いろんなアンケートの結果があるんですが、例えばゲームを何時間やっていたら依存症に当たるとか、それは病気にかかっているということの検査としてはちょっと無理があるよねと。

 サンプリングした中で疑わしい人を見つけて、その人に対してちゃんと面談とかをした上で、構造化面接をした上で、その人が有病者であるということを認定して初めて有病率がわかる。

 アンケートで93万人の子どもたちはゲーム依存症の疑いがあるというようなかなり過激な調査が発表され、これがスキャンダラスにメディアで伝えられて、これは大変だということで広がっていった。

 そもそもその調査自身がどうだったのか、それからAddictionの問題、Addictionは嗜癖や中毒と訳されたりもしますが、英単語のAddictionにはちょっと差別的な意味もあるので使うべきではないという意見もあります。

 WHOとしては、いわゆる精神障害はDisorderであり、疾患とか病気ではありませんと、ゲーム障害が病気、疾患と言い回しは不適当であると回答しています。

山田さん:
 では日本政府はどうなのかということで、私が2021年3月16日に参議院の内閣委員会で質疑をやっています。

 厚労省に対して、ネット依存やスマホ依存について、それぞれの省庁で定義があるのかということで、厚労省の回答は一応ICD-11の中に位置付けはあるんだけれども、いずれにしてもネット依存・スマホ依存については現時点で個別に定義する知見は承知していない。

 ではゲーム・ネット・スマホ依存についての科学的根拠なる治療法とか予防法というのがあるのかと聞いたら、回答としては現時点で予防に関する確立した科学的根拠・知見は承知していないと、病気・疾患・疾病とは認められないという重要な回答をしていて、現時点でも厚労省と政府の立場、考え方は変わっていないということです。

小山さん:
 ネット依存についてはICD-11に載せようという動きがあって、でも根拠がないから載せられなかったとも聞いておりまして、載せるために議論された結果、載っていないというのも非常に大事だと思っています。

 スマホに関しては石川県が全国で初めてスマホ規制の条例をつくったんですけれども、その規制を撤廃しますということで、子どものスマホ利用を規制するような条例をまた改正して、今後は教育で何とかしていきたいみたいな話になったと記憶しております。

 今のところネット・スマホの直接規制というのは、日本国内ではそこまでメジャーにはなっていない気がしますが、ただ規制したいという動きは非常によく聞きますので、この辺もどう取り組んでいくのか非常に重要だと思っています。

山田さん:
 一方でゲームに関しては嗜癖だということで「行動嗜癖を知っていますか?」というパンフレットを、なんと全国の高校の学生に配ろうとしていたという経緯がありまして、ギャンブルやゲームにのめり込まないためにって、高校生は競艇とか競馬とかのめり込む以前にやっちゃダメでしょ。

 競馬とか競艇の関係者からもあたかも悪いもののような、大人であれば別にやってもいいものなのに、いろいろおかしいのではないかという議論がありまして、変更後は「行動的刺激を知ってますか?」というものになってゲームもなくなったんだけれども、嗜癖という言葉も差別に当たるということに関しては配慮がない。

山田さん:
 その他にも政府の文書の中で青少年インターネット環境の整備に関する検討会の報告書の中で、ゲーム障害に関する記述が勝手に載ったりしたんですけれども、これも政府の見解と違うということで削除させたり。

 こういうことをきめ細かくやっていかないと前例みたいな形でもって、政府としてはここで認めていますと、前例の前例みたいに使われるので、とにかく我々は、おかしいものはおかしいという形で一生懸命対峙しているということなんです。

山田さん:
 「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」尾崎レポートと言われる鳥取大学の有名なレポートがあります。

 これは2017年に中高生の飲酒・喫煙行動を明らかにするための全国調査をやったということなんですけれども、どこにもゲームだとかインターネットなんてのは書いてありません、それを目的としていません。

山田さん:
 これにインターネット依存の疑われる中高生が93万人もいると書いてあったわけですけれども、93万人という数値に関しては研究者の考え、つまり厚労省が直接それを認めたわけではない、あくまでも研究班の見解としてまとめて発表されたものなのだと政府は言っています。

山田さん:
 静岡県の自治体でこれに基づいた政策決定が行われていることになるのではないか、研究班から出た93万人との結論を受けてネット依存対策事業を始めましたというのはおかしいんじゃないのと。

山田さん:
 どうなのと言ったら、静岡県に正確な研究成果の内容を供与させていただく予定ということで、その後静岡県に対して通知していると思いますが、この後どうなったんだっけ?

小山さん:
 次回のゲーム障害勉強会あたりで確認できればと思います。

山田さん:
 研究班って何?というのと、厚労省と厚労省研究班とはどういう関係なのかとか、厚労省研究班の研究結果を教えてという話をしたんだけれども、研究班に関しては厚労省は補助を行っているんだけれども、この研究の成果は研究班に帰属しているものなのでという話でした。

 だからこの研究内容は、厚労省の見解というわけではありません。あくまでも研究班の中の研究結果に過ぎないということです。

山田さん:
 厚労省の行政の対象に「インターネット依存の対策」が含まれているどうかと聞いたら、厚労省の対策の疾病としての依存症には「インターネット依存」は含まれていません、こうはっきりと言いました。

山田さん:
 厚労省では「インターネット依存」について定義しません、疾病や精神障害であると認識もしていません。そしてWHOが「インターネット依存」についてどのように認識しているかは把握しておりませんと。

 あたかも厚労省の研究班で出した結果が中高生は93万人インターネット依存で大変だということで、各自治体もこれに基づいて動き始めたということなんですが、ちょっとおかしいんじゃないかということなんです。

山田さん:
 そしてこの「インターネット依存」の疑い人数をどう把握したのかということについては、そもそも人数について把握しておらず、そのための調査は実施していないと。

山田さん:
 そして「ゲーム障害」もしくは「ゲーム障害が疑われる」人数についても把握していないということ。

 ということで、根底から「ゲーム依存症」と言われる、これは香川もそうなんですけれども、根拠となった内容がかなり怪しいことになっていますということを、政府としての正式な見解を導き出しました。

山田さん:
 そして元となっているWHO自身も、ICD-11に「インターネット依存(もしくはインターネット障害)」が収載されなかった理由ということで、disorderを含めるにはまだエビデンスが不十分であると。

 もう一つSNSやスマホの使用を含むインターネット使用に関して、これもエビデンスが不十分なため含まれませんでしたということで、インターネット依存に関しては収載されなかったということです。

 それなのにあるときはインターネット依存と言ってみたり、ゲーム依存だと言ったりめちゃくちゃ、正確にはこういうことだということです。ここまでで坂井さんどうですか。

坂井さん:
 これは本当にひどいですよね。調査も言い方も含めて、何となくインターネット依存やゲーム依存がよくないイメージがあるので、そういうイメージでどんどん政策が進んでいって、エビデンスがないよと言ったところで、もう上書きできないようなところまで進んでしまっている、というのが現状なのかなと思っています。

山田さん:
 こんな最初のスタートがいい加減であるにもかかわらず、全国では香川県の条例が(裁判結果により)お墨付きも与え、各自治体に展開をしてしまっているんです。

小山さん:
 どうもゲームの長時間利用=悪みたいな風潮をつけたい人たちがやっぱりいるのは間違いなくてですね、やり過ぎはダメってのは別にゲーム以外にも当てはまるはずです。

 時代と地域で何かこれはやばい禁止すべきだという風潮が高まるもので、一時期は漫画とかもそうでしたし、テレビもそうだったと思うんですけれども、1920年代ぐらいのアメリカやイギリスだと、クロスワードパズルがなんか大流行したらしくて、クロスワードパズルを規制しないと国が滅ぶぐらいのことが言われていたらしいみたいな話も聞いてます。

 何となく流行っているものはダメだと言いたがるというのがあるので、エビデンスに基づかずに、何か盛り上がっているものを鎮静化させようみたいな動きというのは、それはどうなのかと立ち止まって考える必要がある。

山田さん:
 諸外国でもいろいろゲーム規制の動きがありますので、まず韓国の話。

小山さん:
 これは「青少年夜間ゲームシャットダウン制」これが非常に不評で、いろいろとその後動きがあったようではあるんですけれども、午前0時から午前6時まで16歳未満のオンラインゲーム接続を禁止するという制度です。

 これに対してeスポーツ選手にとって過酷だという話もあれば、成りすましの問題、それ以外にも韓国市場へのゲーム会社参入が抑制的になったのではないかみたいな話もありながら、効果が良くわからないにもかかわらず、弊害が大きかったと言われていると認識しています。

山田さん:
 これは結局意味がなかったということで、2022年1月から廃止になっています。次は中国。

小山さん:
 中国は2019年10月くらいからいろいろな動きがあって「未成年のオンラインゲーム依存防止に関する通知」で、全ユーザーの身分証による実名登録厳格化、18歳未満の夜10時から朝8時までのゲームプレイ禁止、プレイ時間平日90分、休日は3時間まで、オンライン課金に関しても上限設定。

 2021年には経済参考報というところで、オンラインゲームについて批判する長文の論評を掲載したところ、これ受けてテンセントを含めて中国ゲーム企業が大打撃を被りました、株価も含めて。

 この論評を受けてテンセントは同日、未成年に対する時間制限を平日1時間、休日2時間までとする方針を発表し、12歳未満の子どもに対してはゲーム内課金の支払いを禁止、業界としてゲームを全面的に禁止する措置も検討するということで、中国はオンラインゲームに関しては精神的アヘンという話をしているぐらい、相当敵視して規制をしているという状況になっています。

山田さん:
 新サイバー犯罪条約もあります。

小山さん:
 こちらも少し古い資料になってしまっていますが、2022年2月28日から第一回交渉会合が行われています。2023年までというのが2024年以降にずれ込んだと以前この番組でもお伝えしているかとも思うんですが、その中で自殺を扱ったゲームはダメだとか、いろいろなゲームの内容に踏み込んだ提案をしている国も出てきているという状況です。

山田さん:
 というわけでゲーム障害勉強会というのを開いて、とにかく対策を我々もしなきゃいけないと思って、これまでもやってきたんですが、よりバージョンアップをして、改めてやっていこうということを考えています。

山田さん:
 ゲーム障害やゲーム依存症の問題というのは、もしかたらそういった問題もあるのではないかという逆の立場からも、しっかりと精神疾患の問題だとか、他の可能性もあるということも考えた上で、フェアに見ていこうではないか、何でも反対ということではない。

 ただ根拠もないのに規制するのはおかしいから、これに関してはいろいろな論点から見ていこうということで、ゲーム障害勉強会というのを始めています。

 ICD-11のGaming Disorderについて政府見解を求めたりとか、科学的知見があったのかとか、93万人が依存症というレポートって何だったのか。

 行政のあり方として非常に問題で危険だよねということで、勉強会に関係省庁にも来てもらって、きちっと話を聞いているので、知らなかったというわけにはいかない。政府の公式見解もここで引き出していますので、大変大きな内容だと思っています。

山田さん:
 結果として、現時点ではゲーム依存症は病気や疾病ではないということ、文科省と厚労省としては差別的な意味を含む行動嗜癖(Addiction)という単語の扱いについては慎重に検討する、こういう回答をもらっています。

 ということで、いよいよ坂井さんのAFEEの役割は非常に重要になりそうです。 我々が国政としてやれるところはこれが限界というところがありまして、政府に対しておかしいと、特にそれが疾病になってはいないということをしっかり定義しました。

 ただ各自治体がどんどん勝手に解釈を進めていってしまうのは、国政の方からはなかなかアプローチしにくいという限界もありまして、自主規制問題なんかも含めてそうなんですが、この辺はAFEEを含めて非常に役割が大きくなっていると思います。

坂井さん:
 パブコメを見るだけで相当大変ですので、ぜひ手伝ってくれる方、AFEEの役員会は開かれていますので、会員になって参加して頂ければ、ぜひよろしくお願いします。

 これは本当にやっていかないと、火の手が上がり始めたらもう手がつけられなくなるので、不健全図書なんかも裁判がきっかけで全国に広がっていったので、今回の裁判も非常に重く受けとめて、これが広がらないように注視していかなければと思っています。

山田さん:
 実を言うと国政でもまだ火の気がありまして、デジタルセキュリティに関するPTでも、ブロッキングについても検討すべきなのではないかと主張する議員もちらほらいます。

 日本のコンテンツは自由の前提の上に花咲いているし、世界的にはその自由にみんな憧れて、日本のマンガ・アニメ・ゲームに興味を持っているのだから、むげに規制してはいけないし、意味がないという議論をしていますが、実はきわどいので、気を抜かずに頑張ってやっていかなきゃいけない。

小山さん:
 デジタル・グローバルというのがたぶん、今の一番のメインストリームの政策で、結構そういう会議に出ていると、日本は表現の自由があるから、そこは強みを持っているんだという有識者が結構います。

 日本で表現の自由がこれだけ、宗教的な寛容さも含めていろいろあるとは思うんですけれども、政治的な寛容さや二次利用に関する著作権的な寛容さも含めて、これだけ表現の自由が確保されている国はほかにないというのが、多くの有識者の見解です。

 そこで花開いている日本のコンテンツというのは、海外の人から本当に羨望の眼差しを受けてる部分が強いというのもかなりの人が言ってますので、安易に規制に走るのは私は断固反対ですけれども、そういう動きには本当に目を光らせておかないといけないなと、最近よくよく思っているところです。

山田さん:
 国政もそうなんですけれども、それ以上に自治体が条例をどんどん作ろうとしているということで、結構ゲーム規制の問題というのは深刻であるということは間違いないだろう。

 今日はこれぐらいにしたいと思います、どうもありがとうございました。



虹杜コメント:
 今回の文字起こしは以上です。今回もある程度要約・カットした部分がありますので、しっかり内容を確認したい方は是非動画の方をご確認下さい。

 こちらの文字起こしテキストは自由に切り抜いてTwitter等で利用して頂いてかまいません。ここまで読んで頂きありがとうございました、もしよろしければスキを押していただけると幸いです。

 山田太郎さんを応援したい方は、山田太郎公式ホームページの「山田太郎をSNSで応援する」や「山田太郎をもっと応援する」からどうぞ。