【第593回】海賊版対策最前線!2024年:国際執行とその成果(2024/08/21) #山田太郎のさんちゃんねる【文字起こし】
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発言者:
(山田さん) 山田太郎 参議院議員
(小山さん) 小山紘一 山田さんの秘書
今日の内容
(山田さん)
はい、始まりました。山田太郎のさんちゃんねるです。今ちょうど、海外視察中ということで、今日は、実は全編収録(録画)ということで、お送りさせていただきたいと思います。
今日は、海賊版対策の最前線ということで、先日、CODAの説明会が行われました。その中でもいろいろな議論がされましたので、そこを中心に、今の海賊版対策がどうなっているのかということを、しっかりとご報告していきたいと思います。
CODA報告会
(山田さん)
まず、CODAの報告会についてお話ししたいと思いますが、2024年7月16日に参議院議員会館の講堂でCODAの報告会が行われました。報告会では、甘利衆議院議員や赤松健さんも参加されました。このCODA、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構ですが、もともとは正規版流通をメインとしている民間の社団法人でした。しかし、昨今は海賊版対策の最前線に立っている組織だと思います。
(山田さん)
私もこの報告会で挨拶をしたり、意見を述べさせていただきました。今日はそのあたりの詳細について説明していきたいと思います。
CODAの報告会でもさまざまな議論がなされましたが、とにかく海賊版の被害額が非常に大きいということです。全体では1.9兆円から2.2兆円という相当な金額になります。これがもし、しっかりと回収できれば、日本のGDPも相当上がることでしょう。さらに、国際収支の中でコンテンツに関する赤字を解消する可能性もあります。それほどのインパクトがあるのです。
小山さんに最近の被害額の傾向について伺いたいと思います。
(小山さん)
はい、もちろん、すべての金額が権利者に直接届くわけではありませんが、違法に視聴されている金額を換算すると、これほどの金額になるだろうということです。
知的財産権の侵害額を議論するとき、正確な数値を出すのは難しいですが、正規に流通すればこれだけの金額になります。著作権侵害を行った人に対して、損害賠償のリスクもこの規模で存在することをまず知っていただきたい。
また、金額は増え続けていますが、日本のコンテンツの世界需要も高まっています。世界のコンテンツ市場も拡大しており、将来的にはさらに被害額が増える可能性もあります。そのため、しっかりと日本の権利者にお金が行き渡る仕組みを早急に作る必要があると考えています。
(山田さん)
日本がコンテンツ大国を目指す中で、海賊版のせいで資金が漏れ続けているのでは、健全な発展ができません。この被害をどれだけ減らせるかが非常に重要だと思います。
さて、CODAでの対策の報告ですが、これはNHKのニュースでも紹介されたということです。この報告会全般、どんな内容だったのでしょうか?
(小山さん)
この報告会は今年で4回目となります。山田さんが2020年の著作権法改正、これはインターネット上の海賊版対策をメインとした著作権法改正だったのですが、その時から言い続けていることがあります。
それは、「法律ではちゃんと国会で対応します。ただ、法律を変えただけでは海賊版被害をなくせないので、法律をちゃんと使ってください」と。権利者が権利を守る仕組みを作らないと、ディズニーのように「手を出しちゃいけないコンテンツだ」ということを、日本コンテンツについても世界に知ってもらわないといけません。そして、ちゃんとしたお金がクリエイターやアーティストに戻ってこないということになります。
そのため、CODAと一緒に連携して国際的な執行を進める官民連携を行ってきました。今年も後藤代表理事の方から、これまでの取り組みの成果が発表されました。また、中島弁護士からも様々な課題や、国のこれまでの対策や予算について話がありました。報告会では、これまでの振り返りと今後の展望について話し合われました。
(山田さん)
元々、CODAとの関係は微妙なものでした。表現の自由を守る立場から、CODAが海賊版対策のためにサイトブロッキングを行いたいという考え方がありました。しかし、通信の秘密や表現の自由を守れないだろうということで、当初は相当な緊張関係がありました。
サイトブロッキングについては、効果があまりないのではないかという議論もありました。ブロッキングを行ったとしても、別のルートから海賊版が出てくるからです。また、サイトブロッキングを行うと、合法なコンテンツもすべて見られなくなってしまう恐れがあります。海賊版対策が正しいコンテンツの流通を妨げる可能性があるため、非常に慎重に議論してきました。
そのため、私は違法なものについてはどうしようもない場合に限って、サイトブロッキングも手段の一つとして考えられるかもしれませんが、基本的にはやってはいけないと考えています。
このため、サイトブロッキング以外の海賊版対策を追求してきました。2019年以降、表現の自由と海賊版対策は相性が悪いものですが、私は党の中で最もこの問題に取り組んできたと自負しています。
これまでの国際執行の実績
(山田さん)
さて、これまでの国際的な執行の実績ですが、海賊版対策においては、国内よりも国際的な執行が重要な課題となっています。プロジェクトが開始されてから現在までに、対象実施国は中国、ブラジル、フランス、イタリア、イギリス、ベトナムを含む11カ国に広がりました。調査対象のサイトやアプリは68件にのぼり、サイト閉鎖に追い込んだケースも多くあります。
(山田さん)
刑事告発や行政摘発、ノックアンドトークなどによって25サイト、20サイト、そして自主的な閉鎖に追い込んだ5サイトも含め、多くの成功を収めています。また、刑事摘発による逮捕は35名にのぼり、厳しい対策が進められてきました。刑事、行政、ノックアンドトークという3つの手段を使いながら、国際的な執行を行ってきたということです。
私が2019年に自民党に来てから、この問題に対して知財調査会の中で立ち上げ、かなりCODAをサポートしながら国際執行を実現してきたということですが、このあたりの取り組みについてどうお考えですかね、小山さん。
(小山さん)
著作権者というのは、著作権侵害が行われた際に権利交渉をしたくないという人が結構います。やはり、権利交渉をすると「それくらいいいじゃないか」ということで、コンテンツホルダーにレピュテーションリスクが及ぶ可能性があると考えている方々がまだまだ日本にはいます。
そうなった時に、CODAは個社の対応だけではなく、加盟各社が集まって共同で手続きを行いましょうということになります。そうすることで、一社にクレームや批判が集中することがなくなり、権利者にとって非常にやりやすい方法になります。この方法は国内でも国外でも適用できます。
また、海賊版というのは1社だけが被害を受けることはほぼなく、複数の会社が被害を受けているケースが多いです。そのため、自分の会社だけがお金を出して他社のために手続きを行うことを好まない日本企業もあります。
そこで共同でやりましょうという流れになります。実際、アメリカでもモーションピクチャーアソシエーションという団体があり、共同で対策を進めています。日米ともに、こうした取り組みはかなり進んでいると言えます。
そして、最も抑止力が強いとされているのが刑事摘発です。犯罪行為を行った者に対して直接的な処罰を行う刑事手続きが最も効果的とされています。
次に高い抑止力を持つのは行政摘発です。これは刑罰ではありませんが、厳しい営業停止処分や行政罰が加えられる場合があります。
さらに、ノックアンドトークという方法があります。これは法的な手続きではなく、侵害者の住所や氏名がわかったら直接訪問し、ドアをノックして出てきてもらって、話をするというものです。
「やめなければ刑事摘発や民事裁判に移行します」と伝えることで、閉鎖してくれるケースもあります。また、発信者情報開示手続きが行われた場合、犯罪者に「自分は悪いことをしている」と自覚させることで、閉鎖に至る場合もあります。
つまり、権利者が動くことが何よりも大事であり、これを山田さんも2020年の法改正以降、応援してきた結果、かなりの成果が上がっていると思います。
(山田さん)
僕も自民党に来てから、相当な海賊版対策をやってきました。やればやるほど効果が出てくると感じています。それから、国際的な執行についても、まさに政府の役割が非常に大きくなってきています。政府も、私たちの方で、後で少し話しますが、サイバー警察局のようなものを含めて、本格的に国際的な執行に着手し始めたという状況です。
(山田さん)
ICPO(国際刑事警察機構)を通じた取り組みや、最近のインターポールでの海賊版対策プロジェクトとして、韓国、マレーシア、バングラデシュとの協力が進んでいます。特に中国については、CODAの役割が非常に大きいと言われており、CODAが北京に事務所を設けて中国政府と密に連携しています。その結果、中国公安当局が動き、中国での海賊版の撲滅が進んでいます。
また、MPA(モーションピクチャーアソシエーション)をはじめとする権利団体との執行や、WIPO(世界知的所有権機関)での取り組みも進行中です。WIPOは、広告に対する対策を行う場でもあり、多くの弁護士事務所が直接動いていることで、国際的な執行が行われています。
(山田さん)
その成果としては、例えばスペインでは、広告配信事業が大規模に行われていたものの、2022年に27サイトの取り下げが実現しました。ブラジルにおいても、中南米全体が非常に海賊版対策において大変な状況にあります。
特に、日本を経由しない形で海外サーバーから直接ブラジルへ海賊版が展開されており、「アニメ作戦」と称する対策が2023年に実施されました。
ブラジルの場合、マフィアが関与しているため、CODAが直接事務所を設けると命の危険があるという状況です。海賊版や麻薬の取引がマフィアの収入源となっており、これに対して掃討作戦を実施してきました。また、北アイルランドや中国でも、さまざまな摘発が行われてきました。
具体的に中国のケースは非常に大きいので、その点を含めて国際執行の成果を見ていきたいと思います。まずは、無許諾の電子辞書データ「Sora」というものがありますが、これについて簡単に説明してください。
(小山さん)
これは広辞苑などを含む様々な電子辞書のデータを、無許可で公開していた人がいたという話です。日本語辞書は37種類が自由に使えるようになってしまっていた状況でした。ただし、これは中国国内からはアクセスできないよう、ジオブロッキング(地域視聴制限)が施されていました。
従来の中国政府であれば、「中国国内では犯罪行為が行われていないから関知しない」と言われてもおかしくないような事例でした。しかし、CODA北京事務所がこの犯人を特定し、様々な手続きを経て、その犯人が居住している南京市の公安局に苦情申し立て書を提出しました。公安局は、犯罪行為を行っていた男性に事情聴取を行い、その結果、サイトの閉鎖に至りました。
(山田さん)
このジオブロッキングというのは、ある地域では見れないようにIPを制限する仕組みで、中国発の犯罪が行われていても、中国国内では見られないため、本当に中国人や中国での犯罪なのかが不明瞭になったり、「うちの政府は関係ない」という言い訳が通ったりするケースもあります。このジオブロッキングの問題は非常に大きかったのですが、今回、この「Sora」のケースでは摘発に成功しました。
次に無許諾サブスク風サイトというものがありますが、これは何ですかね?
(小山さん)
サービス自体は合法なものを使っていますが、合法ストリーミングサービスを悪用した無許諾風サイトと言われています。色々なものが勝手に見れるようになっていて、ストリーミングで何でも見られるというものです。これはいわゆるリーチサイトに近いものかと思われます。「COCO」と「深藍(シェンラン)」という2件が同時に摘発されました。
(山田さん)
このサイトでは日本のコンテンツが1000作品、2万2000話が海賊版として出ていました。やはり中国のケースは非常に大きくて「B9GOOD」に関しても、アップローダーを摘発しました。
(小山さん)
この「B9GOOD」は、かなり大きな海賊版サイトで、日本向けアニメの海賊版サイトとしては当時最大級と言われていました。このサイトを運営していた男性とアップローダーが摘発されました。アップロード行為は直接的に公衆送信権や送信可能化権の侵害となるため、中国の当局が摘発しました。
この案件では、主犯格に対して懲役3年、執行猶予3年6ヶ月、罰金180万人民元(約3800万円)の有罪判決が下されました。当時、磯崎官房副長官からも「大変画期的だ」とのコメントが寄せられていました。中国当局が刑事摘発にまで動いたことで、国際的にも注目された案件の一つとなっています。
(山田さん)
中国は表現の自由が制限されているため、逆に取り締まりを行うと徹底して強力に行われるという点があります。
(小山さん)
最近の中国の知財戦略では、AIの進展に伴い、画期的な判決が多く出てきています。つい先日も、声の権利がAIによって侵害されてはならないという判決が出ました。中国では声の人格権的なものが民法のような形で認められていると理解しています。
このように新しい判例が中国国内でたくさん出ており、権利や知財の保護を中国が積極的に行っていることをアピールしているようです。このような中国の動きとCODAの活動がうまくマッチしているように感じます。
(山田さん)
次はスペインのケースです。広告配信業者がありまして、海賊版サイトに広告を載せて収益を得ているということです。この広告配信業者をスペインで止めたということ。
(小山さん)
海賊版サイトの収益モデルは主に2つあります。1つはダウンロード型の場合で、ダウンロードにお金をかけないと速度が遅くなったり、1日に1ファイルなどの制限がかかることがあります。その制限を解除するために課金する、サブスクに近いモデルです。
もう1つは広告モデルで、広告収入がかなり多いと言われています。広告を出す側も責任があるという議論があり、スペインでは大手の広告配信事業者が海賊版サイトに広告を出していたため、弁護士が警告を出し、その結果、広告出稿を止めることにつながったというケースです。
(山田さん)
この広告の話についてですが、プラットフォーマーの問題も大きいです。誹謗中傷のようなものが広がっても、それで収益が得られてしまう場合があり、GoogleやYouTubeなどでも同様の問題が発生しています。違法なものが流されている中で、広告主からの広告が出るという問題が課題となっており、私たちも積極的に取り組んでいます。
次に、ブラジルのケースです。アニメ作戦というもので、まさにマフィアとの戦いでした。
(小山さん)
これまでは中国やベトナム、東アジア、東南アジアを中心に外国の海賊版対策を行っていましたが、中南米、特にブラジルを中心に日本のアニメや漫画が非常に人気となっています。
しかし、正規版がなかなか配信されていないため、調査したところ、ブラジルで視聴されている日本のアニメのほとんどが海賊版であることがわかりました。
そこで、ブラジル当局と協力し、404作戦、通称「オペレーションアニメ」として一斉に36の海賊版サイトを閉鎖に追い込みました。これは、CODAの職員が直接行ったわけではなく、CODAが委託したブラジルの業者が海賊版サイトの運営者の元に赴き、海賊版対策を実施しました。
報道によると、武装して非常に重装備で臨んだとのことです。単に拳銃を持っているだけでなく、より重い武器を持ってノックアンドトークを行ったという画像もあり、命がけの非常に大変な作戦だったとのことです。
サイバー警察局創設
(山田さん)
ここまでが、諸外国を含めた国際執行の取り組みです。こうした取り組みをやりやすくするために、サイバー警察局を創設しました。これも私の公約の一つで、警察庁サイバー警察局という名称ではありませんでしたが、ネット犯罪等に関する捜査機関の専門性が重要だと訴えてきました。
(山田さん)
このサイバー警察局は、国会で審議され、法改正を経て警察庁の中に設立されました。これまでは、警察の実行機関は都道府県警の中にある警察本部が中心で、警察庁は基本的に執行を行わず、調整業務を主に行っていました。そのため、サイバー犯罪がどこで行われたのか分かりにくく、特に国際的な犯罪を取り締まるのは非常に厳しい状況でした。
(山田さん)
そこで、サイバー特別捜査隊をサイバー警察局として警察庁の直下に設置し、実行部隊として活動できるようににしました。これは重大なサイバー事案、サイバーセキュリティに関する問題にも対処するためであり、今後、警察がこうしたサイバー事案や国際的な執行に対応していくための一つのフロントとして機能する予定です。
(山田さん)
これまでは、著作権などに対する国際的な枠組みや対策は、文化庁などが担当していました。しかし、相手が公安当局の場合、実行力を持って取り締まらなければ動かないことが多いです。法律違反だからやめてくださいという生ぬるい対応では、海賊版対策はできませんでした。そのため、国際的な執行のために警察機構として実行部隊を持つことが非常に重要だったと考えています。
インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー
(山田さん)
そんな中で、全体の海賊版対策のメニューが実は今回変更になりました。今回の改正を受けて、報告会の中でも議論されましたが、ビフォーアフターという形で、どのように変わったのかをお話ししたいと思います。
(山田さん)
これまでのメニューを見ていただくと分かると思いますが、「できるところからやりましょう」というような、いろんな手段はあるものの、とりあえず1個でも2個でも海賊版をやめさせるということを実現しようとしていました。つまり、できるところから進めていくという姿勢でした。
次のステップとして、法律などを活用し、力技でアクセス警告方式やリーチサイト対策などを行い、法律や規律で制限していく。そして、最後の手段としてブロッキングを導入するという、3段階の対策がこれまでの考え方でした。
しかし、現在は議論が相当進み、実効力が伴ってきました。そこで、目的を明確に持ち、カテゴリーをしっかりと作り、対策が整理されて、より実行性が担保される形で政策が作り直されました。
(山田さん)
大きくは3つの対策があります。1つ目は、海賊版を見るユーザーに対してアクセスを防止すること、つまり「海賊版はダメだよ」と呼びかけることです。海賊版を作る側以上に、ユーザー側のアクセスをさせないための何らかの政策が求められています。
2つ目は、海賊版サイトの運営者や著作権侵害をしている人たちに対するエンフォースメント(法執行)です。3つ目は、広告なども含めて、直接的には海賊版の主体ではないが、海賊版が存在することで問題が発生する場合への対応です。これらの3つのカテゴリーに分けて、何をやるのかを最初に整理しました。
結果として、対策が相当洗練されましたね。目的が明確になったことで、やるべき手段もはっきりしました。昔からある手段は変わりませんが、ここで注目すべき点は、ユーザーのアクセスを抑止するための取り組みです。
ブロッキングに関わる法整備については、他の取り組みの効果や被害状況を見ながら検討するという形になりました。以前は最後の手段として位置付けられていましたが、やらなくて済むのであればやらないという方針が強化されました。表現の自由や通信の秘密が非常に重要だという認識が整えられたのです。
これは、私自身の成果だと言っても過言ではないでしょう。もし私がいなければ、堂々と最初からブロッキングを行っていたかもしれません。ブロッキングをすれば、確かに海賊版の対策にはなります、見られなくなるから。
(小山さん)
海賊版対策では、まずアップロード自体が犯罪です。ですので、アップロードしている人を処罰する仕組みを作ることが最も効果的です。海賊版の仕組みにはダウンロード型とリーチサイト型がありますが、基本的には広告モデルが一番大きな問題です。広告を出す側をしっかり管理すれば、海賊版を抑えられるでしょう。これが一番スマートで、国民全体に与える影響も少ないと思います。
これまでは、議論が進まず、最後の手段として国民に最も影響を与えるアクセス抑止やブロッキングの話が多く出ていました。しかし、CODAの取り組みによって、アップロードする人が悪いという認識が広がり、海賊版でお金を儲ける人たちを許さないという姿勢が強化されました。その結果、国内の海賊版対策は充実し、成果も出てきています。
ただ、難しいのは国際的な問題です。今、国際的な議論に移っており、例えば新サイバー犯罪条約などが進められています。その中でも、現行のブダペスト条約では著作権侵害がサイバー犯罪として位置付けられています。そのため、国際的な枠組みを広げて、日本の権利者が権利交渉を行い、海外の捜査機関と連携して犯人を処罰することが重要です。
(山田さん)
新しい枠組みでは、特に緑色の部分が整備されました。これまでは被害の実態把握が十分に行われていなかったため、これをしっかりと進めることが重要視されています。また、プラットフォーマー事業者に対する透明化も今回の法改正で手当てされました。
課題としては、プラットフォーム側の自主的な努力を含め、政府が強制的な措置を取らなくても対策が可能かどうかが検討されました。しかし、これが行き過ぎると表現の自由に抵触する恐れがあるため、慎重な議論が必要です。
もう1つは、広告に関する問題です。結局、海賊版が儲かるから行われるわけで、儲からなければ行われません。その儲けの仕組みとして広告モデルが大きな役割を果たしているため、そこにお金が流れないようにすることが大きな枠組みとなっています。
サイトブロッキングと表現の自由
(山田さん)
さて、サイトブロッキングに関する話ですが、これは非常に重要な問題です。表現の自由との関係について、改めて考えていきたいと思います。実は、私が自民党に来る前、自民党や政府の中ではサイトブロッキングをやるべきだという議論が盛り上がっていた時期がありました。
(山田さん)
2018年には、政府も海賊版対策としてサイトブロッキングを進めようとしていたのですが、その影響の大きさから現実的には実行されませんでした。
(山田さん)
ただ、児童ポルノなど違法なコンテンツに対しては、当然ブロックしていかなければならないということになります。ここについては、子供たちを守るという意味でも、この枠組みが議論され、児童ポルノ法の枠組みの中で実行できる対象が作られたということです。
(山田さん)
先ほど見ていただいたビフォーアフターのビフォーの方では、第3段階としてブロッキングという大きな枠組みがあったのですが、実際には通信の秘密、憲法21条の「通信の秘密」があります。この観点から見ると、ブロッキングをするのは非常に問題があるということです。この問題は、まだ議論が進んでいる最中です。
(山田さん)
とはいえ、通信の秘密があるからといってすべてが自由かというと、法律上の規律はしっかりと存在します。刑事訴訟法や郵便法、関税法、破産法、監獄法、通信傍受法など、さまざまな法律で、特定の目的のために通信の秘密を解除しても公共の福祉に基づいて実行されることがあるのです。
(山田さん)
また、世界的に見ても、サイトブロッキングを運用している国が主流になってきています。そのため、日本でも「サイトブロッキングをどんどん進めるべきではないか」という議論が毎年のように行われています。
(山田さん)
私はこの問題に取り組んでおり、表現の自由と通信の秘密を守っていかなければならないと強く感じています。もし、海賊版などの理由で通信がすべて監視されるようになれば、皆さんはどう感じるでしょうか?政府や他の人々が通信を自由に監視する社会は、非常に怖い社会になってしまうのではないかと感じています。
日本としては、通信の秘密と表現の自由は極めて重要で、幸せで豊かな暮らしを送るためにはこれらを守ることが大切だと私は思っています。そのため、相当頑張って戦っていると言っても過言ではありません。このあたり小山さんはどう思いますか?
(小山さん)
我々は納税者として税金を払っていますが、国家の役割として、警察がしっかりと犯罪を取り締まることが重要だと思います。しかし、その取り締まりを怠って「ブロッキングだ」という話になるのは間違っていると思います。
(山田さん)
そうなんですよ。悪い人を捕まえればいいわけです。それを「見れないようにしちゃえばそれで終わり」ということになると、犯罪者を捕まえないことと同じになってしまいます。
(小山さん)
さっき山田さんから説明があった通信の秘密の制限ですが、刑事訴訟法でも押収できる場合があります。また、組織的な犯罪には通信傍受のような対応もあり、本当に問題があるものについては、きちんと捜査をして処罰することが基本です。その基本が今、少しずつうまく回り出しているかなというのが正直なところです。
これがうまく進めば、日本は犯罪が少ない国と言われていますが、著作権に関しても「日本は著作権に関する犯罪が少ない国だ」という評価を得られるはずです。しかし、それをやらずに「ブロッキングだけやります」という話になると、国民の自由が脅かされる非常に危険な状況になっていくと思います。
もちろん、警察の方々は大変だと思いますし、新しい技術が出てきて捜査が大変だということも理解していますが、人権の保障と捜査の必要性のバランスを取っていただき、しっかりと捜査を行い、裁判で処罰に持ち込んでいただきたいと思います。
(山田さん)
実は、海賊版対策を進めることは、表現の自由を守ることと非常に密接な関係があります。二次創作の保障も、時には「これは海賊版ではないか」と言われることがあります。例えば、フランスに行った際には、パロディ等の文脈でも「それは海賊版ではないか」と平気で言われることがあります。
そのため、二次創作の自由を守るためにも、海賊版のあり方や著作権法についてきちんと議論し、対応することが重要です。私は、表現の自由を本当に大切にしながら守っているという自負があります。
ここまでが海賊版対策全般についてですが、それと合わせて、コンテンツが正規に流通することが最も重要です。海賊版対策を進めても、コンテンツがしっかり成長しなければ、日本の発展にはつながりません。そういった意味で、今日はコンテンツ戦略についても少し見ていきたいと思います。
コンテンツ戦略・海賊版対策に向けた与党の動き
(山田さん)
さて、重視される戦略分野としてのコンテンツ産業ということで、知財調査会とクールジャパンの提言があります。海賊版対策が双方に書かれていますが、一方で、コンテンツをどのように正規版として流通させるかということも議論されました。
(山田さん)
左側が知財調査会のものですが、最近、総裁候補として話題の小林さんが、知財調査会長を務めています。彼が高市担当大臣に提言を渡しました。
右側はメンバーが少し違っていますが、クールジャパンの提言で、参議院幹事長の松山さんが会長を務めています。こちらも高市大臣に提言しています。
私は知財調査会の事務局長も務めており、海賊版対策の強化と同時に、コンテンツ戦略をしっかり作ることが議論されています。
(小山さん)
先ほどの左側の提言が知財調査会の提言をもとに知的財産推進計画2024が作られました。
(山田さん)
さらに、AIと著作権の関係についても、私たちが担当しています。昨今、生成系AIが著作権を侵害しているのではないかという話もありますが、これも我々の担当分野です。
(山田さん)
さて、コンテンツ戦略では大胆な提案がされています。まず、このコンテンツ産業を含めたクールジャパン産業を50兆円産業に育てようという目標があります。クールジャパン関連産業も含め、10年後にはかなり大規模な産業に成長させることが目指されています。これは実現しなければならないと私は考えています。
もう1つ、コンテンツ産業そのものについてですが、現在の日本の海外展開の市場規模は約4.7兆円です。この規模は、鉄鋼や半導体産業と同程度のものです。日本政府は半導体産業に対して1兆円から2兆円という巨額の資金を投入して育成していますが、コンテンツ産業こそ多くの人が関わっている分野です。国がしっかりとサポートすべきだと考えています。
現在、4.7兆円の市場規模があるコンテンツ産業を、10年間で海外展開を進め、20兆円規模にまで拡大したいと考えています。約4倍にすることを目指しています。
(山田さん)
ところで、今、日本のコンテンツ市場がどうなっているのかについても少しお話ししておきたいと思います。日本のコンテンツ市場は、最新のデータとして昨年の白書で2021年の集計が出ています。そのデータによると、コンテンツ市場は12兆5000億円です。そのうち映像ソフトが7兆3000億円、音声が8000億円、テキスト系が4兆3000億円という内訳になっています。
動画やアニメが映像に含まれ、漫画がテキスト系ソフトに分類されると考えられます。このように日本のコンテンツ市場規模は国内向けのものがまだ大きいですが、その中でも海外向けが4.7兆円を占めています。この海外向けの市場をさらに拡大していきたいということです。
(山田さん)
ただ、海賊版対策をしないと、いくら市場を拡大しても、ポケットに穴が開いているように利益が流れ出してしまいます。こんなに海賊版が横行していると、海外に売っても儲からないということになり、結局はやらないということになってしまいます。ですから、海賊版対策と市場拡大は両輪として進めていく必要があります。
(山田さん)
また、最近はクールジャパン機構のファンドの成績が悪いということで、クールジャパンそのものの評判が悪くなっています。しかし、はっきり言いたいのは、クールジャパンのファンドの成績がどうであれ、日本のコンテンツを輸出産業としてしっかりと育てていくことが重要です。日本は貿易収支の黒字を増やし、円安問題や国富の問題、GDPの増加に取り組んでいかなければなりません。
そういった意味で、日本が国際的に稼げる国になるためには、コンテンツ分野は非常に重要だと考えています。クールジャパンであるかどうかにかかわらず、そういった戦略は必要です。
(小山さん)
新たなクールジャパン戦略は5年ぶりに改定されました。知財推進計画は毎年新しいものが出されますが、今回のクールジャパン戦略は大きく変わり、コンテンツが中心であることがより明確になりました。
(山田さん)
官民体制についてお話しします。これは、例えば海外での海賊版対策や日本のIP(知的財産)権利をしっかりと売り込むために、海外に出た際には政府のサポートが必要となる部分が出てくるためです。この官民の体制強化が今回かなり議論され、強化されることになりました。
(山田さん)
また「新しい資本主義実現会議」という政府の会議体の中でも、コンテンツ産業の活性化が鉄鋼や半導体産業に並ぶ重要なものとして位置付けられています。これが政府の中心的な議論になっているということです。今回、私も関わった骨太方針の中でも、アニメ、音楽、放送番組、映画、ゲーム、漫画などについて、官民連携を強化していくことが明記されています。
(山田さん)
さらに、海賊版対策に関しても骨太方針の中にしっかりと盛り込まれました。ただ、文言だけでは実行できませんので、今後は予算取りが重要です。予算を確保し、実現に向けて努力していくことが必要です。
コンテンツ産業の活性化戦略においても、海賊版対策の強化が重要だとされています。以前にもお話ししましたが、日本は今、国際収支の中で貿易収支が赤字の国となっています。
(山田さん)
かつての日本は、国内で物を作り、それを輸出して利益を上げる国でしたが、現在では物流に関しても輸入超過になってしまいました。サービス収支においても同様に輸入超過となっており、コンテンツ収支に関しても輸入超過の状態です。
では、これから日本は何を輸出するのか、という話になります。第一次所得収支とは何かというと、日本の企業が海外で稼いだ収益のことを指します。例えば、海外の工場や事業所で製造されたものが売れて、その評価としてどれだけ海外で稼いでいるかがこの第一次所得収支にあたります。
国際収支としてはギリギリ黒字を保っているものの、現金が日本に還元されていないため、円が買われず、円高にならないという状況です。海外で稼いだ利益は海外で再投資されており、6割から7割が海外で稼がれている状況ですが、その結果、海外で雇用が生まれ、税金が海外で支払われ、国内に還元されていないという状態になっています。
では、これから日本国内で何を強化していくべきかというと、もちろん経済安全保障の問題があり、中国から日本に戻ってくる企業も増えています。しかし、私はラストリゾート(最後の手段)として、コンテンツ産業こそが日本の可能性だと思っています。
(山田さん)
もし日本がコンテンツ産業で輸出大国になれなければ、次に何を輸出製品やサービスとして提供するのかは正直なところ思いつきません。IT産業なども、しばらくは輸入超過になることが明らかですし、日本国内では人口も減少しています。だからこそ、漫画やアニメ、ゲームを含むコンテンツ産業を強化しなければ、日本は輸出するものがなくなり、衰退してしまうでしょう。
日本は、2つの柱を持っています。1つは製造業の復活です。物づくり産業を日本に回帰させ、どうやって日本にお金が戻ってくる仕組みを作るか。もう1つは、日本発のコンテンツ産業を活性化させ、輸出産業として成長させることです。
国の政策では、この分野を4倍、5倍に成長させなければなりません。しかし、海賊版があれば輸出の努力が無駄になるため、誰も輸出に力を入れなくなります。そういった意味で、コンテンツ産業の育成が最大のポイントだと思います。
そのため、サービス収支もコンテンツ産業を黒字化させる必要があります。著作権や知的財産に関しても、国際収支で黒字にならない現状がありますが、これを解決しなければなりません。
(山田さん)
日本の知的財産、例えばポケモンなどのコンテンツは、累積収入として非常に高い位置にあるんです。しかし、それが日本国内に還元されていない状況です。海外で売られ、海外で管理されているため、国内の収支にプラスとして反映されていないのではないか、あるいはプラットフォーマーが利益を吸い上げているのではないか。
(山田さん)
この辺りの調査がまだ十分ではありませんが、もし25位までのコンテンツを広げてみても、日本のコンテンツはアメリカと並んでトップクラス。私たちは世界で戦える素晴らしい産業を持っています。それをどうやって政治の力も含めて活用し、プラットフォームの問題を見直しつつ、稼げる産業にしていくのかが重要です。
(山田さん)
現在、構造が変わりつつあります。出版業界も印刷業界も、実物から電子ストアへと移行しており、電子書籍ストアでの売買が主流になっています。この変化の中で、日本発のプラットフォームをどう作り、どう握っていくのかが大きな課題です。
(山田さん)
海外、特にアメリカ系のプラットフォームに依存して売っていると、せっかくの利益が吸い上げられてしまいます。この構造を打破しなければ、いくら「クールジャパン」と言っても、日本はコンテンツの下請け製造国のような立場に落ちてしまうでしょう。
(小山さん)
最近は新聞などで「デジタル小作人」と言われていますが、うまい表現だなと思います。
(山田さん)
そうならないように、しっかりと儲かる構造を作っていかなければなりません。同時に、しつこいようですが、海賊版対策を進めないと儲からないということです。
さらに、国内の産業構造も変えていく必要があります。一次コンテンツに対して、二次コンテンツが現在収益の源となっています。たとえば、漫画からアニメ、アニメからゲームへと収益構造がトータルで作られています。このあたりについても、どのようにサポートして再編を進めていくかを考える必要があります。
(山田さん)
特に私は著作権について取り組んでいますので、権利者がどこにいるのかという点で、全体にしっかりと利益が還元される産業構造の見直しが重要です。どこまで政治がこれに関与できるかがポイントだと考えています。
コンテンツ産業への投資
(山田さん)
そうなると、政府の役割が改めて大きくなってきます。コンテンツ産業への投資についても少し見ていきたいと思います。
(小山さん)
さっきの高市大臣に提出した提言の中で、「今後は2倍くらいに増やしましょう」という話がありました。内閣府の知財事務局から出された数字もあります。
(山田さん)
これまで誰も文化予算の中で、どれくらいがコンテンツ予算に当てられていたのかをまとめた人はいませんでしたので、出してみました。
まず文化予算に関して、フランスはさすが文化の国、約6000億円を割り当てています。韓国も世界戦略として力を入れています。ドイツ、イギリス、アメリカ、日本もこの順で続いています。
政府予算に占める割合についても、韓国の力の入れ具合は非常に強力です。一方、日本はほとんど力を入れていません。国民1人当たりの額としても、フランスや韓国は非常に大きいですが、日本は非常に小さいという結果が出ています。
(小山さん)
日本では文化予算が1098億円という数字が出ていますが、そのうちの400億円から500億円弱は文化財保護のための予算で、お寺などの維持に使われている、どちらかというとディフェンシブなお金です。
(山田さん)
支出の比率を見ると、韓国やフランスの力の入れ具合は顕著で、一方、日本はほとんど成長が見られません。フランスが伸びていないのは、毎年一定の比率を保っているからですが、韓国やドイツは成長しており、戦略として文化産業に力を入れていることが伺えます。日本はほとんど変化がありません。
(山田さん)
さて、具体的な投資の額についてですが、全体を見てみると、まず文化庁は1000億円程度の文化予算を確保しています。そのうち、文化財保護に445億円が割り当てられていますが、博物館や美術館、日本中にある文化財を維持するには、これで足りるのかという疑問があります。非常に厳しい状況です。
(山田さん)
経済産業省はコンテンツの海外促進を目指して、20兆円規模を目標にしていますが、予算は11億円程度と桁が違いすぎでしょう。総務省も放送コンテンツに対して1.8億円の予算しか割り当てていません。文化庁のコンテンツ関連予算も、全体の中で数十億円程度しかなく、具体的な額がわかりにくいものの、この程度では対応しきれないというのが現状です。
(山田さん)
また、海賊版の被害額は2兆円、最低でも1兆円を超えると言われていますが、対策に割り当てられている予算は文化庁で1.3億円、経済産業省では11億円程度しかありません。これでは防ぎきれないというのが現実です。これまでにも申し上げてきましたが、ここ数年で海賊版の被害額が極端に増加しています。
(小山さん)
その原因として、2019年の調査ではゲームが含まれていなかったことや、コロナ禍による巣ごもり需要でコンテンツの利用が膨らんだことが挙げられます。また、コンテンツ市場自体が拡大したことも一因です。これらの要因が重なり、被害額が増加したと考えられます。調査の精度が高まったことも影響しているかと思います。
(山田さん)
とはいえ本来、海外の海賊版対策は民間が主導するべきだという考え方もあります。ディズニーなんかはその代表例ですよね。コンテンツの売上を比較すると、ディズニーはかなり大きなポーションを占めていて、海賊版対策に対しても相当なお金を積んでいると聞いています。
(小山さん)
何百億円もの資金を使っているそうです。一方、日本の対策はそれに比べてかなり少額で行われています。
(山田さん)
日本でもディズニーに関してはアンタッチャブルなイメージが定着しています。日本のコンテンツも、海賊版を出したらただでは済まないという印象を与えるくらいの強力な対策が必要だと思います。
(小山さん)
ここに書いてあるように、日本の大手映画会社といえば、東映、東宝、松竹、KADOKAWAが有名です。しかし、これら4社の売上を合計しても6000億円弱であり、ディズニーとは16倍もの開きがあります。そのため、民間だけでディズニーと同等の著作権侵害や海賊版対策を行うのは難しいです。
もちろん、著作権は民間の財産を守るためのものなので、民間が第一義的に取り組むべきだとは思います。しかし、国がコンテンツ戦略として応援するのであれば、各社が競争しなくても協力して取り組める部分にお金を出すのが理にかなっていると思います。だからこそ、国が海賊版対策を支援するのは正しい方向だと考えます。
今日のまとめ
(山田さん)
まず、海外発の海賊版サイトに対しては高いハードルや課題があります。これについては、先ほど説明したCODAの取り組みなどもありますし、日本も海外の公安当局と連携して取り組んでいく必要があります。
(山田さん)
ただ、首脳同士で合意したものの、その後2年間にわたり摘発が行われず放置されているケースもあります。国家間の取り組みとして、国際的に海賊版対策を進めることが政府の中心的な課題として重要だと考えています。
本気で海賊版対策に政府を含めて取り組めば、非常に効果が高いと感じます。私もこれまで徹底的に海賊版対策に取り組んできましたが、すでに大きな効果が出ています。今後は、さらに個別具体的に対策を強化していくことが重要だと思います。
(山田さん)
もう1つ重要なのは、大手プラットフォーマーに求められる対応です。現在、広告が放置され、海賊版から広告収入を得ている信じられないプラットフォーマーも存在しています。
(小山さん)
最近では、メタやTwitter(X)に関する成りすましの問題もありますが、著作権に関しても同様です。
たとえば、GoogleのYouTubeでは、かなりの数の著作権侵害コンテンツが投稿され再生されています。本来、他人の著作物を再生し、その広告収益が報酬として支払われる場合、正当に受け取れるはずの人が受け取れていないという現実があります。
漫画村のケースでは、漫画村の広告アフィリエイト報酬が犯罪収益だと認定されました。もちろん、YouTube全体の広告が犯罪収益だというわけではありませんが、アカウントを開設して著作権侵害コンテンツだけをアップロードしている人にとっては、その広告収益はおそらく犯罪収益になるでしょう。このロジックを使うと、犯罪収益が発生していることになります。
たとえば、著作権侵害のコンテンツだという申し立てがされ、Googleが「このアカウントを削除します」と言ったとしても、これまで発生した広告報酬はアップロード者に支払われ、半分近くはGoogleも得ています。このような問題はおかしいのではないかという指摘があり、現在、警察庁や法務省を始めとする各省庁に法解釈を示してほしいと働きかけている段階です。
(山田さん)
コンテンツ戦略と海賊版対策をまとめると、大きく3つのポイントがあります。まず、コンテンツ産業の活性化が非常に重要であるということです。日本が再生し、より良い国になるためには、成長すべき産業にフォーカスする必要があります。
その成長すべき産業は2つです。1つは製造業です。日本全体の経済を見てみると、製造業が依然として重要な部分を占めています。もう1つはコンテンツ産業です。この2つが両輪となって成長すれば、日本に対するイメージも変わり、国際収支の中でもサービス分野やコンテンツ分野が黒字に転じる可能性が高まります。
ただし、プラットフォームを含め、どのように進めていくかをしっかり考えないと難しい課題でもあります。
さて、2点目ですが、海賊版対策の推進という点です。本当に目に見える形で成果が出てきていますし、最近では「海賊版はダメだよ」という認識が国内でも広がってきたと思います。海外でも摘発が続いており、ニュースになると、「日本のコンテンツに手を出すのは危ないな」という印象を与えることができます。
日本のコンテンツが人気が出れば出るほど、それを見たいと思う人が増え、海賊版を作る人が現れるかもしれません。ですから、海賊版対策と輸出の促進をセットで行わなければなりません。
輸出が増えれば増えるほど、海賊版が横行してコストを賄えないような状況になれば、産業自体が潰れてしまいます。ですので、海賊版対策はコンテンツ産業を育成するためにも非常に重要だと考えています。
最後に、プラットフォーマーへの規律についてですが、最終的にはコンテンツクリエイターがプラットフォームに依存しているという現実があります。コンテンツを売る場所の主戦場はプラットフォームだからです。しかし、これが収益構造に関わってくると、著作権侵害コンテンツや海賊版が広告収入を得るという状況は容認できません。
不適切なコンテンツに対しては、発信者情報開示制度などを通じて、きちんと対応していく必要があります。また、海賊版対策に非協力的なプラットフォーマーに対しても、規律を設けるべきだと考えています。これは日本だけでなく、国際的にも対応していかなければならない問題です。
今回は久々の海賊版対策についての話でしたが、いかがでしたでしょうか?「さんちゃんねる」では海賊版対策をよく取り上げているように見えるかもしれませんが、実は1年以上取り上げていませんでした。それでも、毎年この時期になるとCODAを中心に報告会を開催し、国会内で関係省庁を集めて介入する形で対策を進めています。
海賊版対策は、どうしても後ろ向きな政策に見られがちですが、実際には日本のコンテンツを育てるために非常に重要です。加えて、表現の自由や通信の秘密を守るためにも、海賊版対策を進め、最後にはサイトブロッキングのような形にしないことが大切です。
こうして毎年、夏になると海賊版対策を進め、政治的にもアプローチを続けてきました。今回も相当な成果が上がり、国際的な取り組みも進んでいることをお伝えしました。
最後に、皆さんにお願いですが、海賊版を利用することは絶対にやめてください。今日はこの辺りで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。