【第605回】山田太郎流、本当に必要な「少子化対策」とは!?(2024/11/27) #山田太郎のさんちゃんねる 【文字起こし】
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発言者:
(山田さん) 山田太郎 参議院議員
(小寺さん) 小寺直子 山田さんの秘書
今日の内容
(山田さん)
はい、始まりました。山田太郎の「さんちゃんねる」です。本日は第605回ということで、テーマは「山田太郎流・本当に必要な少子化対策とは?」についてお話ししていきたいと思います。
前回、「こども家庭庁は必要なのか?」という話題を取り上げましたが、どうも昨今、こども家庭庁が少子化担当の部署のように捉えられていますね。しかし、私としては、はっきり申し上げて、こども家庭庁だけでは少子化対策として全く不十分だと考えています。
では、どうすれば本当の少子化対策になるのか? 今日はその点について、私なりの考えを皆さんにお伝えしたいと思います。
特に重要なのは、諸外国との比較をしっかり行うことです。たとえば、出生率が改善したフランスやハンガリーなど、具体的な国々の例があります。私自身が現地で話を聞いてきた経験もありますので、そういった事例を交えながら、少子化対策について深掘りしていきたいと考えています。
今週の山田太郎
(山田さん)
今週は党内で政治改革について再検討を進めており、明日から始まる臨時国会では「政治改革をどう進めるのか」「政治とカネの問題をどう解決するのか」が焦点になると思います。
一方、デジタル関連についてですが、私はデジタル本部の役員に再任され、特に防災担当を務めることになりました。この分野についても、党として新たな取り組みを立ち上げています。
さらに、文化や経済対策、そしてこども庁の予算に関しても注目しています。特に、こどもの命を守るために予算を適切に使ってほしいと考えており、その点についての説明を受けているところです。
また、障害児支援の課題についても今週取り組みました。障害児を抱える家庭に対しては、支援に厳しい所得制限が課されている現状があります。この問題を何とかしなければならないと考え、対策を進めています。
本日のアジェンダ
(山田さん)
まず少子化がますます進行している現状について、どの程度進んでいるのか、そして今後どのようになってしまうのかをざっくりと見ていきたいと思います。また、話題になっている「こども家庭庁」が現在どのような少子化対策を行っているのか、それが本当に意味のあるものなのかについても説明していきます。
さらに、諸外国で実施されている少子化政策についても取り上げます。そして皆さんもお気づきかと思いますが、問題は「結婚した人が子どもを産まない」ということではなく、「未婚」や「晩婚」といった状況が大きな要因になっています。では、なぜ未婚や晩婚が増えているのか。それは主に経済的な問題が大きく関係していると考えられます。
そうなると、少子化対策の多くは実質的に産業政策に近いものになるのではないでしょうか。大まかな流れはこのような内容ですが、本日はこれらの点をしっかりとお話ししていきたいと思います。
山田太郎流 少子化対策の方向性
(山田さん)
さて、私が考える少子化対策の方法についてお話しします。最初に結論を述べ、その後で「やはりそうだ」と検証する形で進めていきたいと思います。
(山田さん)
まず「こども家庭庁」ですが、これは少子化対策だけを担う省庁ではありません。むしろ、こども家庭庁が対応するのは主に子どもが生まれた後の問題です。
もちろん、子どもが生まれた後に不安やリスクを抱えずに子育てができるよう支援することで、間接的に「子どもを持とう」という動きが促進されるかもしれません。しかし、根本的な少子化対策には、子どもが生まれる前の問題に取り組む必要があります。この部分は、こども家庭庁のカバーする範囲を超えているわけです。
私がこども家庭庁に対して一貫して指摘しているのは、単に子育て負担の軽減を図るだけでなく、現在いる子どもたちを大切にする姿勢が必要だということです。具体的には、いじめや虐待、児童養護の問題、障害を持つ子どもへの支援など、こうした課題に重点を置かなければなりません。
次に、賃金や手取りをどう増やすか、これも非常に重要な課題です。結婚に関する課題を考える上で、賃金や手取りの問題は大きな要因を占めています。晩婚化や非婚化の背景には、こうした経済的な要因があることをデータを用いて皆さんと確認していきたいと思います。
さらに、人口減少について触れます。仮に出生率が今から2.1や2.13に回復したとしても、当面の間、人口は減少し続けます。この現実を前提に、減少する人口に対応した産業政策を構築することが重要です。
最終的に重要なポイントは、若者が「日本の未来を明るい」と感じられるかどうかだと思います。未婚や晩婚が進む背景には、自分自身の生活や日本の将来について明るい展望を持てないことが影響しているのではないでしょうか。
将来が不透明だと、「結婚は大変だ」という意識が生まれてしまいます。ですから、若者が日本の未来を明るく見られるような社会を作ることが、非常に重要だと考えています。
以上が私の考える方向性ですが、小寺さん、どう思いますか?
(小寺さん)
山田さんのおっしゃることは、10年前、議員になられた頃から一貫していると感じます。私が山田さんに投票した大きな理由の一つも、やはり「将来不安の解消」という点でした。
山田さんは、10代や20代の若者が「未来は明るい」と感じられる社会を目指し、また「手取りが増える」「今が幸せだ」と実感できるようにすることが、結果的に子どもの数が増えることにつながると、ずっとおっしゃっていました。
こうした視点で話される政治家の方は、正直なところあまり多くないと感じます。私自身、一応まだ若者世代だと思っていますが、その立場からすると、山田さんのように若者の未来について真剣に語ってくれる存在がいることは、とても希望になります。
この配信が、ぜひ若い世代の方々にも届いてほしいと願っています。
少子化の現状と今後
(山田さん)
まず、少子化の現状と今後についておさらいしますが、この状況を見ると非常に厳しいものがあります。
(山田さん)
日本の人口動態についてはすでに統計で明らかになっています。このままの出生率の推移が続けば、現在約1億2000万人の人口は8700万人、さらには1億人を割り込むと推計されています。
特に重要なのは、生まれてくる子どもの数が激減し、生産年齢人口がどんどん減少していることです。今回の推計では、直近の出生率は1.2という驚くべき低水準で、さらに1.13まで下がる可能性が示唆されています。
このままでは2070年の総人口は8000万人になると予測されています。仮に出生率が回復して1.64になったとしても、1億人を割る未来を避けることはできません。この現実を踏まえ、1億人を割る世界をどう生き抜くかを考える必要があります。
(山田さん)
出生率の長期的な変化を見ると、かつて戦後直後は4以上の高い水準でしたが、高度成長期を経て減少しました。象徴的なのは1973年のオイルショックです。
この時期を境に「増やすことが良い」という意識が変わり、ライフスタイルの近代化とともに出生率は減少傾向に入りました。現在では2023年の出生率が1.2、年間の出生数が72万人にまで減少しており、かつての半分以下になっています。
(山田さん)
出生数の推移についても触れます。2015年には年間約100万人の出生がありましたが、その後急激に減少しています。当初の予測よりも15年早いペースで減少が進んでいます。
(小寺さん)
70万人を割り込むのは2040年頃と予測されていましたが、2024年にはその水準に達する見込みです。これは非常に深刻な状況です。
(山田さん)
この状況は、良い悪いという価値判断を超えて、現実として受け止める必要があります。この傾向を踏まえた上で、どのように対応していくかを考えることが求められています。
こども家庭庁による少子化対策?
(山田さん)
さて、「こども家庭庁の少子化対策とは何か?」についてお話しします。一応、こども家庭庁では4つの提案を行っているようです。
(山田さん)
その1つが児童手当の拡充です。具体的には、子育てに対する所得制限を撤廃する方向で進めています。
(山田さん)
また、高等教育の就学支援についても議論があり、高校から大学まで、教育費を無償化に近づけていこうという取り組みも行っています。
(山田さん)
さらに、障害を持つ子どもを育てる家庭の所得制限に関しても見直しが必要だとされています。
(山田さん)
現在の仕組みでは、障害を持つお子さんがいる家庭であっても、年収600万~700万円程度で特別児童扶養手当がゼロになり、その後も年収が1000万、1200万を超えるとさまざまな支援が打ち切られるという逆転現象が起きています。
(山田さん)
この結果、年収600万~700万円の家庭の方が、支援を受けた後の手取り額で上回るという事態になっているのです。
特に、この「年収700万~1200万円」のゾーンにいる家庭は、障害を持つ子どもを育てるうえで非常に大きな負担を強いられています。このような現状を解決するために、支援をリニア(段階的)にデザインし直す必要があると考えています。
低所得層への手厚い支援はもちろん重要ですが、こうした逆転現象を放置してはならないと思います。
私がこの問題にこだわるのは、誰もが将来的に障害を持つ子どもを育てる可能性があるからです。健常に生まれたお子さんであっても、事故や発達障害、自閉症など、後天的に障害を持つ可能性があります。
このような中長期的なリスクを考えれば、障害を持つ家庭へのサポートは政治の責任であり、必須だと考えています。
いずれにしても、これらの取り組みは、こども家庭庁が少子化対策として行うべき方向性であると考えています。しかし、決定的な少子化対策となると、正直なところまだ見当たりません。
(小寺さん)
ここでは触れていませんが、こども家庭庁は地方交付金を使って未婚者支援として結婚を促進する取り組みも行っています。たとえば、お見合い活動の補助金などがその一例です。
(山田さん)
それもやらないよりはやった方が良いと思いますが、それが決定打になるかと言うと疑問が残ります。
(小寺さん)
決定打ではありませんが、いくつかある対策のうちの1つではあると思います。
諸外国の少子化対策
(山田さん)
さて、次は諸外国の少子化対策について見ていきたいと思います。まず、各国の少子化状況や出生率の違いについておさらいします。
(山田さん)
日本と比較すると、かつて出生率を「2人以上」を維持していた国々も、近年では徐々に低下してきています。フランスやスウェーデンのように少子化対策に積極的に取り組んできた国々でも、状況を維持するのが難しくなってきているのが現状です。
しかし、注目すべきは1995~2000年代にかけて多くの国々が少子化対策を行い、一定の成果を上げた時期があったことです。これは1つの参考になると考えられます。
(山田さん)
ヨーロッパは少子化対策に積極的な地域と言われており、フランスや北欧諸国の状況も詳細に見る必要があります。たとえば、スウェーデンでは2000年代に出生率が伸びましたが、最近は減少傾向にあります。
フランスは第3子以降への手厚い支援や、婚外子に対する寛容な政策などで、2010年頃には出生率を「2.0」まで回復させた優等生とされました。しかし、現在では再び減少に転じています。
これは北欧諸国も同様で、少子化対策の成功例とされていた地域であっても、近年はトレンドが変わりつつあるのです。
(山田さん)
次に、移民政策についてです。イギリスやアメリカは移民受け入れを進め、少子高齢化への対策としています。特にアメリカは、先進国の中で唯一人口が増加している国とされ、3億人だった人口が現在は3億2000万人に達しています。
これは移民政策だけでなく、海外からの人材流入が大きな要因です。オーストラリアも同様に、積極的に移民を受け入れる政策を採用しています。
一方で、移民政策に伴う国内問題もあります。ドイツ、イタリア、スペインでは、移民受け入れが治安の悪化や雇用問題を引き起こし、国民の不満が高まる中で政権交代や極右政党の台頭といった影響が見られました。
このように、移民政策が必ずしも成功とは限らないのです。
最後に、制度改革を積極的に行っている国々として、フランス、スウェーデン、ハンガリーが挙げられます。フランスは第3子以降への支援を強化し、ハンガリーは家族政策に力を入れています。
ただし、これらの国々でも2010年以降、移民政策や少子化対策の見直しが進む中で国内批判が増加し、人口増加そのものを簡単には実現できない状況が続いています。
(山田さん)
さて、ヨーロッパだけでなくアジアの少子化についても見ていきたいと思います。実はアジア全般で見ると、状況はさらに深刻です。日本は少子化が進んでいると言われますが、出生率を見ると、日本、シンガポール、台湾、香港、韓国はほぼ同じ水準で、特に韓国は出生率が「1」を割り込んでいます。
台湾、香港、韓国では、少子高齢化が急激に進行しており、アジア全体として顕著な特徴を持っています。
(小寺さん)
この間、韓国の方に話を聞いたところ、韓国政府でも「こども家庭庁」に相当する省庁を研究しているようです。少子化対策や子ども支援を強化する動きがあり、危機感が非常に強いとのことでした。
(山田さん)
中国やタイも少子化の波に直面しています。中国は一人っ子政策を長年実施してきましたが、それをやめるなど、人口政策を大きく操作してきた結果、現在では多くの課題を抱えています。タイも同様に出生率が低下しています。
(山田さん)
中国について少し詳しく見ると、1960年代にはベビーブームがありましたが、1966年以降、文化大革命の影響で出生率が急激に低下しました。この時期には、何千万人という命が失われるという暗い歴史もあります。
その後、1979年から一人っ子政策が導入されました。これは、文化大革命後の経済立て直しの一環として、食料や建設資源の不足を防ぐために実施されたものです。この政策の背後には、「女性も働くべき」という社会主義的な思想がありました。
アジア全体を見渡すと、少子化の理由に対して一つの答えを出すのは難しいですが、儒教の影響も指摘されています。儒教の価値観では、女性が家庭にとどまることが推奨されてきましたが、これが少子化の一因となっているとの説もあります。
現在の中国の出生率は1.7程度とされていますが、中国政府の統計は信頼性に疑問が残る部分もあり、実際にはもっと深刻な状況にある可能性があります。ヨーロッパと比較して、アジアの少子化は非常に深刻で、出生率が極めて低いことが特徴です。
ハンガリーの少子化対策
(山田さん)
ハンガリーの政策について見ていきたいと思います。今年の夏にハンガリーを訪問し、この件について直接話を聞いてきました。それでは、ハンガリーの特徴的な政策について、小寺さん、お願いします。
(小寺さん)
ハンガリーの特徴は、とにかく結婚して子どもを産むと、多くの税制優遇を受けられることです。「子どもを産んだ人が豊かにならなければならない」という理念のもと、税制控除や所得税の撤廃、住宅ローンの免除など、子育てにかかる費用を大幅に軽減する政策を実施しています。
(小寺さん)
その結果、2010年には1.25だった出生率が2021年には1.59まで回復しました。コロナ禍の影響で少し下がり、現在は1.52程度となっていますが、再び回復を目指して取り組んでいるようです。
ただし、注意が必要なのは、ハンガリーでは結婚制度が政策の前提となっている点です。憲法にも「男女間の共同生活を基本とする家族が国の基盤である」という内容が明記されており、結婚しないとこれらの制度を受けることができません。
(山田さん)
結婚しているかどうかで大きな格差が生じる仕組みになっています。ハンガリーの政策は、家族政策を中心とした非常に保守的な考え方に基づいています。
(小寺さん)
ハンガリー政府の調査では、結婚を推進する政策によって国民の幸福度が向上しているとされ、この方向性は間違っていないとのことです。ただし、結婚しない自由や、結婚を選択しない人々についてはほとんど考慮されていないのも事実です。
こうした状況に不満を持つ若者の中には、他のEU諸国に移住するケースも増えていると、現地で話を伺いました。
(小寺さん)
現在、ハンガリーでは次々と新しい政策が打ち出されています。その中でも、たとえば「祖父母手当」という仕組みがあります。孫を見ることで手当が支給されるもので、非常にユニークな取り組みです。
また、4人以上の子どもを産むと所得税が永久に免除される制度や、大家族向けの自動車購入支援、住宅リフォーム支援なども行われています。こうした生活に関わる小さな不便を徹底的に解消しようという、きめ細やかな政策が特徴的です。
(小寺さん)
さらに、手当も広範囲にわたり、子どもが0歳から18歳になるまでシームレスな支援が設計されています。
(小寺さん)
「家族第一主義」を掲げ、母親の視点から必要な政策を研究する専門機関まで設立されています。家族や赤ちゃんを大切にする姿勢が、ハンガリーの政策全体に一貫して表れています。
(山田さん)
確かに、オルバーン政権の手腕は目を見張るものがありますね。ハンガリーではオルバーン政権が強い指導力を発揮しています。国内では国民から高い支持を受けている一方で、EUの中では「暴れん坊」と言われることもあります。民主的に選ばれた政権ではありますが、独裁的との批判もあります。
(小寺さん)
たとえば、ハンガリーはLGBTの権利を認めておらず、その点でトランプ政権と親和性があると指摘されることもあります。客観的に見ると、生きづらさを感じる部分もある国だと私は思いました。
(山田さん)
オルバーン首相の動きも注目に値しますね。今年、ハンガリーはEUの議長国ですが、オルバーンの存在が理由で、各国の足並みが揃わない状況が生じています。
ロシアに対する制裁措置についても、EUの一致が必要な場面でハンガリーが反対し、対応が遅れたという事例があります。このように、ハンガリーのやり方には賛否がありますが、その中から我々が学べる部分もあると思います。
フランスの少子化対策
(山田さん)
さて、次はフランスについてです。ハンガリーとは180度異なる少子化政策を行っているフランスの特徴について教えてください。
(小寺さん)
フランスの大きな特徴は、事実婚でも結婚と同等の社会保障を受けられる仕組みが整備されている点です。結婚していなくても、同様の控除や支援を受けられるようになっています。
また、3人以上の子どもがいる世帯への手厚い支援もフランスの特徴です。私たちも2021年にフランスを視察しましたが、「家族手当金庫」という仕組みが非常に印象的でした。
(小寺さん)
この家族手当金庫の財源の約6割は企業が負担しています。これは、マーケットの縮小が企業にとって大きな問題であるとの意識が背景にあり、子どもを社会全体で大切にする風土が国全体に根付いていることを示しています。
スウェーデンの少子化対策
(山田さん)
スウェーデンについても触れておきます。
(小寺さん)
スウェーデンでは、産前産後の休暇制度が非常に手厚く、母親が働かなくても十分な保障を受けられる仕組みがあります。これにより、親が子どもとしっかりと時間を取ることができるのです。
また、医療費の18歳までの無償化や大学までの教育費無償化が行われています。さらに、同性カップルやパートナーシップ法の導入によって、結婚していない人々も支援の対象となることが特徴です。
(山田さん)
日本のこども家庭庁も、子育て支援や育児休暇制度について、スウェーデンのモデルを大いに参考にしているようです。
(小寺さん)
そうですね。スウェーデンでは育児休暇が非常に手厚く、父親と母親の双方が給付を受けられる仕組みがあります。これにより、親が子どもと時間を取りながら育児休暇を活用できます。また、希望する保育所に必ず入れる制度や、時短勤務での復職が確実に保障されている点も特徴的です。
(山田さん)
これらの国々がハンガリーと真逆の政策を取っていると感じる点の一つが、婚外子に対する考え方です。日本がこうした点を取り入れるのが難しい理由も、婚外子に対する文化的背景や考え方の違いにあります。
たとえば、フランスでは婚外子の割合が50%を超えています。スウェーデンも同様で、結婚という枠組みにとらわれない形で子どもが生まれた場合でも、国がその子どもをしっかりと支援する体制を整えています。
一方で、ハンガリーは「家族を持たないなら保障はしない」という厳格な姿勢を取っています。このように、フランスやスウェーデンでは「結婚は前提ではない」というスタンスですが、ハンガリーは家族を政策の中心に据えています。
昨今、アメリカやドイツでも婚外子の割合が増加していますが、アジア諸国、特に日本やシンガポールでは、家族を前提とした価値観が根強く残っています。これはアジア特有の文化的背景によるものと考えられます。
(小寺さん)
確かに、フランスのような振り切った政策を日本で実現するのは現状では難しいと感じます。ただ、子育てに苦しんでいる方々にとって、SNSでフランスやハンガリーの政策を目にすると、「なぜ日本は同じようにできないのか」と不満を感じることも多いようです。
しかし、こうした問題は国のあり方そのものを問う話でもあるため、簡単に「これをやりましょう」と導入できるものではないと痛感しています。
(山田さん)
私も自民党の会合で「フランスでは」「北欧では」といった話を議員の方々から聞くことがあります。しかし、調べてみると、各国には前提条件の違いが多く、日本にそのまま適用するのは難しいことが分かります。
「なぜ日本はできないのか」という議論は、一面的に語るべきではないと思います。それでは、欧州の特徴である婚外子や事実婚に関する話をまとめましたので、小寺さん、説明をお願いします。
(小寺さん)
フランスやハンガリーでは税制優遇をはじめ、結婚支援が充実しています。政策を「結婚を前提として設計するのか」、それとも「一人親や未婚、婚外子を前提に設計するのか」、または「移民を受け入れるのか」といった選択肢があります。
日本としてどの方向性を取るべきか、国民全体を巻き込んだ議論が必要だと思います。
(山田さん)
注意が必要なのは、2010年頃までは移民受け入れに関する議論が盛んでしたが、2015年から2016年ごろを境にその方向性が変わってきた点です。2020年にはヨーロッパでも移民に対する不満が非常に強まっています。
この状況を踏まえ、日本も移民政策について議論する際には、現実をしっかり見ていく必要があります。特に、日本に技術を持つ人材を呼び込むためには、日本の賃金や経済の状況が競争力を持っていることが前提となります。
しかし、現状では、日本の技術者の賃金が他国に比べて低いという課題があります。たとえば、タイや台湾の設計開発者の賃金は、日本よりも高い状況です。こうした中で、日本が「必ず来てくれる」と期待するのは幻想に過ぎないのではないかと感じます。
未婚化・晩婚化の影響
(山田さん)
さて、ここからは多くの方が注目するポイントである「未婚化・晩婚化の影響」についてです。もしかすると、今日の答えはここにあるかもしれません。それでは早速、未婚化の影響について小寺さんに説明をお願いしたいと思います。
(小寺さん)
まず、夫婦が産む子どもの数は、実は1970年代からほとんど変わっていません。しかし、結婚する年齢が遅くなっていることと、そもそも結婚する人の割合が減少していることが、少子化の最大の原因だと分かっています。
(山田さん)
これ、私も最初に知ったときは衝撃を受けました。「完結出生指数」、つまり結婚した夫婦が産む子どもの平均数ですが、約2人で推移していて、ほとんど変化がありません。少しずつ減少しているものの、結婚すれば子どもを2人程度持つという傾向は、この何十年も変わっていないのです。
一方で、特殊合計出生率は結婚していない人も含めた統計なので、全体として大きく下がっているように見えますが、結婚している人たちだけを見ると、1970年代、オイルショック以降も2人という水準が維持されています。そうすると、問題の核心は「晩婚化・未婚化」ということになります。
(小寺さん)
その点では、ハンガリーのように「結婚すれば控除を受けられる」といった政策は、日本に適している可能性があるかもしれませんね。
(山田さん)
そうですね。北欧モデルのような社会全体の支援も参考になりますが、日本の場合、結婚そのものにメリットを与えるか、あるいは「なぜ結婚しないのか」という原因を追究する方が、解決への近道だと思います。
(山田さん)
さらに、未婚率の推移を見ると、特に男性では50歳時点で4人に1人が未婚です。また、39歳以下でパートナーがいない人の割合が、6~7割に達しているというデータもあります。この現状をしっかり捉えることが重要ですね。
(山田さん)
しかし「未婚」の人々の中でも、「いずれ結婚するつもりがある」と答えた人は多いというデータがあります。つまり、多くの人は結婚を望んでいるのです。しかし、現実的には未婚のままでいる人が多いという状況も明らかです。
(山田さん)
では、なぜ結婚しないのか。その理由について調査された結果を見ると、最も多いのは「適当な相手に出会わない」というものです。確かに、適切な相手が見つからなければ結婚は難しいですね。
ただ、この「適当な相手」とは具体的に何を指すのかが曖昧で、性格や年収など、幅広い要因が含まれているようです。この点は、もう少し具体的な調査が必要だと思います。
次に多かった理由は、「結婚の必要性を感じない」や「結婚資金が足りない」といった経済的な問題です。また、「自由さや気楽さを失いたくない」というライフスタイルに関連する理由も挙げられています。
これらのデータを見ると、多くの人が「結婚はしたいが、できない何らかの理由がある」という現状が浮き彫りになります。では、以下の調査の詳細について解説をお願いします。
(小寺さん)
未婚率が高い属性についてですが、男性は特に非正規雇用の方に集中しています。一方、女性の場合はややばらつきがありますが、特に高学歴でフルタイムで働く女性に未婚率が高いという傾向があります。
(山田さん)
このデータを見ていくと、男性の場合、非正規雇用の人は全年代で未婚率が高い傾向があります。特に30代から40代では顕著です。女性の場合は、高学歴の方が未婚率が高く、キャリアとの兼ね合いがテーマになっていると考えられます。
女性が結婚や子育てを選択する際に直面する課題としては、男性の子育てへの協力やキャリアを含めた支援が不足していることが背景にあるでしょう。
(山田さん)
非正規雇用の問題も重要です。女性の非正規雇用の主な理由には、「自分の都合の良い時間に働きたい」というものがありますが、これは年齢によって理由が異なる場合があります。
(山田さん)
たとえば、15~24歳の若年層では柔軟な働き方を求める割合が高いのは理解できますが、25~34歳の年齢層でも同様の理由が挙げられているのは注目すべきです。
また、45~54歳では家計の補助や子どもの学費の負担が非正規雇用の理由として大きくなっています。さらに、この年齢層では親の介護という問題も非正規を選ぶ要因になっています。これらの状況を踏まえ、どのような政策を打つべきかを考える必要があります。
(山田さん)
次に、年収と子どもの数の関係についてお話しします。この2つには明確な相関関係があると言えます。特に年収が1000万円くらいまでの範囲では、子どもの数が1人というケースが多く、年収が1000万円に近づくにつれて2人目を持つ傾向が強くなります。
しかし、年収が1000万~1200万円を超えると、それ以上の年収が子どもの数に大きく影響するわけではありません。1人か2人、あるいは3人という選択が大体決まっているようです。
一方で、年収が1000万円以下では、経済的な理由から2人目を持つのが厳しいと考えられるケースが多いようです。人口を維持するためには出生率が2.13程度必要ですが、これは2人以上の子どもを持つことを意味します。
この問題を改めて整理してもらえますか?
(小寺さん)
未婚化や晩婚化にどうアプローチしていくかが政治の大きな課題です。キャリア形成や晩婚化への対策について、議論をさらに深める必要があります。
(山田さん)
人口減少問題の核心は晩婚化や未婚化にあります。これに対応するには、結婚支援だけでなく、所得の増加が不可欠だと思います。また、晩産化や出産しない選択が増えている問題については、不妊治療支援やライフプランの見直しを議論する必要があります。
多子世帯への支援も重要です。2人以上の子どもを持つ家庭の負担を軽減するためには、共働き世帯のサポートや育児負担の軽減が必要です。また、学費が高いことが非正規雇用の要因にもなっているため、授業料の免除などの対策も求められます。
さらに、地域間格差や一人親世帯への支援も重要な課題です。一人親世帯の約半数が相対的貧困状態にあるというデータもあり、子どもの貧困問題に取り組むことが急務です。
(小寺さん)
山田さんが全国比例選出という特性は、少子化問題に取り組む上で非常に重要だと思います。地方と都会では、ニーズや課題が全く異なるからです。たとえば、所得制限の問題は東京特有の課題ですが、地方では子どもの数が少なすぎて保育園自体が必要とされない地域もあります。
このように、地域によって課題が大きく異なる中で、それぞれの地域の代表が自身の利権を中心に発言すると、結局総花的な対策に終わりがちです。
一方で、全国比例という立場から全国の課題を俯瞰的に見ることができれば、どの地域にどのような政策が必要なのかを的確に判断することが可能になります。そういった意味でも、国のあり方をどうしていくかについて、参議院の6年間という任期の中でじっくりと議論を進めていくことが求められると思います。
(山田さん)
少子化対策として、所得増加や賃上げについても後ほど詳しく話していきたいと思います。
(山田さん)
もう1つ忘れてはならないのが、「子どもの命を大切にする」という視点です。少子化について議論する中で、年間400人弱の子どもが自殺している、あるいは虐待を受けている現実を無視することはできません。
これは、子どもを設けるかどうか以前の問題であり、子どもたちにとって地獄のような現状を解消することが何よりも重要です。
これこそが、こども家庭庁が最優先で取り組むべき課題であると、私は常に主張しています。少子化対策と並行して、この問題にも改めてしっかりと取り組む必要があります。
少子化対策の打ち手は産業政策
(山田さん)
少子化への対応として「産業政策」の視点から考えていきたいと思います。
(山田さん)
冒頭で述べたように、少子化の進行が止まらない中、子どもを増やそうという話をする一方で、急がなければならないのが「片車方式」による社会保障制度の危機です。2050年には1.3人で1人の高齢者を支える状況になり、財政構造が大きく歪む可能性があります。これを何とかしなければなりません。
(山田さん)
河合雅司氏の『未来の年表』にも記されているように、「大廃業時代の到来」が現実のものとなっています。企業の3割に後継者がいない状況が続き、中小・中堅企業が次々に黒字倒産する事態が起こっています。
以前は赤字や債務過多が倒産の理由でしたが、現在は人材不足が主要因です。この問題は早急に対処が必要です。
さらに、2025年問題として、人材不足が深刻化している業界も多岐にわたります。物流業界ではドライバー不足が顕著であり、消防や救急の担い手も減少しています。
教員不足や地方のガソリンスタンドの閉鎖も進行しており、生活インフラが脅かされています。たとえば、地方では灯油の購入が難しくなっているという話も耳にします。
(山田さん)
また、2033年には空き家が2000万戸を超えると予測されており、大都市でも空き家問題が顕在化しています。それにもかかわらず、新しいマンションが建設され続けている現状には疑問を感じざるを得ません。
農業分野でも、従事者の2/3が65歳以上という高齢化が進み、現在の人手に頼る農業体制では自給率の低下が避けられません。これに対応するためには、オランダやイスラエルのように植物工場や近代農業の導入を加速させるべきです。
オランダは狭い国土ながら、農産物の輸出で大きな成果を上げています。こうした事例を参考に、日本も農業のあり方を見直す必要があります。
もう1つ紹介したいのが「貧乏定年」という問題です。親の収入に頼って生活している人が2016年時点で217万人おり、その中には61万人の高齢化した引きこもりが含まれます。
「8050問題」、つまり80歳の親が50歳の子どもの面倒を見ている状況も増加しています。逆に親の介護を担う「ヤングケアラー」の問題も関連しており、働きながら介護を担う若者が多く存在します。
(小寺さん)
ここには記載されていませんが、ライフラインの維持も問題です。最近のニュースによると、水道管のメンテナンスができず、水道料金が今後10年で20%上昇する可能性があると報じられました。こうした課題はますます深刻化しています。
(山田さん)
このように、話題が多岐にわたりますが、いずれも「人口減少」という大きな課題に結びついています。これらの問題を包括的に解決する視点が必要です。
さて、地方の話をもう少し深掘りしていきたいと思います。これについては私の番組でも頻繁に取り上げていますが、意外と認識されていない点があるので、まずその背景を理解していただきたいと思います。
(山田さん)
日本には1741の市区町村があります。これらの市区町村を人口順に並べてみると、中央値は850番目に位置する約2万3000人です。つまり、日本の半数の市区町村は人口が2万人強に過ぎないということです。
また、全体の平均人口は約6万5000人で、10万人を割っています。さらに、全市区町村の1/3は人口1万人を下回っています。これが現在の日本の市区町村の実態です。
(山田さん)
では、人口減少が進むと何が起こるのか。これについてはすでにさまざまな研究があります。簡単に言うと、街や村から多くのものが失われます。
人口10万人規模の都市では、映画館やスターバックスなど、生活に必要な施設やサービスがほぼ揃っています。しかし、人口が2万人を割ると、税理士や会計士といった士業がいなくなり、病院も徐々になくなります。1万人を下回ると、病院が完全に消える地域も多く、公的施設もほぼ失われます。
中央値である2万3000人規模の市区町村では、すでに多くのサービスが存在せず、他の市区町村に頼らざるを得ない状態が一般的です。また、1万人を下回る地域では、自立した行政サービスの提供が困難で、事実上他地域への依存が強まります。
それにもかかわらず、議員だけは各市区町村に存在しているという現状があります。このように、人口減少によるサービスの喪失と地方格差が直結している中で、これに対処するための「特効薬」は何かを考える必要があります。
「合併すれば解決するのではないか」という議論のもと、平成の大合併が行われましたが、結果的には思ったほどの効果が得られませんでした。その理由を考えてみると、合併による課題が浮き彫りになります。
たとえば、山間部が市として編入された場合でも、その地域が特別な財政的支援を受けない限り、必要なサービスは行き届きません。むしろ、合併によって山間部の住民が不利な状況に追い込まれることもあります。
救急車が来られなくなったり、必要なインフラが維持できなくなったりするケースもあります。このような背景から、「小規模でも村単位で独立した方が良かったのではないか」という議論も出ています。非常に難しい問題です。
(小寺さん)
合併による学校の統廃合で、子どもたちが通学に1時間以上かかる地域が増えています。このように、細やかな地域サービスが失われている現状があります。
(山田さん)
この問題に対して考えられる解決策の1つが、デジタル化による効率化、もう1つが「コンパクトシティ」の推進です。ただ、批判を恐れずに言えば、「ポツンと一軒家」のような生活を支えるために必要なライフラインや道路整備のコストを考えると、住民が一定地域に集まって生活する方が現実的かもしれません。農村計画や地域の再編について、より具体的な議論が必要です。
もちろん、防衛上の観点から地域や離島に人がいなくなることは避けなければなりません。そのため、国が責任を持ち、そうした地域を支援する必要があります。
一方で、全国一律で「田んぼが大事」という理由だけで現状を維持することが可能なのか、真剣に考えるべきです。特に少子化が進む中で、地域ごとの選択が必要になります。
国としては、地域が自ら選択する際の支援メニューを整備すべきです。ただ単に「地域頑張れ」「地域にお金を渡せば良い」という考えでは、人材が不足している現状では効果が期待できません。この点を深く議論する必要があります。
さて、日本で人口減少が進むと具体的に何が起こるのか、まとめていきたいと思います。
(山田さん)
人口減少が引き起こす直接的な問題として、労働需給のミスマッチがあります。需要と供給を比較すると、現状で約1000万人の労働力不足が生じています。
(山田さん)
具体的にどの産業で人手不足が発生しているのか、まとめてみました。
(山田さん)
まず、運輸や機械、運搬業では需要は大きく変わっていないものの、供給が大幅に減少しています。運転手の高齢化が進み、若い世代の労働者が入ってこないことが原因です。建設業についても若干需要は増加していますが、高齢化と労働力不足が深刻化しており、新規参入がほとんどありません。
また、かつては供給過剰だった工場労働者も減少が続いており、販売員の不足が顕著です。これをネット通販やロボット化で補うべきか、建設業と同様に空き家問題も含めて、業界全体での再編を検討する必要があります。運輸業では自動運転やドローンなどの自動化技術が鍵になるでしょう。
(山田さん)
介護分野では、高齢化に伴い需要が急増していますが、供給側は限界に達して需要増に対応できない状況が続いています。飲食業でも人材不足が深刻で、配膳ロボットやセントラルキッチンの活用が進んでいます。
保健医療分野では高齢化の影響で需要が増大しており、供給はギリギリの状態です。事務職や技術職、専門職でも担い手が減少しており、特に運輸、建設、販売、生産、介護、医療など多くの産業が深刻な人材不足に直面しています。
(山田さん)
この労働力不足がもたらす影響として、国力の衰退があります。GDPにおいては日本はまだ世界第3位や第4位を維持していますが、人口ボーナスを享受するインドネシアやナイジェリアなどの新興国が国力を伸ばしている点にも注目が必要です。これらの国々の成長を見据えた政策を考える必要があるでしょう。
(山田さん)
一人当たりのGDPが高ければ、それは国全体の国力とは別に良い指標となるのではないか、という意見もあります。たとえば、シンガポールやアメリカの一人当たりGDPは非常に高い水準にあります。
ただし、アメリカの場合、格差の拡大が大きな問題となっています。サンフランシスコやニューヨークの住民と中南西部の住民の所得格差は10倍から100倍に達しているとされ、これがトランプ氏の支持を生む一因ともなっています。
つまり、ITや防衛産業といった特定の分野は非常に発展していますが、広大な農業地帯での生産性向上や所得増加は厳しい状況です。こうした国内格差は、日本の政策を考える上でも重要な教訓になるでしょう。
さて、日本の話に戻りますが、人口減少と少子高齢化が進む中で、以下の検討領域が明確になっています。
高齢化対応とロボット・AIの活用
高齢化に伴い需要が急増している産業がありますが、供給サイドが追いついていません。若い世代が高齢者を支える構造は、持続可能性に限界があります。そのため、人手を補うだけではなく、ロボットやAIを活用して生産性を向上させることが必須となっています。
産業の付加価値化
一人当たりGDPを上げるためには、産業全体の付加価値を高める必要があります。人口が1億人を下回ると、国内での自給自足が難しくなり、輸入依存が加速します。この状況では経済安全保障も脅かされ、国富が海外に流出してしまいます。そのため、新しいサービスや製品を生み出し、輸入超過を抑える必要があります。
国内調達の困難化
人口減少による供給力の低下は、国内調達の困難さに直結します。必要な生活必需品やサービスを維持するために、どの産業を残し、どの分野に注力すべきかを議論することが不可欠です。
以上のように、国内産業の維持だけを目的とするのではなく、少子高齢化社会を見据えた付加価値化や技術革新が重要な課題となっています。
(山田さん)
人口減少の問題に関連して、「リスキリング」の有効性について少し触れたいと思います。私自身は、リスキリングの効果にはやや疑問を持っています。
なぜなら、現在不足しているのは現場で働くブルーカラーの労働者、例えば工場で製品を作る人や、食料を供給・給仕する人などです。これらの単純労働を担う人材が急速に減少しており、ITやAIだけでは対応しきれない部分があります。
もちろん、ロボットなどの技術が発展すれば別ですが、現状ではこのような現場の維持が大きな課題となっています。一方で、ホワイトカラーの仕事では生産性を高めることである程度の補填が可能です。
(山田さん)
しかし、日本全体の労働生産性は他国と比べても低下しており、特に一人当たりの生産性向上に向けた投資が不足しています。設備投資や技術革新を怠った結果、現在の低い生産性につながっているのではないかと感じます。
(山田さん)
では、どの産業を重点的に伸ばしていくべきかについてですが、日本の時価総額ランキングを見ると、赤字が示しているように多くのものづくり企業が含まれています。結局のところ、日本の強みは「ものづくり」にあります。
一部では「ものづくりは終わった」との意見もありますが、アメリカのGAFAMのような企業は日本では生まれにくい環境にあります。ヨーロッパでもGAFAMに匹敵する企業が育っていない現状を考えると、ものづくりを強化することが日本にとって現実的な戦略だと思います。
(山田さん)
特に、日本の強みは素材や部品分野、自動車産業にあります。シェアを見ても、自動車や関連部品が日本経済を大きく支えています。一方で、アメリカの産業構造を見ると、ITや医療、部品、自動車などがバランスよく分散されていますが、日本は自動車産業や素材産業への依存度が非常に高いのが特徴です。
(山田さん)
日本の強みとして「ニッチトップ」と呼ばれる分野が挙げられます。つまり、日本がなければ世界が成り立たないような技術や素材を提供している分野です。しかし、その未来は本当に安泰なのかという疑問があります。
(山田さん)
たとえば、半導体に関連する素材研究において、日本は遅れを取っています。具体的には、トポロジーや反磁性体といった新しい技術分野での研究が進んでおらず、これが将来の半導体産業に影響を与える可能性があります。
反磁性体は、プラスとマイナスの磁性の引き合いを回避する特性を持つため、半導体の線幅限界を突破する鍵となる素材です。しかし、日本はこうした基礎研究の分野でほぼ全滅状態にあります。
(山田さん)
政府の半導体政策についても課題があります。短期的な後工程やパッケージング技術への投資だけでなく、5年から10年先を見据えた基礎研究への投資が不足しています。Rapidusへの巨額投資も重要ですが、長期的な視点で新たな分野を開拓する努力が必要です。
(山田さん)
次に、ロボット産業について考えてみます。日本は「ロボット大国」としての地位を誇ってきましたが、果たしてその評価は現在でも正しいのでしょうか。
日本のロボットはファナックや三菱電機のような制御系が中心です。工場の現場に特化した制御技術は優れていますが、自律型ロボットの分野ではヨーロッパやアメリカに遅れを取っています。
ヨーロッパでは、自動車メーカーのBMWが自律型ロボットの開発を進めています。一方、アメリカではテスラがNVIDIAと連携し、「ヒューマノイド」型ロボットの開発に注力しています。
たとえば、NVIDIAの仮想空間技術を活用することで、ロボットが1秒未満で数万回の作業をシミュレーションし、それを実際のロボットに移行する技術が進んでいます。
このような技術革新により、ロボットの実用化が急速に進んでいます。たとえば、ファミリーレストランでの配膳ロボットは2~3年前には実現が難しかった技術ですが、現在ではAIや画像認識技術の進化により、ガイドなしでスムーズに動作できるようになっています。
(山田さん)
自動運転の話題について触れたいと思います。最近では、新東名高速道路などで無人運転のトラックを試験的に導入する取り組みが進んでいますが、サンフランシスコではすでに自動運転タクシーが実用化されています。私自身も実際に乗車しましたが、これが300台ほど日常的に運行され、事故もなく運用されています。
私たちは、VISA本社近くから金門橋までの約40分間、自動運転タクシーを利用しましたが、全く問題なく、快適に移動できました。これがすでに実現している技術であるにもかかわらず、日本では導入が遅れています。なぜ実行しないのか、という疑問を強く感じます。
また、日本では「独自開発」にこだわる傾向がありますが、既存の技術を活用する方が効率的な場合も多いです。すでに実用化されている技術を購入し、導入を進めるべきだと考えます。例えば、自動運転を用いた物流や無人タクシーの運用を早急に進めることは、人手不足の解消に直結するはずです。
加えて、産業全体で強い分野はさらに強化し、弱い部分にはバーチャル技術やロボットを活用して補完することが必要です。現在、人手が不足している物理的な分野において、ロボットや自動化技術を前倒しで導入することで、生産性を向上させるべきです。
現在、日本では付加価値の低い作業に多くの労働力が割かれています。このため、一人当たりの生産性が全体的に低くなり、結果的に賃金の伸び悩みにもつながっています。この構造を変革することが、国富の増加と持続的な成長にとって不可欠だと考えます。
手取りを上げるには?(賃金と分配)
(山田さん)
手取りを上げるための具体的な方法として「賃金」と「分配」について話したいと思います。国民民主党の玉木さんたちが「103万円の壁」などについて熱心に取り組んでいますが、私としてはさらに大胆なアプローチが必要だと考えています。
(山田さん)
まずは各国の賃金の推移を見てみましょう。このグラフでは、日本だけが名目賃金も実質賃金もほとんど伸びていないことが一目で分かります。名目賃金とは、物価変動を考慮しない純粋な金額の増加を指しますが、実質賃金は物価上昇を考慮した「実質的な手取り」に相当します。日本ではどちらの指標でも賃金が低迷しています。
たとえば、イタリアの例では、名目上は賃金が上昇しているように見えても、インフレの影響で実質賃金は伸びていません。このように、物価上昇を考慮した賃金動向を見ていくことが重要です。
(山田さん)
次に、日本国内の産業別に賃金の状況を見てみると、大きなばらつきがあります。特に、宿泊業や飲食業など、人手に依存するサービス業では、原価負担が重く、付加価値が低いため、十分な賃金を支払うことが難しい現状があります。この分野の構造改革が求められます。
(山田さん)
また、中小企業についても課題があります。2009年のコロナから生産性の低迷が顕著で、現在も厳しい状況が続いています。
(山田さん)
現在、日本の中小企業は全労働人口の7割を雇用していますが、生み出す付加価値の規模は大企業に大きく劣っています。一方で、大企業は労働人口の3割を占めるのみですが、付加価値の創出において圧倒的な規模を誇ります。
このような現状を踏まえると、中小企業の生産性向上と付加価値の創出が、日本全体の賃金向上につながる重要な鍵となります。この構造的な課題を解決し、全体の付加価値を高める努力が必要です。
(山田さん)
なぜ賃金が伸びないのか、その理由を考える際に「成長」と「分配」のバランスを議論することが重要です。政府は成長戦略ばかりを重視していますが、分配の議論も同じくらい大切です。成長分野に注力することは私も賛成ですが、それだけでは不十分です。
(山田さん)
では、分配とは具体的に何を指すのでしょうか。最大のテーマは、企業がいくら利益を上げても、その大部分が投資家に還元されてしまっているという現状です。これが自社株買いや株主還元という形で行われています。
投資家への還元には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。キャピタルゲインは企業価値の上昇によるもので、投資家にとっては将来の成長に期待する形です。一方、インカムゲインは企業の剰余金を株主に分配するものですが、これが過剰になると賃金や次の成長への投資が圧迫されます。
本来であれば、企業が投資家から資金を集め、それを成長に生かしていく構造が健全な形です。しかし、現状では企業から投資家への資金還元が過剰になり、その結果として労働者への分配が滞り、成長への再投資も不足している状況です。
この背景には銀行が十分に機能していないという問題もあります。企業が資金調達を間接金融(銀行融資)ではなく、直接金融(株式や債券の発行)に頼る割合が増えていることが、現在の状況を生み出しています。
投資家にとっても、キャピタルゲインを通じて企業の成長を共有する方が本来は望ましいはずです。企業利益の一部を賃金や成長投資に充てることで、全体として持続可能な経済を実現する仕組みを構築する必要があります。
付加価値と物理的な労働生産性の違いについて少し整理してみたいと思います。これは実質と名目の違いに関する問題です。
(山田さん)
日本では「労働生産性が上がった」と言われることがありますが、実際には物価が上昇して原価が増えた結果、一見上昇したように見えるだけの場合もあります。
他国では労働生産性が実質的に上昇しており、インフレを上回る付加価値の増加が見られるのに対し、日本では物価上昇率が賃金上昇率を上回るため、実質的には労働生産性が上がっていないという現状があります。たとえば、賃金を5%上昇させても物価が6~7%上昇すれば、実質的な改善にはつながりません。
(山田さん)
産業別の付加価値を見ると、情報サービス業や教育業のように付加価値率が高い分野はありますが、全体的な貢献度は低いです。なぜなら、これらの分野の絶対額が小さいため、国全体を支えるには不十分だからです。
一方、宿泊業や飲食業は付加価値率がそこそこ高いものの、絶対額が少ないため、国富への貢献度はやはり限定的です。
そのため、製造業や卸売業、小売業の付加価値率をいかに向上させるかが、国全体の富を引き上げる鍵となります。この点は非常に明快で、これらの分野における付加価値創出が最重要課題といえるでしょう。
(山田さん)
次に、付加価値の分配についてです。ここには大きな課題があります。R&D(研究開発)費用は1992年を基準にほとんど増加しておらず、売上高も横ばいか微減、従業員の給与も増えていません。
驚くべきことに役員報酬すら減少傾向にあります。それでは稼いだお金はどこに行っているのか。答えは明確です。ほとんどが株主への配当に回されています。
企業で稼いだ利益が従業員や役員、さらには研究開発に還元されない一方で、株主だけが大幅に恩恵を受けている現状は、企業の健全な成長を妨げています。「誰のための会社なのか?」という疑問が湧いてきます。今のままでは企業経営者も労働者も、やりがいやモチベーションを感じにくい状況です。
日本が抱えるこれらの課題にどう向き合うかが、未来の経済成長と持続可能性を左右する鍵になるでしょう。
(山田さん)
次に、日本の国際収支について触れたいと思います。これを見ると、いくつか重要な点が浮かび上がります。
まず、日本は「貿易立国」と言われてきましたが、それは2010年までの話です。それ以降、日本の貿易収支は赤字が続いています。つまり、国内で製品を生産し、海外で販売して利益を得るというモデルは、現在ではほとんど機能していません。
では、日本の国際収支がなぜプラスになっているのか。それは、日本企業が海外に進出して稼ぎ出した利益です。日本の企業は、国内で調達した資本を海外に投資し、関連会社や子会社で利益を上げています。
問題はこれらの利益が国内に還元されず、海外で再投資されている点です。たとえば、日立製作所は売上と利益の6割以上を海外で上げていますが、その利益の多くは海外で再投資され、現地の雇用に使われています。結果として、国内の従業員の賃金増加にはつながっていません。
一見すると、日本企業の連結決算では大きな利益が出ているように見えます。これは本社が東京にあり、すべての利益が本社に集約されて計上されるためです。しかし、実際のキャッシュフローは海外にあり、海外市場で回っているのが現状です。
このような構造を踏まえると、日本の経済政策や賃金向上の議論において、国際収支の仕組みや海外投資の影響をより深く考える必要があります。
私たちは「グローバル化」についてよく語りますが、そこで重要なのは「誰のための仕事なのか」という点です。日本は稼ぐべき分野であるサービス収支でも、赤字が続いています。この原因の一つがプラットフォーマーの存在です。
日本はコンテンツ大国と称され、たとえばポケモンをはじめとする世界的に有名なコンテンツの上位20作品のうち、半分が日本由来だと言われています。しかし、それらのコンテンツはサービス収支にほとんど貢献していません。なぜなら、プラットフォーマーが収益の3~4割を持っていくからです。
たとえば、日本人が一生懸命作ったコンテンツが、海外のプラットフォームを通じて日本人に販売される際、30%もの手数料が差し引かれます。さらに、外資系のコンサルティング会社に業務を依頼する場合、日本の従業員が生み出した価値が最終的に海外の本社に吸い上げられる構造になっています。
このようなプラットフォームの仕組みは、莫大な収益を生み出します。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)の事例を見ると分かるように、彼らはコンテンツそのものではなく、プラットフォームの管理や決済で利益を得ています。
コンテンツはリスクが高く、成功するかどうか分からないため、プラットフォーマーはその負担を負いません。一方で、プラットフォームの収益構造は安定しており、リスクが低いのです。
たとえば、NVIDIAは大量のデータ解析に特化したプラットフォーマーであり、Appleはスマホとそのエコシステム、Googleは広告を中心としたプラットフォームで収益を上げています。このような構造が高度に研究され、彼らの収益基盤を支えています。
この仕組みを理解し、今後の日本の産業構造について考えることが必要です。
よく「GAFAMに学べ」とか「日本もプラットフォームを作ろう」と言われますが、現実的にこれは難しい話です。アメリカの金融資本やデジタル資本の規模は圧倒的で、日本が同じ道をたどることは非常に困難です。
では、日本はどうすべきなのか。やはり、日本が得意とする分野に注力すべきだと思います。たとえば、ロボット産業はこれまで日本のお家芸とも言える分野でした。
日本人は「実物」を扱うのが得意であり、世界的にも評価されています。この強みをさらに高度化し、人手に頼らず付加価値を生み出せる技術を開発すべきです。
また、素材産業も日本の強みです。中国が何十年もかけて模倣しようとしても追いつけない分野であり、これをさらに伸ばすための研究開発が必要です。ただし、問題もあります。たとえば、シリコンに代わる新素材として注目されるトポロジーや磁性体の研究がほとんど進んでいないのが現状です。
これらの基礎研究を放置してしまえば、10年後、20年後に「なぜあの時取り組まなかったのか」と後悔することになるでしょう。「日本はしっかり準備していた」と言えるように、今から研究開発を強化していくべきです。
では、どうすればよいか。1つのモデルとして、企業の配当に関する仕組みを根本的に見直す必要があります。
(山田さん)
現在、日本企業では利益の多くが株主への配当に回され、従業員の賃金や研究開発費への投資が抑えられている状況です。たとえば、株主への還元が利益の100倍にも及ぶケースもあり、R&D(研究開発)への支出が増えていないのは明らかにおかしいです。
提案として、配当額をあらかじめ5%など一定の水準に設定する仕組みを導入してはどうでしょうか。この水準は金利よりも少し高い程度で十分です。その代わりに、残った利益を人材への投資や研究開発に積極的に使います。これにより、付加価値の創出を加速させ、企業の将来の成長を期待するキャピタルゲインを重視する仕組みに変えるのです。
現在のように、短期的な株主還元を優先する資本政策では、労働者の賃金も研究開発投資も増えず、会社の成長が阻害されます。短期的な利益確保ではなく、長期的な成長を見据えた経営が必要です。
従業員への給与についても、最低限の生活を保障する水準に加え、貢献度に応じた手厚い報酬を与えるべきです。これを投資とみなすべきであり、人を「コスト」として扱う発想を改めなければなりません。たとえ赤字であっても、将来の成長を見越して優秀な人材に報酬を支払う仕組みが必要です。
「103万円の壁」の見直しや減税政策も重要ですが、それだけでは手取りの改善は限られています。給与が毎年確実に増えていく期待感を持たせることが何よりも重要です。
そのためには、企業が株主還元を最優先する構造を変える必要があります。配当は5~10%の範囲に収め、それ以上の還元を行わないという考え方を取り入れるべきです。高配当を求める風潮に流されるのではなく、企業が従業員や研究開発に積極的に投資する社会を築く必要があります。
私は政治家が特定の会社を応援するべきではないと思っていますが、さくらインターネットの田中さんとともにNVIDIAなどの企業から学ぶべき点について議論してきました。たとえば、「利益はすべて成長の原資に回します。それで良いと思う株主と付き合っていきます」という姿勢が非常に参考になります。
キャピタルゲインを通じて企業の価値が倍増すれば、配当を受け取るよりも株主にとって大きなメリットがあります。そのため、中長期的な視点を持つ株主をどうやって引きつけるかが、企業経営における重要な課題です。これをしっかりと行わない限り、企業も社会も「奴隷」のような構造に陥ってしまいます。
さらに、海外への投資が利益を生むこと自体は重要ですが、その利益をどう国内に還元するかが問題です。現在の状況では、海外で得た利益が現地で再投資され、国内にはほとんど還元されていません。これは、日本が「世界の雇用を生み出すボランティア国家」のようになっている現状を物語っています。
たとえば、日本人のエンジニアが設計・開発した技術を基にして、海外で高品質で安価な製品が製造されていますが、その利益が日本の従業員の給与に反映されることは少ないです。これは非常に不自然であり、改善が必要です。
海外工場の利益を国内に還元する仕組みがほとんどなく、国内部品の供給に留まる場合が多いです。国内の基礎を支えるエンジニアや労働者に利益を還元する構造を構築しなければ、国内産業の持続可能性が失われてしまいます。
ものづくり企業は、自社の基礎を支えてきた国内の技術者や従業員に対してしっかりと報酬を与え、国内経済を活性化させる視点を持つべきだと強く感じています。
今日のまとめ
(山田さん)
話が白熱してしまいましたが、最後にまとめたいと思います。メッセージはとてもシンプルです。
(山田さん)
こども家庭庁が少子化を解決することはできません。
こども家庭庁の役割は、現在の子どもたちやこれから生まれる子どもたちへの支援を提供することにあります。これは非常に重要な役割ですが、それだけで少子化問題を解決することはできません。私が特にこども家庭庁に求めたいのは「命を守る」という基本に立ち返ることです。
少子化対策は、私にとって「産業政策」そのものです。子育ての負担軽減だけでなく、現在いる子どもたちを大切にする姿勢を社会全体で共有する必要があります。
そして、結局のところ「手取りを増やす」ことが少子化対策の本質だと考えています。なぜなら、将来に希望が持てないことが結婚や出産を躊躇する最大の理由だからです。
たとえば、時間単位の賃金が高く設定されれば、週3日だけ働いても生活できるという余裕が生まれるかもしれません。しかし、現状では部品のように扱われ、賃金が意図的に抑えられているのが実態です。
さらに、人口が減少し8000万人規模になれば、輸入超過に陥る可能性があります。その際、付加価値の高い輸出を強化しない限り、国富は海外に流出してしまいます。
最終的に重要なのは「若者が日本の明るい未来を感じられるかどうか」です。高齢者へのサポートももちろん重要ですが、その原資を稼ぎ出しているのは現役世代と次の世代です。
もしこの人たちが「自分たちの未来は明るく、現在の高齢者よりも良い生活が送れる」と感じられないのであれば、世代間の支え合いは成り立ちません。
高齢者が受け取るものが「100」だとすれば、現役世代や次の世代は「120」を得られるという期待が必要です。現状が「80」や「90」では、支えるモチベーションは生まれません。この点を踏まえ、若者が明るい未来を信じられるような経済成長と、リスクを取れる政府が必要だと思います。
また、障害を持つ子どもが生まれる可能性や教育費の負担など、将来に対する不安が解消されなければ、子どもを持つ決断は困難です。リスクが軽減され、子育てしやすい環境が整わなければ、少子化は解決しないでしょう。
結局のところ、産業そのものが高い付加価値を生み出し、明るい将来を見据えられる状況を作らなければ、結婚や出産は難しいというのが私の考えです。
(小寺さん)
山田さんのお話に非常に共感しました。リスナーの方からも「今の子どもたちを幸せにすることが未来への投資だ」というコメントをいただきましたが、まさにその通りだと思います。
たとえば、今15歳の子が「自分はこの国や地域に大切にされている」と感じながら成長し、25歳になったときに「この国で子どもを産みたい」と思えるようになる。そういったサイクルを作ることが、少子化対策にとって重要です。
また、山田さんが最後に熱く語られた部分についても多くのリスナーから「分かりやすい」というコメントをいただきました。その内容をぜひツイートや切り抜き動画として拡散していただければと思います。特に、わかりやすい図やスクリーンショットを活用していただければありがたいです。
(山田さん)
私自身、表現の自由や子ども政策に取り組む中で、産業政策を重視している理由は明確です。それは、表現を担うクリエイターたちが「楽しく、明るく、それで食べていける」環境がなければ、文化も産業も続かないからです。
また、どんな社会にも不満や不安はありますが、それ以上に「明るい未来」を期待できることが大切です。「やっぱり日本で良かった」と誇れる社会を作りたいと思っています。
労働者を部品のように扱い、コストとしてしか見ない企業や社会の発想は改めるべきです。生み出した利益をただ株主に配当するのではなく、人材や研究開発(R&D)への投資に振り向けるべきです。剰余金を分配するだけでなく、未来の成長に向けた資金の使い方に重点を置くことが必要です。
与党の政治家として、私は自分が発言したことに責任を持って行動していきます。ものづくりや付加価値の高い産業政策、デジタル化、そして子ども政策を全面的に推進するつもりです。少子化対策が具体的な成果を上げるにはまだ課題がありますが、これからも努力を続けていきます。
今日の配信では多くの方に共感いただけたようで、非常に嬉しく思っています。もし気に入った部分があれば、ぜひ拡散や「いいね」をいただけると励みになります。また、身近な方にもシェアしていただければ幸いです。それでは、本日はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました!