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第8章、寮(部下たちの部屋)ー9「あの偽寮母さんが連れてきたのは、別のイモ虫でヒドルじゃなかった。」
・太字の()の中の文字や文章は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()の中の文字や文章は、作者による注釈です。
・見取り図の部屋の番号は、前回(8章-1)のくじで決めた時の番号であり、文章内の()の番号と同じです。
今回は、部下たちからの要望と布団を取りに行くという目的で
隣の部屋を調べます。
ヒドルについては、第8章−5(28ページ)にまとめてあります。
追記:私のホームページ内に、用語集としてヒドルについてのページを新しく設けました。良かったらご覧ください。
(クリックすると、私のホームページの該当ページに移動します。)
廊下に出てみると、電灯は点いているが、薄暗く静まりかえっている。
外に出ている者は私たち以外、誰もいない。
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1、トカレフたちの部屋
まず私たちは、トカレフたちの部屋(1)に行ってみる。
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トカレフたちが言うには、クローゼットの中に布団とマットレスが5組、入っていたらしい。
今は、各ベッドの上に1組づつ置かれている。
「鉄のベッドね。」
アルテミスが、手前のベッドのヘッド部分の手すりをなでる。
「こっち(5)も、ベッド以外は同じですね。」と副隊長
「そうなんだ。」と私
トカレフが
「澪様、何か気づいたことはありますか?」
「んー隣、行ってみようか。」
次は、サイケたちの部屋(2)に行ってみる。
2、サイケたちの部屋
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ドアを開けてみると、バッカスが
「変な配置だな。」
「でしょ、バッカス様。」とハピラキ
「どういった意味が、あるんだと思いますか? 澪様。」とメロディー
サイケは、部屋の中を見回している。
アルテミスが中に入り、見回しながら
「全部、鉄のベッドね。」
「どういう意味だ?」とバッカス
「ナナちゃんとミミちゃんのベッドも、鉄じゃない?」
と言って、アルテミスはドアの方に戻ってくる。
廊下にいるナナとミミが
「その通りですわ、さすがアルテミス様。名前で呼んでいただいた。」
と、うれしそうにする。
その2人とオフィーリア、アルテミスが、隣の部屋(3)のドアを開けた。
私は、先に自分の部下たちの部屋に行こうかと思ったが、オフィーリアがいないと見る機会はないと思ったので、一緒に覗いてみる。
3、ナナとミミの部屋
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アルテミスが部屋に入って中を見ると、すぐに戻って来て、急ぎ足で奥の部屋に入って行った。
みんな、不思議そうな顔をしている。
マーズちゃんも部屋の中に入って来て
「これはこれで広くて、良いんじゃないのか?」
「でも、気味が悪いわ。」とオフィーリア
「姫も、そう思いますか?」とナナ
ミミも不安そうな顔で
「澪様は、どう思われますか?」
私は「んー」と言いながら、窓枠の所に行く。
窓枠には透明の液体が、ワイン瓶の底ぐらいの丸い半円を描いて、プックリと盛り上がっている。
私は、それを指差し
「これは何?」
「さあ? 来た時からありました。」とナナ
「ちょっと、ごめんなさいね。」
アルテミスが、部下や女神たちを掻き分け入ってくる。
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下が、先が細くなっている入れ物
大きさは、片手に収まるほどの大きさです。
そして、白色の、先が小さなスプーンの様な物で、先ほどの液体をすくう。
少し粘り気があるようで、すくい上げると水飴のようにトロリとした感じで筋となって付いてくる。それを先が細くなった入れ物(上記のイラスト参照)に入れ、スプーンの反対側についている円柱を、クルクル回して蓋をした。
「銀河連合に調べてもらうわね。」とアルテミス
「まあ、あのイモ虫のせいですの?」とナナ
「あの偽寮母かも?」とミミ
「あのイモ虫って木を食べるのか?」とバッカス
「えーじゃ、ベッドが無いのって、イモ虫に食べられちゃったの?」とハピラキ
「それを調べてもらうわ。」
アルテミスは、その容器を見てニッコリする。
みんな、部屋の外に出る。
私は、校長先生が勧めた二人部屋のドアを見るも(明日にしよ)と思い、自分の部下たちの部屋(5)を覗いてみる。
5、副隊長たちの部屋
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部屋の中は、布団が5組、床の上に敷かれているだけでベッドはない。
「本当になんにも無いっすよ。」とアオバ
「うん(この部屋を使っていた生徒たちはどこへ行ったのか? あの学校の中? それとも・・・)」
4、ヒアキッソスたちの部屋
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その隣のヒアキッソスたちの部屋(4)に行く。
先に見ていたフローラが、私に
「おかしな配置でしょ。」
「ですよね、フローラ様。」とローズ
「ここも、あのイモ虫に、木のベッドだけ食べられちゃったのかな?」とヒマワリ
フローラと、その部下たち3人が不安な表情で、私を見る。
ドアの外から部屋の中をじっと見ている私に、フローラが
「何か、わかりまして?」
「うん、偽寮母さんの驚いたわけがわかったよ。」
「まあ、本当ですの?」とフローラ
彼女の部下たちも驚いた顔をする。廊下からも「おー」といった声が聞こえてくる。
私は、廊下にいる女神たちや部下たちを見回し
「えっと、まだ、銀河連合の調査待ちなんだけど」
「先ほどの、アルテミス様が容器に入れた液体ですわね。」とナナ
私はうなずき
「えっと、あの偽寮母さんが連れてきたのは別のイモ虫で、ヒドルじゃなかった。」
「ええー!? まだ、いましたの?」とフローラ
女神たちや部下たちから、どよめきが起こる。
「ヒドルは木は食べない。食べるのは、葉っぱとか、柔らかい繊維質の物、服とか、で、偽寮母さんが連れて来たのは、えっと私が初めに言ってたライガだと思う。とても大食いで、木のベッドとかでもあっという間に食べるんだけど、クローゼットとか白いペンキで塗っていたのは残ってたじゃない。見た目で、木じゃないと思った物は食べない。」
「まあ、攻撃者にも、いろいろありますのね。」とナナ
「うん。」と私
「偽の寮母さんは、もう1体、別のイモ虫がいると思ってビックリしたのかしら?」とオフィーリア
「いや、あの時、イモ虫がいるかどうかはわからなかったから、自分が化けた相手が死んでいるのを見てビックリしたんだと思う。死体を引き上げられたら化けてるってのが、ばれるから。」
「なるほど。」と藍白
「そりゃ、そうだよな。」とバッカス
他の人たちもうなずいている。
アルテミスが、液体の入った容器を両手に持って
「じゃ、後は銀河連合の鑑定待ちということで、失礼するわね、お休みなさい。」
と挨拶をして、部屋の中に入って行った。
トカレフたちが
「マーズ様、私たちの布団を使ってください。」
「お部屋の方にお運びしますね。」
と言って、奥の部屋に運び入れている。
私と他の女神たちも、部下たちに余っている布団を奥の部屋の和室に運んでもらい、寝る前の挨拶を済ませ、それぞれの部屋に入って行った。
次回
第9章ー第二都市(寮の3階1番奥の部屋、夢の中)
1、「地図を渡したでしょ。」
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