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【第497回】このままでいいのか?刑法175条〜表現の自由とわいせつ規制〜(2022/06/01)【#山田太郎のさんちゃんねる】文字起こし風要約

出演者:

  • 山田太郎 参議院議員・全国比例 公式サイト Twitter

  • 小山紘一 山田太郎さんの政策担当秘書・弁護士 Twitter

  • 萌生めぐみめぐみ アシスタント・イラストレーター Twitter

文字起こしなんて読んでられない、要約だけ確認したいという方は↓こちら↓へどうぞ。

今回のさんちゃんねるについて

めぐめぐ:
 みなさんこんばんは山田太郎のさんちゃんねるの時間です。この番組は、表現の自由をめぐる問題をはじめとして、さまざまな政治的な話題について、一緒に考えていこうという目的でお送りしております。

 本日の特集は、刑法175条について取り上げていきます。ぜひともチャンネル登録・いいね・コメント・実況ツイート等をよろしくお願いします。

山田さん:
 ということで、今日は刑法174条と175条について取り上げていきたいと思いますが、最近175条に関する事件、特にまんだらけのビニ本書類送検がありまして、今警察等の取り締まりが非常に厳しくなっているということなので、今日はこの刑法175条に関して、真正面から何が問題・課題なのか。

 まず結論から言うと、私自身は表現の自由を守るという立場から、この175条についても反対と思っていますけれども、その内容を今日はできるだけ詳しくやっていきたいと思っています。では、ニュースからいきましょうか。

ニュース まんだらけ、ビニ本販売疑いで社長らを書類送検

山田さん:
 ということで、これは後で特集ということで取り上げたいと思います、では次。

ニュース 国連高官、中国ウイグル自治区視察で批判続出

山田さん:
 引き続きもう1つニュース、関連もありますので。

ニュース 国連特別報告者に中国から20万ドルもの献金

山田さん:
 ということで、ちょっとウイグルと中国の関係。特に欧米はウイグルの問題について非常に批判もしていますし、私も中国のやり方はちょっと問題があると思っているんですが、国連特別報告者がなんと中国からお金をもらっていたという記事まで出てきて、国連の特別報告者って何なのだろうと言わざるを得ない。

小山さん:
 今回取り上げたのは、1人は人権高等弁務官で国連の職員そのものという方で、もう1人は特別報告者ということで、国連そのものに属しているわけではないという立場だと思います。

 我々も国連の取り組みはすばらしいと思って、こども庁とかも国連の取り組みをベースとしてやっている部分もあれば、国連というのは必ずしも全て信用できるかというと、そうではないですよと部分が出てきたんだろうなというのが、この2つのニュースだと思っております。

トピックス 月曜日のたわわ問題続報

山田さん:
 月曜日のたわわが国連機関に抗議を受けた問題を追い続けているんですけれども、回答がありましたので小山さんに説明してもらいます。

小山さん:
 はい、UN Womenが日経新聞の月曜日のたわわの広告掲載が、アンステレオタイプアライアンスの規約違反だと言って一方的に非難をしたというのがございまして、アンステレオタイプアライアンスには内閣府がサポーターとして、外務省がノミナルサポーターとして名前が載っています。

 それを見ると、外務省や内閣府としてもそのUN Womenが言っていることは、日本政府も賛同していると取られかねないものとして、非常に問題があるのではないかと思っておりまして、そもそも規約違反があったと日本政府は承知しているんですか?ということを聞いたら、いや規約をもらっていないので分かりませんと。

 我々はちょっとそれはおかしくないですか?ということで、規約を取り寄せてくださいと、内閣府に対してUN Women日本支部にお願いをしたところ、UN Women日本支部からは出せませんとの回答。

 その後外務省に対して、日本支部が出せないというので、国連本部のUN Womenの方にも、資料の提供をお願いしましたが、UN Womenからも出せない、そういうものを取得できる手続きは国連にはないということです。

 まずこの点について、日本の情報公開制度のようなものは国連にはありません、国連が出す情報というのは(どれを出すか出さないかは)恣意的に決められますと、何かしっかりとした基準はないという回答でした。

 では国連における手続きの透明性や意思決定の公平性、日本でいうと行政手続法などがありますが、そのようなものは国連はあるんですか?と聞いたところ、国連の機関ごとに手続き規則が存在していますということで、ではどんなのですか?と追加で聞いたんですが、個人情報の保護とか秘密とかで、そういう規則は出してもらえないというのが、現時点での回答、もしかしたらあるかどうかもわかりません。

山田さん:
 まずおかしいのは、規約違反だと言っているんですが、じゃあどんな規約なのかは秘密。これは外務省も問題があると思うんだけれども、外務省はこれをサポートしているんだよね、男女共同参画として内閣府がサポートしている。

 ということは同じ枠組みに入っているんだから、その内閣府も男女共同参画もその規約は持っていなきゃいけない、そうだよね?何でサポートを国としてしちゃったの?という問題、責任も追及されちゃうと思うんだよね。その規約を出せないって、何で出せないのかというのは聞いたの?

小山さん:
 UN Womenに照会したところ、その規約はUN Womenと加盟企業との二者間の合意文書であり、第三者に共有できる性質のものではないと。

山田さん:
 そしたら第三者に規約違反だということもおかしいんじゃないの?というのもあるし、規約というよりも守ってくださいという運動なんでしょう?みんなこういう規約に基づいてアンステレオタイプにならないように守っていきましょうと、どんどん僕は出した方がいいと思うんだよね。

 これはぶっちゃけ、ちょっと穿った見方をすると、まず規約がない、あったとしても、違反の箇所がわからない、そう取られかねないよね。

小山さん:
 手続きのやり方を教えてもらったんです、アンステレオタイプアライアンスにどうやって加盟するのかを。入りたいですと言うと、UN Womenの本部から規約が来ます、それに署名して、お金を振り込んだら入れますという流れだそうです。

山田さん:
 じゃあうちも入る?(笑)

小山さん:
 うちが入れるかどうかはわかりませんが、何か団体を作って入れるのかもしれないんですが、ちょっと金額がお高かったので…。

山田さん:
 入れなくても例えば入る意向とか、他にも紹介したいからその規約見せてくださいといって、それは見せられませんって怖いよね?契約したら見せてやるって規約はありなの?

小山さん:
 申し込んでお金を払う段階になったら見せてあげるみたいな感じにしか今は捉えられない。

山田さん:
 国連のある組織が、日本のある民間企業に対してプレッシャーをかけたということなので、ましてや国連の方の不祥事が続いているんだけれども、これは国連の構成メンバーの1つである政府自身も、しっかり国連に対して言っていかないと、ちょっとおかしいんじゃないのって思いますよね。

 だって民族浄化の隠蔽を(国連の)特別報告者がしちゃったんだよ、それはダメというか、もう国連の権威は失墜しちゃったでしょ、恐ろしいことだよね。

小山さん:
 どこかでいろんな力が動いて、国連の担当者の行動って結構左右されていると思うんです。特別報告者は経済的基盤がないから、寄付もらわないとやってられないぐらいのことを、国連の方が言ったみたいな話も出ているんですが、そうであるならばもうちょっと…。

 中国に関して何かするときに中国からお金をもらうとか論外だと思いますし、他の仕組みをちゃんと考えれば、日本は相当拠出金を出しているんですけれども、その拠出金がどう使われているんですか?というのは答えられません、みたいな話もあって。

 UN Women日本支部はどういう資金の流れなんですか?と聞いても、それはお答えできませんみたいな話になるので、決算とかもたぶん、ちゃんとしてないんじゃないかなと。

 我々が心配しているのは、国連は良いことはかなりやっていますので、国連自体を否定するものではないんです。ただこういうところを直していかないと、せっかく国連を中心とした、これまでの良い取り組みも否定されるんじゃないかという懸念があります。

 特に今回のアンステレオタイプアライアンスみたいな話になると、この表現はダメですと国連が決めて、それで日本の企業に国連から文句がきて、そこには日本の外務省と内閣府が賛同していてマークも入っています。

 これは日本政府もダメだと言っているんだなという話になる可能性もあり、それは憲法に違反しないんですか?と、ダイレクトに規制をかけていることになりかねませんので、今ちょっと外務省・内閣府とは引き続き協議をしているところです。

山田さん:
 国連と共同で世界の平和だったり、人権という問題を何とかしていこうという枠組みは、僕は絶対必要だと思うけれども、これだけ信頼を失ってしまうというのはまずいし、構成メンバーの一員として日本政府も言うべきことは言うべき。

 それがUN Womenみたいに規約も出せない、代表や担当と連絡も取れない、ちょっとその後どうなったか分かりませんけれども、これは我々、結構うちはしつこいので、改めてまた追っていきたいと思っています。

特集 このままでいいのか?刑法175条〜表現の自由とわいせつ規制〜

山田さん:
 最初のニュースのとおり、まんだらけビニ本書類送検というのもありましたけど、最近これ以外にも175条でいろんな取り締まりが強化されているのではないかということで、この175条に関して改めて取り上げて、我々のスタンス等についてもはっきりさせていきたいと思います。

 まず「わいせつ」というのがどう議論されてきたのかということを、まず紐解きたい、それから「わいせつ」の定義、それに法的な根拠を与えていると言われる、私はこれに法的根拠があるのかわからないとという立場ですが、174・175条の問題。

 それから表現の自由というのが憲法21条で認められていて、一切の表現はこれを保障するということになっているんですけれども、これと最高裁の判決というのがいくつかあって、憲法12条13条との間でぶつかっているといった問題。

 それから法的根拠として性道徳とかゾーニングとかポルノグラフィー規制といった考え方もありますし、最近はジェンダー論という、男女の性に対して非常に厳しい見方をされているんですが、このポルノグラフィー規制みたいな話。

 それから罪刑法定主義の考え方からどうあるのかというあたり、ちょっと多方面にわたって、時間が許す限りやっていきたいと思っています。

 ではまず、これまで日本で「わいせつ」というものがどういうふうに議論されてきたのか、それぞれの判例から見てみたいと思いますが、まず175条違反をめぐる事件としてはこんな感じです。

小山さん:
 サンデーブラック事件は新聞。
 チャタレー事件は小説。
 悪徳の栄え事件も小説。
 四畳は書籍といいますか。
 6番目が結構衝撃的だったのは漫画です、コミックです。
 7番目は3Dデータということで、造形物です。

 この中で一番これまで影響を与えている判例と言われたのは、チャタレー事件ですね。これは後で取り扱いますけれども「チャタレイ夫人の恋人」こちらがわいせつだということで、有罪となっていますが、もちろんこれ以外にもたくさんあります。

小山さん:
 こちらは無罪事例。

 黒い雪事件、こちらは映画です。愛のコリーダ事件、これは映画を日仏合同で作って、かなり露骨な性表現もある映画だったんですが、日本の場合は性器が映っていれば全カットで、その映画を書籍化したときのものが問題視されました。

 日活ロマンポルノ事件は映倫を通していたものが摘発されて、結局は無罪となったんですが、あと民事事件としてメイプルソープ事件という、性器が写っているのが良いのか悪いのかという話がありました。

 近年の動きをざっと。春画が日本で公然わいせつになるのか、わいせつ物の陳列になるのか、そういうところにつきましては、結構危ないとずっと言われていたんですけれども、ロンドンの大英博物館、こちらも1960年代まではシクレターム(秘密)と呼ばれる部屋に春画を保管して見えないようにしていたのが、2013年に展覧館が開催されました。

 世界で春画が美術として高評価を得るようになると、ようやく日本でも美術館で春画の展覧会が、2015年に東京の永青文庫で企画展が開催されるようになりました。

 その直後にろくでなし子事件というのもありまして、デコまん3点を女性向けアダルトショップ店内に展示していたとして、わいせつ物公然陳列の疑いで、北原みのりさんとともにろくでなし子さんが警視庁保安課に逮捕されました。

 作品自体、立体作品の陳列は無罪となりましたが、3Dデータを配布したことについては、わいせつ物頒布等の罪で有罪、罰金40万円というのが近年のざっとした流れです。

 どのあたりが気になるのかというと、最初は小説が問題だということで、文字がもともとアウトだったんですが、そこで作られた基準が今でも生きています。

山田さん:
 いわゆるわいせつ3要素とういうことが最高裁の方で判決の前提として書かれていますが、実はこのわいせつ3要素は戦前からあったんですね。

小山さん:
 刑法175条にわいせつとは「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」ということで、かつて言われていたものを引き継いだ形だと推定されてます。

小山さん:
 さらに175条と174条がそもそもどんな規定なのかというのを見ていきたいんですが、これは児童ポルノ禁止法などと違って、わいせつなものを単純所持することは別に処罰されません、私的に持っている分にはいいんです。

 ただ公然とでしたり、有償で頒布する目的。これは無償で誰かにあげる場合などは含まれないと読めるんですけど、ただ公然性というところが非常に広く認められますので、なかなか難しいところではあります。

山田さん:
 2年以下の懲役、250万円以下の罰金となりますので、結構重たい罪ですよね。

小山さん:
 対比すると軽いのが公然わいせつ174条です。6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金、露出狂みたいなのは174条違反です。目の前で性器を見せられたりした場合、心理的には結構恐怖を覚えると思うんですけれども、174条の適用しかなければ、6ヶ月以下の懲役です。

 しかしわいせつなものを何か、有償目的で持っているとか頒布しちゃったらはるかに重い、2年以下の懲役になるので、刑罰の均衡はどうなんだみたいな話もあります。

山田さん:
 これどう思う?実物を見せられるよりも頒布する方が圧倒的に罪が重い、そういうことだよね?簡単に言うと。

 これ個人法益か社会法益かというと、明らかに社会法益なんですよね。個人を守るというものではなく、性に対する道徳というのがものすごく強調されているというか、それを目的としている、個人法益じゃないから自分のものを頒布しても罪になるんです。

小山さん:
 伝播可能性というか、露出狂はその場でしか見えない、ただ画像データとかは広がっちゃう、そっちの方が性道徳としては悪影響だという考えなのでこういう刑になっているって言われますけれども、それにしてもという感じはします。

小山さん:
 構成要件などを見ますと、結構怖いのは視覚により認識できる状態だけではなくて、聴覚により認識できる状態というのも含みますよと、わいせつな音というものがあれば、公然陳列に当たる場合があります。

小山さん:
 175条2項は有償で頒布する目的でということで、もともと販売の目的と言われていたんです、平成23年までは。これが改正されたので、レンタル目的もダメ、ストリーミングとかも当然ダメ、最近だとパソコン関係で電磁的記録の保管で摘発されている事例も結構あります。

小山さん:
 こちらは175条違反、年間でどれぐらい検挙されているか、これ(↑)は警察庁の発表で、法務省の発表(↓)もあります。

山田さん:
 本題はここからなんですけど、まずわいせつの定義って何なのかというところを少し見ていきたいと思います。

山田さん:
 まず、わいせつ3要件というのは、チャタレー事件ではっきりしてるんですけど、これはAND(すべての条件を満たす)です。だから見て性欲を興奮または刺激しなきゃいいんだ?

 それから普通人の正常な性的羞恥心を害しというのも、普通人って誰のこと?ノーマルな性的羞恥心って何?

小山さん:
 いわゆるフェティシズムに目覚めた特定の人とかではないということだと思います。

山田さん:
 じゃあフェティシズムはOKなんだ?

小山さん:
 ただそこも山田さんが児童ポルノの時指摘してましたけど、普通人は児童ポルノで興奮しないだろうと、結構論理矛盾を起こしかねない定義で、あと何を言ってるか分からない。

山田さん:
 性的羞恥心を害するって、それは見た人の幅がすごいよね?性的羞恥心って何?よく分かんないよね。もっと分からないのは、善良な性的道義概念って?善良とか性的道義概念って何?ある種恣意性というか、怖い法律だよね。

小山さん:
 法治国家としてこんな定義でいいのかというのと、これのせいで警察は好き放題判断をしていますという、ちょっと警察の人には失礼な物言いかもしれませんが。

山田さん:
 だから実物だろうと絵だろうと、それに興奮して羞恥心を害して何か性的道義概念に反すると言われちゃったらもうわいせつなのだっていうこと。

小山さん:
 ただチャタレー事件で大事なポイントになる、芸術性とわいせつ性は別の次元に属する概念であり、両立し得ないものではない、高度の芸術性といえども作品のわいせつ性を解消するものとは限らない、いわゆる「絶対的わいせつ概念」というのをこの時点では採用しています。

 芸術性があろうが、わいせつだと判断されるものだったらダメよと、芸術的だから許してという言い訳は通用しないよという話です。

 ここは後ほど変わっていくところなんですが、やはり表現の自由に対する萎縮効果がすごく大きいんですけれども、わいせつ性の存否は、当該作品自体によって客観的に判断すべきものであって、作者の主観的意図によって影響されるものではない。

 つまり作者がわいせつじゃないと思ってても、裁判官がわいせつだって言ったらわいせつなんです。

山田さん:
 だから客観的に判断で線を引くと、裁判官がそうだと言ったらそうだってこういうことなんです。

小山さん:
 その客観というのは、普通人がどう考えるかを裁判官が決めます。ここから派生して、今回のビニ本事件にも繋がるんですが、皆さんわいせつかどうかってを判断するときに、性器の露出があるかどうかが大事な基準だとされているんですけれども、このわいせつ概念を読んでも出てこない判断基準です。

小山さん:
 結構何を言ってるかわからないんですけれども、要するに性行為は性器も含めて公然のものであってはならないと。

山田さん:
 何で公然のものであってはいけないのか。これは児童ポルノ禁止法の時も議論があったんだけど、性欲とかそれによる興奮はいけないことなの?自制できれば良いんだよね?相手に迷惑をかけていなければ、まず内心の自由としてエッチなものを見て興奮することって何の問題もないし、それは正常な状態だと思うんだけど。

小山さん:
 私もそう思うんですけれども、裁判官がこんなことまで言っているということで、普通人の正常な性的羞恥心を害するというのは、性行為の非公然性に反することだと、これもいろいろ解釈の余地があると思うんですけれども、性器が露出しちゃダメよというのはここに由来しているのではないかという説が結構強い。

 その前にも、未開社会においてすらも性器を全く露出しているような風習は極めて稀だと、人間性というのは性器を隠すものなんだ、性行為を公然とするのは人間性に反するんだと。

山田さん:
 だから性器を見せることは人間のやることじゃねえと言ってるわけです。

小山さん:
 ただ、今は性器が見えなきゃOK、見えたらOUTという線引きなんですけれども、ヘアヌードは解禁されたという話がありまして、結構最近まで女性のヘアヌードを見せるのもダメだという基準がずっと続いていたんです。

 その前はおしりはダメ、乳首もダメみたいな話がある中で、どこまで出していいのかというのは、その後改定されてきたという流れがありますが、やはりいまだに性器そのものはダメというのが強い。

山田さん:
 これ難しいのは、最高裁の方で性行為の非公然性と言っちゃうと、例えば性器を隠していたとしても、本番であろうと芝居だろうと性行為の非公然性に反しちゃっている、漫画とか写真とか映像とか動画とか、小説で書かれていたとしてもダメだった。

小山さん:
 今度は相対的わいせつ概念というが、今は採用されているというのが通説です。

山田さん:
 さっきは芸術性なんて関係ないという絶対的わいせつって言ってたのに、ここでは芸術性とか思想性があればいいのだというふうに変わってきちゃったということね。

小山さん:
 刑法175条の定義自体は変わらないんですけども、今はこれで取り締まりされています。

小山さん:
 今回のさんちゃんねるの前に、念のため法務省と警察庁にわいせつについて政府の見解を示してくれと言ったところ、結局はチャタレイ事件で示された3要件というものを、法務省も警察庁も示しています。

小山さん:
 いろいろちょっとおかしくないですか?というのが今日の本題なんですけれども、関連法令…。

山田さん:
 わいせつな問題を考えるときに議論されるのは、憲法21条の表現の自由ということで、第1項の集会、結社及び言論出版、その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 一切の表現の自由にわいせつ表現も入るのではないか、これを保障しているにもかかわらず、刑法で取り締まられるのはおかしいということなんです。

 チャタレイ事件の時にどういう形でもって最高裁はこの判決を出しているかというと、憲法12条・13条が21条とぶつかっているのであって、必ずしも21条は絶対ではないのだということを最高裁は言ったんです。

小山さん:
 かつて性表現は有害な表現であって、憲法上保障されないという話も確かにありましたが、今はそうではない、性表現であったとしても、憲法21条1項によって保障されているんだということは、たぶん通説でもそうだと思います。

 確かに最高裁が言うとおり、憲法12条とか13条で公共の福祉って書いているでしょと、憲法上保障されるとしても、公共の福祉に基づく必要最小限の制約は確かに受けます。では、その必要最小限の制約はどこまで許されるのかというのが次の話です。

山田さん:
 これで問題なのは、公共の福祉とは何なのかということも非常に恣意的に判断されかねないというのと、わいせつ表現がいわゆる表現の自由として保護されるものなのかということ。

 昨今の判断でわいせつ表現も、表現の自由としての保障を受けるべきだということで、芸術性云々という以前に、わいせつも表現の自由そのものなのだという議論もあって、実をいうと今揺れているということなんです。

 では仮に、わいせつが表現の自由の保護領域であったとしても、今度は何でもわいせつ表現をしていいのかというと、今度は12条・13条の公共の福祉とぶつかってしまう、では、はたしてチャタレー夫人は公共の福祉に反したんですかと。

 もう1つ規制根拠というのが3つあると言われている。
 1.性道徳の維持という考え方
 2.それからゾーニング規制
 3.それからポルノグラフィ規制
 この3つが論点になります。

 性道徳の維持というのは、そういうものを見ると人はダメになるんだとか、性風俗を清潔に保つため、例えば街の外観維持とか、これが公共の福祉なのだという考え方があります。

 でもこれは道徳なのだということで、性道徳の維持、道徳的観念からこの規制根拠を求めるというのは、実はちょっと厳しいだろうという議論がありますし、僕もそれを基本方針にしたいと思います。

 それから昨今、やはりゾーニングの問題ということで、教育的見地だとか、青少年に見せたくないとか、R指定があるというのは、あれは教育的配慮ということでゾーニング規制といった問題があります。

 これが特に僕は子どもの権利、子どもが大人と同じように見る権利、知る権利、見たいものを見る、やりたいことをやるという権利があるでしょ。

 何で子どもだとダメなのかということなんだけれども、それについてはこれからたぶん、こどもの権利基本法という議論を始めているから、論点になる可能性はあると思っています。

 もう1つはポルノグラフィ規制というのが最近議論になっているところ、性的搾取であるという考え方も、ポルノグラフィ規制の1つなんだけれども、性的搾取って何よと、気に入る・気に入らないということなのであって、誰がどう搾取されたのかという話だと思うんですよね。

 ということで175条のわいせつに根拠を与えるのはまだまだいろいろな議論がある中で、実はかなり不安定な3要件がずっと、チャタレイ以来支持されていて、今も警察も裁判所等もそれを支持しているということです。

小山さん:
 ただ公共の福祉とは何かということを言われたときに、よく言われるのが、人権相互の矛盾対立を調整するための原理ですと、そのときに公の秩序とかを持ち出したら、それは13条の概念を破壊する話なので、最高裁が言っているのはやっぱり私はおかしいと思うんです。

 やはり人権のぶつかり合いのときに調整するのが公共の福祉なのであって、財産権とか人の生命とかの総体的なものも守るときに、個人じゃなくてそれは社会として守りましょうという、社会的公益なんですけれども、今回の社会的法益というのは道徳的な話なんです。

 性道徳なんかを守るために公共の福祉を持ち出したのは、最高裁としては明治憲法以来の考え方を捨てられない裁判官の方々だったのかなと失礼ながら思ってしまいます。

山田さん:
 私は立場としては憲法を最大限に尊重しなければいけない、国会議員ですから。一方で憲法をより良いものにしていくために発議するということもできる。

 憲法に対する解釈を立法府の人間として、もちろん三権分立ですから、尊重しつつも議論をするということはぎりぎりできるんじゃないかなと思っています。

 一切の表現の自由はこれを保障するというのは、誰も傷つけないのであれば、社会秩序として、国家によって一方的にそれは罪だと問われることはない。

 相手を傷つけたり、誰かに害を与えれば、当然、結果としての責任になるかもしれないんだけれども、社会秩序に基づいて表現が規制されるということは、日本の最後の表現の自由の砦だと思っていますから、どんなことになっても21条は変えさせないつもりです。

小山さん:
 あと31条について、罪刑法定主義と言われているものでして、手続だけやればいいですよと書いてあるようにも読めるんですけれども、ちゃんとした内容の法律を定めなさいとも読めます。

山田さん:
 つまり曖昧だったらだめよという話、今回のわいせつの定義はあいまいでしょと、恣意性も高いし。法律で人を裁く、あるいは自由を奪われる刑罰を科すのであれば、しっかり明示しなければならぬということです。

小山さん:
 やはり基本的にはわかりにくい法律はダメよと、不明確な刑法は無効ですよと、憲法31条でダメという話が1点。

 さらにわかりやすい法律であっても、過度に広範に処罰するようなものはダメよという話がありまして、いろいろ31条違反で無効になるものがあるんですけれども、刑法175条はまさに憲法31条違反になるんじゃないかと言われていまして、私もそうだと思っています。

 ただこれまでは、なかなか21条に違反するというところも最高裁は認めてきませんでしたし、31条の違反なども認められてこなかったというのが175条で、なぜかよくわからないけれども、今は性器さえ写っていなければいいというよくわからないルールになっている。

 法律は変わっていないのに、警察の運用が変わり、裁判官の認識度合いもなぜか警察に引きずられて変わり、現在に至るということなんです。

小山さん:
 実は政府もわいせつの基準をちゃんと示しています。関税法上の規定なんですけれども、性器の描写が不明瞭または不鮮明であるもの、ぼやけていればいいんだと。

 さすがに政府の一体性というのがあるので、警察もこの基準からはそんなにズレないはずです。結構この関税法上の話は、意外と警察実務にも影響を与えているなどとも言われてます。

 ただ、こんなバカなことをいつまでやるんですかっていう、モザイクかけていればOKと、性行為をしていようがしていまいが性器の部分が見えなきゃいいですと、はたしてこれでいいのかと。

 国会が立法するべきところを、最高裁が示した基準を警察が勝手に判断する、これは憲法21条に明確に違反するんじゃないかという気がしております。

山田さん:
 それで今後なんですけれども、仮に性器が描かれていても誰も傷つけていないし、道徳的なものでしかないのだから、いっそ175条廃止というのは、1つの考え方としても、廃止の手続をとるのはすごく難しいとは思っております。

小山さん:
 一番ピンポイントでアウトじゃないかという運用の実態が、見たい人にじゃああげます(売ります)って渡すだけなのに、国が介入してくる。

山田さん:
 強烈な表現規制だよねこれは。だからこういうところからちゃんと解きほぐしていって、175条のバカバカしさというか、それはしっかりと問われるべき。

小山さん:
 昔は映倫の通した映画も摘発されるとか、ちょっと驚異的な取り締まりも行われていたんですけど、警察はやはりそういった業界をある程度コントロールしたいというのがあるのではないかという話もあります。

 ただ、今は個人でもいろいろ情報発信できるところに、どこまで警察がやるのかという話と、海賊版対策とか子どもの虐待事案とか、本当に警察に動いてほしい事案があるんですけれども、人が足りませんとかよく言われます。

山田さん:
 少なくともアニメーション等の事実じゃないものについて、やる必要あるのかなと、小説とかそうですけれども。

小山さん:
 この辺本当に警察資源の使い方から、やはり今の刑法175条を維持するのはおかしいのではないか、適切なルールというのは作る必要がもしかしたらあるのかもしれないけれど、刑罰を科してまでやることですかというのは、そこは明確に違うんじゃないのという気はします。

山田さん:
 タイミングを見て、時間は正直かかるかもしれませんが、表現の自由を守っていく観点から175条に関しては取り組みたい、こういう特集をやると、またわいせつ議員とかポルノ議員と言われるかもしれませんが、表現の自由というのを大前提にいろいろなものと戦っていきたいというふうに思っています。

めぐめぐ:
 日本って性教育が遅れてるのは、この175条がそういうのにもつながっているんじゃないかなって思いました。

小山さん:
 海外では性器が露出されたハードコアポルノも普通に合法なコンテンツとなっていて、日本からもストリーミングで見られるものがありますと、それなのに、今さらビニ本の摘発ですかと。

山田さん:
 だから捕まえやすいところからやったんじゃないかなと、恣意的な行政裁量なんじゃないのって言われかねないのが175条の問題点の1つです。

小山さん:
 本当に性道徳というのがこのビニ本で害されていたのかどうかというのも、本当にちゃんと考えてほしいという気はします。

山田さん:
 175条については引き続き取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います、どうもありがとうございました。

めぐめぐ:
 みなさん、今日のさんちゃんねるはいかがでしたでしょうか、ぜひともチャンネル登録・いいね・コメント、感想などを「#山田太郎のさんちゃんねる」を付けてツイッターに投稿をよろしくお願いいたします。



虹杜コメント:
 今回の文字起こしは以上です。どうか私の目が見えているうちに、175条をなんとかして欲しいと思います。今回も文字に起こす過程でカットした部分がありますので、しっかり確認したい方は是非動画の方をご覧下さいませ。

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