地理学系の学科から外部の東京大学大学院(地球惑星: 大気海洋)へ院進する話と後輩へのアドバイス(院試まで)
寒冷渦ぽむぅ!寒冷渦こと坂浦いとです.
今回は外部院進として東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の院試に合格したことと研究室選びを中心に書きます.
外部院進,東京大学に進学をしようと思った理由
外部院進について
私は寒冷渦や地球流体力学に関心があるが,弊学科が地理学的なアプローチによる気象学であり,ゴリゴリの数学や物理学を取り扱うことが難しいと言われた.また数値計算の環境が弱くより優れた環境を求めに外部院進をすることにした.そもそも私はめんどくさがり屋であるため余程なことが無い限り内部院進であるが,弊学ではそのような研究をする環境は厳しいと言われ結果として外部院進へ踏み切ることにした.
どうして東京大学か
研究室・研究テーマで選んだ.大学名なんて微塵も考えていない.たまたまやりたい研究ができる場所が東京大学にあるだけだ.
私は寒冷渦を軸として,地球流体力学での地衡流の安定性(順圧安定性・傾圧安定性)や前線安定性に関心があるが,それとドンピシャな研究テーマを持つ教員が進学先にいたからである.
本心は寒冷渦と結婚したいから.
地球科学に対する2つのアプローチ
地球科学とはその名の通り地球を主題とする科学である.地球科学は高校では「地学」として授業が開かれている.ここで地球科学とは分野横断型の科学であることに留意しよう.地球科学は自然科学以外にも社会科学も対象とする非常に広汎な分野である.例えば私の専門である気象学は,自然科学方面では大気力学,降水システム,気候力学などと複数の方向に広がっている.社会科学的な方面では,気象現象が災害を起こすことは自明であることから気象学と防災は密接に関係している.また理学以外にも工学方面では水防や土砂対策などといった方面もある.気象学を議論する上ではカーネル部分となる理学としての気象学以外にも政策といった社会科学,工学方面の防災対策といった工学も範囲に含める必要があり,分野横断型といえる.これは他の地球科学分野—地震学や測地学も同様である.
ところで地球科学は受験的には文系か理系か?答えはアプローチによって異なる.ここで地球科学には2つにアプローチが存在する.1つ目は地理学的なアプローチ,もうひとつは数学物理学的なアプローチである.地球科学は理系分野とみなされるが,前者は文系の性格に近く,後者はゴリゴリ理系である.
弊学部では地理学的なアプローチとして地球科学を扱う.高校の地理学の授業を思い出そう(受験で選択したなら).高校地理の1分野で自然地理学がある.ここでは気候区分や土壌,地形学について学ぶ.地学と似ている.また地理学的な地球科学では地質学寄りであり,気象学では流体力学程の数学が手に負えないこともある(私はそれが理由で外部へ).
しかし地理学的なアプローチである場合,数学や物理学の授業に理学ほど力を入れていないことが多く,東京大学大学院の大気海洋系の要望科目,数学・物理学においてハンデを負うことになる.逆に東京大学では理学部の中に地球科学系の学部及び大学院研究科が置かれておりそれなりに数学や物理学に強いことが予想される(詳細はあまり知らないが).
数学や物理学に対する対策
地理学的アプローチの地球科学系の学科では数学や物理学にあまり力が注がれていないことがあり,独学を中心とした対策になりハードルがそれなりに高い.私はもともと物理学や数学が好きで学部前半では勝手に数学や物理学の初等的な教科書で独学をしていた.これのおかげで大気力学を楽しむ適性が生まれ,関係があるか分からないが気象予報士試験にも合格した.なお大抵の地理学的な地球科学科の学生は数学や物理学の教養が些か弱いかもしれない.私自身の経験でないからうまいアドバイスではないかもしれないが,該当する方はB3までの学部教養レベルの数学や物理学は終わらせるべきである.教科書はよく分からないが同期で東大地球惑星を目指した(そしてめでたく合格)友人はマセマで対策を固めて行った.特段イキって理工系学科で使うようなゴリゴリな教科書を買い求める必要はない.マセマのような参考書?でも良い.手段は問わない,とにかく院試を解けるような頭脳を武装しよう.
英語に対する対策
注意: 令和7年度試験から東京大学地球惑星科学専攻ではTOEFL iBTスコアの事前提出になります.令和6年度は院試筆記テストでのTOEFL iTPの試験です.
英語は日頃どのくらい英語に触れているかが左右する.私は論文(基本全て英語)の論文に触れることで英語になれたいた.しかしそれでもいきなり本番の試験を受けるのは危険だ.事前に定期観測として学内,なければメインのTOEICやTOEFLの試験を複数受けることを強く推奨する.私のTOEFL iTPを2回受験し,520点を前後,TOEIC (L&R)は640点だった(うろ覚え).CEFRは少なくともB1をとっておきたい(上のスコアはいずれもB1).私の目標はB2だがここ数年スランプである.TOEFL iTPの問題は学生をテーマにしているのでリスニングは学内の会話,文法,読みは文系と理系の専門的な文章が出る.じっくり単語を抑えたいなら通常の単語帳(おすすめ: 英英英単語帳),試験が近くなればTOEFL専門の単語帳をやろう.
推し活は続けたままに
ここからは推し活をしている人のみ対象だが,よく受験勉強を理由に推し活を中断する人がいる.メンタルに悪いと思うので私は一切しない.推しとは精神的な健康を与えてくれる.それを断ち切ってどうするんだ.また勉強においてスランプ状態になったときの逃げ場として推し活がある.実際,私は本業の気象学を7歳からやっておりそれ自体幸せなものである.しかし気象学ばかりやっていると,スランプに陥ったときに逃げ場がほしくなる.そこで推し活を逃げる場所として設置しており,気象学と推し活でうまく平衡をとっている.推し活は研究や学習と比べたら低俗そうに見えるがそうではない.研究者たちはさまざまな趣味をもっており趣味でメンタルを調整していると思われる.推し活も立派な趣味だ.
ここで試験直前の推し活は如何なものかとなる.試験直前にかからわずたくさん入れるのは勉強時間が失われるので良くない.ライブとかは節度をもって暴れちゃうので翌日満身創痍で勉強ができないので我慢したほうがいい.推しがどういうものによるか,半日で体力をあまり使わない推し活は入れても問題ない.私は試験直前に推し声優にあって,院試に対するエールをいただき士気を上げた.推しをうまく活用すれば研究や勉強のブーストとなる.なお推し活は薬なので濫用すると害がある.適度な量と使用方法を遵守しよう.
強い人の感想や体験談に注意しよう
(1)物理学徒の感想
ある物理学erのフォロワーさんから地球惑星の院試は編入試験だとか言われたらしい.確かに物理学や物理工学の院試と比べたら量子力学や統計力学と比べたら幾分簡単だが油断したら負けるから注意しよう.私は彼の言葉を信じ込まなかった.信じ込んでいたら油断していただろう.
(2)多分数学や物理学に強い先輩
その2.地球惑星の院試を受験した中でB4の4月から院試対策を始めたという先輩がよく観測される.彼の言葉は既に教養レベルの数学や物理学を学習済みで院試そのものに切り替える開始時期が4月と言っているだけである.数学や物理学に疎い人はB3の夏,ちょうど院試1か月前から基礎を習得してゆっくり院試に向き合う頭脳を形成すべきである.
油断はせず自分のペースで
こういう強い人の感想や体験記を聞くと自分に無条件に適用してしまうだろう.地理学的な地球科学科の君たちは彼らと比べて弱い.私もそうだ.断言する.あなたは弱い!弱い立場にあるからこそ先輩の体験記をあまり鵜呑みにせず複数の体験記を比較吟味して,かつ自己分析をして院試に臨もう.
使用教科書・問題集
数学
線型代数学:
線型代数学入門(東京大学出版)
微分積分学:
微分積分学(サイエンス社)
微分方程式:
新版 演習 微分方程式 (サイエンス社)
フーリェ解析(ラプラス変換も):
フーリエ解析 (岩波 理工系の数学入門コース)
特殊函数:
物理のための応用数学(裳華房)
物理学
力学: 原島 (質点・振動・剛体)
熱力学: 高橋 (熱力学・統計力学だが前半のみ)
電磁気学: 砂川(りろんでんではない)
振動波動: 原島+フーリエ解析(前述)
追加で日頃の気象学・地球流体力学の教科書読み読みで鍛えてきた(地力上げ).
英語
英英英単語帳 中級編
論文サーフィン(処理速度アップ)
英語の理学Youtube (気象系,プログラミング,MIT OCW, 3Blue1Brown など)(英語のモチベーションアップ)
その他
大学院入試問題 数学
大学院入試問題 物理学
まず研究者コミュニティに入ってみよう.
研究者コミュニティに入ることはメリットがいっぱい
院進するということは,今後研究することを覚悟していることである.院入ってからのスタートダッシュを決めるためにも研究コミュニティに入ってみるのもいいが,早いうちから学会・研究会や若手会に行ってみて,先輩から教員が話さないような大学院の丸秘事情や,研究の雰囲気を味わうのもいい思う.こうすれば大学院以降の研究ビジョンが明瞭になり,また大学院に入学する前に立ちはばかる壁,院試を打倒するような強力なモチベーションとなる.また学会(聴講でもヨシ!)において自分の専門となる口頭発表やポスターセッションにおいて学生だけではなく,研究者と話すことでそこの研究室や発表に関する研究テーマの有益な情報をもらうことができ,さらに彼らに認知することもできる.学会の発表では,いろいろテーマが異なるセッションがあるが,研究テーマがはっきりしていない人はいろいろなセッションをローテンションして受動的に研究発表を浴びるといい.そしてその中でときめくものがあるはずだ.そう学会はときめきに出会う場所でもある.そのときめきを大切にして今後の研究に結びつけることもできるだろう.学会期間中の夜は懇親会といって研究者や学生同士で酒を交わす場がある.そこで研究の情報のみならず学生や研究者の素の様子を知ることができる.学会や懇親会,研究会に参加することで,進学ガイダンスよりはるかに広いまたもしかしたら裏の有益な情報を得て,人脈を広げることができる.加えて学部生で参加する例は少ないので先輩や教員にかわいがられて意欲的,積極的であると印象がよくなる.自分の印象は今後の研究生活に重要であり,もしかしたら院試の合否判断(とくに口頭試問)で使われるとかそうじゃないとか…
体験談
私が初めて学会に行ったのはB2のころで日本気象学会春季大会とJpG
U2022(日本地球惑星科学連合)である.これはB1の春休みに気象予報士を取得し浮かれてしまいイキリパワーで日本気象学会に学生会員として入会,そのまま学会(聴講)で申し込んだのである.そしてここで私は寒冷渦に運命の出会いをする,2022年5月18日,気象学会春季大会中に寒冷渦の口頭発表を聞いた.そして直後にあったJpGUでも複数の寒冷渦の口頭発表やポスター発表を聞いて恋に落ちた.寒冷渦は一生追い続けるパートナーになりつつあり,大学院は大好きな寒冷渦を追いかけるために行き.そして寒冷渦のために気象学を勉強,今後は研究することになった.寒冷渦と結ばれるのが目標である.
しかし,学会ではいい意味で悔しい思いをした.気象予報士取得のイキリパワーはみごと粉砕された.気象予報士はたしかに難しい.気象学をある程度知っていいないと合格できない.しかし,気象予報士の知識は気象研究の前ではまったく通用せず私は理解できずすごく悔しかった.しかし私は悔しいと思うとかなり成長するタイプで,直後に気象力学入門(Holton and Hakim, 2013)を購入,この本はあとに聞いた情報だが大学院のゼミで使われる本らしいが,そんなことも知らず半年で完読に成功した.2年前に私,おそるべし.気象学会秋季大会はパスしたものの,春季大会やJpGU2023は前年の受動的に話を聞くだけではなく,ポスターだけであったが研究者や学生とディスカッションを楽しんだ.名札には所属と名称だけだが,バックグラウンドを聞かれてB3(当時)というと驚かれるものだ.当然印象に残りここから少しずつであるが認知が進んできた.そして夜は若手会の懇親会に参加,B3は私ひとりだけでオドオドしていたが,先輩たちが暖かく迎え入れてくれた.同年9月は気象学会の若手研究者のセミナー,気象夏の学校2023東京に初参加.ほかのB3やB4とも仲良くなった.ここでは自己紹介と寒冷渦への思いを熱弁し,他大学で寒冷渦のヤバイ人がいるとたちまち噂になった.寒冷渦の人としてのポジションの形成を開始した.そしてB4の春の学会はまた聴講だが,いろいろ学習を積んだこともあり自分の関心やその周辺の研究発表の解像度は半分くらいとなり,口頭発表では勇気がなかったものの立って質問はできなかったが,ポスターでは主に学生のポスターに質問やコメントを行った.院試後になるが,気象の夏の学校2024(京都→オンライン)は自分の卒業研究をオンラインポスターで発表し,はじめて自分の研究を発表した.なお寒冷渦は大学の環境上できないので来年から寒冷渦の純愛の人になるつもりである.浮気は絶対しないからね.夏の学校ではさらに学生と進路相談をした.私は東京大学と京都大学で一長一短ということもありずっと迷っていたが,東京大学に進学する決心がついたのは夏学である.
研究室訪問
進学ガイダンスはB3までに一回は行っとけ
進学ガイダンス,進学説明会はB4対象だが,B3で参加しても何も怒られは発生しない.むしろB3までに行くことを強く進める.なお中の人はB2で初めて行った異常者であったが有益な情報が早めに得られ院活を早めに始められた.そう院進は情報戦だ.早めに情報を手に入れ,たくさん情報を持つものが勝ちだ.私は進学ガイダンスのみならず,学会なども早めに参加した.進学ガイダンスにおいて大学院の進学とは,研究室選択とはどういうものか早く知ることができる.学部入試とは全くスタイルが違う.それに驚くだろう.早めに行動することでつぎなる進学行動をどうすれば戦略が立てられる.
研究室訪問の心得
大学院は学部とは異なり学科に入学して終わりではない.研究であるためある研究室に所属してそこで5年間研究する.東大院地球惑星では,院試の合格後に研究室選択があるが,事前に研究室は訪問すべきである.
研究室訪問は最初はすごく緊張するだろう.進学説明会は教員とも話すのが後半にあるのでそこでじっくり気になる教員とじっくりトークしよう.もし研究テーマが曖昧だったらいろいろな教員を訊ねてみて興味のあることを並べてみよう.そうすれば教員はおすすめ研究室を学内学外関係なく紹介するだろう.
ここで注意だ.最初から大学にこだわってその大学内に選択を絞って研究室を選択する行為はやめるべきである.研究室は5年間同じところに所属し,基本同じテーマで研究を遂行する.研究室は大学を超えてシームレスに選ぶべきだ.そもそも研究室は研究テーマで選ぶものであり大学で選んではいけない.大学は所属識別子と考えている.進学ガイダンス時に自分の研究テーマができる場所が外部にあるといわれたらつぎはその大学の進学ガイダンスへ足を運んでみたり,直接その研究テーマをやっている教員にアポをとり研究室訪問をしてみよう.そういうこともあり,進学ガイダンスは早めに行っておく理由にもなる.
さて研究室訪問をするときは進学ガイダンスや研究所公開ではそのまま研究室にいけるが,そうでないときは事前に連絡をとり日程調整をしなければならない.連絡をするのが怖い,迷惑だとか?うんぜんぜんそうではない.教員はうれしいだろう.日程調整をしたら実際に研究室に足を運ぼう.服装?カジュアルでなければ問題ない.スーツもよいが地球惑星系では学会でも私服が多い(中にはアロハシャツの人や頭にタブレット載せる人も観測された: 絶対真似しないでね).教員とは次のことを話したり提案したりしてみよう.
自分の関心のあること
研究計画の提案
研究する上で必要な事前知識
研究室の環境,機具
学生部屋
自分の関心があることや研究計画は,自分の関心があることを教員にアピールしよう.なるべく具体的に話そう.教員は関心をもったり,アドバイスを提案したり,または別の研究室や教員紹介をしたりするだろう.いずれの反応も快く受け入れよう.最後の別の研究室や教員紹介に関しては研究テーマがそれなりに狭くなっていたら,教員が所属する研究コミュニティでよく知り合ったりしている教員の情報をもらうことができる.このときはその教員に次に連絡をとったり訪問したりしよう.そしてとにかく複数の研究室を大学に関係なくシームレスにたくさん訪問してみよう.研究テーマを話すことで自分が知らなかったことや別の関心に気づくことがある.
研究を遂行する上で必要な知識は研究テーマが狭まってきて教員が受け入れるような様子をあれば,必ず聞くべきである.実際学部で学習することと研究テーマには大きい隔たりがあり,院入学後に埋めるのもいいが研究のスタートダッシュをうまく決めるためには入学前にある程度前提知識をうめておくことが重要である.この知識は通常学部でやるような知識ではなく,洋書専門書や論文を読むことが必須となるようなものであり,学部の授業からすればかなり専門的であるが,その研究テーマにおいては常識であることが少なくない.
研究環境(計算機のスペックや機具)は調べるべきである.すごく大掛かりな計算や機具をつかうことが想定される研究では研究室においてないことが少なくない.せっかく研究テーマがあっても環境的にできなければもったいない.
学生部屋に行く人はかなり少ない.私もおどろかれた.なぜ学生部屋に行くのか?それはあなたがこれから研究を行う場所になるからだ.どんなPCを使っているかの環境を見たり周辺施設(休憩室,ゼミ室)なども見て回ろう.そして学生さんと雑談して学生が普段やっている研究はどういうものか,研究環境は如何かか訊ねてみよう.ときどき教員が言わないような裏情報が出てくる.学生と仲良くすると学生自作の過去問解答がもらえたりする.ここで過去問は公式サイトに数年書いてあるが,直近であること解答が書いていないので学生の解答はすごく参考になる.院試過去問はここから対策しよう.なお学生が作成した模範解答なのでエラーを多く孕むだろう.鵜呑みにしないように.
しかし教員に絶対に聞いてはいけないものがある.それは試験に直接関わる情報である.要望科目(あれば)は公式サイトに書いておりそれについて聞けるが,採点方法については答えられない.教員が答えるとどうやら首をはねられるとか.
体験談
私はB2の6月ではじめて進学ガイダンスにいったひとである.最初に行ったのは近いからと言う理由で東京大学であった.当然ながら教員たちはおどろいていた.進学ガイダンスの後半は,教員と複数話した.このときは寒冷渦に関心をもっていてから2週間後でありまだ中緯度大気力学の偏西風中の孤立渦に関心があるだけであり,B2であることから熱帯大気やほかの気象学にふれるべきであるというアドバイスを頂いた.その後気象力学入門(網羅的に気象力学を紹介)を読んだが結局中緯度大気力学の関心のままであり,B2の4月に今の第一希望研究室にはじめて訪問した.彼は寒冷渦をかつて研究テーマにしたことがあり寒冷渦の研究ならここと思っていた.またその研究室の所属する学生から寒冷渦の影響を受けたのも理由である.手法に関しては地球流体力学的手法(理論手計算+数値計算)に関心をもっておりそちらの研究室を希望した.しかし他の大学にも似たような研究室があると考え,北海道大学(オンライン)や京都大学(オンライン)を訪問し,地球流体力学系の研究室で関心事について雑談した.しかし,結局東京大学の地球流体系で寒冷渦を扱える研究室が第一希望となった.その研究室には覚えている限りであるが,B3:4月,6月,10月, 2月, B4: 4月, 6月だったような.最初は緊張もあり,寒冷渦に関心があることを話すだけあったが,回数を重ねるたび自分の教科書を並べたり,論文を紹介させてもらったりしたり,単なる地球流体力学に関連する雑談になっていった.教員と雑談するのが楽しくなって加えて寒冷渦と真剣に迎える研究室として第一希望となった.研究と前提知識となる本に関しては,当時は寒冷渦のみに対する関心のみであり,サブで本を読んでいただけであったが,自分の持っている本に関して良い評価をもらった.前提知識は今後の研究室訪問で具体的に話して,研究テーマも決めていく.
一方,進学を辞退したが京都大学に関しては第2希望として京都大学の院試の合格まで残していたのでここで話す.
京都大学にも地球流体力学の研究室があり,こちらのほうが人数が多い.京都という地理的な関係上,現地の研究室訪問は1回しかないが,こちらでは研究テーマの提案を行い,論文が紹介されたり学生部屋を見学したりした.最後の方は雑談になったが,雑談を挟むことで教員の素の姿を見つける作戦だ.
視野を広く持て
研究することは分野を絞ってテーマも絞ることである.そのため広いところから狭くなることである.これは興味を狭くすることではない.むしろ視野を広くすべきである.
もし興味のアンテナを狭くすると感知領域が狭くなってしまい,関心の幅が狭まってしまう.実は研究テーマというものは,まったく違う分野と接続していることが多い.狭い関心の幅だと異なる分野との接続を見逃してしまう.分野や現象やほかと網目状につながっており,これを伝っていくことで知見を広げることができる.例として寒冷渦を取り上げる.
寒冷渦とは対流圏界面における中心に寒気をもった低気圧のことである.
ここから連想してみよう:
寒冷渦ぽむぅ
上空の低気圧
渦
孤立渦
維持メカニズム
逆カスケード
ブロッキング
非線型性
非線型力学系
渦間相互作用
藤原の効果
寒冷渦がもたらす台風進路・強度の変化
準地衡乱流
エネルギースペクトル
逆カスケード
ジェット形成
予測可能性
今年の台風2410号
傾圧不安定
流れの安定性
順圧不安定
流れの安定性
波-平均流相互作用
擬運動量
エネルギー論
温帯低気圧との関連
低気圧形成論
爆弾低気圧
前線形成論
上空の寒気
成層圏極渦
成層圏気候システム
寒波
JPCZ
冬季雷
対流活動
線状降水帯
土砂災害,水害
雷
突風
大気の河
このように寒冷渦一個でめちゃくちゃ出てくる.さらにこれらから網が伸びて伸びて…めちゃくちゃ複雑である.
そこで私が提案するのは寒冷鍋(なべ)思考法である.寒冷渦に関してたくさん知識が必要なので鍋に何でもいれるような発想をしている.肉や白菜やパクチーをいれるのもいい.試験的にチーズケーキもいれていい!寒冷渦を研究するために必要な鍋,寒冷鍋だ.
寒冷渦という研究テーマを軸に,上であげた関連する分野を知識として自分のふところに入れて,他分野からも輸入して良い.
私の場合,
寒冷渦周辺の流れの安定性に関心があり,それを扱うために,
流れの安定性
傾圧不安定
ロスビー波
準地衡理論
ハミルトン力学
連続成層モデル
N層浅水モデル
統計力学
力学系
数値計算
指輪 (寒冷渦へのプロポーズ準備)
など
を寒冷鍋(寒冷渦に対する知識の引き出し)に入れている.このように研究テーマを軸として体系化して知識システムは院試の小論文や口頭試問で絶大な威力を発揮する.また今後の研究でも発揮できるだろう.
院試のシステム
中の人は院試前に学会聴講や研究室訪問を行ってきたが,前者はほぼ院試そのものに関係ないし,後者は任意である.しかし大学院入学試験は逃げられない,義務である.
出願について
詳細は募集要項をみていただきたい.
まず出願について話そう.東京大学地球惑星科学専攻では,理学系研究科がもっておりそこのオンライン出願システムを用いる.基本的に郵送はないことに留意すべきである.これが良いと思うか悪いと思うのか個人に依る.地球惑星科学専攻では,(外部の場合),自分が所属する卒業見込証明書,オンライン出願システムで生成された出願届けと履歴書,検定料の支払い,口頭試問の題材となる小論文の提出が必要となる.来年からはこれに加え,英語の試験のスコア提出が必須となる.
ここで地球惑星科学専攻についてだが,その中に固体地球や大気海洋などという講座が小区分で存在しそれぞれの講座別に合否が言い渡される.附置研究所(大気海洋研究所,地震研究所)に関しては教員ごとに講座が決まっており,その講座で合格すれば教員の研究室に所属するとその研究所にも所属することになるシステムだ.
筆記試験
筆記試験は英語と専門科目である(当時).来年は英語が事前スコア提出になる.専門科目では,数学・物理学(・化学・生物学・地球科学?)となっており試験時間は120分で2教科を選ぶ.しかし大気海洋系の研究室の多くは数学と物理学が要望科目となっており問題は指定される.数学と物理学全問をとかなければならない.数学と物理学は教養レベルであり,学部後半の問題は出ない.線型代数・微分積分学・ニュートン力学(質点・剛体・振動波動)・電磁気学・熱力学・物理数学(フーリェ分析・特殊函数)が出題される.120分と試験は難しいのでかなり急いで解かないといけない.
小論文と口頭試問
口頭試問はオンラインで15分である.この試験は事前提出の小論文を軸に行う.
口頭試問は,筆記試験に合格した人のみが対象になる.つまり足切りが存在する.また口頭試問は,対象となる講座(中の人は大気海洋)で受けることになる.これは複数になることがあり,小論文の内容から決められる.
小論文では,進みたい分野と理由について800字以内で書く.割と短い.あとwordなのでLinuxユーザーの中の人はかなり不満である.
口頭試問はまず小論文の内容を紹介し,この後小論文をもとに質疑応答の時間になる.教員オールスターなのでそれなりに緊張する.激詰めされた脳破壊される人もいるらしいとか.怖いぽむぅ.
合格後,研究室選択へ
筆記試験に加え口頭試問に合格すると院試そのものに合格したことになり,合格は講座別になっている.その講座に属している研究室をつぎに選ぶことになる.現在進行中なので詳細は後ほど.
院試体験談
過去問対策
過去問対策は数学と物理学に重点をおいて行った.同期に東京大学の地球惑星科学を志望する学生がいたので彼とともに過去問に関して答え合わせ,質問会という名のゼミをおこなった.ここで前提として過去問は,教科書精読による地力上げありきであり,これが行われていない人は教科書を精読すべきである.自分一人では2009年からの過去問を周回した.ここでリンクバック学習法を発動した.リンクバック学習法とは,もし解答にエラーを起こした場合,誤りの要因を分解しそれに併せて演習書の誤りを起こしたテーマの問題を再度解き直す手法であり,今後同様のエラーをしないようにでき,弱い部分を潰せる.最初は,時間無制限で満点解答を作成する手法をとり,これによって精度上げを行った.精度は解いた問題のうちの正答率のことである.精度が90%近くになってきたら時間制限を加え時間が限られた中で,かつ精度を維持したまま解く修行を行う.しかし,私は手計算が遅いのでどうしても時間内に間に合うことはできないので,精度の高さを守り続けた.計算ミスせず正確に解くことを武器にした.あいにくなことに試験の様式が2021年度から変更されており,試験時間が180分から120分に短縮されており解く手の速さを上げなければならない.120分ではどうも間に合わない.そこで私はある作戦に踏み切った.それは大問ごとに制限時間を設置し,その時間を過ぎたらつぎの大問に強制スキップをかけることであった.過去問は家など落ち着いた場所で行うが,試験場では人生がかかっておりどうしても緊張する.予期せぬ事態,メンタルの不安定もあり,問題に固執する危険性がある.強制スキップによって問題に対する膠着状態を防ぎ,かつ凝り固まった脳をリフレッシュできる.これを行うのはすごく難しく,どうしても全問解かないという焦燥感に襲われる.全問解くのは諦めろ.問題に膠着する時間がもったいない.本番は初見問題でわからないものもあるだろう.時間制限を加えればわからないものに強制スキップをかけられる.試験を解くのは時間がある.研究みたいに半無制限ではないぞ.試験では,どのくらい問題に手につけられるのかが大事だ.ずっとわからない問題に固執すると別のかんたんな問題を見ずに試験が終わってしまう.そこでなるべく多くの問題に手につけることを行うことで時間制限を大問に加えることにした.大問はスレッド的に問題がつながっているが,難易度はステップ的に難しくなる.あと全完は想定されていないはずなのですべての大問でいけるところまで行こう.
院試対策は,地力上げ(教科書・演習書)→精度上げ→速度上げの順で行えばよい.また試験を解く学力だけではなく,心理的な対策,今回は強制スキップも行うべきである.試験は何が起こるかわからない.
小論文・口頭試問対策
きみの気象現象に対する一途な思いを語れ.
小論文には関心のある現象について書くのが鉄則であるが,そのテーマに関する知識に自身がない学生がいるだろう.800字は短い.小論文に望む前に是非,自分の気象への関心の自己分析を行ってほしい.その現象になぜ興味あるのか?きっかけは?どこが癖か?そして研究として,どのような手法を用いるか?どのような解析や数値計算をまわすか?できればその研究でどんなうれしいことがあるか書いていただきたい.これらを論理的に書きおろそう.興味のあるテーマに関しては名前だけではなく実際に複数の文献に触れておくのが好ましい.さらにテーマに関しての知識をそれなりに蓄えておくべきでもある.実際小論文の曖昧な場所や知識の確認として口頭試問でかなりツッコまれる.それに耐えられるように興味がある現象に対する知識で武装しよう.
筆記試験 2024-08-20
筆記試験は,理学系研究科で一斉に行われた.したがって,地球惑星科学と物理学といった併願は不能であり.場所は東京大学本郷キャンパス理学系1号館であった.
午前は英語の試験.TOEFL iTPであり,聴解,文法,読解の3セクションであり,各セクションではそれぞれのセクションのみ解く.別のセッションに先行したり後戻りはできない.聴解では,1回しか放送されない.最初は会話の聞き取りでまったく自信がなく負けた.後半になると講義英語でMIT OCWとかかじってるので自信がある.文法はおっかしいなあという部分を潰すゲームである.見たことのない表現や奇妙な表現を潰そう.文法書?English Grammar in Use (ケンブリッジ大学出版)を高校生で読んだきりなんですが.あとこれイギリス英語の文法w.読解は私なりの潰し方が存在する.我々は理系なのでまず理系の文章を潰し,そのあと文系や芸術系の文章を潰そう.正直この試験では2時間近く英語のみに向き合うので体力の減りに注意しよう.そういう影響もあるので脳の負担が比較的小さい理系文章を最初に潰し,余った時間は文系文章を潰す.セクションごとに時間が余ったら周りの人に迷惑がかからない限りで伸びをしよう.体力温存だ.このあと休憩はあるものの専門科目(数学・物理学)がある.
休憩時間,ひたすら伸びた.私はローソンでレッドブルで士気を上げた.食事はチックで胃液逆流するのでとっていない.緊張でチックがエグい.吐き気で顔真っ青で試験不能になったら怖いので結局空腹で試験へ.
午後,運命の数学物理学.寒冷渦と婚約するためにはこれを超えなければデートが始まらない.大好きな寒冷渦をかけた試験.開始へ.
解答用紙は大問ごとに紙がある.普通は大問順に解くべきであるが,試験官からそんなこと言われていないので解きやすい,好きな問題順に解いた.これに関しては強制スキップと併用することによって有効な問題を増やすことであった.あいにく大問内で問題がスレッド化されているので大問で問題スキップができず大問を超えて強制スキップをかけるしかない.
数学
1小問集合 2ジョルダン変換(誘導付き)
物理学
1力学(忘れた) 2電磁気学(電気双極子)3光子気体とシュテファン・ボルツマン法則
試験が終わると問題冊子は回収されちゃうので問題内容ほとんど覚えていないぽむぅ.
解いた順番
数1→物1→物3→物2→数2
解答時間はかなり短く,2-3割くらい触れていない.精度100%でも7-8割しか期待できない.しかし強制スキップによって触れられる問題を増やすことを優先した結果触れられる問題を増やした.ここから自分の武器である精度をかけて筆記試験は合格に結びついたと考えている.
問題は去年より易化はしている実感であった.強制スキップはしたものの手に負えない問題はほとんどなかった.手計算速度が遅いので当然の時間切れだが精度が高いのが救い.
小論文
小論文は進みたい分野と研究とその理由について書くことになっているが,分野は大気力学とし,研究室を名指しした.さらに研究に関しては今年5月の寒冷渦事例に関して,再解析データを用いた解析を行い対照実験を行うこと,研究室の財産を使うことを宣言し,修士2年間における研究計画の概要を記した.800字と短く,行間が空いてしまったがそれなりにいい文章がかけたはず.
筆記試験突破 2024-08-27
あ,突破したんだ.あんな問題とけなかったのに.
口頭試問 2024-08-30
レポートの詳細はこちらに書いてあります.
口頭試問,それは寒冷渦への一途な思いを,教員にアピールする時間.大好きな寒冷渦のためにも…
口頭試問はオンライン,Zoomを用いて
寒冷渦の婚約者 vs 大気海洋オールスターの構図であった.
まずは受験番号と氏名をいい,受験票を見せる.まずは座長の進行のもと,小論文の内容を説明.約5分.その次に余りの時間を質問時間とした.まずは大気重力波の教授.実績がすごく強く,事前にめちゃくちゃ強いとマークしていて怒られると思ったが,そうでなかった.
重力波「なぜ寒冷渦がそんな好きなの?」
寒冷渦「JpGU2022でご縁があった」
重力波「なぜB2で学会へ」
寒冷渦「気象予報士取得で浮かれて行った」
重力波「D進するの?」
寒冷渦「します」
重力波「博士とったらどうするの」
寒冷渦「民間気象会社で実務経験を積む」
ポスドク!ポスドク!と鳴くとおそろしい質問がでると思ったので民間気象で実務経験を積むことを伝えた.教授自身,修士後に就職を一旦挟んでいる.ほかには
重力波「卒論は?」
寒冷渦「地球自転と気候システム」
重力波「手法は?」
寒冷渦「信号分析」
つぎに第一希望の准教授からの質問の出番.
準地衡流「気象学はいつから?」
寒冷渦「7歳」
準地衡流「学部ではどういう学習を?」
寒冷渦「一般気象学→気象予報士取得→Holton→Vallis」
準地衡流「試験はどのような学習を?」
寒冷渦「地理学系で本格的な数学物理学がないので独学で対策」
準地衡流「試験の手応えは?」
寒冷渦「手計算が遅いので時間切れだったが解けるだけ解いた」
口頭試問では,まったく怒られることはなかった.興味をもっているかかなり心配で不合格したか合格したかもわからない.そんな結果がわからない日を9月18日まで過ごすことに.
合格発表
合格発表時,私は高校の友人と函館旅行で五稜郭にいた.五稜郭で発表を見るつもりではなく,旅程の時間的に五稜郭にいただけだ.時間になり五稜郭公園内で合格発表をみた.見方はこれだ!まず事前に受験番号を知らせ,まず自分が合否を確認,沈黙したまま友人全員で番号を見た.そして合格がわかり喜びを分かち合う.直後高校の恩師に電話をかけ合格を報告した.合格発表があったら親だけではなく,大学の教員や恩師たちに報告しよう.この合格はあなたのものだけではない.今お世話になっている人,今までお世話
になった人の協力があっての合格だ.感謝を伝えよう.5文字だ!
電話で報告するのもいいが,やはり直接あって報告したいものだ!そして友人と酒を交わしてもよい.実際,旅行メンバー友人と夕方焼肉を食い,乾杯!!!なお中の人は下戸なので即潰れ友人の親戚の家(拠点)で音楽大音量のまま爆睡してしまった.
合格後,つぎは研究室選抜にうつる.
現在研究室選択中で続きはまたの後ほど更新します.